ぶんぶんの進路歳時記

学習方法、進路選択、世界史の話題について綴ります

2025年大学入学共通テスト歴史総合・世界史探究徹底研究(1本試験)

はじめに

 感染症拡大の中での2025年の共通テスト、大きなトラブルもなく無事終了しました。

 試験前日に多数のアクセスをいただきました。(人´∀`)アリガトー♪☆

 追試や試作問題、直前の追い込み用「紛らわしいもの」にアクセスが集中しました。おや、どこかの高校が「ふなっしー」の回覧板に当ブログのリンクを貼ったのですか?(アクセス元一番下「platform.classi.jp」)

 この回を貼ってありました。ぜひ感想をお聞かせください。

bunbunshinrosaijki.hatenablog.com

 2025年の共通テストを徹底研究し、現受験生はこの後控える一般入試の抜け漏れチェックに、次世代の受験生は研究に使っていただければ幸いです。

問題 東進の特設ページ 

www.toshin.com

他年度のリンク集

bunbunshinrosaijki.hatenablog.com

使用している写真はすべてパブリックドメインのものです。

追記 2025年6月29日

 大学入試センターのHPに正答率と問題評価・分析が掲載されたので、正答率を追加し、気になった問題にコメントを入れました。外部団体の評価のうち高校教員の方はヨイショの連発で参考になりませんが、全国歴史教育研究協議会のそれはいつになく辛口なので引用しました。

www.dnc.ac.jp

目次

  

1 大問構成

第1問(歴史総合)装いの歴史   

A:日本・清・オスマン帝国の官僚や軍人の装い B:19~20世紀の世界各地の女性の装い

第2問(世界史探究、以下同じ) 世界史上の都市の歴史

A:14世紀半ばのある都市の状況について書かれた年代記 B:ある都市の情報を集めたメモ C:バンコクの地図についての会話文

第3問    資料の持つ文脈や背景

A:アクティウムの海戦 B:『五経正義』が編纂された際の経緯 C:外国人として考古学的な調査を行った人物

第4問    大陸を超えた諸地域の結び付き

A:綿花の貿易についてのグラフを用いた会話文 B:ヴァイキングの活動範囲を示した地図を基にした会話文

第5問 主題についての班別学習

扶余で出土した木簡に関する解説シート、タラ漁の歴史、フライブレッドの歴史、第一次世界大戦中のドイツにおける食糧価格に関する表

2 凡例

① タイプ

一問一答:歴史的用語や内容を選ぶ

年号:年号の知識が必要 時代整序もこの分類

内容理解:教科書の記述内容(背景・経過・影響)を問う

資料:地図、写真、グラフを使った問題で一問一答的な内容

読解:資料問題のうち内容の読み取りを必要とするもの

*「組み合わせ問題」(例:一問一答と資料の読解)は正解を導くためにより必要な力の方に分類した

② 時代

前近代:アジアは18世紀まで、ヨーロッパは中世まで

近代:ヨーロッパの16世紀~18世紀

19世紀:19世紀

20世紀:第二次世界大戦まで

戦後:第二次世界大戦

またぎ:時代をまたぐもの

③ 難易度

◎:「あれといえばこれ」の単純知識問題。正解マスト

○:教科書の記述内容が理解できていれば解答可能。

△:高校生には手が回りにくい範囲、細かい知識、抽象的な思考が必要

▲:高校生には難しい、かなり細かい知識や高度な抽象化が要求される

④ 傾向

セ:センター的

新:共通テストの新傾向

私立:私立個別の短答問題で既出

国立:国公立二次試験で既出

*地域の凡例は省略(「またぎ」は地域またぎ)

⑤ 概念

概念知識が必要な問題

⑥ 正答率

 2年続けて平均点管理ができていないことに批判が相次いだことを受けて、大学入試センターは2023年から設問別正答率を一般に公開しはじめました。発表され次第追加します。ぶんぶんの経験と勘による難易度と併せてみてください。

