ぶんぶんの進路歳時記

学習方法、進路選択、世界史の話題について綴ります

世界史の入試問題を解いてみた(2024 京都大学)

はじめに

 今年の国立大学の入試問題を解答し、次年度の受験生のヒントにしたいと考えます。

 今回は京都大学です。Ⅰ・Ⅲが論述で計40点、Ⅱ・Ⅳが一問一答(小論述含む)で計60点の構成です。Ⅱ・Ⅳは南斗水鳥拳で瞬殺し、Ⅰ・Ⅲに時間を使いたいです。

 解答例は正解ではありません。著作権はぶんぶんにあります。

*解答例作成の方針

  1. 受験生と同じく何も見ないで解答する。ただし途中でお茶を飲んだりトイレに行ったりはする(ルール違反)
  2. 解答を作ったら、受験生がアクセスできる教科書(実教出版帝国書院、東京書籍、山川出版社)、資料集(帝国書院、浜島書店)、参考書(詳説世界史研究)でウラを取る(イカサマ)
  3. 仕上げに河合塾駿台、東進、代ゼミの解答速報と比較する
  4. 解説は関連する一般書を利用する

問題は東進過去問データベースより(要会員登録)

www.toshin-kakomon.com

一問一答の難易度

◎:即答 ○:たぶん正解できる

△:合否崖っぷち問題。やや難しいが正解したい。

▲:かなり難しい ×:ドボン(満点防止問題)

一問一答の出題パターン

ま:判別が紛らわしいもの   や:書くのがややこしいもの

こ:事項の細かいいつどこだれ 

り:教科書の記述内容を理解できている、またその知識から推理する

ぜ:有名な事項のあとひとつ  ゆ:現在の言葉の由来、フルネーム

て:権力に抵抗した、または宥和しようとした人や事件

ク:他教科クロスオーバー   グ:グローバルもの

目次

 

過去22年分の大論述(すべて300字)

