はじめに
2025年の共通テストは監督者の指示誤り他が原因で163名が再試験対象、うち54名が再試験を希望し、追試希望者(992名)とともに受験します。
大学入試センターは運営の誤りを認めて対応し、隠さず発表します。一方東京都は実施するE-SATJでトラブルが続発しても「適正に行われた」と不誠実な言動を繰り返しています。極めて遺憾です。いや💩です。
国公立大学の出願は前期・後期・中期とも来週の月曜日(2024年1月27日)からその翌週の水曜日(2025年2月5日)です。
受験生は自己採点の結果をもとに三者懇談を経て最終的な出願先を決めると思います。国公立大学は基本的に全国を視野に入れますが、急に「○○大学はどうだ、B判定だぞ」「ボーダーまで後何点」と言われても??な保護者もいると思います。
本日は河合塾およびベネッセ・駿台連合の自己採点の結果と分析(2025年から合同でデータ収集、受験者の約8割を補足)をもとに、国公立大学の2025年度入学者選抜の行方を占います。
なお予備校は「果敢にチャレンジ(浪人するなら我が校へ)」がビジネスモデルだと「メタ認知」した上でお聞きください。また今年から河合塾・駿台の浪人生のデータが合算されたので浪人が集まる大学・系統は膨張気味です。
文中の「ボーダーライン」は河合塾の「同じ持ち点の人の半数が合格するライン」を意味します。
本文中のグラフは河合塾が公開しているスライドのスクリーンショットです。営業さんに「公開しているものは河合塾作成とクレジットすれば使用OK」と許可をいただいています。
参考
河合塾 教員向け
河合塾 生徒向け
ベネッセ・駿台連合 開くと属性を聞かれます。どこ見てんのよ!
自己採点の見方
bunbunshinrosaijki.hatenablog.com
目次
1 データ編
① 共通テスト受験者数
正式な発表があれば改訂します。
2月6日大学入試センター発表
2021 | 2022 | 2023 | 2024 | 2025 | |
1 志願者数 | 535,245 | 530,367 | 512,581 | 491,914 | 495,171 |
2 受験者数 | 484,114 | 488,383 | 474,051 | 457,608 | 462,066 |
本試験のみ | 482,624 | 486,847 | 470,580 | 456,173 | 461188 |
追試験のみ | 1,021 | 915 | 2,737 | 1,085 | 561 |
再試験のみ | 10 | 0 | 0 | 0 | 0 |
本試+追試 | 407 | 438 | 707 | 344 | 305 |
本試+再試 | 51 | 182 | 26 | 6 | 12 |
追試 + 再試 | 0 | 0 | 1 | 0 | 0 |
本試 + 追試 + 再試 | 0 | 1 | 0 | 0 | 0 |
特例追試験のみ | 1 | ― | ― | - | |
受験率 | 90.45% | 92.08% | 92.48% | 93.03% | 93.31% |
全教科欠席 | 51,131 | 41,984 | 38,530 | 34,306 | 33,105 |
*受験者はやや増加
2018年度から続落していた2024年度の18歳人口は推定109.0万人(昨年度106.3万人)とやや増加しました。共通テストの出願者もやや増加しました。
18歳人口推定について
大学入試センターの発表によると、各地域の外国語(筆記)の受験者は454,899人、受験率91.9%(昨年度450,535人。受験率91.6%)と2年連続で欠席者は減りました。ただし河合塾の話では国公立大学の年内入試の志願者も速報値で1割ほど増え、国立大学の理系の定員が増加しているので(後述)一般試験の競争は例年並みの予想です。
② 自己採点 総合成績平均
自己採点の集計 2025年は1000点満点 2021~2024は900点満点の値を1000点満点に換算。
2025 | 2024 | 2023 | 2022 | 2021 | 25-24 | |
8科目文系(1000) | 631 | 609 | 602 | 578 | 627 | 22 |
8科目理系(1000) | 644 | 632 | 624 | 581 | 646 | 12 |
ベネッセ駿台
2025 | 2024 | 2023 | 2022 | 2021 | 25-24 | |
8科目文系(1000) | 620 | 596 | 591 | 564 | 612 | 24 |
8科目理系(1000) | 633 | 621 | 612 | 570 | 634 | 12 |
*センター試験時代の平均点にかなり近づく
2021年の共通テスト初年度平均点はセンター試験ラストと同程度でしたが、2022年は数学ⅠAの難化で文系・理系とも平均点は大きく下がり、センター試験から約5%ほどボーダーラインが下がりました。
2023年は数学は平均点を戻しましたが生物が難しすぎて得点調整、2024年度は「英語筆記が時間内に解けない事件」が発生するものの他教科が易化して平均点はセンター試験時代に近づきました。
2025年度は新課程初年度で出題者が(化学以外は)遠慮した模様で、センター試験の水準に戻りました。
河合塾の自己採点の推移。KeiNet上記リンク「共通テスト特集」に公開中の記事より引用 2024年までは900点満点。
ぶんぶんは度数分布の山型カーブを重視します。文系、理系とも山の高さは変わらないものの、山の頂上が高得点の方に動き、7割5分(準難関ゾーン)から9割(旧帝上位・医学部ゾーン)にかけて増加しています。ただし地方国立理系の限界ゾーンである6割付近は減っていません。
河合塾の自己採点の分布。上記リンクの記事より引用
