はじめに
本試験4日前に文部科学大臣が「共通テストなしでも合否判定」と突然言いだし、前日には「オミクロン株の感染拡大が想定外」と言い訳するなど文科省は相変わらずの後手、マスコミは文科省の「思考力を重視」を検証もせず「広報」し、試験当日には試験会場の上にヘリを飛ばし、カンニングの話に飛びつくなど、この人たちにとって大学入試は何なのかと怒りを禁じ得ません。(# ゚Д゚)
29日・30日の追試・再試の受験許可者は約1660人、感染症関係、津波警報による振替、試験監督の不手際などが理由で、センター試験から通算しても過去2番目の多さだそうです。受験生の皆さん、お疲れさまでした。
追試の問題が新聞に発表されてないか調べていたところ、Twitterでフォローしている方から情報をいただけたので、2022年の共通テスト世界史Bの追試を解説します。
今年の共通テスト前に2021年の追試の回に多くのアクセスをいただきました。次の受験生の参考になれば幸いです。
問題 福島民友新聞より お早めに 来年もお願いしますね!
7月1日に大本営にも問題と解答がアップされました。ただし問題番号13と22の史料がカットされていて意味不明です。ぶんぶんは福島民友さん発のフルバージョンを持っているのでそれで演習してます。(`・∀・´)エッヘン!!
他の年度の追試問題はこちら
bunbunshinrosaijki.hatenablog.com
目次
1 大問構成
第1問 挿絵と風刺画
A 明の軍事技術書 B 1898年のフランスの風刺画
第2問 アメリカ大陸の歴史
第3問 移動の歴史
A 中国の近代化と留学生 B ナチ党の「民族ドイツ人」移住計画
第4問 複数の資料の読み比べ
A 突厥と東ローマ帝国の外交 B イギリスの身分制議会の意義
第5問 地域や国の歴史をどのような視点から捉えるか
A 中国史の中世と近世の捉え方 B ポリビオスと歴史叙述 C 世界恐慌
第6問 世界市場の建造物
A モスク B カール・マルクス・ホーフ
カール・マルクス・ホーフはウィーンにある集合住宅で、1926~30年に建設されました。ハプスブルク帝国が崩壊してウィーンでは社会民主党が政権を握り、住宅難と失業対策から大量の市営住宅建設が計画されました。
Bwagさん撮影。©Bwag / CC-BY-SA-4.0
2 全33問 ダイジェスト
① 凡例
タイプ 一問一答:知識問題
内容理解:教科書の記述内容を問う
年号:年号や順番の知識を問う 整序問題はここに分類
資料:地図上の位置や図版 グラフの読み取りはここに分類
読解:文書資料の言わんとすることを読み取る
時代 アジアは18世紀まで「前近代」、ヨーロッパは中世まで「前近代」・18世紀まで「近代」、その後は「19世紀」、「20世紀」、第二次世界大戦以後は「戦後」
難 難易度
◎:「あれといえばこれ」という問題。正解マスト
○:正解するには教科書の記述部分の理解や知識をつなぐ力が必要
△:手が回りにくい範囲、細かい知識、複数知識を再構成する力が必要
▲:難しい問題 抽象度が高い問題、やりこみが必要とされる問題
傾向 セ:センター風 私立:私立個別風 二次:国公立風 新:新傾向
内容 私立一般や国公立二次で問われる内容
② 全33問の出題内容
タイプ | 話題 | 時代 | 地域 | 備考1 | 難 | 傾向 | 内容 | |
1 | 読解 | 文化 | 前近代 | 東アジア | 中国軍事技術書の銃がどこ製か(オスマン帝国)とその伝来の経緯 | ◎ | 新 | |
2 | 年号 | 政治 | 前近代 | 東アジア | 16世紀末にオスマン帝国の銃が調査された背景 | ○ | セ | |
3 | 一問一答 | 政治 | 近代 | 西アジア | ウズベク人の内容 | △ | 私立 | 中央ユーラシア |
