ぶんぶんの進路歳時記

学習方法、進路選択、世界史の話題について綴ります

どうなる?2021年度入試とコロナ禍対応(⑤国公立大学出願動向・二次試験)

はじめに

 何かと物議を醸した大学入学共通テスト、2月5日に国公立大学の出願が締め切られました。まずは前期入試突破が目標です。

 国公立大学は受験機会が限られているため、受験生は自己採点の結果をもとに三者懇談を行い、より合格可能性の高い大学への出願を検討します。

 国立至上主義高校の担任はパソコンをパチパチたたいて、「○○大学ならB判定だ」「業者の話では○○大学は人気薄だからねらい目だ」と言って、生徒の国公立大学合格を支援します。

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*ただしそれは「自称進学校」(校名は問わず国公立大学の合格者数だけ欲しい)の話で、東大合格者数を看板にする高校は「飽和攻撃」(落ちたら浪人)をかけると聞きます。 

 しかしこの情報は月曜日の「人気投票」です。本日は2月5日10時現在の出願状況をもとに予備校の分析を検証し、2021年度の国公立入試の行方を占います。

 数値はまだ確定ではありません。ご了解ください。

参考 リセマムさん

resemom.jp

各大学の出願状況リンク 河合塾

www.keinet.ne.jp

前回

bunbunshinrosaijki.hatenablog.com


 目次

 

 1 自己採点結果のおさらい

① 自己採点 総合成績平均

  河合塾 ベネッセ・駿台
2021 2020 2021 2020
5教科7科目文系(900) 549 547 2 551 548 3
5教科7科目理系(900) 558 552 6 561 559 2

② 科目ごとの平均点

  業者の分布表では、理系で8割越えが減少する一方で6割~7割が膨張しています(文系は9割越えが減っている以外は去年並み)。

河合塾の説明会より引用。営業さんの許可をいただいています。

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③ 予備校の分析

  1. 難関10大学を志望欄に書いている人は増加
  2. 大都市圏は例年並み、甲信越、中国・四国の大学を書いている人が少なめ
  3. 人文と社会学系統が人気薄、前評判で人気薄の法学、経済学は回復
  4. 教員養成課程は安定の人気薄
  5. 工学部は情報系統の人気が継続、農学部は戻してきた
  6. 医療系では医学科、薬学部、生活科学は食物栄養が人気

2 出願状況

① 全体

 2021年度国公立大学の二次試験志願者数は、2月5日午前10時現在で募集人員9万8,920人に対し志願者数が38万1,350人、志願倍率が3.9倍です。

 2020年度の確定志願者数は43万9,565人で倍率は4.4倍、0.5ポイントの減少です。

文科省発表(リセマムさんのHPも参考)を加工

    2021年度 2020年度
    募集人員 志願者数 倍率 募集人員 志願者数 倍率
国立 前期 63,669 162,697 2.6 63,828 182,772 2.9
後期 13,190 105,545 8.0 14,168 124,420 8.8
公立 前期 16,210 50,715 3.1 16,223 60,280 3.7
後期 3,487 37,102 10.6 3,572 40,667 11.4
中期 2,364 25,291 10.7 2,355 31,426 13.3
合計 前期 79,879 213,412 2.7 80,051 243,052 3.0
後期 16,677 142,647 8.6 17,740 165,087 9.3
中期 2,364 25,291 10.7 2,355 31,426 13.3
合計 98,920 381,350 3.9 100,146 439,565 4.4

 第一志望(のはず)の前期は約3万人の減少、共通テスト出願者2万人減より減っています。私立大学のために共通テストを受験する人もいるので順当な数です。

 公立中期が減っています。前期不合格で中期・後期合格という一粒で二度おいしいことがあるので国立至(以下略)は公立中期押しなのですが。

② 系統別

文科省発表を加工 矢印1本分が0.5ポイントのアップまたはダウン

    2021年度 2020年度  
    募集人員 志願者数 倍率 募集人員 志願者数 倍率 増減
人文社会 国立 18,282 63,851 3.5 18,741 74,484 4.0
公立 8,422 41,730 5.0 8,541 53,687 6.3 ↓↓
合計 26,704 105,581 4.0 27,282 128,171 4.7
理工 国立 31,298 108,615 3.5 31,761 122,129 3.8  
公立 4,267 27,312 6.4 4,273 31,779 7.4 ↓↓
合計 35,565 135,927 3.8 36,034 153,908 4.3
国立 5,442 17,760 3.3 5,562 19,072 3.4  
公立 897 4,406 4.9 904 4,938 5.5
合計 6,339 22,166 3.5 6,466 24,010 3.7  
医歯 国立 7,014 28,069 4.0 7,128 32,812 4.6
公立 913 3,665 4.0 933 3,543 3.8  
合計 7,927 31,734 4.0 8,061 36,355 4.5
薬看護 国立 1,071 4,166 3.9 1,070 4,396 4.1  
公立 3,935 18,899 4.8 3,770 20,215 5.4
合計 5,006 23,065 4.6 4,840 24,611 5.1
教員養成 国立 9,375 29,458 3.1 9,662 34,738 3.6

 人文・社会系は予想通り減っています。ポンコツ入試改革とコロナ禍のせいで私立大学に行ったのでしょうか。

 理学部、工学部の志願者が減っています。特に公立の減りが激しいのは中期が関係しているかもしれません。医。薬は浪人が減ったため競争が緩和しています。

③ 大学別トピック

1)難関10大学(旧帝大+東工 一橋 神戸)

