ぶんぶんの進路歳時記

学習方法、進路選択、世界史の話題について綴ります

どうなる?2023年度入試とコロナ禍対応(⑤国公立大学出願動向・濃厚接触者の受験)

はじめに

 2月3日に国公立の出願が締め切られました。

 国公立大学は受験機会が限られているため、受験生は自己採点の結果をもとに三者懇談を行い、より合格可能性の高い大学への出願を検討します。

 担任は「○○大学ならB判定だ」「△△県立大学は人気薄だからねらい目だ」と指導し、生徒の国公立大学合格を支援します。志望変更させて自校の国公立大学の合格者数を増すことが目的では決してありません。

パブリックドメインQより

 しかしこの情報は月曜日の「人気投票」です。本日は文科省発表の2月3日10時現在の出願状況、大学入試センターの2月6日の発表をもとに、予備校の自己採点分析を検証し、2023年度国公立入試の行方を占います。

*数値が確定するのは2月21日です。

参考 リセマム

resemom.jp

河合塾まとめ 2月6日現在を参考にしています。

www.keinet.ne.jp

駿台 各大学の出願状況リンク

www2.sundai.ac.jp

 

前回

 

 1 自己採点結果のおさらい

① 自己採点 総合成績平均

河合塾とベネッセ・駿台の自己採点の集計 900点満点

  河合塾       ベネッセ・駿台
2023 2022 2021 昨年差 2023 2022 2021 昨年差
58文系 542 520 564 +22 532 508 552 +24
57理系 554 523 581 +31 544 513 572 +31

 河合塾の「共通テストリサーチ分析報告会」資料より。「公開されているものは河合塾と明記すれば引用OK」と営業さんから許可をいただいています。

 2022年度は数学のせいで平均点がガタ落ちでしたが、2023年度は大学入試センターがヤバいと思って手加減したのか数学の高得点者が増加、その結果難関国立大学の目標8割以上、国公立大学ボリュームゾーンである6割以上~8割未満が増加しました。

 ただし文理とも山の高さが小さくなっているので、「共通テスト離れ」は進んでいるようです。

② 科目ごとの平均点

大学入試センターの発表 2023年2月6日の発表。2022年~2020年は確定平均点。矢印上向きは増、下向きは減 5点刻みで一本 (理科基礎は2.5刻み)

教科科目 2023 2022 2021 2020セ 23-22 増減
国語 105.74 110.26 117.51 119.33 -4.52  
世界史B 58.43 65.83 63.49 62.97 -7.4
日本史B 59.75 52.81 64.26 65.45 6.94
地理B 60.46 58.99 60.06 66.35 1.43  
現代社 59.46 60.84 58.4 65.37 -1.38  
倫理 59.02 63.29 71.96 53.75 -4.26  
政治・経済 50.96 56.77 57.03 57.3 -5.81
倫理、政治・経済 60.59 69.73 69.26 66.51 -9.14
数学Ⅰ・数学A 55.65 37.96 57.68 51.88 17.69 ↑↑↑
数学Ⅱ・数学B 61.48 43.06 59.92 49.03 18.42 ↑↑↑
物理基礎 28.19 30.4 37.55 33.29 -2.21  
化学基礎 29.42 27.73 24.65 28.2 1.69  
生物基礎 24.66 23.9 29.17 32.1 0.76  
地学基礎 35.03 35.47 33.52 27.03 -0.44  
物理   63.39 60.72 62.36 60.68 2.67 ↑ 
化学   54.01 47.63 57.59 54.79 0.93 ↑ 
生物   48.46 48.81 72.64 57.56 -9.07  
地学   49.85 52.72 46.65 39.51 -2.84  
英語(リーデ) 53.81 61.8 58.8 116.31 -7.98
英語(リス) 62.35 59.45 56.16 28.78 2.9  

*物理と生物で平均点が20点以上開いたので得点調整。得点調整前は物理が63.39、化学が48.56、生物が39.74

③ 予備校の自己採点分析

  1. 数学の「正常化」でボーダーラインはセンター試験時代のちょい下ぐらい

  2. 難関10大学、準難関・地方拠点大学は人気、地方国立大学は人気薄

  3. 後期までしっかり志望欄に書く受験生が増加
  4. 大都市圏(首都圏・近畿・東海)の大学を志望欄に書く生徒が増加

  5. 文系は経済系が人気。国際系は人気薄継続。教育系は安定の人気薄

  6. 理系は理・農が人気。情報系は人気継続。医療系は看護以外が人気

2 出願状況

① 全体

 2月3日10時現在、2023年度の国公立(前期・後期・中期)は募集人員98,665人に対し志願者数387,085人で、志願倍率は3.9倍です。

 前年度(2022年度)の確定志願者数は428,656人、2月4日午前10時現在の志願者数が391,633人でしたので、あと3万人ほど増えても最終志願者数、倍率とも減少する見込みです。