3 全32問の出題内容ダイジェスト

  タイプ 話題 時代 地域 出題内容 傾向 概念 正答率
1 内容理解 政治 19世紀 西アジア タンジマートの内容 近代化 80%
2 一問一答 政治 19世紀 東アジア 辮髪と洋装から時期を推定する   78%
3 年号 政治 19世紀 ヨーロッパ プロイセン使節団に関するメモの読み取り   76%
4 内容理解 経済 20世紀 東アジア 綿糸の生産量のグラフの読み取り   66%
5 一問一答 政治 20世紀 東アジア 東アジアの女性の装いに関するパネルの読み取り 私立 ジェンダー・政体 42%
6 一問一答 政治 20世紀 ヨーロッパ 1930年代のイタリアのモード公社について   81%
7 内容理解 政治 戦後 西アジア イランの女性の装いのパネルについて 国立 近代化 72%
8 年号 政治 戦後 ヨーロッパ ウーマンリブ男女雇用機会均等法ジェンダー平等の整序 ジェンダー 83%
9 一問一答 文化 前近代 西アジア アズハルはカイロ 私立   60%
10 年号 文化 前近代 西アジア 14世紀のエジプト王朝   39%
11 内容理解 政治 戦後 ヨーロッパ ペテルブルクについて   35%
12 年号 政治 またぎ またぎ トスカネリは15世紀   50%
13 一問一答 政治 19世紀 東南アジア ラタナコーシン朝成立の背景   55%
14 読解 政治 20世紀 東南アジア 20世紀バンコクの状況   76%
15 一問一答 政治 20世紀 東南アジア ここまでの発表のまとめ 抽象化 51%
16 一問一答 文化 近代 ヨーロッパ アントニークレオパトラ』の著者   78%
17 一問一答 政治 またぎ またぎ 則天武后とマリア=テレジア   72%
18 一問一答 文化 前近代 東アジア 五経正義の編者   68%
19 一問一答 文化 前近代 東アジア 鄭玄は漢、孔穎達は唐   56%
20 一問一答 文化 前近代 南アジア 玄奘はヴァルダナ朝   51%
21 一問一答 文化 前近代 またぎ イギリスがインド古典文化を顕彰した理由   76%
22 年号 政治 20世紀 東アジア スタインのことを記した記録の時期   20%
23 資料 経済 19世紀 ヨーロッパ 綿花の輸入量のグラフの読み取り   82%
24 年号 政治 19世紀 アメリ アメリカの綿花輸出量が減っている理由   82%
25 一問一答 政治 前近代 ヨーロッパ ノルマン人の活動穴埋め   72%
26 一問一答 文化 前近代 アメリ 古代メソアメリカ文明の特徴   48%
27 年号 政治 近代 ヨーロッパ ポルトガルのアフリカ西岸探検→コロンブスアカプルコ貿易 グローバル化 63%
28 資料 政治 前近代 東アジア 百済の位置   54%
29 読解 政治 近代 ヨーロッパ 漁業者も戦争参加   74%
30 一問一答 政治 19世紀 アメリ 先住民の扱い   82%
31 読解 政治 20世紀 ヨーロッパ 総力戦の影響 総力戦 79%
32 一問一答 政治 またぎ またぎ ここまでの発表のまとめと次の研究課題 抽象化 92%

4 正解と正誤判定ポイント解説

 問題は各自でダウンロードし、解答して答えあわせしてください。リンクは「ズバリ的中!」ではなく、私立・国公立大学に向けて復習するためのもの。

1.即答で②(ア タンジマート イ イスラーム儀礼に配慮しつつ西洋化を推進)

 知識問題。リード文の「19世紀前半オスマン帝国」からアは即答。イは「帽子が礼拝の邪魔にならないように」から読み取るが、タンジマートの内容から即答。ダミーの「ドイモイ」はベトナムの改革開放政策。「急速な世俗化」はムスタファ・ケマル

bunbunshinrosaijki.hatenablog.com

2.即答で①(あ-W い-Y)

 推理問題風だが知識問題。「あ:辮髪」は清朝のみの風習なので「W:清朝が滅亡するまでの時期」。い:「日本の政治家や軍人が洋装を取り入れた」のは「Y:明治維新以降」。

3.即答で③(日本はプロイセンとの条約以前に他国と修好通商条約を結んでいた)

 年号問題。資料に「1860年」とあるのでプロイセン時代(ドイツ帝国1871年)。日米修好通商条約は1858年で日世歴総共通の年号知識。①ヴィルヘルム2世はドイツ帝国、②シンガポールはイギリス領。④当時日本で条約締結に当たったのは幕府。

4.正解は④(い-Y)

