ぶんぶんの進路歳時記

学習方法、進路選択、世界史の話題について綴ります

どうなる?2021年度入試とコロナ禍対応(④共通テストの平均点・志望動向・問題分析)

はじめに

 何かと物議を醸した大学入学共通テスト、初年度が終了しました。2021年1月25日から国公立大学の出願です。

 受験生は自己採点の結果をもとに三者懇談で最終的な出願先を決めると思います。国公立大学は全国を視野に入れるのですが、今年度はコロナ禍による不安から従来通りにはいかないかもしれません。

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 本日は業者の共通テストの分析と自己採点の結果を元に、2021年度の国公立入試の行方を占います。

参考

大本営 得点調整もこちらから

www.dnc.ac.jp

河合塾

www.keinet.ne.jp

ベネッセ・駿台。閲覧しようとすると属性(受験生か保護者か)を聞かれます。どこ見てんのよ!(#゚Д゚)

dn-sundai.benesse.ne.jp

目次

 

 1 データ編

① 自己採点 総合成績平均

  河合塾 ベネッセ・駿台
2021 2020 2021 2020
5教科7科目文系(900) 549 547 2 551 548 3
5教科7科目理系(900) 558 552 6 561 559 2

② 科目ごとの平均点

教科科目 平均点(中間集計) センター試験2020 増減
国語 116.05 119.33 -3.28  
世界史B 65.79 62.97 2.82  
日本史B 66.06 65.45 0.61  
地理B 62.52 66.35 -3.83  
現代社 54.34 65.37 -11.03 ↓↓
倫理 71.76 53.75 18.01 ↑↑
政治・経済 51.32 57.3 -5.98  
倫理,政治・経済 69.18 66.51 2.67  
数学Ⅰ・数学A 59.2 51.88 7.32
数学Ⅱ・数学B 62.85 49.03 13.82 ↑↑
物理基礎 38.12 33.29 4.83  
化学基礎 25.6 28.2 -2.6  
生物基礎 30.17 32.1 -1.93  
地学基礎 34.71 27.03 7.68
物理 58.89 60.68 -1.79  
化学 52.8 54.79 -1.99  
生物 73.14 57.56 15.58 ↑↑
地学 47.06 39.51 7.55
英語(リーディング) 60.35 116.31  
英語(リスニング) 57.23 28.78  

③ 平均点は昨年並みでも構成が違う

 2回目の試行調査は平均点5割目標だったので本番も5割と噂され、模試もそれぐらいの平均点管理でしたが(平均点については公式のアナウンスはない)、ふたを開けるとセンター試験と同じ6割ぐらいになりました。

 しかしおそらく「たまたま」です。公民と発展理科は得点調整です。DNCも黙っていたのは平均点管理に自信がなかったからでしょう。

 河合塾とベネ・駿の分布表では、理系で8割越えが減少する一方で6割~7割が膨張しています(文系は9割越えが減っている以外は去年並み)。

河合塾の説明会より引用。営業さんの許可をいただいています。

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 共通テストは総じて読む量が増えた割には内容は薄味だったので、成績下位層は取れる問題が増えた一方で、完クリを狙う層は時間との戦いになったと考えられます。

 また理系上位者は直前に地理を詰めこんでいましたから、地理が難化したことも高得点者の減少の一因と考えられます。

 したがって80%~85%が必要な旧帝大理系、地方国立医学部あたりのボリューム層が得点を下げてボーダーがやや下がっています。「多少点数が低くてもチャレンジしましょう」が予備校の分析です(浪人するならわが予備校へ)。

 

2 分析編 

① 難易度別

 リサーチで難関10大学を書いている人が増えています。特に今年は浪人が少ないので現役にとって旧帝大や医学部はチャンスです。

 一方でボーダーラインは下がり気味です。上述のデータでは9割付近、東京大学理系や京都大学文系の勝負ゾーンが減っているので、多少点数が低くてもチャレンジ可能です。浪人したら(以下略)。

 逆に準難関大学や地方国立は相応の持ち点がある受験生がいるので、ボーダーラインはセンター試験時代と大きくは変わらないと考えていいです。

② 地域別

 大都市圏は例年並みですが、甲信越、中国・四国の大学を書いている人が少なめです。

 国立至上主義高校の進路部長は国公立大学の合格者数(進学者数ではない)を稼ぐために、生徒を地方国立(理系)に「飛ばす」ことに何の疑いも抱きませんが、さすがに今年は二の足を踏む大都市圏の受験生が多いのでしょう。

③ 系統別

 文系は人文と社会学系統が人気薄、前評判では人気薄の法学、経済学は戻してきました。法学部人気は公務員志向の高まりと考えられます。

 教員養成課程は安定の人気薄です。専門外のことにもプロ並みのスキルが求められて定額働かせ放題ですから当然です。(´・ω・`)。加えて入試では志望理由書、小論文、面接など負担が増加しています。

 工学部は情報系統の人気が継続、農学部は戻してきました。

 医療系では医学科、薬学部が人気です。高得点者が点数を減らしたことによってボーダーラインは下がっています。浪人も少ないしチャンス到来です。

 生活科学は食物栄養が人気です。資格志向の回帰でしょう。

④ 近畿圏スペシャ

 近畿圏は難易度順で京都→大阪→神戸→大阪市立が隙間なく並んでいます。神戸D判定で大阪市立に下げてもC判定でライバルが待ち構えています。

 今年も同様の傾向ですが、先述の通りどの大学も上位者が減っているので、多少点数が低くてもチャレンジかもしれません。

 なお昨年までセンター3教科85%ボーダー「文系虎の穴」の京都府立大学文学部が今年から5教科5科目型に変更したら志望者が激減しました。奈良女子大学文学部もボーダー下の生徒が激減しています。関関同立に行ったのでしょうか。(´・ω・`)