4 | 読解 | 文化 | 19世紀 | ヨーロッパ | 19世紀末に新聞が普及した理由 | ○ | 新 | |
5 | 一問一答 | 文化 | 19世紀 | ヨーロッパ | 自然主義の代表作品と作者 | ◎ | セ | |
6 | 一問一答 | 政治 | 19世紀 | ヨーロッパ | ドレフュス事件の内容 | ◎ | セ | |
7 | 一問一答 | 政治 | 近代 | ヨーロッパ | ポルトガルの歴史で正文(エンリケ航海王子) | ◎ | セ | |
8 | 一問一答 | 文化 | 近代 | アメリカ | ラテンアメリカの宗教(インカの王は太陽の子) | ◎ | セ | |
9 | 一問一答 | 政治 | 近代 | アメリカ | エンコミエンダ・クリオーリョの内容 | ◎ | セ | |
10 | 読解 | 政治 | 19世紀 | アメリカ | インディアンの強制移住に関する読解 | ◎ | 新 | |
11 | 年号 | 政治 | 20世紀 | ヨーロッパ | イギリス第4次選挙法改正の時期 | ○ | セ | |
12 | 一問一答 | 政治 | 19世紀 | 東アジア | 中体西用・魯迅 | ◎ | セ | |
13 | 年号 | 政治 | 20世紀 | 東アジア | 科挙廃止、辛亥革命、新文化運動の整序 | ○ | セ | |
14 | 一問一答 | 政治 | 前近代 | ヨーロッパ | ポーランドについて正文(ヤゲウォ朝) | ◎ | セ | |
15 | 読解 | 政治 | 19世紀 | ヨーロッパ | 国民国家の目指すものとその例(イタリア統一) | ○ | 新 | 国民国家 |
16 | 読解 | 政治 | 前近代 | 東アジア | 突厥が東ローマ帝国にソグド人を使節として送った | ○ | 二次 | ソグド人 |
17 | 一問一答 | 文化 | 前近代 | 西アジア | ササン朝について正文(アヴェスター編纂) | ◎ | セ | |
18 | 読解 | 政治 | 前近代 | ヨーロッパ | ヘンリ3世の時代(シモン=ド=モンフォール)と身分制議会の意義 | ◎ | 新 | 身分制議会 |
19 | 一問一答 | 政治 | またぎ | ヨーロッパ | イギリスの議会正文(議会法 下院の優位) | △ | 私立 | 帝国主義 |
20 | 内容理解 | 政治 | 近代 | ヨーロッパ | アメリカ独立宣言とナントの王令廃止の資料についての正文(ユグノーが亡命) | ○ | 私立 | 絶対王政 |
21 | 読解 | 政治 | 前近代 | 東アジア | 宋代を中世とみるか近世とみるか、その観点 | ▲ | 新 | 時代区分 |
22 | 読解 | 政治 | 前近代 | 東アジア | 21の観点と同じ資料の説明の正文 | ▲ | 新 | 時代区分 |
23 | 一問一答 | 政治 | 前近代 | ギリシアローマ | アケメネス朝・アレクサンドロスの版図でない地域 | △ | セ | |
24 | 読解 | 文化 | 前近代 | ギリシアローマ | ギリシア・ローマの歴史叙述正文(ポリビオスもペロポネス戦争に言及) | ○ | 新 | |
25 | 一問一答 | 政治 | 20世紀 | ギリシアローマ | ローマの王政正文(エトルリア人の王) | ◎ | セ | |
26 | 資料 | 経済 | 20世紀 | ヨーロッパ | 世界恐慌のグラフの読み方正文(世界恐慌後に失業率最高) | ◎ | セ | |
27 | 一問一答 | 経済 | 20世紀 | ヨーロッパ | 恐慌対策正文(ドイツの公共事業) | ◎ | セ | |
28 | 一問一答 | 文化 | 前近代 | 南アジア | ジャイナ教の正文(苦行と不殺生) | ◎ | セ | |
