ぶんぶんの進路歳時記

学習方法、進路選択、世界史の話題について綴ります

大学入学共通テスト歴史総合・世界史探究試作問題徹底研究(1解答編)

はじめに

 2022年の11月に2025年度の新課程共通テストの試作問題が公開されました。

*情報の試作問題を解く大学生を募集しているという書き込みをTwitterで見ました。高校生に解いてもらわないと意味ないのでは?

 今回は「歴史総合・世界史探究」の試作問題を解説し、2年後に備えるだけでなく、ラスト2回となった共通テスト世界史Bの対策にもしたいと考えます。

 「この問題を正解するにはどのような知識が必要か」に焦点化しているので、それを獲得するための歴史総合や世界史探究の「授業の進め方」は別稿に譲ります。

*解説に際してぶんぶんの考え

  • 「世界史は暗記もの」という前提が誤解あるいは思想浅薄
  • 「歴史的な知識」は、事象を時間や空間や論理の中に位置づけたもの
  • 教科書の太字は時系列の道標でありその時代のあり方を圧縮したもの。試験でそれが出題されるのは丸暗記を求めているのではなく、それを知っているなら該当の単元内容が理解していると判断できるから
  • 「知識」と「思考」を分けて考える前提がナンセンス。「知識」は思考の過程を経て習得されるし、「思考」は知識の積み上げ
  • 「思考」には様々な知識や論理が混在しているので、「歴史的思考」だけ切り離して議論するのは意味がない。
  • 思考の過程で歴史を多めに使うか地理を多めに使うか(「地理的思考」)といった「濃淡」はあるので、「歴史の知識を多めに使う思考」を「歴史的思考」と呼ぶのは差し支えないし、歴史の試験に「地理的思考」や「論理的思考」などを援用することもあり得る
  • 本文中の「知識問題」は「些末な暗記もの」という意味ではなく「思考を経て獲得した世界史の知識が解答に必要」という意味で、「知識=暗記」としか思っていない人への警告
  • 本文中の「読めばわかる問題」は「歴史的な知識を使わなくても解答可能な問題」という意味で、大半の読解問題は歴史的知識が必要な問題。

問題は大本営から 

www.dnc.ac.jp

目次

  

1 大問構成

第1問

世界の諸地域における人々の接触と他者意識(授業シチュエーション)

*歴史総合の第2問と同じ

A 生麦事件の絵

B 第一次世界大戦のフランスの新聞の挿絵(プロパガンダ色あり)

C 1970年大阪万博の新聞記事

*登場人物は万博会場にひっかけて「センリさん」

第2問

世界史上の都市(班別学習シチュエーション)

イスタンブル・北京・ケープタウン・大連

第3問

外交や貿易などによって発生する人の移動と移動ルートの選択(授業シチュエーション)