 グラフの読み取り問題に見えるが、実質は綿糸の生産は「あ:織布」か「い:紡績」の二択問題。「X:中国は1910年に国内生産量が国内消費量を上回っていた」は、グラフを見ると機械綿糸の自給率が50%を割っているので不適。言い換え問題。「Y:帝国議会開設後の10年間に日本の国内生産量は5倍以上増加」は1890年(第一議会開催の年)より1900年のグラフが5倍以上になっているので正しい。修能(韓国の共通試験)や近畿大学にこの年号を足し引きする出題が見られる。

5.一瞬考えるが正解は②(東アジアでは独立国、植民地、租界を問わずモダンガールの装いが見られる)

 文中の「独立国」=東京・天津、「植民地」=京城(ソウルの日本統治時代の呼称)、「租界」=上海、と知識を置換する問題。京城はやや細かい(昭南市よりは有名)。①「日本のモダンガールはロングヘアが特徴」モガはショートヘアが多いがパネルにその記述はない。つまりモガや当時の欧米のファッションを暗記している(そしてそれは東アジアでも流行していたに違いないと推理できる)かが問われている。③統監府は日本が大韓帝国保護国とした時代の組織で植民地時代は朝鮮総督府。私立大学の鉄板。④1930年代は中華民国

追記

正答率42%と歴史総合ブロックで最も低いです。「京城」「租界」は世界史探究履修者かつ難関狙いの人にはマスト知識ですが、「三種盛り」しか履修していない生徒にはきついです。

アメリカの「フラッパー」

日本のモダンガール。教科書でおなじみの写真。著作権切れでパブリックドメイン

元ネタ。国際都市上海の「モダンガール」を半植民地主義の視座から捉え直す。

 

6.即答で②(あ-正 い-誤)

 あ:「ムッソリーニ」に対して「ファシズム」「思想や言論を統制」なので○。知識問題。い:資料文に「フランスびいきの消費者がイタリア商品に下す過小評価に対抗」とあるので「フランスからの影響は歓迎」は×。言い換え問題。

7.即答で④(い・え)

 読解問題。「革命の結果女性がヴェールをする」「高校まで男女別学」から「い:挿絵2(男女共学)→挿絵1(ヴェールをしている)」と、「え:イラン=イスラーム革命の結果イスラームの教えにもとづく共和国が成立した」が正解。

 この問題だけだと「共和国は女性の権利を抑圧する (・∀・)ヨクナイ!、前王はエライ!」に見えるが、世俗化(白色革命)を進めたパフレヴィー2世はアメリカの石油会社と結んで私腹を肥やし、秘密警察を使って反対派を弾圧したことも留意したい。東京大学2022年第2問の類題。

8.ちょっと考えるけど年号知識で⑥

 整序問題。メモⅢ「公民権運動の高まりを背景にウーマンリブが起きる=1960年代後半」→メモⅡ「男女雇用機会均等法=1985年」→メモⅠ「国連サミットでジェンダー平等がSDGsのひとつに採択=21世紀(2015年)」の順。

 雰囲気でも解ける(ウーマンリブの結果女子差別撤廃条約(1979年)ができて日本も批准したから法整備が必要になった)。ただしジョンソン大統領時代の公民権法と北爆開始(1965年)は世界史マスト年号。

9.できれば即答で④(ア-カイロ イ-黒死病

 資料の「アズハル=モスク」から「カイロ」は難関私大の鉄板。

追記

全国歴史教育研究協議会は「カイロのアズハル学院を記載していない世界史探究の教科書が多い」と指摘しています。

10.正解は③(軍人奴隷が中心になって成立、モンゴルの西進を阻止)

 資料中の「14世紀」と先ほどのカイロから王朝は「マムルーク朝」、その内容を選ぶ。修能の鉄板である名前を隠して知識をリレーする「反射衛星砲問題」。①「ベルベル人北アフリカイベリア半島」=ムラービト朝、②「北アフリカに起きたシーア派の政権、カリフを称する」=ファーティマ朝、④「クルド人の軍人が創始、十字軍からイェルサレムを奪う」=アイユーブ朝と、受験生の苦手なイスラーム王朝の判別問題だが、これができないようでは私大の合格はない。

追記

予想通り正答率は低いです。イスラーム王朝の名前、場所、時期、特徴は地図を使いながら整理しましよう。

 修能の反射衛星砲問題は共通テスト以前から

bunbunshinrosaijki.hatenablog.com

11.正解は④(空欄の都市が名称変更した経緯の説明)