3 問題編

河合塾駿台の講評、知り合いの先生の話、ぶんぶんが解いた感想です。

① 国語

 採点も自己採点も不可能で表現力も測れない記述式が頓挫し、出題者が問題集を出す(利益相反)など滅茶苦茶でしたが、出題者が正気に戻ったようです。反対運動の成果です。

 構成はセンター試験と同じ近代以降の文章(評論と小説)、古文、漢文の4題で、実用的文書は何処かへ行きました(復活には要警戒)。

 素人のぶんぶんは現代文2題を解いてみましたが、題材も発問もセンター試験のテイストです。それぞれにアクティブラーニング風、ダブルパッセージ風の設問がついていますが難しくはありません。

② 英語リーディング

 英語民間検定に完全移行が挫折し、それでも検定を受けさせるためにリーディングとリスニングだけ、「英語四技能はバランスよく」をエキスパートから「そもそも間違い」と批判されても無視して1:1の配点です。

 素人ぶんぶんも解きましたが、第4問まで同じような実用文、課題文を読んで発表のスライドを作るアクティブラーニングの設定は意味なし、噂の第6問(甘味料)は内容・設問とも薄っぺら、一般試験の英語と比べて明らかに見劣りします。

 ぶんぶんは事実かオピニオンかを判別する問題で勘違いした以外は正解しましたが、途中で飽きてきました。ご飯だけ多い不味いカツ丼を流し込んでるみたいです。

 わざとダメな問題にして「やっぱり英語民間検定かのぉ」と利権目当ての悪代官と御用商人が誘導しようと企らんでいるのではと勘繰ってしまいます。

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③ 英語リスニング

 無理矢理100点にしたら時間が足らなくなったので第3問から一回聴きという英語力より集中力の試験になりました。

 ぶんぶんも解きましたが、2回聴きは1回でいけましたが1回聴きの講義はチンプンカンプンで、勝手に「これヲタクのこと?」と脳内変換して答えをひねり出しました。

 第6問Bは4人の会話を聴き取る問題ですが(名前が出るので「英語のなまり」はあまり関係ない)、音声だけで複数人の会話の内容を特定する能力を実社会でどう役立てるのか心配です。

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④ 数学Ⅰ・数学A

 数学の先生に解いてもらったら「問題は簡単だけどページ数が増加して短時間で内容を読み取る力が必要。70分では全部解くのは難しい」とのことです。

 うーん、それ数学のテスト?

 特に第3問の「箱ひげ図」の問題はページを何度もめくる必要があり、学習障害」がある受験生にはつらい仕様です。

 「アメリカ英語以外の話者を出した、ダイバーシティだ (`・ω・´)キリッ」と胸を張る割にはその辺の配慮が不足しているのはいただけません。

⑤ 数学Ⅱ・数学B

 「計算量が減り、誘導のとおり進めていけばちゃんとわかっていなくても正解にたどり着ける」とのことです。その辺が平均点が高かった理由と思われます。

 従来の第5問が第3問に移動、第5問のベクトルの問題は目新しいとのことです。

⑥ まとめ

 試行調査とはテイストが変わりました。業者の直前対策問題集は2度の試行調査と直近3年のセンター試験を参考に作られていたので、それをやりこんでいた人は当てが外れたかもしれません。

文科省とDNCの中の人は対策問題集を見て(・∀・)ニヤニヤしてたんですかね?

 来年度はこの問題が直前対策問題集のベースになります。出版社は一から作り直しですね。ヨチヨチ( *´д)/(´д`、)アゥゥ

4 コロナ禍による入試変更

① 信州大学

www.shinshu-u.ac.jp

 人文学部と経法学部は、緊急事態宣言が2月8日以降も継続した場合(都道府県は問わない)、前期・後期とも個別試験を行なわず、共通テストの点数のみで合否判定を行ないます。

② 宇都宮大学

https://www.utsunomiya-u.ac.jp/docs/ippansenbatsu_chushi.pdf

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 共同教育学部以外は、二次試験で実施予定だった科目を共通テストの当該の科目の得点を増やして代替(横浜国立大学と同じ)、共同教育学部は小論文・面接・実技を論作文や実技の録画(体育系)に振り替えるとしています。

③ 入試の公平性の観点からどうなの?

 入試の時期にコロナ禍が拡大することは予想できたのに、政府はノープラン、感染が拡大する中で大学は苦渋の決断と思いますし、発表するなら出願の前でしょう。

 しかし二次試験の科目を共通テストで代用するとなると、第二日程と追試を受験する生徒は配点が増える科目を集中的に勉強できる一方、受験を終えた生徒は「だったら二次の勉強の時間をそっちに回したのに…」と言いたくもなります。

 これは入試の公平性の観点から問題です。

 文科省はこうした動きに「懸念」と他人事です。大学は「文科省は何かした?」と毒づいていいと思います。(#゚Д゚)ゴルァ!!

④ リンク集

 大学の入試変更は次のページをチェックしてください。

www.keinet.ne.jp

おわりに

 大手メディアは「共通テストはセンター試験より思考力を重視…」と文科省の言説を鵜呑みにしていますが、すべての教科・科目がそうであるとは言えません。取材して批判的に報道していただきたいです。

 今年の受験生は最後の最後まで気の毒です。雲行きが怪しくなってきたとはいえ、受験生は一般試験に向けて集中してください。