A 高麗に派遣された宋の使節員のルート

B イギリス人がアジアを目指すルート

第4問

世界の諸地域における国家と宗教の関係

A ローマ帝国キリスト教に対する態度

B 中国の石窟寺院

C フランス第三共和政の国家と宗教

第5問

世界史探究の主題学習シチュエーション

A ワット=タイラーの乱

B カルティニ

C アメリカ合衆国反戦運動

2 凡例

① タイプ

一問一答:歴史的用語(またはその内容)を選ぶ。単発または組み合わせ

年号:年号の知識が必要 年号記憶が不要な整序(事件の時系列順)もこの分類

内容理解:教科書の記述内容(背景・経過・影響)を問う

資料:地図、写真、グラフ、文字資料の読み取りのうち一問一答的なもの

読解:資料問題のうち抽象的な思考を必要とするもの

*「組み合わせ問題」(例:一問一答と資料の読解)は正解を導くためにより必要な力の方に分類した

② 時代

前近代:アジアは18世紀まで、ヨーロッパは中世まで

近代:ヨーロッパの16世紀~18世紀まで

19世紀:19世紀

20世紀:第二次世界大戦まで

戦後:第二次世界大戦

またぎ:時代をまたぐもの

③ 難易度

◎:「あれといえばこれ」の形式。正解マスト

○:複数の知識をまたぐ、教科書の記述内容が理解できていると解答可能

△:高校生には手が回りにくい範囲、細かい知識、抽象的な思考が必要なもの

▲:かなり細かい知識や高度な抽象化が要求される

④ 傾向

セ:センター的

新:ここ2年の共通テストで現れた新傾向

試作:さらに試作問題の新傾向

私立:私立個別の短答問題で既出

国立:国公立二次試験で既出

*地域の凡例は省略(「またぎ」は地域またぎ)

*備考は歴史総合の「近代化」「大衆化」「グローバル化」のどれにあたるか

3 全33問の出題内容ダイジェスト

  タイプ 話題 時代 地域 内容 傾向 備考
1 内容理解 政治 19世紀 日本 生麦事件の絵とその時代 近代化
2 読解 政治 19世紀 日本 英字新聞のイギリス人を擁護する論調を推理 試作 近代化
3 一問一答 政治 またぎ またぎ 近代化運動 近代化
4 一問一答 政治 20世紀 ヨーロッパ 三国協商の参加国 私立  
5 一問一答 政治 またぎ ヨーロッパ 4で選んだ国の出来事  
6 読解 政治 またぎ またぎ ナショナリズムとあらわれ方の組み合わせ 近代化
7 年号 政治 戦後 またぎ 1970年代の出来事 試作 グローバル化
8 年号 政治 戦後 アフリカ アフリカの年 グローバル化
9 資料 政治 戦後 またぎ 日本のODA援助国の割合の変化 私立 グローバル化
10 読解 政治 前近代 西アジア オスマン帝国の宗教政策 試作  
11 読解 政治 前近代 東アジア 北京の韃靼人と漢人の居住区  
12 資料 政治 19世紀 アフリカ ケープタウンエスニック構成  
13 読解 政治 またぎ またぎ 前3つと大連の比較 試作  
14 一問一答 政治 前近代 東アジア 高麗と隋の知識  
15 一問一答 政治 前近代 東アジア 北宋の頃の北方民族  
16 読解 政治 前近代 東アジア 北宋が江南から高麗に使節を派遣した理由を推理 国立  
17 年号 文化 またぎ またぎ コロンブス、マテオリッチ、ピアリの整序  
18 資料 政治 近代 ヨーロッパ イギリスの海上進出を阻んだ国とイギリスが目指したルート  
19 読解 政治 前近代 ギリシアローマ トラヤヌス帝のキリスト教徒に対する態度  
20 年号 文化 前近代 ギリシアローマ 4世紀にローマ帝国にあった信仰  
21 一問一答 政治 前近代 またぎ ローマ帝国の終焉をどことみるか  
22 読解 政治 またぎ またぎ 北魏の宗教政策と似たものを選ぶ 試作  
23 一問一答 文化 前近代 東アジア 魏晋南北朝の文化はどれ 私立  
24 年号 政治 またぎ ヨーロッパ ウェストファリア条約、コンコルダート、ラテラノ条約の整序 国立  
25 一問一答 文化 近代 ヨーロッパ ヴォルテールの思想  
26 読解 政治 20世紀 またぎ 政教分離を行った事例  
27 一問一答 経済 前近代 ヨーロッパ 農奴制の説明  
28 内容理解 政治 前近代 ヨーロッパ ワット=タイラーの乱の説明  
29 一問一答 政治 20世紀 東南アジア ジャワ島の宗主国  
30 読解 政治 20世紀 東南アジア カルティニの背景 試作  
31 資料 政治 戦後 東南アジア ベトナムの位置  
32 資料 政治 戦後 東南アジア ベトナム戦争の志望者数のグラフの読み取り  
33 読解 政治 またぎ またぎ 上記3つの共通点と今後調べるべき内容 試作  

