ぶんぶんの進路歳時記

学習方法、進路選択、世界史の話題について綴ります

国公立大学に出願する(4 割増率・辞退率・追加合格2023)

はじめに

 ぶんぶんの知り合いの高校は国公立大学の「合格者数」を近隣の進学校間で競い合い、共通テストは全員5教科7科目受験、前期も後期も公立中期も出願(その前に総合型や学校推薦型も出願)、前期に不合格で意中の私立大学に合格しても後期を受験するよう奨められると聞きます。

 私立志向の首都圏の方からは ( ゚д゚)ポカーン かもしれません。文科省はただでさえガラパゴスな共通テストに2025年から情報に国語の実用文を追加と、これでもかと国立志望者に難題を課す中でご苦労様です。

bunbunshinrosaijki.hatenablog.com

 さてほとんどの国公立大学は入学辞退者に備えて割り増し合格者を出し、辞退者が多ければ追加合格を出し、一部の大学では二次募集も行なわれます。

 今回は国立大学が公表している入試統計をもとに、『学研・進学情報』2023年度冬号の記事を著作権の範囲内で引用し(営業さんの許可は過去に確認済み)、国立大学の割増率・辞退率・追加合格について考察します。

 数値の間違いがあればごめんなさい。老眼なもので。🔍

学研の古い記事

http://www.gakuryoku.gakken.co.jp/pdf/articles/2015/12/p6-11.pdf

*『学研・進学情報』は2023年度から季刊(年4回発行)ですが、ぶんぶんは営業さんに「辞退率は必ずやって!」とおねだりしました。編集部のみなさん、ありがとうございました。

 会員になれば元記事を読むことができます。

www.gakuryoku.gakken.co.jp

目次

 

1 割増率

① 割増率の多い大学

大学名 募集人員 最終合格者数 合格者割増率 追加合格者数 入学辞退者数 入学辞退率
室蘭工業大 330 571 73.0% - 229 40.1%
北見工業大 286 491 71.7% 0 187 38.1%
滋賀大 550 722 31.3% - 114 15.8%
茨城大 1,278 1,630 27.5% ★8
(8)
280 17.2%
奈良教育大 215 272 26.5% - 25 9.2%
横浜国立大 1,347 1,678 24.6% - 254 15.1%
豊橋技術科学大 45 56 24.4% - 3 5.4%
福島大 655 812 24.0% - 90 11.1%
愛知教育大 599 741 23.7% - 35 4.7%
和歌山大 705 870 23.4% - 130 14.9%
宇都宮大 710 876 23.4% 1 69 7.9%
徳島大 870 1,072 23.2% * 135 12.6%

参考 2022年度

  大学名 募集人員 最終合格者数 合格者割増率 追加合格者数 入学辞退者数 入学辞退率
1 北見工業大 286 506 76.9% 0 221 43.7%
2 室蘭工業大 330 498 50.9% -  161 32.3%
3 愛知教育大 599 813 35.7% 1 45 5.5%
4 横浜国立大 1,332 1,712 28.5% -  289 16.9%
5 茨城大 1,278 1,642 28.5% -  284 17.3%
6 滋賀大 550 700 27.3% -  107 15.3%
7 山梨大 587 739 25.9% ★17
(1)
75 10.1%
8 奈良教育大 215 265 23.3% -  18 6.8%
9 徳島大 862 1,055 22.4% ★*
(2)
164 15.5%
10 埼玉大 1,369 1,669 21.9% 6 244 14.6%
11 鳴門教育大 83 101 21.7% 2 9 8.9%

追加合格の欄の★は追加合格者数(*は最終合格者数に追加合格者数を含む大学)、下段の( )が二次募集での合格者数で上段の内数。ーは記載なし。

② 考察

 毎年北見工業大学室蘭工業大学が割増率、辞退率のツートップで、今年は室蘭工業大学がトップに躍り出ました。ロケットの研究で有名です。

muroran-it.ac.jp

 2大学以外では、合格しても私立に手続してしまう受験生が多い滋賀大学横浜国立大学、さらに地方国立大学が続きます。これらは業者の合否予想システムでボーダーラインよりやや下でも爪の先がひっかかる可能性があるので、判定システムとにらめっこする暇があったら勉強しましょう。

shigureni free illust より

www.shigureni.com

2 辞退率

①辞退率の高い大学

大学名 募集人員 最終合格者数 合格者割増率 追加合格者数 入学辞退者数 入学辞退率
室蘭工業大 330 571 73.0% - 229 40.1%
北見工業大 286 491 71.7% 0 187 38.1%
茨城大 1,278 1,630 27.5% ★8
(8)
280 17.2%
滋賀大 550 722 31.3% - 114 15.8%
鳥取 906 1,098 21.2% 5 171 15.6%
横浜国立大 1,347 1,678 24.6% - 254 15.1%
和歌山大 705 870 23.4% - 130 14.9%
宮崎大 815 983 20.6% - 145 14.8%
佐賀大 936 1,140 21.8% - 157 13.8%
埼玉大 1,370 1,593 16.3% 18 204 12.8%
徳島大 870 1,072 23.2% * 135 12.6%
富山大 1,411 1,669 18.3% ★27
(6)
201 12.0%

