ぶんぶんの進路歳時記

学習方法、進路選択、世界史の話題について綴ります

国公立大学に出願する(4 割増率・辞退率・追加合格2020)

はじめに

 ぶんぶんの知り合いの高校は「国立至上主義」で、国公立大学の合格者数を近隣の進学校間で競い合っています。

 そうした高校では共通テストは全員5教科7科目受験、難関私立大学に合格しても国立大学を最後まで受験するよう強く奨められると聞きます。

 私立大学志向の首都圏の方からは (つд⊂)ゴシゴシ (;゚ Д゚) …!?かもしれません。

 さてほとんどの国公立大学は入学辞退者に備えて割り増し合格者を出し、辞退者が多ければ追加合格を出し、さらに一部大学では再募集も行なわれます。国立(以下略)の高校には朗報です。

 今回は国立大学が公表している入試統計をもとに、『学研・進学情報』2020年12月号の記事を著作権の範囲内で引用し(営業さんの許可は前回確認済み)、国立大学の割増率・辞退率・追加合格について考察します。 

    学研の古い記事はウェブ上で閲覧できます。

http://www.gakuryoku.gakken.co.jp/pdf/articles/2015/12/p6-11.pdf

http://www.gakuryoku.gakken.co.jp/pdf/articles/2013/11/p6-11.pdf

*前回の記事をリニューアルしました。

*志望大学のデータは各自で確認してください。

目次

  

1 割増率 

① 割増率の高い国立大学

参考:大学のHP 学研の前掲書 以下同じ

      2020年度 2019年度
  大学名 募集人員 最終合格者数 合格者割増率 追加合格者数 入学辞退者数 入学辞退率 合格者割増率
1 北見工業大 307 664 116.3% 0 372 56.0% 86.6%
2 室蘭工業大 339 435 28.3%   87 20.0% 28.9%
3 横浜国立大 1,366 1,745 27.7% 0 287 16.4% 24.5%
4 茨城大 1,313 1,659 26.4%   298 18.0% 27.9%
5 高知大 707 890 25.9% 18 155 17.4% 20.7%
6 鳴門教育大 83 103 24.1% 2 9 8.7% 16.9%
7 鹿屋体育大 85 105 23.5% 0 7 6.7% 16.5%
8 佐賀大 935 1,147 22.7%   153 13.3% 22.6%
9 滋賀大 578 708 22.5%   126 17.8% 20.8%
10 徳島大 859 1,050 22.2% 169 16.1% 21.0%
11 京都工芸繊維大 503 607 20.7% 17 80 13.2% 20.9%
12 山形大 1,152 1,383 20.1% 7 131 9.5% 20.1%
13 宇都宮大 712 851 19.5% 6 103 12.1% 18.2%
14 埼玉大 1,369 1,632 19.2% 24 228 14.0% 19.4%
15 電気通信大 620 738 19.0%   53 72.0% 11.8%

*は追加合格が最終合格者に含まれているか不明な大学。

② 考察

 割増率、辞退率ともにぶっちぎりの北見工業大学は1960年設置の短期大学が前身、日本で最も北にある国立大学で、寒冷地の産業を支える人材育成を目標にしています。

    後期に学科試験を課して定員も多め、地方試験会場があることから、国立(以下略)の先生が持ち点から後期を出す大学に困る生徒に受験を勧め、合格しても辞退する(つまり一度も現地に行かない)という例をいくつも知っています。

    私の知り合いは入学し、トランポリン競技部に所属するなど充実したキャンパスライフを送ったそうです。住めば都です。

 

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www.kitami-it.ac.jp

 