4 正解と正誤判定ポイント解説

 問題は各自でダウンロードし、解答したうえで答えあわせしてください。

1.    即答で⑤

 リード文に「薩摩藩とイギリス人の衝突」とあるので、外国人らしき人が描かれている「い」の絵を選ぶ(「あ」はおそらく桜田門外の変)。その結果薩英戦争が起きたから、年表の天保の薪水給与令と薩英戦争の間のbを選ぶ。生麦事件の内容理解問題。

www2.nhk.or.jp

2.    正解は②

 読解問題。「イギリスの行動を正当化している」とあるので、②「イギリス人は日本においてもイギリスの法により保護されるべき」を選ぶ。①③は日本側の主張で、④は関税自主権の話。読解だけでも解答可能だが、治外法権の知識があれば自信をもって解答できる。

3.    即答で③

 知識問題。「19世紀の日本と同じく欧米の技術を導入して…」から③洋務運動の説明が適当。①ペレストロイカ ②改革開放 ④ニューディール

4.    即答で②(イギリス)または⑥(ロシア)

 三国協商の知識問題。数字つき用語は具体的な中身も覚えるというのは私立の鉄板。

5.    即答で②は⑤(チャーティスト運動)、⑥は①(血の日曜日事件

 共通テストサンプル問題の「二問連動問題」は後半が時代整序だったが、これは一問一答。「歴史総合・地理総合・公共」で受験する生徒にはこの二問は細かい知識問題。

6.    正解は④

 「あ少数民の同化」は「Y北海道旧土人保護法」、「い植民地支配からの脱出」は「Zガンディーの非暴力・不服従運動」。歴史総合のサンプル問題にもある「抽象化」の問題で、新課程、旧課程ともにナショナリズムは大事な学習内容。

7.    解答は③

 年号問題。「あオイルショック」は1973年なので誤文。「い公害」は公害対策基本法で1967年。後半は「1970年当時の世界情勢で社説が触れていないことを選ぶ」というひねった聞き方だが、選択肢は両方とも社説が触れていない話題なので結局は年号問題。「X開発独裁」「Yアラブの春」のうち1970年代のことはX。

8.    即答で①

 知識問題。「アフリカの年」はマスト年号。後半のダミー選択肢「国際連盟」は外しすぎ。受験生で国際連盟国際連合の違いがあやふやな人はいないはず。

9.    正解は②

 グラフの読み取りだが①を誤文と判断するには細かい知識が必要。ユメさんの言う「日本から中華人民共和国へのODA」は日中平和友好条約(1978年)の後(中国側の賠償請求放棄の見返り)なので文中の「1970年」が誤り。

7の参考

www2.nhk.or.jp

www2.nhk.or.jp

 1965年に日韓基本条約を結んだ朴正煕はベトナム戦争への派兵の見返りにアメリカから多額の経済援助を得て「漢江の奇跡」という経済成長を遂げた。この話から開発独裁がいつ頃か判断できる。

www2.nhk.or.jp

9の参考

www2.nhk.or.jp

10.    解答は①

 前半は読めばわかるしミッレト制を知っていれば即答で「あ」、後半は読図問題で地図では各宗教が分散して居住しているのでXが適当。共通テストの組み合わせ問題は知識と読解がセットだが、これは両方とも読解。

11.    解答は⑤

 読解問題。文章から支配者のそばに軍人である韃靼人が住んでいると考えられるので、北の区画に韃靼人、南の区画に漢人が居住と推察できる。2022年の共通テストにあった文章から位置を探す問題。清朝の支配原理の知識があれば即答可能。

12.    正解は④(い・え)

 あ:英語話者はウィーン議定書(1815)でケープ植民地がイギリス領になってからと考えられるので「18世紀」は間違い。い:表では英語話者のなかにカラードやインド人が含まれていること、メモから彼らも隔離の対象になっていたことがわかるので正文。う:表ではアフリカーンス語を話すのはカラードが多いので誤文。え:地図の範囲から正文。興味深い題材だが、設問は年号知識と情報処理にとどまってて、もう一歩アパルトヘイトの内容に踏み込んでほしいと思うのは贅沢?