 これも「反射衛星砲問題」で「血の日曜日事件」から空欄はペテルブルク。授業で冷戦の終結ソ連の解体まで習っていればこの経緯を知っているはず。①「ギリシア正教に改宗」=ウラディミル1世、②「はじめてツァーリの称号を名乗り」=イヴァン3世、③「1918年に臨時政府がここから首都を移す」=首都をモスクワに移したのはボリシェヴィキで1919年のこと。ダミー選択肢が有名知識問題なので消去法で正解可能。

追記

これも正答率が低いです。③に引っかかったのでしょうか。教科書はちゃんと読みましょう。

12.即答で①(×17世紀 トスカネリが地球球体説を主張)

 資料にロシアの文豪が並んでいて、それに興味を持って文化史を調査したという筋立てでリード文と関係ない文化史の正誤を判定する。センター試験で批判されたタイプの問題が新課程で復活。ただし解答の肝は年号問題(コロンブス=1492年の前)。コロンブスは第27問の年号問題にも登場する。同じ問題を2つ出すのは無駄。

13.正解は①(コンバウン朝がアユタヤ朝を滅ぼす)

 「アユタヤ朝がコンバウン朝に滅ぼされて間もなくラタナコーシン朝が成立する」は私立では必要な知識。アユタヤにはコンバウン朝によって破壊された仏像が現在その状態で史跡となっている。東南アジア史にまで手が回らない受験生にはきついかも。②阮福瑛=ベトナム、③ビルマビルマミャンマー)、④インドシナベトナム

参考

trenjoy.com

14.即答で②(あ-正 い-誤)

 読解問題。い:会話文に「旧城外に市街地が発達したのと同時に運河が作られている」とあるので「水上交通が衰退しており」は誤り。

15.即答で②(中原さんのみ正しい)

 世界史探究スペシャル「これまで学んだことを考察し抽象化する」問題と見せかけて単純な知識問題。佐藤さん×:インドシナ戦争の休戦協定はジュネーヴバンコクではない。中原さんは〇だが「ペテルブルクは西欧との結びつきを意識して建設される」は発表内容に出てこない知識。よく見ると問題文に「これまで学んだことを踏まえて」とアリバイ工作がなされている。資料文の読解や抽象的にまとめるだけでは問題を用意できないので暗記知識に頼らざるを得ないという出題者の悲鳴?

追記

正答率はいまいちでした。真面目な生徒が中原さんの考察が抽象的で資料にないから×と考えた?

16.即答で②(あ-Y)

 資料とリード文は「クレオパトラに対する否定的なイメージ」に対する興味深い考察だが、問題は『ハムレット』の作者と、クレオパトラセレウコス朝ではなくプトレマイオス朝というゴリゴリの一問一答なのが惜しい。

17.即答で③(あ-誤 い-正)

 一問一答問題。あ:則天武后武則天)は科挙官僚を重用した。九品中正は魏の制度。い:共通テストのアイドルであるマリア=テレジアの問題。外交革命の知識問題。

18.即答で④(い-Y)

 『五経正義』と言えば「い:孔穎達」。「あ:董仲舒」は「武帝五経を重視するよう提言した」と長く世界史の教科書に載っていたが、最近は疑問視されている。もうひとつはリード文の「官吏の登用試験」から「Y:科挙の実施を踏まえ五経の本文と解釈の統一を図ろうとした」を読み取るが、私立受験者には当たり前の知識問題。

19.即答で③(二つとも可能)

 「註の部分を用いた漢代についての研究」「疏の部分を用いた唐代についての研究」が可能かどうかを判断するという歴史学の方法に関する意欲的な問題だが、文中に註=鄭玄(後漢)、疏=孔穎達(本文中に唐代とあり)と書いてあるので、鄭玄がいつの人かを聞いているだけの文化史知識問題。

20.即答で①(ハルシャ王が北インドの大部分を統一)

 カニンガムについての非常に興味深い資料と論考だが、問題は『大唐西域記』の作者である玄奘が訪れたインドの時代の内容を選ぶという一問一答問題。

21.即答で④(い-Y)

 世界史探究スペシャル。カニンガムはプリニウスが『博物誌』で古代インドの地理をより明確にするためにアレクサンドロスの足跡を追いかけた方法に倣って、『大唐西域記』を使って玄奘の歩みを追いかけている。これに対して考察は「イギリス人が古代インドを黄金期、中世イスラームの時代を暗黒期と捉え、イギリスが暗黒からインドを救い出す(イギリスの力で古代インドの文化を復興する)ことをイギリスのインド支配の正当化の根拠とした」と手厳しい。