北海道大学神戸大学が2月4日現在 他は2月5日現在

  2021年度 2020年度  
募集人員 志願者数 倍率 募集人員 志願者数 倍率 増減
北海道 2,416 8,302 3.4 2,428 9,752 4
東北 1,693 5,750 3.4 1,761 5,738 3.3  
東京 2,960 9,020 3.0 2,960 9,259 3.1  
名古屋 1,739 4,281 2.5 1,739 4,477 2.6  
京都 2,658 7,405 2.8 2,665 7,699 2.9  
大阪 2,878 6,991 2.4 2,878 7,462 2.6  
九州 2,251 7,509 3.3 2,335 7,241 3.1  
東工 930 3,638 3.9 935 4,302 4.6
一橋 885 3,596 4.1 885 3,565 4  
神戸 2,301 9,659 4.2 2,311 9,315 4  

 出願者は例年並みです。

 このクラスは実力者ぞろいなので、二次試験で一発逆転は難しい(数学で一発当てるぐらい)、ワンミスで合格圏外という「守り」の戦いです。

 河合塾の「絶対領域」にある名古屋大学は東海圏(ほぼ愛知と岐阜)出身者7割という超内向きな大学です。業者は「理学部は京都大学からの流入注意」と言っていましたが、京都は昨年度より受験者増、名古屋は受験者減です。

2)準難関・拠点大学

 筑波大学学群選抜に加えて総合選抜(文系 理系Ⅰ~Ⅲ)を導入しました。去年の志願者と総合+学群の前期志願者数(体育以外)を比較すると、学群で減った分が総合選抜に回って全体では微減にとどまっています。

 金沢大学は後期日程を廃止して文系一括・理系一括を前期に回しました。従来枠は昨年並み、一括入試、融合領域の増加分を合わせて前期の志願者は3729人(昨年度2631人)と増加、前期倍率も2.4倍(昨年度2.1倍)と上昇しました(2月7日現在)。

 模擬試験の希望欄では生徒に敬遠されていましたが、実際の出願では落ち着きました。あとは実力で合格をつかむだけです。 

3)地方国立大学

信越・中国・四国で志願者が減っている大学。新潟のみ2月4日現在

  2021年度 2020年度
募集人員 志願者数 倍率 募集人員 志願者数 倍率
新潟 1,631 4,986 3.1 1,667 5,974 3.6
鳥取 912 3,605 4.0 917 3,850 4.2
島根 781 3,686 4.7 874 4,441 5.1
広島 2,015 5,913 2.9 2,015 6,616 3.3
徳島 907 4,424 4.9 904 4,671 5.2
愛媛 1,301 4,511 3.5 1,315 4,949 3.8

 全国平均ぐらいの減少です。前期はどこも2倍~3倍、後期は出願者が多いので地元勢は前期で逃げ切りたいです。

 信州、岡山、山口、香川は昨年と同程度の志願者を集めています。

 鳥取県は知事が先頭に立ってコロナ禍対策を進めています。鳥取大学は他県からの受験者が多く、試験終了時間に合わせてスーパーはくとが臨時運航されます。京都駅で著者撮影

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4)教員養成課程

前期のみ 静岡大学は2月4日現在

  2021年度 2020年度  
募集人員 志願者数 倍率 募集人員 志願者数 倍率 増減
静岡 184 372 2.0 183 432 2.4  
愛知教育 509 1,160 2.3 582 1,330 2.3  
岐阜 165 341 2.1 162 481 3.0
三重 160 836 5.2 155 556 3.6 ↑↑
滋賀 134 287 2.1 134 306 2.3  
京都教育 168 290 1.7 172 312 1.8  
大阪教育 523 1,275 2.4 514 1,169 2.3  
奈良教育 156 424 2.7 156 386 2.5  

 ぶんぶんの縄張り(笑)では全国ほど志願者が落ち込んでいません。

 三重大学の志願者が突出しています愛知教育大学は二次試験に小論文あり、三重大学は出願時に志望理由書提出、岐阜大学はその類はなしです。岐阜大学に流れるとの噂の一方で、三重県民の愛教大志望者が地元に残るという予想もありました。

 三重大学は模擬試験の頃から人気薄で、自己採点の判定も甘めでした。さらに「社会教育コースがが不人気」と説明会で話があったためか、初等教育が定員8人に67人、中等教育が定員5人に53人と、とんでもないことになっています。

 これを「アナウンス効果」と言います。

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電話猫をお借りしました。出典はこちら

kumamine.blogspot.com

 

3 コロナ禍による入試変更  

 緊急事態宣言が継続になったので、信州大学人文学部と経法学部は前期・後期とも個別試験を行なわず、共通テストの点数のみで合否判定を行ないます。

 その他現在判明している変更点はこちらのリンクを見てください。

www.keinet.ne.jp

共通テストだけで合否判定する大学(抜粋)

宇都宮大学教育学部は実技等あり

  2021年度 2020年度
募集人員 志願者数 倍率 募集人員 志願者数 倍率
宇都宮 716 1,493 2.1 712 1,798 2.5
横浜国立 1,329 3,435 2.6 1,366 7,581 5.5
山陽小野田市立山口東京理科 212 2,086 9.8 212 2,933 13.8
信州人文 前期 135 357 2.6 135 568 4.2
後期 20 196 9.8 20 277 13.9
信州経法 前期 120 222 1.9 120 282 2.4

 案の定志願者は減っています。

 

おわりに

 担任に「合格可能性が高い」と言われて志望変更した大学の倍率が膨張してショックを受けた人もいるかもしれませんが、受験は足し算、高得点者から順に合格します

 倍率が高くてもライバルの持ち点まではわかりません。安全に落としてきたのか、ワンチャン狙いなのか、知る由もありません。

 受験生がすべきことは、とにかく勉強して二次試験で1点でも多くを取ることです。過去は変えることはできませんが、未来は変えられます。

 受験生のあとひと踏ん張りを応援しています。