辞退のあった学部学科(鳥取、埼玉は前期後期合計)

大学名 募集人員 最終合格者数  前期(学部・人数)  後期
(学部・人数)
室蘭工業大 330 571 理工24 理工205
北見工業大 286 491 工105 工82
茨城大 1,278 1,630 人文社会科学38,教育8,理12,工44,農14 人文社会科学40,教育7,理29,工78,農10
滋賀大 550 722 教育11,経済35,データサイエンス6 教育5,経済50,データサイエンス7
鳥取 906 1,098 地域19,医(医)8,医(生命科学)9,医(保健)5,工113,農17  
横浜国立大 1,347 1,678 教育4,経済29,経営47,理工25,都市科学12 経済36,経営15,理工74,都市科学12
和歌山大 705 870 教育4,経済24,システム工13,観光6,社会インフォマ3 教育6,経済26,システム工48
宮崎大 815 983 教育4,医(医)2,医(看護)6,工25,農15,地域資源創成1 教育2,医(医)2,医(看護)2,工54,農30,地域資源創成2
佐賀大 936 1,140 教育3,芸術地域デザイン4,経済21,医(医)1,医(看護)4,理工17,農3 教育7,芸術地域デザイン5,経済38,医(医)2,医(看護)2,理工38,農12
埼玉大 1,370 1,593 教養19,経済55,教育25,理347,工58  
徳島大 870 1,072 総合科学9,医(医)2,医(医科栄養・保健)3,歯1,理工35.生物資源産業7 総合科学13,医(保健)4,歯2,薬10,理工42.生物資源産業6
富山大 1,411 1,669 人文7,教育5,経済29,理19,医(医)4,医(看護)7,薬4,工24,芸術文化6,都市デザイン9 人文6,教育3,経済18.理18,医(看護)4,薬5,工18,芸術文化10,都市デザイン5

参考 2022年度

no 大学名 募集人員 最終合格者数 合格者割増率 追加合格者数 入学辞退者数 入学辞退率
1 北見工業大 286 506 76.9% - 221 43.7%
2 室蘭工業大 330 498 50.9% -  161 32.3%
3 茨城大 1,278 1,642 28.5% -  284 17.3%
4 横浜国立大 1,332 1,712 28.5% -  289 16.9%
5 和歌山大 720 867 20.4% 6 141 16.3%
6 徳島大 862 1,055 22.4% ★*
(2)
164 15.5%
7 滋賀大 550 700 27.3% -  107 15.3%
8 佐賀大 938 1,126 20.0% -  169 15.0%
9 埼玉大 1,369 1,669 21.9% 6 244 14.6%
10 宮崎大 815 986 21.0% -  134 13.6%
11 鳥取 907 1,079 19.0% 5 137 12.7%
12 福井大 675 788 16.7% 10 96 12.2%
13 京都工芸繊維大 503 600 19.3% 14 73 12.2%
14 上越教育大 110 132 20.0% -  16 12.1%
15 福島大 655 794 21.2% -  95 12.0%

 割増率が高い大学は辞退率も高いです。

 大都市圏とその近郊の大学では経済の辞退者が目立ちます。私立の難関経済学部は「就職に強い」を前面に出しているので、そちらに手続したと考えられます。

 大都市圏から遠い地方国立大学の理系は国立至上主義校のターゲットで(共通テストが6割を切っても合格する)、受験生は教員に進められて合格はしたものの私立に進学または浪人、合格者と進学者の数の差が著しい高校をぶんぶんは複数知っています。

 なおぶんぶんの高校は「出願すればそこが第一志望」という指導を徹底しているので、国立に合格した人はほぼ手続し、楽しく大学生活を送っています。

パブリックドメインQより

②辞退率の低い大学

大学名 募集人員 最終合格者数 合格者割増率 追加合格者数 入学辞退者数 入学辞退率
京都大 2,660 2,709 1.8% 0 8 0.3%
東京大 2,960 2,997 1.3% - 15 0.5%
東京藝術大 471 470 -0.2% - 3 0.6%
一橋大 880 945 7.4% - 9 1.0%
鹿屋体育大 85 99 16.5% 0 1 1.0%
東京工業大 930 966 3.9% - 12 1.2%
大阪大 2,878 3,018 4.9% 2 42 1.4%
岡山大 1,467 1,664 13.4% 2 30 1.8%
名古屋大 1,736 1,781 2.6% 2 39 2.2%
宮城教育大 244 271 11.1% - 6 2.2%