つまり難関狙いの人が予想以上に高得点がとれてイケイケ状態です。ただし問題の易化だけでなく、今年から河合塾・駿台の共催で浪人生(旧課程最終年でも再受験を選んだ層)が合算されたことも考慮に入れたいです。
③ 科目ごとの平均点
大学入試センターの発表 2025年1月24日現在の中間集計。2024年は確定平均点。
科・科目 | 1月24日中間集計 | 2024年 | 差 |
国語 | 126.82 | 116.5 | 10.32 |
地理総合,地理探究 | 57.55 | - | |
歴史総合,日本史探究 | 57.06 | - | |
歴史総合,世界史探究 | 66.20 | - | |
公共,倫理 | 59.81 | - | |
公共,政治・経済 | 62.74 | - | |
地理総合 | 21.70 | - | |
歴史総合 | 24.61 | - | |
公共 | 25.14 | - | |
旧世界史B | 68.30 | 60.28 | |
旧日本史B | 68.40 | 56.27 | |
旧地理B | 61.48 | 65.74 | |
旧現代社会 | 65.06 | 55.94 | |
旧倫理 | 54.45 | 56.44 | |
旧政治・経済 | 59.81 | 44.35 | |
旧倫理,旧政治・経済 | 62.07 | 61.26 | |
数学I,数学A | 53.72 | 51.38 | |
旧数学I・旧数学A | 59.96 | ||
数学II,数学B,数学C | 51.76 | 57.74 | |
旧数学II・旧数学B | 59.49 | ||
物理基礎 | 24.80 | 28.72 | -3.92 |
化学基礎 | 27.08 | 27.31 | -0.23 |
生物基礎 | 31.47 | 31.57 | -0.1 |
地学基礎 | 34.52 | 35.56 | -1.04 |
物理 | 59.09 | 62.97 | -3.88 |
化学 | 45.46 | 54.77 | -9.31 |
生物 | 52.30 | 54.82 | -2.52 |
地学 | 41.69 | 56.62 | -14.93 |
英語【リーディング】 | 57.87 | 51.54 | 6.33 |
英語【リスニング】 | 61.44 | 67.24 | -5.8 |
情報I | 69.46 | ||
旧情報 | 72.87 | - |
*初年度は手探り&手加減?
国語は試験作成委員が記述式問題の例題集を出版するという事件が原因で封印されていた実用文出題がついに登場しました。
このため試験時間が10分延長され、配点も現代文110点、古典90点というヘンテコな構成になりました。そのお詫び?で、とってつけた複数テクストはなくなり(生徒の嘘くさい会話は古文のみ)、選択肢は6択から4択になりました。結果的に平均点は上昇しました。
他では化学は読解の量が増えて難化、英語リーディングは構成がやや変わり字数や設問数が減って易化、初登場の「歴史総合・世界史探究」は本誌既報通り私大的な知識問題が減って高い平均点でした。
2 分析編
① 全体
受験生は手ごたえがあったようで、リサーチの志望欄に難関10大学を書く生徒が激増しました、浪人生の合算の影響もありますが、現役生だけのデータでも難関を書く人は昨年より増えています。
受験生の持ち点が増えたことを反映して、河合塾の別のデータでは多くの大学が昨年よりもボーダーラインが2%ほどアップしています。
また中期・後期を積極的に出願する生徒が増えてます。特に今年は中期日程を志望欄に書く人が多めです。
国公立大学後期は前期と同時に出願し、前期に合格した人は欠席し、意中の私立に合格した人も欠席するので、例年後期は半数以上が欠席します。
仮にリサーチで判定が悪くても、上位層が前期でごっそり合格すれば後期がスカスカになる可能性はありますが、それは受験当日までわかりません。「是が非でも国立」というなら「出願しなければ合格はない」ので、後期までしっかり受験しましょう。
参考
bunbunshinrosaijki.hatenablog.com
② 地域別
リサーチでは東海・北陸以外の地域で受験予定者が増加しています。
北陸では昨年過疎った富山大が隔年現象で増加(逆に富山県立は減少)、石川は同じく隔年現象で石川県立が増加した以外は引き続き減少、福井は福井県立大学が「恐竜学部」で独り勝ちで福井大学は減少と明暗が分かれました。
東海では三重と静岡が激減しています。三重は三重大学が昨年異常な人気だった反動です。国立至上主義の本家である愛知県の高校は、県内に収まりきらない受験生を三重と静岡に送り出す傾向にあります。旧課程最終年度は現役志向で県外に流れ、今回は持ち点が高いのでリサーチ段階では地元の大学が膨張しています。
新幹線の開業で近畿と北陸のアクセスが悪くなりました。昔はこれ一本で北陸に行けました。GAHAGのパブリックドメインの画像。
大学に入学すればその地域で4年+αは過ごします。判定システムでA判定だからという理由だけで選ばず、教育内容もよく調べましょう。
③ 系統別
文系では経済系が人気継続、コロナ禍が直撃した外国語系では国際学科が人気回復です。理系で理学部、工学部が女子の受験希望者の増加で人気、逆に従来女子の多かった生活科学や看護が減少しています。医療系では医学部と歯学部が人気です。教育系は安定の不人気です。(´・ω・`)
3 トピック
もっと知りたい人は最初のリンク先を見てください。
① 東京科学大は人気
東京医科歯科大学と東京工業大学が合併した東京医科歯科メカ大学もとい東京科学大学はすべての学科で受験予定者を増やしています。河合塾の話では女子の希望者も増えているそうです。
古い記事を見ると「東工大は女子トイレが少ない」というのがありますが、現在は改修が進んでいるようです。
② 情報系が定員増加も周知が進んでいない?