29 | 資料 | 文化 | 前近代 | 西アジア | ウマイヤモスクのある場所 | ○ | セ | |
30 | 年号 | 文化 | 前近代 | 西アジア | ウマイヤモスク、クトゥプ=ミナール、スレイマニエモスクの整序 | ○ | セ | |
31 | 一問一答 | 文化 | 19世紀 | ヨーロッパ | マルクスの正文(共産党宣言) | ◎ | セ | |
32 | 年号 | 政治 | またぎ | ヨーロッパ | ナポレオン3世のパリ改造、マルクス=ホーフ、アトリーの福祉政策の整序 | ○ | セ | |
33 | 一問一答 | 政治 | 近代 | ヨーロッパ | ハプスブルク家正文(ポーランド分割) | ◎ | セ |
3 正解と正誤判定ポイント解説
問題は各自でダウンロードし、解答したうえで復習してください。リンクは「ズバリ的中!」という話ではなく、関連事項を復習するためのもの。
1. 即答で②
イェニチェリから「あ」はオスマン帝国。文章中に鉄砲が中央アジア経由で運ばれたとあるので「Y」は陸路
2. 即答で②
選択肢の中で16世紀末のことは豊臣秀吉の朝鮮侵攻。①ベトナム遠征は永楽帝で15世紀初、③台湾からオランダを駆逐したのは鄭成功で17世紀半ば、④白蓮教徒の反乱は18世紀末。
3. 正解は①
「ティムール朝を滅ぼして西トルキスタンを拠点とした」はウズベク人なので、「ヒヴァ=ハン国を建てた」が適当。②コーカンド=ハン国を併合したのはロシア。③キルギスに滅ぼされたのはウイグル。④カラコルムはモンゴル
4. 正解は①
読解問題だが、誤文が外しすぎ。①新聞よりラジオが後、②政教分離法はこの絵が風刺するドレフュス事件の影響で制定された。④インドシナ戦争は1946年
bunbunshinrosaijki.hatenablog.com
5. 即答で③
①ドラクロワはロマン派、②ルノワールは印象派、④モネは印象派
bunbunshinrosaijki.hatenablog.com
6. 即答で④
ゾラから「オ」はドレフュス事件なので「反ユダヤ主義を背景とする冤罪事件」が適当。①対独復讐・クーデタ(未遂)はブーランジェ事件、②総裁政府を倒したのはブリュメール18日のクーデタ ③アナーキストの冤罪事件はサッコ=ヴァンゼッティ事件で私大入試で頻出。
bunbunshinrosaijki.hatenablog.com
7. 即答で③
ポルトガルと言えばエンリケ航海王子。④ポルトガルは当時イギリスと関係が深く第一次世界大戦では連合国側で参戦した。第二次世界大戦では独裁者サラザールのもとでスペインとともに中立を守る。
8. 即答で①
インカと言えば太陽の子。②イダルゴはメキシコ、③ラテンアメリカはカトリックって文中にある。④ピルグリム=ファーザーズは北米(メイフラワー号、プリマス)。
9. 即答で①
センター試験風2語組み合わせ問題。「ラテンアメリカ、過酷な労働」からアはエンコミエンダ。ダミー選択肢の「ラティフンディア」は外しすぎ。イのクリオーリョの意味も当然の知識。
10. 即答で②
読解問題。誤文が外し気味。①ミシシッピ川以東ではなく以西に強制移住、②大陸横断鉄道は1869年、④フロンティアの消滅は1890年代。
「涙の旅路」のルート
11. 正解は④
センター試験定番「年表のどこに入れるの」問題。イギリスで21歳以上の男子に選挙権が拡大されたのは1918年の第4回選挙法改正。当ブログの読者なら瞬殺(イヤ♡ニヤリ)。
bunbunshinrosaijki.hatenablog.com
12. 即答で③
センター試験風2語組み合わせ問題
13. 即答で⑤
本試で削られた整序問題。Z:科挙廃止から光緒新政(1905)、X:武昌蜂起から辛亥革命(1911)、Y:『新青年』から新文化運動(1915~)。正確な年号を知らなくても解答できる。
14. 即答で①
