三者面談で志望校を決め、担任から合格のために残り時間をどう使うかアドバイスを受けたと思います(たぶん)。
仮に志望変更したとしても、出願すればそこが第一志望です。多くは前期が第一志望だと思いますが、国公立大学は中期と後期、あと2回チャンスがあります。
私は定員が大きく準備がしやすい前期で合格することを目標にしていますが、「浪人できない」「何としても国公立大学」という人は、中期と後期を戦略的に出願し、前期不合格の場合はしっかり準備して仕留めたいです。
今回は中期と後期の出願や準備について考えます。
*記事は2017〜2018年度の内容です。
*テレメールの願書取り寄せはおおむね出願1週間前の午前中までです。
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*今回あげたデータはすべてHP上に公開されています。著作権法第36条の範囲(本文が主、引用が従)で引用します。
目次
1 公立大学中期日程
a どんな大学が実施していますか? どういうシステムですか?
中期日程を実施しているのは一部の公立大学です。前期・後期と同時に出願します。試験は3月8日(前期発表と後期試験の間)から実施され、前期に合格して手続きした人は合格から除外、後期とダブル合格した人はどちらかを選べます。
詳しくはこちらの実施要項
追記 12/23 新設大学を一覧表に追加しました。
倍率は2017年度入試の実質倍率(実受験者÷合格者)
大学名 | 所在地 | 学部 | 17年度倍率 | |
1 | 釧路公立大学 | 北海道 | 経済 | 1.9 |
2 | 秋田公立美術大学 | 秋田 | 美術 | 2.1 |
3 | 高崎経済大学 | 群馬 | 経済 | 3.5 |
4 | 都留文科大学 | 山梨 | 文 | 4.3 |
5 | 静岡県立大学 | 静岡 | 薬 | 5.7 |
6 | 名古屋市立大学 | 愛知 | 薬 | 6.9 |
7 | 岐阜薬科大学 | 岐阜 | 薬 | 3.2 |
8 | 金沢美術工芸大学 | 石川 | 美術工芸 | 4.6 |
9 | 奈良県立大学 | 奈良 | 地域創造 | 3.6 |
10 | 大阪府立大学 | 大阪府 | 工学域 | 5 |
11 | 兵庫県立大学 | 兵庫 | 理 | 2.2 |
12 | 岡山県立大学 | 岡山 | 情報工 | 2.8 |
13 | 下関市立大学 | 山口 | 経済 | 3 |
14 | 山陽小野田市立山口東京理科大学 | 山口 | 工・薬* | 5.8 |
15 | 長野大学* | 長野 | 注1 | |
16 | 長野県立大学* | 長野 | 注2 |
17 公立小松大学**
18 公立諏訪東京理科大学**
*:2018年度入試から実施 **:2019年度入試から実施
注1:環境ツーリズム、社会福祉、企業情報
注2:グローバルマネジメント、健康発達
追記 2024年2月29日
知らない間に中期を実施する大学が増えました(新公立大学または既存の公立大学の新規実施)。学部・学科はご自分でお調べください。なお兵庫県立大学は社会情報科学部が追加、大阪府立大学は滅亡して大阪公立大学(工)で中期を実施します。
旭川市立大学 公立千歳科学技術大学 岩手県立大学 前橋工科大学 長岡造形大学 三条市立大学 新見公立大学 長野県看護大学 周南公立大学
第一志望の併願として有名どころ…
- 奈良県立大学:地域政策や観光など地域密着系。
- 大阪府立大学(工学域):京大、阪大前期受験者が好んで受験する。
大阪府立と薬学部の中期はかなりの難易度ですが、それ以外は中堅国公立大学の併願先です。
注意して欲しいのは、中期は学部・学科が偏っているので「公立」という理由だけで第一志望と全く違う学部・学科を受験すると、前期後期すべて不合格、中期のみ合格したけど「行かない」になってしまいます(高校のHPの「国公立の数」は増えます)。
授業内容、立地など調べて、多少学科が違っていても「ここなら行ってもいいかな」というところがあれば出題しましょう。
b 倍率が尋常じゃないです! 合格しますか?