文部科学省は2025年度入試から「大学・高専機能強化支援事業(高度情報専門人材の確保に向けた機能強化に係る支援)」にもとづき、国立大学の情報系学部学科の入学定員の増員を認めています。
ただし昨今の情報系の過熱ぶりに嫌気がさしたのか、神戸大学の新設学部は人気を集めていますが他はいまいちです。横浜国立大学、名古屋大学、大阪大学など有名どころの工学部の定員が増加しているのですが、知らない人が多いみたいです。あ、内緒にしておいた方がよかった?
③ 近畿圏のヒエラルキーは変わらず
近畿圏の総合大学は難易度順で京都→大阪→神戸→大阪公立(以下「ハムちゃん」)の序列です。この4大学は偏差値帯が重なりながら連続していて、例えば神戸D判定だとハムちゃんC判定で、志望を下げると同学力のライバルが待ち構えています。
大阪府は「大阪公立大学は大阪府民を実質無償化!」と宣伝していますが、修学支援制度は2026年度完成で、無償になるのは国の支援と合体させた場合です。これをもってしても関西圏国立大学の序列を崩すことは難しいようです。
参考
④ 京都工芸繊維大学の後期廃止
京都工芸繊維大学はAO入試のころから「ダヴィンチ入試」と呼ばれるタフで良質な年内入試を実施し、前期合格者の辞退率の低さは旧帝並みという「愛され大学」ですが、一方で後期は多数の辞退者を出していました。
そこで2025年度からは後期入試を廃止して総合型と前期に定員を振り分けました。リサーチを見るとボーダー付近の70%前後の志願者が多く山の形は変わらないので、今年もファンどうしの争いです。
近隣工学部の後期のリサーチを見ると、神戸大学が京都大学や大阪大学の前期組を集めて膨張、奈良女子大学にも神大、阪大の前期組が流れ込んで増加しています。滋賀県立大学には京都工繊大の前期組が大量に流入しています。他地域では名古屋工業大学や広島大学の後期に近畿勢が進出しています。
⑤ 看護は不人気?
トータルでは減少傾向の看護系ですが、関西圏では京都、神戸、大阪公立、滋賀医科では受験予定者が増加し持ち点も多め、大阪、京都府立医科、奈良県立医科、和歌山県立医科は受験予定者は減少するものの合否ラインに持ち点の高い生徒が集中しています。静岡、愛知、岐阜、三重の看護学科も出願予定者は減少していますが、持ち点の高い生徒は多いです。
「どうしても看護」という人は油断せず準備してください。
まとめ
- 国語と英語筆記の易化で難関大学や準難関大学狙いの受験生は軒並み持ち点が昨年度より上昇した
- 持ち点が多い生徒は第一志望にチャレンジし、中期・後期も出願する気配
- 文系は経済、理系は理学・工学が人気。女子の出願増が後押し。医療系は医学・歯学が人気
- 自分もできているが他の受験生もできている。油断大敵
- 昨年度低倍率だったところが高倍率(またはその逆)になったり、リサーチの話の後で受験生は動く。業者の情報は話半分で聴く
- 出願したらそこが第一希望。覚悟を決める
- 受験は足し算。得点上位者から順番に合格する。先立つものは勉強
おわりに
共通テストは50万人規模が受験する「国公立大学の一次試験」が主要な役割です。一次試験であれば平均点管理は重要です。旧課程の共通テストは4年目でやっと平均点が安定したかと思いきや、新課程入試初年度は点数が膨張しました。来年度は2022年度の数学のように出題者の自己顕示欲が炸裂して平均点がガタ落ちする可能性は捨てきれません。
課程が変わっても最終的に必要な学力は変わりません。受験生は判定システムと「にらめっこ」するのはやめて、第一志望に向けて勉強あるのみです。
*これはネットの情報です。受験生は担任とよく話をして志望校を決定してください。
応援しています! パブリックドメインQより。