ポーランドと言えばリトアニアと合併したヤゲウォ朝。②バルト海の覇権はスウェーデン。④戦後ドイツとポーランドの国境は、ポーランドがソ連に東部を割譲した代償で西側に約200km移動した(オーデル=ナイセ線)。西ドイツは1970年までこれを認めなかったが、ブラントの東方外交の時にこれを承認した。
15. 正解は③
読解問題。「民族ドイツ人」の話をしているので、国民国家形成とイタリア統一戦争が適当。ダミー選択肢のオーストリア=ハンガリー帝国は多民族国家。
*発展
ナチ党は東欧のドイツ系住民を呼び戻す代わりに非ドイツ系住民を排除することを計画し、最終的にはユダヤ人大量虐殺へと急進化していきました。ただし移住したドイツ人も植民先の生活は厳しく、故郷に残した財産も保障されませんでした。
第二次世界大戦後には東欧全域で複数の民族集団の住民移動が大規模に展開され、そのうち最大規模の住民移動がドイツ系住民の強制移住でした。その数は1200万人にのぼり、移動途中で殺害・略奪・性暴力が横行しました。
これはインド・パキスタン分離独立時の大量難民に次いで、世界史上最大規模の住民移動のひとつに数えられます。
ヒトラー政権の移住政策について 入門書
参考
東欧から「呼び戻された」住民の状況
https://www.jstage.jst.go.jp/article/gendaishikenkyu/60/0/60_1/_pdf/-char/ja
16. 正解は①
「突厥がソグド人を使節として東ローマ帝国に派遣」は角川の『世界の歴史』に出てくる。突厥が北周や北斉を支配下に置いていたことは実教出版の教科書に載っている。文中の「568年」からも突厥とわかる。
bunbunshinrosaijki.hatenablog.com
17. 即答で①
6世紀のペルシアはササン朝なのでゾロアスター教の経典編纂が適当。
18. 即答で⑥
知識と読解の組み合わせ。ヘンリ3世からシモン=ド=モンフォール。
19. 即答で②
20. 正解は④
資料3はアメリカ独立宣言で①パリ条約の前、②ロックの抵抗権の考えにもとづく。 資料4はルイ14世のナントの王令「廃止」なので③アンリ4世ではない。
21. 正解は④と⑤
「歴史の時代区分」という概念と宋の知識を組み合わせて正誤を判断する難問。
資料1は中世から近世の移行を貴族の没落による君主独裁政治への転換と捉える。宋は君主独裁と官僚制を基本とするので、資料1の統治の観点からは「近世」といえる。したがって選択肢の中では④が適当。
資料2は佃戸制を農奴制と捉える。宋では佃戸制が拡大するので、資料2の土地経営の観点からは「中世」といえる。したがって選択肢の中では⑤が適当。
選択肢のみ引用。
- ア 資料1では、支配階層や土地経営の変化 イ 中世
- ア 資料1では、支配階層や土地経営の変化 イ 近世
- ア 資料1では、統治体制の変化 イ 中世
- ア 資料1では、統治体制の変化 イ 近世
- ア 資料2では、支配階層や土地経営の変化 イ 中世
- ア 資料2では、支配階層や土地経営の変化 イ 近世
- ア 資料2では、統治体制の変化 イ 中世
- ア 資料2では、統治体制の変化 イ 近世
22. 正解は④は③、⑤は①
試行テストにあった連動問題。
資料3は古代を秦漢帝国、中世の開始を9世紀=唐宋変化(均田制から佃戸制)と解釈するので①が文章として適当で、土地経営面に着目する⑤と同様の解釈。資料4は宋学の記述なので③の文章が適当で、士大夫が君主独裁政治を支えたことから④と同様の解釈。
23. 正解は③
センター試験の2カ所埋め問題。
エ、は「ギリシアとの戦争」からアケメネス朝、オ、は「エを滅ぼしてアジアに覇権」なのでアレクサンドロスの帝国、その版図でないのはイベリア半島。選択肢「エジプト」は、アケメネス朝を滅ぼす前にアレクサンドロス大王が儀式をしに行った場所で、彼の死後部下のプトレマイオスが自立したのでダミーと判断できる。