13.    正解は②

 論理問題。渡辺さんの言うようにイスタンブルは「あ:異なる集団が散在」、北京とケープタウンは「い:集団によって居住区を分けている」。大連はヨーロッパ人と中国人が分離されているので後者に属する。菊池さんの「う:王朝の首都」「え:列強の国外拠点」という分類では大連は「う」ではなく「え」にあたる。誘導問題とまとめ問題という新形式。10~12は渡辺さんの説に沿っているので①か②の二択。

14.    即答で④

 知識問題。高麗の都は「い:開城」、大運河を開削したのは隋なので「Y:科挙の創設」を選ぶ。

15.    即答で③

 知識問題。各王朝と対峙した遊牧民名は当然の知識。

16.    正解は④

 唐末の黄巣の乱で広州が破壊され、ムスリム商人(乱で多数が殺害された)が東南アジアに避難したため、宋代には中国商人がジャンク船に乗って海外に出かるようになった。④「民間商人の海外渡航が広く許されていた」が正解。出題は推論風だが宋代の経済発展と海外交易の話題で受験生の苦手なところ。国立私立のトレンドである「グローバル問題」だが消去法でも解答できる。

明代のジャンク船。パブリックドメイン。船の絵は入試頻出で、他にも三段櫂船、ヴァイキング船、ダウ船、ガレオン線、亀甲船などが出題されるが、すべてに出題意図がある。

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17.    即答で⑤

 センター試験的整序問題。Ⅰ:中国でアメリカ大陸や大西洋を含む世界地図を紹介=マテオリッチ=宣教師の来訪は明清にまたがるので17世紀初頭、Ⅱ:はじめて北極点に到達=ピアリ=帝国主義の時代=19世紀末から20世紀初頭(正確には1905年)、Ⅲ:地球球体説にもとづいて西回りアジア航路=コロンブス=1492年。大航海時代イエズス会の関係を知っていれば年号レスで正解可能。

18.    即答で②

 共通テスト試行問題にある「矢印問題」。地中海で力をもっているのはセルジューク朝ではなくオスマン帝国なので、最初の選択肢は「あ」ポルトガル、資料に北極海とあるのでそちらを目指しているのは「Y」 

19.    正解は③

 共通テスト風知識・読解の組み合わせ。領土最大からアはトラヤヌス帝。資料からはトラヤヌスキリスト教を徹底的に弾圧するとは言ってないのでX「キリスト教徒に対する告発を抑制しようとしている」が正解。

 ただしこのプリニウス(任地の小アジアキリスト教徒がたくさんいる)とトラヤヌスの往復書簡では「キリスト教徒であることがわかれば処罰の対象だが、棄教すれば釈放される、密告は受け付けず正式の告訴が必要」とある(他人を陥れるために嘘の密告が横行していた?)。とある会議で「ネロやディオクレティアヌスは迫害して五賢帝はそうではなかった」という意見があったが、やや違う。

参考

www.kwangaku-alumni.jp

弓削達先生の論考

https://www.jstage.jst.go.jp/article/nihonnoshingaku1962/1985/24/1985_24_73/_pdf

20.    正解は①

 説明文はマニ教ササン朝で成立。アウグスティヌスマニ教を信仰していたのは有名。②はシク教で16世紀、④はイスラームで7世紀、③ボロブドゥールは8世紀で大乗仏教の遺跡。仏教はローマ帝国時代に存在するが流行ったという話は聞かないからたぶん誤文。「ボロブドゥールを建設した」という文章は変?