 したがって空欄「イギリスがインドの人々を[ エ ]から救い出し」には「い:ムガル帝国の下でのムスリムによる支配」という「言い換え」が該当し、カニンガムと同じ手法は「Y:ルブルックの残した記録を用いたモンゴル帝国についての研究」が該当する。「X:死者の書」は旅行記ではないから不適。

 大英帝国の「まなざし」に関する非常に興味深いリード文で、見掛け倒しの問題が続く中でやっと「歴史的思考力」の問題がキタ━━━(゚∀゚)━━━!!だが、ダミー選択肢が大外しなので即答。

 ルブルックの『旅行記』はモンゴル研究の重要資料。

bunbunshinrosaijki.hatenablog.com

22.正解は⑥(い-Z)

 スタインに関する資料の中に「(遺物を)盗み去ることは不法行為」とあるので、その言い換えである「い」と「スタイン氏が初めてやってきたのは8カ国連合軍が都を占領した時」と「今日までの30年間にわたる調査」から1901年+30年=1930年代のこと「Z:北伐がすすめられていた」を選ぶ。4と同じく年号を足し引きする「近大スペシャル」。「北伐の完了=1928年張学良の帰順」だと計算が合わないが、張学良の帰順は「北伐の一応の完成」で、軍閥が力を失うのがさらに後(幣制改革)。

追記

正答率が32問中最低です。苦手な受験生はそもそも義和団事件の年代があやふやで、逆に「義和団事件と北伐完了の年代を正確に記憶している受験生も「計算が合わない!」と混乱したと思われます。全国歴史教育研究協議会の問題分析も「時期という言葉で1930 年前後がどこまで許容されるか,検討の余地が必要であると考えられる」と指摘しています。

23.即答で①(あ-X)

 「あ」はグラフの通り。ダミー選択肢Yは綿花貿易なのに牧草地の囲い込みの話で外しすぎ。

24.正解は②(加藤さんのみ正しい)

 グラフ問題という名の年号問題。木村さんはグラフの読み取り間違い。加藤さんの言うように南北戦争の年代にイギリスのアメリカからの綿花輸入量が減っている。

25.即答で③(イ-ノルマンディー公国建国 ウ-ビザンツ帝国接触

 イは「ロロ」、ウは地図から即答。

26.即答で④(鉄の釘が見つかっている)

 ヴァイキングアメリカ大陸にいた痕跡の根拠。古代メソアメリカ文明は「③トウモロコシや①ジャガイモの栽培」「④鉄なし、②牛馬なし、車輪なし」で、「大型家畜の痕跡はない」と文中にあるので、外から持ち込まれたのは④。

27.即答で②

 整序問題。ポルトガルのアフリカ西岸進出(15世紀前半)→コロンブスの航海(1492年)→スペインのアカプルコ貿易(コルテス、ピサロの征服の後=16世紀半ば)。

28.即答で④(ア-百済 イ-朝鮮半島 ウ-唐)

 イ、ウはメモ中に書いてある。正解の肝は朝鮮半島の西側は百済新羅かの二択。私大では地図レスで「○○の西部には」という聞き方をする。メモの内容(穀物貸し付けの時の利子率の違い)は興味深い。

追記

26、28はやや正答率が悪いです。古代メソアメリカと朝鮮半島は手が回らないのか過去の共通テストでも正答率が悪いです。難関私大では頻出なのでケアしましょう。

29.即答で①(漁業者も戦争に参加していたと考えられる)

 言い換え問題。フィッシュアンドチップスのうんちく問題。

30.即答で②(エ-保留地に隔離 オ-供給された食材に依存)

 オはパネルの言い換え、エは昨年度も登場。フライブレッドの悲しいうんちく問題。

 小麦粉をこねるネイティブアメリカンアメリカ軍が撮影した写真なのでパブリックドメイン

こんな感じ

31.即答で①(あ・う)

 第一次世界大戦中のドイツの食糧配給制度の話。あ:総力戦 う:グラフの読解。

32.正解は③(あ-Z)

 世界史探究スペシャル。パネルの共通項は「あ:政治権力が食糧事情や食生活に与えた影響」で、それに該当するのは「Z:大躍進政策の失敗により中国で生じた飢饉」。ぶんぶんは授業中寺田ちひろ♡版『高校講座世界史』でこの様子をリ視聴する。