参考 2022年度

大学名 募集人員 最終合格者数 合格者割増率 追加合格者数 入学辞退者数 入学辞退率
東京藝術大 471 471 0.0%   0 0.0%
長岡技術科学大 50 58 16.0%   0 0.0%
東京大 2,960 2,997 1.3%   13 0.4%
京都大 2,677 2,743 2.5%   12 0.4%
一橋大 885 958 8.2%   11 1.1%
大阪大 2,878 3,102 7.8% 4 48 1.5%
東京工業大 930 973 4.6%   16 1.6%
宮城教育大 244 278 13.9%   5 1.8%
名古屋大 1,739 1,813 4.3%   35 1.9%

③ 考察

 2023年は辞退者は前年から544名減少しました。81大学のうち辞退者が減った大学は56大学です。2022年の共通テストに嫌気がさして早々に進学先を決める生徒がいる中で、我慢して国立を目指した受験生が数学の易化でそこそこの持ち点となり、行きたい大学にチャレンジした結果と考えます。

 では国立大学の人気が回復したのかというと、そうともいえません。

国立大学(前期・後期)の志願者数と辞退者数

入学年度 志願者 辞退者
2019 330,153 6,881
2020 307,192 7,703
2021 295,931 7,991
2022 302,953 7,329
2023 298,305 6,785

 18歳人口が減っていることもあり志願者が前年度より4,648名と減少しています。また前期日程で募集人数と同じまたは下回ったのが11大学23コース(2022年度は9大学12コース)にのぼりました。

 そのうち以前から受験者が限定されるので定員割れを起こしがちな教員養成課程の音楽・美術・技術が計14コース、それ以外の教員養成課程では岩手(教育)数学、秋田(教育)英語、鳴門教育(教育)英語と主要教科でも定員割れです。

 文系では専攻チキンレースで有名な大阪(外国語)インドネシア語が定員10名ピッタリの出願(全員合格)、理系では筑波(医・全国枠)医、山形(工)高分子・応用化学・バイオ科学が定員ギリまたは定員割れで、山形大学の工学部は辞退者も出て二次募集で合計68名の合格者を出しました。

 なおこれらの大学は2024年度は「隔年現象」で受験生が殺到する可能性が濃厚なので注意してください。教育学部は、文科省が「教員の魅力発信」などのごまかしばかりで労働環境を改善する気がないので、定員割れは当然です。

 一方辞退率が低いのは第一志望者しか来ない東京藝術大学や前期のみの旧帝大で、後期を実施する北海道・九州も辞退者が減りました。岡山大学は後期廃止で辞退者が減りました。

 後期で多く辞退者を出す京都工芸繊維大学は前期の辞退者1名という愛されっぷりです。このため2025年度からは後期を廃止し前期と学校推薦の定員を増やします。

 2025年度入試から共通テストの負担が増加します。地方国立大学相応の生徒に影響が大きいと考えます。難関大学は精鋭の激戦、一方地方国立大学は低倍率や定員割れという二極分化が危惧されます。(´・ω・`)

3 追加合格  

① 追加合格の多い大学

大学名 募集人員 最終合格者数 合格者割増率 追加合格者数 入学辞退者数 入学辞退率
筑波大 1,475 1,606 8.9% 64 104 6.5%
新潟大 1,631 1,862 14.2% 58 193 10.4%
北海道大 2,319 2,545 9.7% 24 116 4.6%
愛媛大 1,236 1,447 17.1% ★24
(2)
134 9.3%
富山大 1,411 1,669 18.3% ★27
(6)
201 12.0%
埼玉大 1,370 1,593 16.3% 18 204 12.8%
金沢大 1,537 1,699 10.5% 15 83 4.9%
信州大 1,639 1,849 12.8% 15 175 9.5%
鹿児島大 1,506 1,726 14.6% 15 138 8.0%

★は追加合格の総数で( )内は2次募集の合格者で内数。愛媛は22名、富山は21名が追加合格。

  地方の国立大学は辞退者を見越して定員の1.10~1.20倍を取り、辞退者が多ければさらに追加合格を出して最終的に全定員の1.05倍以内に収める、という戦略です。

 首都圏私立大学の併願先である筑波、信州、新潟は例年水増し合格は少ないかわりに追加合格を出す戦術です。プライド?