2 辞退率

① 辞退率の高い国立大学

  大学名 募集人員 最終合格者数 追加合格者数 入学辞退者数 入学辞退率 2019年度入学辞退率
1 北見工業大 307 664 0 372 56.0% 47.5%
2 室蘭工業大 339 435   87 20.0% 22.2%
3 茨城大 1,313 1,659   298 18.0% 17.7%
4 滋賀大 578 708   126 17.8% 14.9%
5 高知大 707 890 18 155 17.4% 11.8%
6 横浜国立大 1,366 1,745 0 287 16.4% 15.5%
7 徳島大 859 1,050 169 16.1% 12.7%
8 和歌山大 748 875 7 131 15.0% 9.9%
9 帯広畜産大 195 227 9 34 15.0% 5.2%
10 山梨大 655 755 18 108 14.3% 12.1%
11 埼玉大 1,369 1,632 24 228 14.0% 14.0%
12 東京医科歯科大 229 267 37 13.9% 11.0%
13 佐賀大 935 1,147   153 13.3% 14.1%
14 旭川医科大 104 120 16 16 13.3% 2.8%
15 京都工芸繊維大 503 607 17 80 13.2% 12.5%
16 宮崎大 835 955   126 13.2% 14.3%

② 辞退の内訳(日程別・学部別)

  大学名 入学辞退者数 辞退者前期
(学部・人数)
辞退者後期
(学部・人数)
1 北見工業大 372 工172 工200
2 室蘭工業大 87 工29 工58
3 茨城大 298 人文社会科学46,教育4.理15.工43,農17 人文社会科学45,教育10,理18,工66,農34
4 滋賀大 126 教育11,経済30,データサイエンス5 教育8,経済66,データサイエンス6
5 高知大 155 人文社会科学33,教育7,理工11,医(医)3,農林海洋科学20,地域協働2 人文社会科学29,教育2,理工24.医(看護)4,農林海洋科学20
6 横浜国立大 287 教育9,経済31.経営57,理工30,都市科学18 経済26,経営17.理工76,都市科学23
7 徳島大 169 総合科学12,医(医)4.医(医科栄養)2,医(保健)8,歯6,薬6,理工34,生物資源産業2 総合科学7.医(保健)4,歯6.薬16,理工52,生物資源産業10
8 和歌山大 131 教育6,経済24,システム工17,観光2 教育9,経済19,システムエ46.観光8
9 帯広畜産大 34 共同獣医2,畜産8 共同獣医2、畜産22
10 山梨大 108 教育3,医(看護)6,工30,生命環境27 教育3.医(医)18,医(看護)2.工11.生命環境8
11 埼玉大* 228 教養22,経済69.教育29,理38,工70 *前期後期の合計数 
12 東京医科歯科大 37 医(医)14,医(保健衛生)6,歯14 医(医)1,歯2
13 佐賀大 153 教育4,芸術地域デザイン3,経済28,医(看護)4,理工16,農5 教育10,芸術地域デザイン7,経済29.医(看護)3,理工32,農12
14 旭川医科大 16 医1,看護2 医7,看護6
15 京都工芸繊維大 80 工芸科学3 工芸科学77
16 宮崎大 126 教育10,医(医)1,医(看護)2.工24.農18,地域資源創成8 教育6,医(医)2,医(看護)1.工28,農23,地域資源創成3

③ 考察

 もともと辞退率が高い大学で昨年度はさらに辞退率が上がっています

    室蘭工業大学日中戦争期に増設された官立工業学校が起源で、戦後は北海道随一の工業都市である室蘭の人材育成を支えました。航空・宇宙分野などで注目すべき研究を行なっていて辞退するのはもったいない大学です。

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www.muroran-it.ac.jp

    割増率、辞退率ともに大きいのは「旧二期校」(共通一次実施前は「一期校」と「二期校」にグループ明けされ二期校は後の受験)に多いです。

 国立大学、特に理系だと研究内容はそう大きく変わらない(予算は違う)ので、これら大学は難関、準難関大学第一志望者が一次試験で点数が取れなかった時の志望変更先として国立(以下略)の先生が勧めます。