 現行ではこれ。チャプター4。

www2.nhk.or.jp

5 過去回との比較

① タイプ

タイプ 2021本 2021追 2022本 2022追 2023本 2023追 2024本 2024追 2025本
一問一答 13 10 14 16 19 15 17 14 16
年号 5 8 2 5 2 2 2 5 7
内容理解 5 3 6 1 4 11 5 5 4
資料 3 7 5 2 3 3 2 4 2
読解 8 5 7 9 6 2 7 5 3
小計 34 33 34 33 34 33 33 33 32

 新課程初年度ということで気合が入っていて、読む量が多く凝った作りの出題が増えましたが、「正解の肝」は8割以上が一問一答的知識(一問一答、年号、内容理解)です。「読んだらわかる問題」と知識問題の組み合わせ問題も後者が肝になっています。

 教育改革で「暗記からの脱却」「コンテンツからコンピテンシー」が叫ばれましたが、試験はコンピテンシーで身についたコンテンツを試すということです。

 今回は年号知識が肝になる問題が多めです。歴史総合パートでは日本史っぽい日米修好通商条約(1858年)大日本帝国憲法(1889年)男女雇用機会均等法(1985年)が出題されています。「年号の暗記なんて意味ない」という教員の指導を受けていた生徒さんは大丈夫だったでしょうか。

② 傾向

傾向 2021本 2021追 2022本 2022追 2023本 2023追 2024本 2024追 2025本
17 15 19 21 11 18 15 16 14
6 13 8 8 14 9 14 13 15
国立 5 1 1 1 1 0 0 0 1
私立 6 4 6 3 8 6 4 4 2
小計 34 33 34 33 34 33 33 33 32

 共通テストからの新傾向問題(知識問題と読解問題の組み合わせ、文章を読ませて情報を取り出したり言い換えたりする問題)に加えて試作問題で見られた「ここまでの議論を抽象化して次に調べる課題を考える」が登場するなど、見た感じはセンター試験時代と様変わりしました。

 私立っぽい問題は「京城」「統監府」「アズハル=モスク」などやや細かい知識が解答の肝になる問題、「国立」は東京大学の過去問の流用である「イラン=イスラーム革命」につけました。

③ 話題

ジャンル 2021本 2021追 2022本 2022追 2023本 2023追 2024本 2024追 2025本
政治 24 26 28 21 21 32 25 30 22
経済 4 4 2 2 7 1 3 3 2
文化 6 3 4 10 6 0 5 0 8
小計 34 33 34 33 34 33 33 33 32

 政治史中心は相変らずです。今回は文化史問題がケチャップのように出ました。

④ 時代

時代 2021本 2021追 2022本 2022追 2023本 2023追 2024本 2024追 2025本
前近代 11 10 13 13 21 14 16 12 9
近代 6 3 4 6 6 4 2 2 3
19世紀 10 7 8 7 2 3 7 4 7
20世紀 2 5 4 5 4 6 2 5 7
戦後 3 4 4 0 0 0 3 4 3
またぎ 2 4 1 2 1 6 3 6 3
小計 34 33 34 33 34 33 33 33 32

*またぎ問題3題の選択肢は、前近代2、近代3、19世紀1、20世紀1、戦後2

 19世紀が増えたとはいえ私大入試の定番であるヨーロッパのナショナリズムと国民統合の辺りはスカスカ(アメリカの先住民と綿花の話)、20世紀もムッソリーニと総力戦の話題だけです。

⑤ 地域

地域 2021本 2021追 2022本 2022追 2023本 2023追 2024本 2024追 2025本
東アジア 11 7 10 7 9 5 7 13 7
東南アジア 0 2 1 0 3 0 0 2 3
西アジア 1 2 4 4 3 1 2 3 4
南アジア 3 1 0 1 0 1 3 0 1
ギリシアローマ 1 3 0 3 3 2 3 2 0
ヨーロッパ 16 12 13 15 14 18 13 9 10
アメリ 0 0 1 3 0 2 5 2 3
アフリカ 0 2 0 0 0 0 0 1 0
オセアニア 0 0 3 0 0 0 0 0 0
日本 0 0 0 0 0 0 0 0 0
またぎ 2 4 2 0 2 4 0 1 4
小計 34 33 34 33 34 33 33 33 32