都留文科大学のHPで昨年度入試結果を見ると(抜粋)
学科名 募集人員 志願者 受験者 合格者 入学者
初等教育学科 70 504 234 100 64
国文学科 50 758 436 91 45
引用もとはリンク切れ
前期・後期と同時に出願し、併願可能なので出願は当然多くなりますが、実際に受験する生徒は1/2、辞退する生徒(後期とダブル合格や私立へ行く)を見越して合格を多めに出します。
発表される倍率に踊らされず、予備校のボーダーや二次学力で「実力相応」であれば合格の可能性はあります。
2 国公立大学後期日程
a どんな大学が実施していますか? どういうシステムですか?
国公立大学の多くは定員を前期と後期にわけています(分離分割方式)。いわゆる「旧帝」は前期だけの大学が大半です。後期だけの大学もあります。
前期に合格して手続きをした人は後期を受験する資格を失います(前掲の公立大学協会のページ参照)。前期と後期と両方合格して好きな方を選ぶことはできません。後期は前期残念組の「敗者復活戦」と考えてください。
*発展
「旧帝」の多くは後期を廃止し、定員をAOや推薦に回しました。不本意な入学者よりは第一志望で来てくれる人の方が大学としても嬉しい、というのは心情としてわかります。
名古屋市立大学はおそらくそうした生徒の「受け皿」を視野に入れて、後期のみの総合生命理学部を2018年4月に新設しました。
b 倍率がただごとじゃないのですが合格できますか?
前期と後期は同時に出願しますから、定員の少ない後期の倍率はとんでもない数字になります。しかし前期合格者は受験しないので、実際の倍率は低くなります。欠席率は平均で56%、実質倍率も2~4倍ぐらいです。
難関私立に合格した生徒は、その志望順位が「私立>後期の国公立」の場合は前期の結果で私立に手続きし、後期を欠席することがあります。「合格して辞退」よりは「何としても国立」の人に椅子をひとつ譲ってもらえるので助かりますが。
こちらを参照 リセマム
*発展
前期積極策失敗組が後期に大量に押し寄せて大激戦、逆に第一志望者が全抜け+残りも私立に手続きして定員ギリ、もあります。全く読めないので、たくさん出願すれば「ラッキー」が増える可能性があるので国立(以下略)高校は「最後まであきらめるな」と言います。
じゃあ合格しやすいのかというと、そんなに甘くはありません。
例えば大阪市立大学の文学部(定員30名 センター450:二次400)は、京都大学や大阪大学の文学部に後期試験がないためその出願者が来ます。
河合塾の「センターリサーチ」は今年のボーダーラインを83%(374点)と予想しています。そのラインの累積人数は59人と29人オーバーですが、「上位者は前期で合格するから来ない」という判断です。
自説のために引用します(引用元はリンク切れ)。
セ 二 ボーダー% A B C D 二次力
前 前期 450 : 400 347/450 ( 77 ) 365 353 341 329 60.0
後 後期 450 : 400 374/450 ( 83 ) 392 380 368 356
次に大学発表のデータを見ます。
大学の発表では昨年の後期出願者307名、受験者187名、合格者36名です。この年は欠席者が少なく6倍と倍率は厳しくなりました。合格者の最高点が84%(380点)で、去年のリサーチではだいたい15番目です。
倍率よりも「どの程度上位者が受けに来るか」が合否に直結します。
大阪市立大学のHP、2016年度文学部後期日程の結果
センター試験 個別試験 合計点
最高点 最低点 平均点 最高点 最低点 平均点 最高点 最低点 平均点
380.3 317.5 347.6 310.0 255.0 287.2 658.7 620.9 634.8
引用もと
河合塾によると昨年度よりセンターのボーダーが20点あがっているので最低点を640点と予想すると、ボーダー374(神戸大学前期に合格しても不思議じゃない)+280=654点、二次で昨年の合格者平均点近くは必要です(数字は推定)。
ちなみにA判定392点は京都大学のボーダーです。
前期・後期を「通し」で受験した場合、仮に今年の前期のボーダー347点で不合格だった人なら347+310=657、合格には(昭和的な言い方だと)「逆転満塁ホームラン」が必要です(数字は推定)。
ただし大阪市立大学文学部の後期は文学部らしい文章を読んで自分の意見を述べるタフな小論文なので、合格者の最高点と最低点の差を見る限り、あまり差がつかないともいえます。
したがって受験のセオリーでは後期は「2ランク下げ」、前期大阪大学→後期大阪市立大学、より安全策だと理系なら京都工業繊維大学あたりを考えます。
c 何としても国公立大学に合格したいです。後期はどこを出せばいいですか?