 また難関は前期のみ、準難関の後期は狭き門に対して、これら大学は比較的後期の定員が多く、後期の出願先として選ばれます。

 滋賀大学の経済学部は老舗ですが、前期神戸で後期滋賀、または一次の点数が足りず前期から滋賀という人が併願で同志社に合格するとそっちへ手続きしたくなります。

 横浜国立大学や地方国立大学も同様で、横国文系は首都圏の難関私立に、地方国立は国立(以下略)の出願指導で受験したものの通える地元の私立に手続したくなります。

 京都工芸繊維大学の後期には前期阪大残念組が来ます。辞退が多いのは彼らが浪人を選択するからでしょう。一方前期の辞退はごく少数なのでファンは多いといえます。総合型選抜の「ダヴィンチ入試」は高倍率と聞いています。 www.kit.ac.jp

*発展:前期不合格の生徒に「後期も受験しろ」と言っておきながら、合格したら「浪人して難関国立を目指せ」という先生がいます。浪人の国立合格者数も次年度の合格者数にカウントされます。┐(´д`)┌ 

 もちろん納得いくまでチャレンジするのは個人の自由ですから応援します。

④ 参考 辞退率の低い大学

大学名 募集人員 最終合格者数 合格者割増率 追加合格者数 入学辞退者数 入学辞退率 辞退者前期
(学部・人数)
京都大 2,678 2,725 1.8% 0 6 0.2% 法1,経済(文系)1,理1,工3
東京芸術大 471 471 0.0%   1 0.2% 音楽1
東京大 2,960 3,010 1.7%   18 0.6% 文Ⅰ1,文Ⅱ1,文Ⅲ1,理Ⅰ9,理Ⅱ6
一橋大 885 947 7.0%   9 1.0% 商1,経済2,社会1
東京工業大 935 980 4.8%   12 1.2% 理1,工2,物質理工1,生命理エ2,環境・社会理工2
滋賀医科大 110 112 1.8%   2 1.8% 医(医)1,医(看護)1
名古屋大 1,739 1,806 3.9%   32 1.8% 文1,教育3,法2.経済4.情報2,理2,医(保健)7,工8,農3
大阪大 2,878 3,107 8.0% 5 66 2.1% 文3,人間科学3,外国語31.法1,経済9,理3,医(医)1,医(保健)3,歯1,工8,基礎工3
京都教育大 197 214 8.6%   5 2.3% 教育4

 当然ですが、第一志望の生徒が集まる大学は辞退率が低いです。

 大阪大学国語学部(旧大阪外国語大学)の辞退者数31名が突出しています。追加合格の5名のうち4名が外国語学部です。

 いわゆる「マイナー言語」はセンター76%から勝負できます。阪大の出願速報を注視していると、締め切り直前まで「倍率の低い専攻探し」をしている受験生がいるように思えます。チキンレース

これ何か違う…。

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3 追加合格  

 ① 追加合格を多く出した大学

大学名 募集人員2020年度 最終合格者数 追加合格者数 入学辞退者数 入学辞退率 2019追加合格者数 2019入学辞退者数 2019入学辞退率
新潟大 1,667 1,923 76 209 10.9% 9 125 6.4%
信州大 1,673 1,904 40 249 11.4% 47 220 11.4%
筑波大 1,484 1,590 40 92 5.8% 44 99 6.1%
愛媛大 1,255 1,440 38 137 9.5% 63 146 9.9%
香川大 848 959 31 103 10.7% 5 83 9.0%
埼玉大 1,369 1,632 24 228 14.0% 12 229 14.0%
金沢大 1,571 1,722 20 93 5.4% 23 99 5.8%
高知大 707 890 18 155 17.4% 1 101 11.8%
山梨大 655 755 18 108 14.3% 20 92 12.1%
群馬大 728 859 18 106 12.3% 5 106 11.7%

② 追加合格内訳(日程別・学部別)