年度 課題 地域 時代 タイプ
2003   宋・明・清の皇帝独裁制強化と政治制度の改変について 東アジア 前近代 変遷
2003   第一次大戦前後のインドとエジプトに対するイギリスの政策、第二次世界大戦後を踏まえて ヨーロッパ 20世紀 変遷
2004   非アラブ軍事国家であるセルジューク朝モンゴル帝国オスマン朝イスラームに対する姿勢や対応のあり方 西アジア 前近代 比較
2004   4世紀のローマ帝国がヨーロッパ中世世界形成に重要な意義を有した事象。特に政治と宗教 ギリシア・ローマ 古代 説明
2005   辛亥革命から日中戦争までの日本と中国の関係 東アジア 20世紀 変遷
2005   七年戦争からナポレオン帝国の崩壊にいたる時期のイギリスとフランスの関係の変化 ヨーロッパ 近代 変遷
2006   1910~50年代、旧オスマン領中東地域の英仏による植民地化と諸国独立・勢力離脱の経緯 西アジア 20世紀 変遷
2006   4~8世紀、地中海世界の統一・分裂を中心とした地中海域での政治的変化について グローバル 中世 変遷
2007   前2~16世紀の中国王朝がとった対北方民族の懐柔策・外交政策 中央ユーラシア 前近代 変遷
2007   1960年代に世界各地でおきた多極化の諸相 グローバル 戦後 比較
2008   宋以降の士大夫層の新しさを前代指導層と比較、土地制・学術にも言及して 東アジア 前近代 比較
2008   前6世紀末から1世紀間におけるアテネ民主政の歴史的展開 ギリシア・ローマ 古代 変遷
2009   インドの民族運動でのヒンドゥーイスラム教徒の関係・立場と英の政策 南アジア 20世紀 変遷
2009   新大陸発見が引き起こした新・旧両大陸での直接的変化 グローバル 近代 説明
2010   結成から中華人民共和国成立までの中国共産党について 国民党との関係を含めて 東アジア 20世紀 変遷
2010   古代ギリシア・ローマと中世の軍事制度の特徴と変化(政治・社会的背景・影響も) ギリシア・ローマ 古代・中世 比較
2011   4~12世紀にかけての江南開発の過程 東アジア 前近代 変遷
2011   1920年代のアメリカが形成した政治的・経済的国際秩序について ヨーロッパと中国 グローバル 20世紀 変遷
2012   魏晋南北朝時代の仏教・道教の発展と政治、経済、社会への影響 . 東アジア 前近代 説明
2012   南北アメリカ独立運動と独立後の支配体制の特徴 アメリ 近代 比較
2013   ウンマの形成と正統カリフ時代ウンマの重大な変化 西アジア 前近代 変遷
2013   19世紀のロシアとフランスの関係 ヨーロッパ 近代 変遷
2014   科挙制度の変遷 政治、社会、文化的側面から 東アジア ぶち抜き 変遷
2014   戦後のドイツ史 冷戦の動きと絡めて ヨーロッパ 戦後 変遷
2015   19~20世紀初頭までの中国と列強の4度の戦争と利権の承認 東アジア 近代 変遷
2015   前3~前1世紀のローマ国家の軍制と政治体制の変化 ギリシア・ローマ 古代 変遷
2016   8~12世紀のトルコ人の活動と各地への影響 中央・西アジア  前近代 変遷
2016   啓蒙主義思想がイギリスとプロイセンに与えた影響の比較 ヨーロッパ 近代 比較
2017   前3世紀から後4世紀初頭の匈奴について、中国との関係を中心に 中央ユーラシア 前近代 変遷
2017   1980年代のソ連・東欧・中国・ベトナムの経済体制および政治体制の動向、類似点、相違点に着目して ヨーロッパ 戦後 比較
2018   ミドハト=パシャ~ムスタファケマルまでのオスマン帝国トルコ共和国の国家統合の変遷 西アジア 近代 変遷
2018   十字軍運動の性格の変化と政治・宗教・経済への影響 ヨーロッパ 中世 説明
2019   4世紀から17世紀前半におけるマンチュリアの歴史、諸民族・国家の興亡を中心に 周辺地域の支配と被支配 東アジア 前近代 変遷
2019   16世紀から18世紀におけるインドア大陸へのヨーロッパ諸国の進出の過程。交易品と勢力争いと関連づけて ヨーロッパ 近代 変遷
2020   6~7世紀に中央ユーラシアを支配した勢力とイラン系民族との関係 中央ユーラシア 前近代 変遷
2020   1962年から1987年までの国際関係を説明、核兵器の製造・保有・配備、核兵器をめぐる国際的な合意に言及しつつ ヨーロッパ 戦後 変遷
2021   16~18世紀の中国におけるヨーロッパ宣教師の来訪の背景と彼らの中国での活動と影響 東アジア 前近代 説明
2021   1871年ドイツ統一への過程。プロイセンオーストリアに着目。1815年の起点にして ヨーロッパ 19世紀 変遷
2022   15~16世紀のマラッカ王国の歴史。外部勢力との政治的経済的関係、周辺地域のイスラーム化に与えた影響に言及 東南アジア 前近代 説明
2022   民主政アテネ共和政ローマの違い。前者はペルシア戦争後、後者は前4~前3世紀を対象に、国政を担った機関と構成員の実態。 ギリシア・ローマ 古代 比較
2023   5世紀~12世紀のモンゴリアの歴史。遊牧国家の興亡を中心に 中央ユーラシア 前近代 変遷
2023   アンダルスの形成と消滅の歴史。宗教的状況の変化および文化の移転 ヨーロッパ 前近代 変遷
2024   16世紀末から19世紀末にいたる朝鮮と中国の関係について 東アジア ぶち抜き 変遷
2024   キリスト教世界がローマ=カトリック教会とギリシア正教会に分裂していく過程について、8世紀に力点を置いて、教皇領の形成と関連付けながら ヨーロッパ 前近代 変遷

コメント

 京都大学の論述2題はアジアかヨーロッパ、前近代か近現代の「バーター」(例えば中国の前近代史とヨーロッパの近現代史)になっています。2022年、2023年は両方とも前近代でしたが今年は戻りました。

 ここ数年アジア史パートは中国史のど真ん中ではなく、境界地域と関係性を問う出題がされています。今年も朝鮮半島と中国の関係性を問う出題です。ヨーロッパ史側も東西教会の対立と同様の傾向です。