 第一志望で受験する(はずの)前期についても現時点で2.6倍、まだ届いていない願書を考えても3倍は切りそうです。

 文科省も国大協もしきりに「総合型選抜や学校推薦選抜を増やせ」と言うので、大学によっては後期を廃止してその定員を推薦に回しています。共通テストなし推薦に合格すれば国公立には出願しないので、その分志願者が減ります。

 共通テストを受けて前期・後期で合格を目指す受験生には朗報です。

文科省発表を加工 昨年度は確定人数

    2023年度     2022年度    
    募集人員 志願者数 倍率 募集人員 志願者数 倍率
国立 前期 63,598 165,055 2.6 63,637 179,320 2.8
  後期 12,667 111,791 8.8 12,962 123,633 9.5
公立 前期 16,584 48,826 2.9 16,320 54,676 3.4
  後期 3,388 33,423 9.9 3,367 39,647 11.8
  中期 2,428 27,990 11.5 2,349 31,380 13.4
合計 前期 80,182 213,881 2.7 79,957 233,996 2.9
  後期 16,055 145,214 9.0 16,329 163,280 10.0
  中期 2,428 27,990 11.5 2,349 31,380 13.4
  合計 98,665 387,085 3.9 98,635 428,656 4.3

② 系統別

文科省発表を加工

    2023年度     2022年度     22→23
    募集人員 志願者数 倍率 募集人員 志願者数 倍率 倍率増減
人文社会 国立 18,065 64,771 3.6 18,151 71,174 3.9 91%
公立 8,564 41,656 4.9 8,460 47,806 5.7 86%
合計 26,629 106,427 4.0 26,611 118,980 4.5 89%
理工 国立 31,066 110,216 3.5 31,236 121,680 3.9 91%
公立 4,475 25,646 5.7 4,444 31,773 7.1 80%
合計 35,541 135,862 3.8 35,680 153,453 4.3 89%
国立 5,394 20,160 3.7 5,445 20,890 3.8 97%
公立 761 3,867 5.1 764 4,281 5.6 91%
合計 6,155 24,027 3.9 6,209 25,171 4.1 96%
医歯 国立 6,935 29,950 4.3 6,984 32,000 4.6 94%
公立 888 4,035 4.5 902 4,075 4.5 101%
合計 7,823 33,985 4.3 7,886 36,075 4.6 95%
薬看護 国立 1,048 4,681 4.5 1,057 4,870 4.6 97%
公立 3,964 19,051 4.8 3,851 20,154 5.2 92%
合計 5,012 23,732 4.7 4,908 25,024 5.1 93%
教員養成 国立 9,292 29,731 3.2 9,338 32,777 3.5 91%

③ 大学別トピック

1)難関10大学(旧帝大+東工 一橋 神戸)

前期のみ

  2023年度 2022年度 備考
募集人員 志願者 倍率 募集人員 志願者 倍率
北海道  1,881 5,284 2.8 1,941 5,409 2.8 2月3日
東北    1,601 4,239 2.6 1,603 4,392 2.7 確定
東京    2,960 9,243 3.1 2,960 9,507 3.2 2月3日
名古屋  1,731 4,188 2.4 1,734 4,339 2.5 2月3日
京都  2,622 7,270 2.8 2,677 7,210 2.7 2月2日
大阪  2,878 7,398 2.6 2,878 7,501 2.6 確定
九州  1,979 5,067 2.6 1,984 5,143 2.6 確定
東工  930 4,167 4.5 930 3,802 4.1 確定
一橋  817 2,640 3.2 825 2,588 3.1 2月3日
神戸  1,921 5,883 3.1 1,929 6,071 3.1 2月3日

 このクラスになると前期は少数精鋭の戦いです。東京工業大学は人気継続、一橋大学は後述する新学部の影響で増加しています。

 後期を実施する大学(東大・京大前期組が出願)では、東北・九州は減、神戸はやや減、北海道は増です。

 新設の一橋大学ソーシャル・データサイエンス学部の後期は目論見通り人気沸騰です。予備校の分析では後期に東大の理系組が混じっているとのことでした。

 とはいえ一橋大学後期は大量の欠席者がでるので倍率を気にしてはいけません。 

 一橋大学 2023年度 2022年度
募集人員 志願者 倍率 倍率
商前  238 702 2.9 3.4
経済前 180 575 3.2 2.4
経済後 58 1,073 18.5 20.7
法前 144 410 2.8 3.5
社会前 205 725 3.5 3.2
ソーシャル・データサイエンス前  30 174 5.8 新設
ソーシャル・データサイエンス後 25 634 25.4 新設
前期合計 797 2,586 3.2 3.1 
後期合計 83 1,707 20.6 20.7 