24. 正解は③
読解問題。史料でポリビオスはスパルタの盛衰について述べている。これはペロポネス戦争に当たるので③「トゥキディデスが主題としたのと同じ戦争」が適当。
25. 即答で④
ローマはエトルリア人の王から自立。
26. 正解は③
グラフ読み取り問題。世界恐慌の後に失業率が高くなるのは当然。
27. 即答で①
アウトバーンの建設はナチス政権ではじまった訳ではないが、ヒトラーの手柄として大々的に宣伝された。15の『ヒトラーとナチ・ドイツ』参照。②NIRAはアメリカ合衆国、③失業保険の削減はイギリスのマクドナルド。④ブロック経済は域外とは自由貿易ではなくて保護貿易。
28. 即答で②
ジャイナ教と言えば箒とマスクで不殺生を実行。
29. 正解は③
「西ゴート王国を滅ぼした」からウマイヤ朝。モスクはウマイヤモスクで所在地はダマスクス。
30. 即答で③
整序問題。ウマイヤモスク(7C)→クトゥブ・ミナール(13C)→スレイマンモスク(16C)。ブログ読者なら瞬殺。
bunbunshinrosaijki.hatenablog.com
31. 即答で①
資本論→カール・マルクス→「共産党宣言」。②無政府主義はプルードン、③法の精神はモンテスキュー、④精神分析はフロイト
32. 即答で②
整序問題。あ:ナポレオン3世のパリ改造は19世紀後半。オスマン男爵は私立で必須知識→ 図版:1920年代→ い:アトリーの社会福祉政策は第二次世界大戦後
33. 即答で①
ハプスブルク家(オーストリア)は第1回と第3回のポーランド分割に参加。②シュレジエンを奪われた ③フランスと外交革命 ④タンジマートはオスマン帝国
4 分析
① 出題タイプ
タイプ | 2022本 | 2022追 | 2021第一 | 2021第二 | 2020セ |
一問一答 | 14 | 16 | 13 | 10 | 25 |
年号 | 2 | 5 | 5 | 8 | 4 |
内容理解 | 6 | 1 | 5 | 3 | 6 |
資料 | 5 | 2 | 3 | 7 | 1 |
読解 | 7 | 9 | 8 | 5 | 0 |
小計 | 34 | 33 | 34 | 33 | 36 |
傾向
傾向 | 2022本 | 2022追 | 2021第一 | 2021第二 |
セ | 19 | 21 | 17 | 15 |
新 | 8 | 8 | 6 | 13 |
二次 | 1 | 1 | 5 | 1 |
私立 | 6 | 3 | 6 | 4 |
小計 | 34 | 33 | 34 | 33 |
共通テストになって一問一答は減ったものの、すべての問題を抽象的概念を駆使して資料・史料を読む仕様にするわけにはいかないので、半分以上は教科書の内容を問う知識問題(一問一答・年号・内容理解)です。
一問一答も知識をつなぐ「反射衛星砲」問題が中心ですが(ゾラ「私は弾劾する」→ドレフュス事件→反ユダヤ主義)、追試では整序問題や二つの空欄を補充する問題、年号が解答の鍵になる問題などセンター試験テイストの出題が見られました。
今年の本試験、追試験とも「共通テスト一点豪華スペシャル」が難解です。本試験の日独伊ファシズムの比較、追試験の時代区分の評価、昨年度追試の南アフリカとリベリアの比較がそれです。
持続可能な共通テスト、つまり「思考力」の看板にみあう出題もするけど、毎年作問に困らず、私立や国公立の勉強の足しにもなるテストを目指すなら、センター試験の遺産を継承した知識問題をベースに、出題者の興味関心を色濃く反映したスペシャル問題を若干入れるテスト作りは妥当な判断です。
② 出題ジャンル
ジャンル | 2022本 | 2022追 | 2021第一 | 2021第二 | 2020セ |