設問

16世紀末から19世紀末にいたる朝鮮と中国の関係について説明。300字

リード文のヒント:朝鮮王朝が乾隆帝の70歳の誕生日を祝賀した年次を、朝鮮の記録では明の時代の年号で記している。

ヒントから芋づる

  • 14世紀末 李成桂が親元派を追放し新王朝を建国、ただちに明に使いを送り明から「朝鮮」の国号を受ける
  • 15世紀~17世紀 朝鮮は毎年北京に使節を送る(朝鮮燕行使)
  • 16世紀末 豊臣秀吉の朝鮮侵攻に明は援軍を派遣する
  • 17世紀前半 ホンタイジが国号を清とし、明を攻める前に朝鮮に侵攻しこれを属国とする
  • 17世紀後半 清は明が滅亡後に北京に入城して中華皇帝として大陸を支配する。朝鮮は毎年北京に使節を送り清の文化を吸収したが、夷狄の風俗を残す清に対して両班層の中に自らが明の正統な後継者という小中華意識が芽生え、朝鮮では儒教の規範が清朝以上に守られ、暦は明のものを使用した
  • 19世紀半ば アメリカ合衆国とフランスが朝鮮に開国を求めたが、大院君は清との冊封関係と華夷思想からこれを江華島の砲台の力で追い返す。さらに日本の明治政府が新しい関係を求めるが外交文書を「冊封関係マナー違反」と拒否した。しかし江華島事件で敗北し開国する
  • 19世紀後半 大院君は失脚したが、日本と結んで近代化を図ろうとした閔氏政権に対して反発した軍人が大院君を擁立して暴動を起こす(壬午軍乱)。反乱は清が鎮圧する
  • 閔氏政権は清朝の援助を受けて袁世凱の指導の下に近代化を進める。しかしこの事大派に対して日本をモデルに近代化を図ろうとする開化派がクーデタをおこすが(甲申政変)清朝の干渉で失敗する。天津条約で日清は朝鮮出兵の事前通告を約する
  • 19世紀末 甲午農民戦争を口実に日清が出兵、朝鮮の近代化を巡って両者が対立して日清戦争が発生、清朝は敗北し下関条約で清は朝鮮の宗主権を放棄した
  • 朝鮮では親露政権が1897年に朝鮮は清朝と対等であることを示すため大韓帝国と国号を改めた

解答例

朝鮮は建国後に明の冊封を受け、明も16世紀末の豊臣秀吉の朝鮮侵攻では援軍を送るなど宗属関係を持った。17世紀に朝鮮は清に降伏し、明滅亡後は清の冊封のもと毎年使節を派遣し文化を吸収したが、両班層に自らが明の正統な後継者だという小中華意識が芽生え、暦は明のものを使用した。19世紀半ばに朝鮮は列強の開国要求を清との冊封関係から拒否したが、日本に敗北し開国した。清が壬午軍乱を鎮圧すると朝鮮の事大派は清の指導の下で近代化を進めて日本をモデルとする開化派と対立し、後者が甲申政変を起こすと清が鎮圧した。日清の対立は日清戦争に発展し、敗北した清は1895年の下関条約で朝鮮の宗主権を放棄し、97年に朝鮮は大韓帝国と改称した。300字

解答のポイント

1)時代と場所を~☝チェック!(by寺田ちひろ♡)

 一橋大学2020年の類題で、朝鮮の小中華意識が19世紀の「ウエスタンインパクト」の中で変容する過程を、中国との関係の中で説明する。

 始まりの16世紀末は壬辰・丁酉の倭乱(関ヶ原の戦い(1600年)の前)。終わりの19世紀末は下関条約(1895年)と大韓帝国(1897年)。後者の年号を度忘れしても日英同盟(1902年)の前と判断できる。

 ただしヒントに「朝鮮王朝が明暦を使っている」とあるので、解答例では「朝鮮は明とは仲良し、夷狄の風習を残す清は嫌い」を対比するために、点数にならないのを承知で建国後すぐに明の冊封を受けたことを書いた。

2)設問の指示に沿って叙述する

 京都大学の論述の特徴は知識をテーマに沿って絞るところで(2009年Ⅰや2010年Ⅰが典型)、ヒントから芋づるで思い出した事実を、明・清との関係に絞って時系列で述べる。