大学名 追加合格者数  前期
(学部,人数)
 後期
(学部,人数)
新潟大 76 経済科学16,医(医)1,医(保健)3,歯6 経済科学48,医(保健)2
筑波大 40 人文・文化5,社会・国際7,人間2,理工12,医(医)4,医(保健)1 生命環境2,理工7
信州大* 40 経法4,理9,医(医)6,医(保健)4,工16,農1 *前期後期の合計 
愛媛大 38 社会共創4,工2 法文4,教育1.医(医)5,工22
香川大 31 医(医)3,創造工26 医(医)2
埼玉大 24 教育7,理3,工14  
金沢大 20 医(医)2 文系一括1,理系一括17
群馬大 18 医(医)5,医(保健)2,理工8 医(保健)3
山梨大 18 医(看護)3 医(医)13,生命環境2
高知大 18 理工2,医(医)3,農林海洋科学4 理工7,医(看護)2

③ 考察

  地方の国立大学は辞退者を見越して定員の1.10~1.20倍を取り、辞退者が多ければさらに追加合格を出して最終的に全定員の1.05倍以内に収める、という戦略のようです。

 今年大きく辞退者を出したのが新潟大学です。学研は「経済学部を経済科学部に学科改組をした結果、関東圏からの受験者が安全志向で増加した」と分析しています。彼らが首都圏の私立に合格して辞退したと考えられます。

 同じく東京から新幹線一本で行ける信州大学も「県外受験者が第一志望者を蹴落として辞退する」攻撃を受けるみたいで、毎年追加合格を出しています。

 なお医学部は国からの予算が大きいため、定員を下回ると予算を適切に執行していないことになるので、できるだけ定員に近づくように、欠員が出た数だけ追加合格を出しています(学研、前掲書)。

  追加合格があるかどうかは各大学のHPに告知されます。3月26日以降は携帯電話を肌身離さず持ち歩きましょう。保護者とは事前に相談しておきましょう。

 

4 第二次募集 

    追加合格を含めてもなお定員が埋まらない大学は、おおむね3月26日ぐらいに欠員補充のための第二次募集が発表されます。

    こちらも大学のHPで告知があります。文科省がまとめたものを発表しますし、リセマムさんは早いです。ただし希望の学部学科はあるとは限りません。

昔の記事

resemom.jp

 

5 分析

 2020年度入試で地方国公立大学で辞退率や追加合格が上昇したのはポンコツ入試改革」が原因だと考えます。

 センター試験最後の年で、浪人したくない受験生がセンターの点数で超安全志向で出願したものの本意ではない、一方で私立大学の定員管理厳格化は落ち着き、偏差値上位校の競争が緩和、合格者を多く出しました。

 したがって、私立大学と併願関係が強い首都圏周辺の国立大学と、国立大学の合格者数重視の進学校が好んで受験する地方国立大学の合格者が志望順位の高い私立大学に手続きしたことが、辞退者数増加の原因と推測します。  

6 まとめ

  • 国立大学は辞退者を見越してあらかじめ定員より多めに合格者を出す。
  • 辞退者が予想を超えて多いと追加合格を出す。
  • 首都圏近郊の私立>国立的ポジションの国立大学は私立大学に合格して辞退する生徒が多い。
  • 地方の国立大学には高校の出願指導で県外受験生が多く、合格しても辞退することがある。
  • 以上のようなポジションの大学は合格者水増し率が高い。
  • 第一志望者がほとんどの大学は水増しも辞退も追加合格も見込めない。

  家の事情で「どうしても国立」という受験生は、その研究内容が自分のしたいことか調べて、納得して前期も後期も受験しましょう。

 自分の第一志望が「合格しても辞退する受験生に狙われやすい大学」の場合は「負けるわけにはいきません!」(デジャヴュ?)という強い意志で準備しましょう。

おわりに 

 合格しても辞退するなら最初から受験しないで私の高校の生徒に席を譲ってよ!と思いますが、「できる人は総取り、できない人は全滅」が受験の世界の掟です。

    私たちはそういうシビアな世界にいるのです。

 ここで勝ち抜くためには勉強しかありません。最後まで気持ちを切らさず受験し、運が巡ってくるのを待ちましょう。チャンスの女神は前髪しかありません。