21.    正解は③

 2022年追試の「唐宋変化を中世か近世か判断する問題」と似ているが抽象的思考は不要で、ゲルマン人の移動からオドアケルイスラームの拡大から西ゴート王国の滅亡が思い出せればよいので知識問題。

22.    正解は⑥

 やや難。「あ:立憲君主政」の意味がわからない生徒はたまにいる。北魏の時代にその概念は存在しないので「い:宗教を利用して君主権力を強化する」が正しく、それに類似する世界史上の事例は「Z:インカ帝国では皇帝は太陽の化身とされた」。

 ひっかけは「X:イラン革命を経てホメイニが最高指導者になった」。ホメイニは君主ではない。政治体制の概念理解を試す世界史と政治経済の複合問題かつ古代アメリカと西アジア戦後史いう、受験生の苦手範囲の三種盛り。

23.    即答で④

 四六駢儷体は私立大学で頻出。消去法でも解ける。

24.    即答で②

 名古屋大学の第3問の定番、資料中のヒントから時代を特定して並び替える問題。資料4は「多くの都市で旧教とルター派が以前から行われている」から1648年のウェストファリア条約アウクスブルクの宗教和議と勘違いしても問題は解ける。雑な出題)、資料3は宗教協約(コンコルダート)でナポレオンの統領政府時代(1801年)、資料5はヴァチカン市国から1929年のラテラノ条約。正確な年号を知らなくても教科書の配列から正解できる。

25.    即答で③

 知識問題。哲学書簡→ヴォルテール啓蒙主義なのでその説明を選ぶ。

26.    即答で②

 2021年追試(リベリア南アフリカ共和国の類似性)にあった抽象化と比較の問題。絵とドレフュス事件と1905年のヒントから政教分離法と似たことを選ぶ。選択肢の中ではムスタファ=ケマルが適する。ただフランスとトルコの「政教分離」は類似点より違いが大事。単なる知識問題で終わっている。

27.    即答で①

 知識問題。農奴制の説明。

28.    即答で②

 ジョン=ボール→ワット=タイラー→農奴制の廃止と知識を「芋づる」する。資料文は国王に請願しているので「王政の打倒」は誤文。封建制の解体の理解を試す問題。

29.    即答で④

 知識問題。「植民地と宗主国で使われている」とジャワ島から即オランダ。

30.    正解は①

 「読んだらわかる問題」だが「倫理政策」の知識があれば即答。宗主国による植民地現地エリート育成はインド・東南アジアで詳しく学ぶが、受験生にとっては記憶が飛びがちなところ。

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31.    即答で④

 年号と反戦運動からベトナム戦争ベトナムの位置が特定できないようでは困る。

32.    正解は③

 グラフ問題の多くは年号問題。これはマスト年号の1965年(北爆と公民権法)を知っていれば解答可能。「あ年間の死者数が10000人を超えてから北爆が開始」はその数を超えるのが1967年なので即×。X公民権運動とY女性参政権運動もXが適切。アメリカ合衆国で女性参政権運動が盛んになるのは19世紀末から20世紀初頭、国政レベルで実現するのは1920年

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33.    正解は③

 ワット=タイラー、カルティニ、ベトナム反戦運動の三つに共通するのは「あ反乱や動乱、運動にかかわった人」で、X~Zのうちそれに当てはまるのはZの三・一独立運動。13と同じく誘導問題とまとめ問題で、歴史総合のサンプル問題に同じ形式の問題がある。

5 共通テストとの比較

① タイプ

タイプ 2021本 2021追 2022本 2022追 試作
一問一答 13 10 14 16 10
年号 5 8 2 5 5
内容理解 5 3 6 1 2
資料 3 7 5 2 5
読解 8 5 7 9 11
小計 34 33 34 33 33

 上から3つが教科書の用語と記述内容を理解しているかの知識問題が半分、資料・読解問題が半分で、共通テスト4回分と比べるとやや後者が多いです。

 資料・読解問題も「読めばわかる」と言う意見を聞きますし、それで正解できる問題もありますが、世界史の知識があれば自信をもって答えることができます。なおグラフの読み取りでは「マスト年号」の知識は不可欠です。