 その時「対比」を意識すると論が進めやすい。朝鮮と明・清との関係のあり方の対比、儒教文化の受容と近代化の指導の対比、事大派と開化派の対比を描き、最後は清の宗主権から脱し独立国を称することを書けば、出題意図に沿った文章になる。

 解答例は対比に字数を使うため「夷狄の風習を残す清に対して」や「儒教の規範が清朝以上に守られ」は割愛し、大院君、閔氏政権(この言い方はよくないという説あり)、金玉均キタ━━(゚∀゚)━━!!などの名称も割愛。

 金玉均が好きなぶんぶんは授業で詳しく説明するが、共通テスト2021年のこの範囲の設問の正答率が悪く、受験生の手が回りにくいところなのかもしれない。とはいえ難関国立・私立を狙うなら確実に仕上げておきたい。

復習用

bunbunshinrosaijki.hatenablog.com

 朝鮮燕行使について。北京は金の時代に「燕京」と呼ばれていた。朝鮮は清に降伏した1637年から毎年使いを出し、250年間で500回以上と同じ冊封国の間では突出した多さ。その割に韓国では朝鮮通信使より研究が進んでいないらしく、歴史学における政治性を感じる。

a 衛氏朝鮮○こ b 楽浪(郡)◎c 黄巾(の乱)◎

d 永嘉(の乱)△ぜ e 拓跋〇や

(1)  (ア) 康熙帝〇や (イ) アイグン条約◎

(2)  (ア) 司馬遷◎ (イ) 冒頓単于

(3) 趙(戦国時代に長城を築いた燕の隣の国)△地図

(4) 郡国制◎

(5) 司馬炎

(6) 安史の乱(営州出身の人物が8世紀半ばに起こした反乱)◎

(7) (ア) 太武帝◎ (イ) 平城◎

解答のポイント

 永嘉の乱と趙が難しいのと(関関同立では何度か出ている)、康熙帝、拓跋、冒頓単于を正確に書くときに緊張するぐらいで、あとはノーミスで。

 過去回で趙の武霊王が自軍に遊牧民の服装と戦術(胡服騎射)を取り入れようとして殺された話をしたのは、この「趙」を記憶に残すため。

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 「安禄山」は「8世紀半ば」から即答ですが、彼は北京周辺の農耕・遊牧境界地域の節度使遊牧民の軍勢を従えていました。

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f セリム1世◎ g メディナ○地図

(8) アチェ王国〇ぜ

(9) マリ王国◎

(10) イクター制

(11) ファーティマ朝(10世紀に繁栄、最盛期にはヒジャーズ地方に進出)△り

(12) ナセル◎

(13) アッバース1世(17世紀にタブリーズを再征服)〇り

(14) ムハンマド=アリー朝△こ

(15) サダム=フセイン〇て

(16) キュロス2世(ヘブライ人をバビロン捕囚から解放)〇り

(17) オランダ(ポルトガルをセイロン島から追い出す)〇り

(18) チョーラ朝(11世紀にシュリーヴィジャヤに出兵)△

(19) ヤークーブ=ベク(タリム盆地に政権を樹立したコーカンド=ハン国の武将)▲

(20) カラ・ハン朝◎

解答のポイント

 難関私立大学の「合否がけっぷち問題」のオンパレード。「ヤークーブ=ベク」のみ当ブログのコアなファンが何とか書けるレベルで、他は私立の過去問をやっていれば解答可能です。

 gは「メッカとメディアはどっちが北か?」という地図レス地図問題で、ぶんぶんは授業で他の重要な都市も含めて地図プリントで位置を確認します。「逃げるのは北というのは義経と同じ」と覚えましょう。

 (11)、(13)はいずれも年号問題で、10世紀・シリアからファーティマ朝(909年成立、969年エジプト占領)、17世紀から「ポルトガル人をイギリス東インド会社=1600年の協力でホルムズ島から追い出した」を思い出してアッバース1世にたどり着きます。

 (14)は盲点ですが教科書には載っています。

 (18)チョーラ朝は、ヴィジャヤナガル王国とともに最近頻出の南インドの王朝です。ぶんぶんはインド文化史の回も完成させ、後は「公開する」を推すだけだったのですが、うっかりして「ズバリ的中!」を逃しました。(´・ω・`)