センターの持ち点が結構ある人は、センターの配点が高く、個別試験では差がつきにくい大学で「逃げ切る」のが基本戦略です。愛知県立大学の外国語学部のようにセンター文系科目の点数だけで合否が決まる大学もあります。
ただし小論文や面接を課す大学は要注意です。
神戸大学や大阪市立大学のように難関大学不合格組が集まる大学では、その学部で必要な「大学予備知識」問題を課します。ですから逆転は難しく、高得点者も文意を取り違えると(要約の出来が鍵)アウトの可能性があるので安心できません。
個別試験が小論文だけだとセンターリサーチの判定が「*」なので、合格できそうな錯覚に陥りますが、ちゃんと問題を見て歯が立つか考えましょう。
逆にセンターの持ち点が少ない人は、後期の定員が比較的多く二次試験が学力試験で配点が高い、「後期が本丸」の大学(旧二期校に多い)です。
また大学によっては「前期はオールラウンダー、後期は一発芸型歓迎」という戦略のところもあり、それは配点や入試科目にあらわれています。
前期後期ストレートで出願して合格するのはきわめて難しいですが、可能性があるのは外部からの流入が少ない、コアな生徒が集まる学部・学科です。
実名は企業秘密(笑)ですが、そうした大学の後期試験は「前期の敗者復活戦」の色彩が強く、出題も学科特性が色濃く反映します。
後期の問題が赤本に載っていない大学があります。小論文の著作権の関係だと思いますが、大学の窓口に行けば閲覧できます。そういう「一見さんお断り」大学は情報量が少ない分、過去問との相性がよければ逆転の可能性があります。
最終手段として、過去何年間かのデータから最終倍率が低くなりそうな大学・学部を予想し、とにかく出願して運が回ってくるのを待ちます。
その場合でも出願する以上は納得し、必要な準備をして受験に臨んでください。
*発展
でもそうした予想はほぼ不可能です。「2016年度入試で最難関大学の某学部が後期1.1倍だった、だから諦めてはいけない」と受験産業の人が力説していましたが結果論です。
大学も高校の「出願指導」を重々承知しているので、「ちゃんと納得して出願したか」を見るために後期で面接を課す大学(特に教育学部で多い)もあります。
「合格したければ出願するしかない」ですし、運も実力のうちですが、チャンスが巡ってきたときにそれをつかめるかどうかは努力次第です。受験生が判定システムと「にらめっこ」し続けるのは時間の無駄、勉強あるのみです。
まとめ
- 中期試験も後期試験も見かけの倍率の半分しか受験に来ません。また中期は定員以上の合格者を出します。
- 倍率よりは合格者平均点などをみて「合格には個別試験で何点必要か」を割り出して準備しましょう。
- 後期は前期とは違う人材を求める場合が多く、それは配点や問題に反映されています。「ここなら行ってもいい」「センターの持ち点で勝負できる」「この個別試験なら何とかなる」の3つを満たす大学が理想です。
- 「何としても国公立」の人は「行けるところ」探しをするしかないです。しかし出願したら第一志望です。覚悟を決めて準備しましょう。
- 後期は「運」の要素が強く、できれば前期で合格したいですが、不合格でも気持ちを切らさずやりきりましょう。そのためには「納得」と「準備」です。