一橋大学本館 パブリックドメイン

 大阪大学国語学部(旧大阪外国語大学)は、毎年「専攻チキンレース」が繰り広げられます。まとめてみました。

 27日(金)が中間集計、2月3日が締め切り日(必着)、赤字が定員を超えた日

  定員 1/25 1/27 1/31 2/2 2/6 倍率 昨年定員 最終志願 最終倍率
中国語 36 2 16 32 53 65 1.8 36 86 2.4
朝鮮語 16 2 9 28 41 49 3.1 16 48 3
モンゴル語 16 1 5 19 37 58 3.6 16 45 2.8
インドネシア語 10 0 1 5 6 10 1 10 25 2.5
フィリピン語 10 0 1 7 29 35 3.5 10 33 3.3
タイ語 13 2 5 17 27 37 2.8 13 28 2.2
ベトナム語 13 0 0 6 15 23 1.8 13 41 3.2
ビルマ 16 0 2 4 17 35 2.2 16 45 2.8
ヒンディー語 16 1 2 16 40 54 3.4 16 36 2.3
ウルドゥー語 16 1 2 6 16 41 2.6 16 49 3.1
アラビア語 22 2 3 15 31 40 1.8 22 44 2
ペルシア語 16 0 1 7 24 41 2.6 16 36 2.3
トルコ語 16 0 1 14 26 31 1.9 16 50 3.1
スワヒリ語 16 1 5 19 29 40 2.5 16 37 2.3
ロシア語 22 2 4 12 30 41 1.9 22 47 2.1
ハンガリー語 13 0 2 10 25 33 2.5 13 36 2.8
デンマーク 16 1 5 20 36 45 2.8 16 52 3.3
スウェーデン 16 2 6 15 28 30 1.9 16 49 3.1
ドイツ語 30 8 13 32 59 71 2.4 30 69 2.3
英語 54 5 14 53 89 114 2.1 54 136 2.5
フランス語 22 3 9 24 45 49 2.2 22 51 2.3
イタリア語 16 3 4 15 23 29 1.8 16 33 2.1
スペイン語 31 5 7 35 59 72 2.3 31 64 2.1
ポルトガル語 26 1 7 33 74 93 3.6 26 69 2.7
日本語 27 1 4 23 38 50 1.9 27 61 2.3
前期計 505 43 128 467 897 1,186 2.3 505 1,270 2.5

 定員未満から定員を超える際のジャンプがすごい専攻があります。インドネシア語は定員ぴったりの志願者です。

 合格すれば4年間つきあう言語、しっかり学んでください。(´・ω・`)

いらすとやさん。壁がこんにゃくみたいだからぶつかっても平気?

2)大阪公立大学

 われらがハムちゃんこと大阪公立大学は初年度は敬遠されて低倍率、今年はその反動で人気沸騰と言われたためか出足は鈍かったですが、法、経済、理、現代システムは駆け込み乗車で膨張しました。

  2023年2/2 2023年2/3 2022年
募集人員 志願者 倍率 募集人員 志願者 倍率 募集人員 志願者 倍率
前期 125 422 3.4 125 439 3.5 125 372 3
後期 30 320 10.7 30 334 11.1 30 288 9.6
前期 155 382 2.5 155 530 3.4 155 369 2.4
後期 25 418 16.7 25 483 19.3 25 390 15.6
経済 前期 185 366 2 185 532 2.9 185 337 1.8
後期 50 203 4.1 50 279 5.6 50 242 4.8
前期 198 529 2.7 198 552 2.8 198 365 1.8
後期 18 214 11.9 18 222 12.3 18 70 3.9
前期 204 462 2.3 204 559 2.7 204 468 2.3
後期 58 559 9.6 58 679 11.7 58 643 11.1
前期 269 708 2.6 269 728 2.7 269 883 3.3
中期 442 4487 10.2 442 5,777 13.1 442 6,200 14
前期 90 331 3.7 90 343 3.8 90 314 3.5
後期 30 329 11 30 339 11.3 30 180 6
獣医 前期 35 95 2.7 35 99 2.8 35 125 3.6
医-医 前期 80 236 3 80 244 3.1 80 153 1.9
リハー理学 前期 15 69 4.6 15 73 4.9 15 49 3.3
リハー作業 前期 15 40 2.7 15 43 2.9 15 47 3.1
リハー理学 後期 2 51 25.5 2 53 26.5 2 40 20
リハー作業 後期 2 43 21.5 2 47 23.5 2 42 21
看護 前期 85 297 3.5 85 303 3.6 85 195 2.3
後期 20 193 9.7 20 196 9.8 20 93 4.7
生活科学 前期 109 352 3.2 109 362 3.3 109 383 3.5
現代シス 前期 170 402 2.4 170 606 3.6 170 665 3.9
後期 35 107 3.1 35 205 5.9 35 275 7.9