ヤークーブ=ベクについて

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発展 西アジアの地図

 啓隆社さんから地図をお借りして、ぶんぶんが記号を書き入れました。答えはまとめの後にあります。

a:(     )西ゴートの都 アラビア語の翻訳

b:(     )後ウマイヤ朝の都 メスキータ

c:(     )ナスル朝の都 アルハンブラ宮殿

d:(     )ムラービト朝ムワッヒド朝の都

e:(          )東ローマ帝国オスマン帝国の都

f:(        )プトレマイオス朝の都 ̥ムセイオン 東方貿易

g:(     )ファーティマ朝の都 アズハル学院 カーリミー商人

h:(     )アラム人の町 ウマイヤ朝の都

i:(       )ユダヤ・キリスト・イスラームの聖地

j:(     )ムハンマドがここに逃れてウンマを建設

k:(     )中継貿易の拠点でクライシュ族が支配

l:(     )インド洋交易の拠点で乳香の産地

m:(       )アッバース朝の都 マンスールが建設

n:(       )パルティア、ササン朝の都

o:(       )16世紀以降サファヴィー朝の都として栄える。世界の半分

p:(     )ティムール朝が分裂して一方がここに都をおく。

q:(     )貿易の拠点でアッバース1世がポルトガルを追い払う

r:(     )サーマーン朝の都

s:(       )ソグディアナの中心でティムールが都をおく

設問

キリスト教世界がローマ=カトリック教会とギリシア正教会に分裂していく過程について、8世紀に力点を置いて、教皇領の形成と関連付けながら 300字

ヒントから芋づる(下線はリード文のヒント)

解答例

西ローマ帝国が滅亡して東ローマ皇帝が唯一の皇帝となり、首都のコンスタンティノープル教会が権威を高めた。ローマ教会はゲルマン人への布教に努めたがランゴバルドに苦しめられた。8世紀に皇帝レオン3世が聖像禁止令を発すると布教に聖像を使っていたローマ教会は新たな保護者を求め、カロリング朝のクーデタを承認する見返りに同王朝がランゴバルドから奪ったラヴェンナ地方を寄進され、これが教皇領の起源とされる。8世紀末の皇帝の内紛に乗じてローマ教会はカール大帝ローマ皇帝の冠を授け、フランク王国を保護者として東のローマ皇帝から自立した。11世紀半ばには双方が破門しあいローマ=カトリック教会とギリシア正教会に分裂した。300字

解答作成のポイント

1)時代と場所を~☝チェック!(以下略)

 2015年一橋大学、2023年大阪大学、2024年東京都立大学などで出題。西ヨーロッパ中世史の鉄板問題。

 設問に時代の指定がないが、最後が東西教会の分裂なので11世紀まで(ド忘れしても十字軍の目的が東西教会の統一だったのでそこから判断)。書き始めは「8世紀に力点を置いて」という指示から「聖像禁止令」「ピピンの寄進」「カールの戴冠」が必須なので、その伏線である「ゲルマン人布教」と「ローマに皇帝がいない」あたりの事情に触れてから8世紀の話につなげた。

2)設問の指示に沿って叙述する

 「聖像禁止令」「ピピンの寄進」「カールの戴冠」によってローマ教会がフランク王国という新たな世俗的後ろ盾を得て、東西教会が分立する様子を時系列で述べる。

 また「教皇領の形成と関連付けながら」なので、ローマ教会がランゴバルドの圧迫を受けていたこと、クーデタをローマ教会に承認してもらったピピンランゴバルドをやぶってその土地をローマ教会に寄進したこと、つまり教皇領の形成が両者の「持ちつ持たれつ」の象徴であることを論じる。

 解答例は「コンスタンティノープルの皇帝が唯一のローマ皇帝」というスタンスで作成している。最大シェアを誇った山川出版社の『詳説世界史B』は「西ヨーロッパ中心主義」「西方キリスト教中心主義」風味が強く、ビザンツ・東欧(この言い方にもは問題がある)は、悪い言い方をすると西欧史の「添え物」扱いだったが、世界史探究の教科書は他社と同様にユスティニアヌスの話がゲルマン人の移動後に来る。