 なお医学部は国からの予算が大きいため、定員を下回ると予算を適切に執行していないことになるので、できるだけ定員に近づくように、欠員が出た数だけ追加合格を出しています。

  追加合格の有無は各大学のHPに告知されます。3月26日以降は携帯電話を肌身離さず持ち歩きましょう。すでに他の国公立大学に手続きしている人、当該大学を前期や後期で振った人は対象外です。

  「きたっ!」と思ったらセールスの電話…。

 

③ 具体例

信州大学 令和6年度入試一般選抜募集要項より

9 追加合格

 入学手続終了後、欠員が生じた場合は追加合格を行うことがあります。追加合格者には3月28日(木)から3月31日(日)までの間に出願確認票に記載されている「受
信場所(志願者連絡先)」へ電話により直接連絡しますので、直ちに電話連絡がとれるようにしておいてください。なお、本学からの連絡の際、再度にわたる電話連絡にもかかわらず、追加合格候補者が不在等のため、本人の意思確認ができなかった場合や、すみやかに意思表明されなかった場合は、入学の意志がないものとして取り扱うことがあります。

(注1)他の国公立大学への入学手続を完了した方は、それを取り消して本学の追加合格による入学手続を行うことはできません。

(注2)本学の前期日程・後期日程の合格者で、それぞれの入学手続期間内に入学手続を行わなかった方は、追加合格の対象とはしません。

 3月27日(水)入学手続締切後から3月31日(日)までインターネットで追加合格実施状況をお知らせします。詳しくは18ページの「12 インターネットによる情報提供について」を参照してください。

 ※必要に応じて第2次募集を行うことがありますので、ご留意ください。 

 電話に出ないと次の人に権利がいく(テレビの懸賞?)みたいです。速やかな意思表示が必要なので、保護者と事前に相談しておきましょう

 すでに私立に二次手続き(授業料その他)している場合、返還手続きをすれば入学金以外は戻ってきますが、先に国立に振り込むお金が必要になります。

4 第二次募集 

① 二次募集を実施した大学

大学名 募集人員 最終合格者数 合格者割増率 追加合格者数 入学辞退者数 入学辞退率
北海道教育大 923 1,027 11.3% ★-
(6)
84 8.2%
山形大 1,160 1,339 15.4% ★66
(62)
127 9.5%
茨城大 1,278 1,630 27.5% ★8
(8)
280 17.2%
富山大 1,411 1,669 18.3% ★27
(6)
201 12.0%
福井大 675 762 12.9% ★29
(18)
71 9.3%
島根大 774 896 15.8% ★14
(9)
74 8.3%
愛媛大 1,236 1,447 17.1% ★24
(2)
134 9.3%
長崎大 1,240 1,424 14.8% ★12
(7)
109 7.7%

★は追加合格の合計 カッコ内が2次募集での合格者で内数。ーは追加合格の記載なし。

② 考察

 山形大学工学部の定員割れは尋常ではなく、二次募集で合計62名の合格者を出しています。また長崎大学が力を入れている多文化共生学部も痛恨の定員割れです。

   このように追加合格を含めてもなお定員が埋まらない大学は、後期の手続き後に欠員補充のための第二次募集が発表されます。

 ただし希望の学部学科がないと思ってください。また基本共通テストのみでの合否判定なので、持ち点が低くて全滅した人はノーチャンスです。

 出願には共通テスト成績請求票の二次募集用が必要です。怒りに任せて受験票や成績請求票を捨てたりしませんよね?また出願書類は直接大学へ持参します。

 

まとめ

  • 国立大学は辞退者を見越してあらかじめ定員より多めに合格者を出す
  • 辞退者が予想以上だと追加合格を出す
  • それでも定員割れすると二次募集を行うが共通テストの結果で判定
  • 首都圏は私立大学志向で準難関の国立大学さえ「すべり止め」扱い
  • 地方の国立大学は合格者の割増率が高い
  • 第一志望者で占められる大学は辞退が少なく水増しも追加合格も見込めない
  • 2025年度の共通テストから負担が激増し、特に地方国立大学相応の受験生がそれを嫌って年内入試を志向する可能性あり

おわりに

 「合格して辞退するつもりなら最初から受験しないで私に席を譲ってよ!」と思いますが、「できる人は総取り、できない人は全滅」が受験の世界の掟です。私たちはそういうシビアな世界にいるのです。

 勝ち抜くためには勉強しかありません。最後まで気持ちを切らさず受験し、運が巡ってきたらつかみましょう。チャンスの女神は前髪しかありません