 第一志望で持ち点の高い人は早めに出願したはずなので(第一志望者が集まる獣医や生活科学には駆け込みはない)、倍率が上昇しても慌てる必要はないです。

3)奈良女子大学

2月3日現在

  2023 2022
募集 志願者 倍率 募集 志願者 倍率
前期 83 208 2.5 85 203 2.4
  後期 43 336 7.8 43 366 8.5
前期計 87 169 1.9 83 215 2.6
  後期計 29 241 8.3 29 298 10.3
前期 20 52 2.6 17 107 6.3
  後期 10 109 10.9 10 121 12.1
生活環境 前期計 85 250 2.9 86 295 3.4
  後期計 27 285 10.6 26 244 9.4
小計   384 1650 4.3 379 1849 4.9

 去年が人気だったためか出足が鈍いです。

 2年目工学部は昨年の「数学ショック」と「あまり集まっていない」アナウンスから最終的にはとんでもない数になりましたが、今年は妥当です。

4)地方国立大学

 文科省の発表の中に低倍率リストがありました。スクリーンショット

 地方国立大学の教育学部が顔を出しています。文科省が教員のブラックな労働環境に何のメスも入れずに、なんちゃらのバトンとか2年で教壇に立てるようにするとかごまかしばかりするからです。

 金沢大学はもともと少数精鋭入試ですが、新しい学域は認知が進んでいないと考えられます。

 すべての大学をざっと見たところ、大都市圏の高校から「出願指導」のターゲットにされがちな大学の倍率が減っています(名前は伏せます)。「どうしても通える国立大学」という受験生には朗報です。

3 コロナ禍による大学の対応

① 全体

文科省の2023年1月10日の発表のスクリーンショット

 どの大学も何らかの対応はします。

② 各大学の例

1)名古屋大学

www.nagoya-u.ac.jp

引用

以下に該当し、追試験の受験を許可された者が、3月22日(水)に実施する追試験を受験できます。なお、追試験において二段階選抜を実施する学部の志願者は、一段階選抜で不合格となった場合は受験できません。

  1. 新型コロナウイルスに罹患し,試験日までに医師が治癒したと判断していない者
  2. 試験直前に愛知県のホームページで公開されている濃厚接触者の定義に該当する者
  3. 試験当日に息苦しさ(呼吸困難)、強いだるさ(倦怠感)、高熱等の強い症状のいずれかがある者
  4. 本学ホームページに後日公開する「経過観察シート」の症状チェックに該当する症状が生じている者
  5. 2月25日および2月26日の試験当日に体調不良を申し出て、医師等による「健康状態チェックリスト」に基づく診断により、追試験の申請を判断された者

上記に該当する者は、新型コロナウイルス感染症拡大への配慮の観点から、追試験を申請いただきますようお願いいたします。

 追試の内容はHPによると共通テストは必須で、二次試験は小論文、口頭試問、調査書など学部によって違います。

2)大阪大学

 体調不良(共通テストと同じ)の人は追試、濃厚接触者の無症状の人については共通テストと同じ扱いで別室受験が可能です。保健所の検査ができないところは市販の抗原検査キットで陰性かどうか確認する必要があります。

3)山形大学

 体調不良(共通テストと同じ)の人は追試、無症状の濃厚接触者には措置がありますが、工学部は会場が分散するため追試です。

 追試は個別試験で課される教科を共通テストの得点で代替します。例えば人文社会学科の人間文化コースは二次試験が国語300点なので、共通テスト英語の点数を300点に換算して共通テストの合計点に足します。

 このように追試の扱いは大学によって異なりますので、必ず大学の一般選抜募集要項や最新の情報をチェックしてください。

まとめ

  • 共通テストの受験者数も減り、国公立志願者は全体では減っています
  • 国立志望者のボリューム層が点数を取っているので、大都市圏の難関、準難関大学の前期の倍率は例年並み。地方国立の倍率が低めですが油断は禁物です
  • 中期・後期の倍率が事前の予想ほどは上昇していません。出願者の半分以上は欠席するので、仮に前期不合格でも気持ちを切らさず試験に臨みましょう
  • 体調不良の場合は無理をせず、大学に連絡しましょう

 出願したらそこが第一希望、皆さんの健闘を祈ります。