カールの戴冠の背景

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復習

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(1) 植民市△こ

(2) ヘロドトス

(3) アウグストゥスオクタウィアヌス)(紀元後8年のローマの最高実力者)◎

(4) ミラノ勅令◎

(5) ハギア=ソフィア大聖堂◎

(6) ラテン帝国◎

(7) ティムール(1402年の会戦でオスマン帝国に勝利)◎

(8) ヤギェウォ(ヤゲウォ)朝〇や

(9) ロマノフ朝

(10) スウェーデン北方戦争でロシアに敗北)◎

(11) セヴァストーポリ◎

(12) プロイセン(第2回ポーランド分割はロシアとどこ)〇こ

(13)  (ア) サン=ステファノ条約◎ (イ) ビスマルク

解答のポイント

 ここは完クリ。「植民市」のド忘れと「ヤゲウォ朝」を緊張感の中で濁点を間違えないぐらい。

 (3)「アウグストゥス」は高校世界史では通常初代ローマ皇帝オクタウィアヌス)を指しますが、彼の後はローマ帝国の皇帝を示す最高の称号として用いられるようになりました。

 (12)は難関私立の四択間違い探しの定番で、オーストリアはこの時フランスとの戦争で手いっぱいで、プロイセンとロシアが第二次ポーランド分割を行いました。コシューシコの蜂起はこの時です。

ベラルーシ発行のコシューシコの切手。著作物ではない。

a ブルガリア帝国△こ b ライプニッツ△ぜ

(14) 三位一体説について簡潔に説明▲り

父なる神、子なるイエス聖霊は三つの位格であってひとつの実体であると考える。

(15)  (ア) フス◎ (イ) ウィクリフ

(16) イサベル◎

(17) リンネ〇こ

(18) フランス(18世紀末にスイスに侵攻してヘルヴぇティア共和国を建てた)〇り

(19) ムッソリーニ(ヴァチカン市国の独立を認めた)◎

(20) フランス学士院(アカデミー・フランセーズ)△こ

(21) ヴォルテール

(22) ラインラント◎

(23) 1960年(アフリカの年)◎

(24) アレクサンドル2世(ポグロムの引き金になった暗殺された皇帝)〇り

(25) ケロッグ◎(不戦条約のアメリカ合衆国側の代表)

解答のポイント

 難関私立の定番である文化史の突っ込んだところと「ブルガリア帝国」で差が出ます。とはいえ関関同立では見たことがあるものばかりです。

 (14)は正確に書くのは難しいですが、倫理の時間でやっているはず、たぶん。

 (18)、(24)はリード文のヒントから正解可能です。

 京都大学を受験する人は私立の併願は数学で受験するかもしれませんが、立命館大学の世界史はオール記述式でば権力に抵抗した人のオンパレード、同志社の世界史は京都大学で頻出の文化史やビザンツや東欧関連の問題が豊富なので練習(客観式空欄補充をすべて記述で答える)に最適です。

まとめ

  • 一問一答は各ブロック2ミス程度に抑えましょう。過去問だけでなく難関私立大学の問題に数多く当たりましょう
  • 授業で世界史の先生がする説明や何気ない小ネタがヒントになることが多いです。つまり「へぇー」と持った話が即座に記憶できる学生を京都大学は入学してほしいと思っています。特に権力に抗った人や融和に努めた人の話は大事です。授業はギラギラしながら臨みましょう
  • 論述は最近は周縁から歴史を見直すような出題が増加傾向です。他大学も同傾向なので、京大の過去問研究以外にも他の国立大学の論述や、難関私立大学の似た話題でリード文がしっかりしている問題にも取り組みましょう
  • 京都大学は新課程では「世界史探究」のみからの出題なので、この昔ながらの味が続くと考えられます

地図の答え

a:トレド b:コルドバ c:グラナダ d:マラケシュ

e:コンスタンティノープル f:アレクサンドリア g:カイロ h:ダマスクス

i:イェルサレム j:メディナ k:メッカ l:アデン m:バグダード

n:クテシフォン o:イスファハーン p:ヘラート q:ホルムズ

r:ブハラ s:サマルカンド