政治 | 28 | 21 | 24 | 26 | 23 |
経済 | 2 | 2 | 4 | 4 | 2 |
文化 | 4 | 10 | 6 | 3 | 11 |
小計 | 34 | 33 | 34 | 33 | 36 |
追試は文化史がケチャップみたいに出ました。センター試験と同傾向です。
③ 時代
時代 | 2022本 | 2022追 | 2021第一 | 2021第二 | 2020セ |
前近代 | 13 | 13 | 11 | 10 | 10 |
近代 | 4 | 6 | 6 | 3 | 0 |
19世紀 | 8 | 7 | 10 | 7 | 6 |
20世紀 | 4 | 5 | 2 | 5 | 2 |
戦後 | 4 | 0 | 3 | 4 | 4 |
またぎ | 1 | 2 | 2 | 4 | 14 |
小計 | 34 | 33 | 34 | 33 | 36 |
④ 地域
地域 | 2022本 | 2022追 | 2021第一 | 2021第二 | 2020セ |
東アジア | 10 | 7 | 11 | 7 | 4 |
東南アジア | 1 | 0 | 0 | 2 | 0 |
西アジア | 4 | 4 | 1 | 2 | 1 |
南アジア | 0 | 1 | 3 | 1 | 1 |
ギリシアローマ | 0 | 3 | 1 | 3 | 1 |
ヨーロッパ | 13 | 15 | 16 | 12 | 12 |
またぎ | 2 | 0 | 2 | 4 | 16 |
アメリカ | 1 | 3 | 0 | 0 | 1 |
他 | 3 | 0 | 0 | 2 | 0 |
小計 | 34 | 33 | 34 | 33 | 36 |
一題で複数の地域・時代の知識を問う「ショットガン問題」は封印され、資料やリード文に沿って出題されるので、地域や時代が偏る可能性があります。大問を増やし、パートを刻んで偏りを減らそうと工夫しています。
ただしテーマによって、特に「歴史学」だとヨーロッパ史、中国史に偏るのは昨年の本試験と同じです。
⑤ 難易度
難易度 | 2022本 | 2022追 | 2021第一 | 2021第二 | 2020セ |
◎ | 18 | 17 | 16 | 17 | 17 |
○ | 10 | 11 | 10 | 11 | 9 |
△ | 6 | 3 | 8 | 5 | 9 |
▲ | 0 | 2 | 0 | 0 | 1 |
小計 | 34 | 33 | 34 | 33 | 36 |
数学の出題者とは違って、平均点管理は意識の中にあるようです。
追試は易問も多いですが誤文が本試験ほど派手な外し方ではなく、「スペシャル問題」は難しく、本試験よりやや難しいと考えます。
まとめ
追試験はセンター試験の頃から実験的な面を感じる時がありましたが、今回の追試験もセンター試験風と改造版、読んだらわかるor読んでもわからない問題と、「持続可能な共通テスト」を目指して試行錯誤しているように感じました。
読解問題も基本は知識です。様々な時代の出来事や頭の中に整頓されていて、ヒントから適切に引き出し、組み合わせることができるかが試験で問われます。
授業中から常に「いつ」「どこ」「だれ」「なに」「どんな」を意識し。演習ではヒントから用語が瞬時に思い出せるようにトレーニングしましょう。
知識がついてきたら、出来事の因果関係を考えたり、出来事を時間や空間の中で比較して違いを見つけたり、関連づけたりしましょう。
その時に世界史の先生が力説するけど眠気を誘う「概念」を使うと、話がうまくつながります。そこに気がつけば世界史の成績はみるみる上がります。
話し合い活動だけがアクティブではない、講義の時間こそアクティブに頭を働かせましょう。つまり授業で寝ないでください。(´・ω・`)