 試験や課程が変わろうが、授業のやり方が講義か探究かに関わらず、教科書の内容理解が必須なのは同じです。

② 話題

話題 2021本 2021追 2022本 2022追 試作
政治 24 26 28 21 28
経済 4 4 2 2 1
文化 6 3 4 10 4
小計 34 33 34 33 33

 政治史中心は同じです。文化史はケチャップのように出る時は出ます。

③ 時代

時代 2021本 2021追 2022本 2022追 試作
前近代 11 10 13 13 11
近代 6 3 4 6 2
19世紀 10 7 8 7 3
20世紀 2 5 4 5 4
戦後 3 4 4 0 5
またぎ 2 4 1 2 8
小計 34 33 34 33 33

④ 地域

地域 2021本 2021追 2022本 2022追 試作
東アジア 11 7 10 7 5
東南アジア 0 2 1 0 4
西アジア 1 2 4 4 1
南アジア 3 1 0 1 0
ギリシアローマ 1 3 0 3 2
ヨーロッパ 16 12 13 15 8
アメリ 0 0 1 3 0
アフリカ 0 2 0 0 2
オセアニア 0 0 3 0 0
日本 0 0 0 0 2
またぎ 2 4 2 0 9
小計 34 33 34 33 33

 時代をまたぐ問題が増えたのが大きな変化です。

 センター試験はリード文の下線部に「関連して」時代や地域が違う選択肢の正誤を判断するものが多く、「リード文を読まなくても解答できる」という批判があり、共通テストでは資料に沿った出題がされるようになりました。

 ただその「副作用」で出題される地域が偏る傾向にありました。特に本試験ではヨーロッパ史と中国史に偏りました。

 試作問題では複数の地域の出来事を比較・抽象化し、それに類似する時代や地域の異なる選択肢を選ぶという「抽象化問題」が登場した結果、時代や地域をまたぐ出題が増えました。

 「またぎ」問題に出てくる地域はヨーロッパとアメリカを足して8、東アジアが7、東南アジア、南アジア、西アジアを足して9で、歴史総合の目標のひとつである「アジア諸地域の近代化」に沿っているといえます。

 すでに追試で「抽象化問題」が出題されているので、こうした「新課程っぽい問題」が今年や来年の共通テストで先走って出題される可能性はあります。

⑤ 難易度

難易度 2021本 2022本 2021追 2022追 試作
16 18 16 17 17
10 10 11 11 12
8 6 6 3 4
0 0 0 2 0
小計 34 34 33 33 33

 △印はおおむね細かい知識を必要とするもの、受験生の苦手な範囲(授業が追い付かない戦後史、授業で飛ばされがちな朝鮮半島中央アジア・アフリカ)および抽象的な思考が求められるものにつけています。

 2021年本試は朝鮮半島の近代化など受験生の手が回りづらいところが出題されたので△を多めにつけましたが、他はだいたい同じで、数学とは違って平均点管理という意識は作成者にあるようです。

まとめ

  • 教科書レベルの知識や論理が定着していれば、どんな試験にも対応可能。逆に言えば、用語だけ記憶しているだけではどの試験にも通用しない
  • 試験で直接用語や年号が問われなくても、用語の形で知識をストックし、用語から内容、内容から用語を出し入れできれば速やかに解答できる
  • 歴史科目は時系列でものを考えるので年号の記憶は不可欠。ただし覚える年号は必要最小限にとどめ、その知識から事項をつないで年代を判断する
  • 教科書の記述内容を理解する(意味あるものとして暗記する)ためには、授業中から比較と関連付け、抽象化が必要で、新課程の試験ではそこをズバリついてくる
  • 授業の形式(講義、グループ学習、探究活動)はどうあれ、受験生自身が授業の中で「あれとこれは似てるけど違う」「あれはここにつながる」というように具体と抽象を意識し、自分の言葉でまとめることが、世界史B、歴史総合、世界史探究に共通して必要な学習に対する姿勢

 今回は現役受験生を意識した作りで話をしました。問題ごとの詳細なコメントは次回を予定しています。

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