*「またぎ問題」4問の選択肢はヨーロッパ6、東アジア4、南アジア1

*日本関連は「東アジア」に吸収しました。 

 「共通テストになって資料活用にこだわるので東アジアとヨーロッパの出題に偏っている」という批判はぶんぶんだけでなく各方面から出ていました。

 今回は元資料にこだわらず一般書や史跡巡りを利用しながら西アジア、南アジア、東南アジアの問題を増やしています。

 またセンター試験の定番であった、リード文中の語句に下線を引いて「下線部に関連して」と複数の時代・地域を出題する「ショットガン問題」も復活しました。

⑥ 難易度

難易度 2021本 2022本 2021追 2022追 2023本 2023追 2024本 2024追 2025本
16 18 16 17 17 19 22 22 21
10 10 11 11 10 9 9 7 9
8 6 6 3 7 5 2 3 2
0 0 0 2 0 0 0 1 0
小計 34 34 33 33 34 33 33 33 32

参考 本試験の平均点

追記 1月22日 予想通り易化

2021年 63.49

2022年 65.83

2023年 58.43

2024年 60.28

2025年 68.35

追記 1月23日 河合塾の共通テストリサーチ、歴史総合・世界史探究の度数分布。教員向け全国動向の資料より引用

 世界史は得意・苦手が分かれる傾向ですが、今回は上位層がいつも通りに加えて成績中位層が膨張して平均点を押し上げています。


www.keinet.ne.jp

 問題の難易度は昨年の世界史Bに比べてやや易化とぶんぶんは評価します。

 理由は私立的な細かい知識が少ないこと、年号問題はマスト年号が多く、時代整序問題も雰囲気で正解できること、読解問題は読んだらわかるものと判断したからです。

 1月20日時点の河合塾は65点(昨年度より+4点)、東進は66点(同+5点)、ベネッセ・駿台連合は64点(同+7点)と予測しています。

追記 1月23日

 やはり受験生には易しかったようです。来年はまた「ピウスツキ」や「BRICs」のような私大の細かい知識を出して得点を下げるしかありません。(´・ω・`)

今後に向けて

  • 教科書レベルの知識が定着していれば、どんな試験にも対応可能。ただし必ず5W1Hとともに覚える
  • 教科書の記述内容を理解する(意味あるものとして暗記する)ためには、授業中から比較と関連付け、抽象化を欠かさない
  • アウトプットは用語から内容・内容から用語の双方向で行い(出し入れ)、さらに用語から関連する別の用語を次々と連想する(芋づる)を心掛ける
  • 年号の記憶は不可欠。ただし覚える年号は必要最小限にとどめ、知っている年号から事項をつないで年代を判断する

おわりに

 2025年の歴史総合・世界史探究本試験は、入試改革で「コンテンツからコンピテンシー」と大騒ぎした割には、多くの問題が一問一答の知識で解答可能という出題でした。

 特に歴史総合は「暗記科目からの脱却」という触れ込みでしたが、世界史では日本史の知識問題、日本史では世界史の知識問題が出題され、「話が違う」と感じた人もいたのではないでしょうか。

 全国歴史教育研究協議会の評価を見ると、歴史総合について、特に日本史側の問題に多くの注文がついていました。

  • 歴史総合を必履修のみで履修して共通テストを受験する受験者にとっては難しかったのではないだろうか(問1 ヨーロッパが中国で貿易を行っていた港の位置)。
  • 個別な歴史事象一つを基準に正答を選ぶ必要が出てくると,細かい知識の暗記を助長しかねない(問2 清仏戦争)。
  • 穀物法」を知っていなければならないというメッセージになってしまう(問3)
  • 三つの出来事(特にキューバ危機とプラハの春)が有機的な関係で並んでいるわけではない以上,受験者は何を手掛かりに前後関係を考えればいいのか,出題者が意図したところを伺いたい。(問7)

 最後に次のようなことが提言されていました。

特にこの「歴史総合」の科目は,「日本史探究」「世界史探究」との組合せで受験している受験者だけではなく,必履修科目の組合せの一つとして受験している受験者も存在する。そのような生徒は日本史探究,世界史探究を履修していない可能性が高い。つまり,日本史探究や世界史探究で学習する知識や概念を前提に正答を導かざる得ない問題は,こういった生徒にとって圧倒的に不利になってしまう。

(中略)

歴史総合の理念に合致した,時代を概観し,歴史の推移に着目した出題が一定数ある一方で,西暦や個別の知識のみに依拠して正答を選ばせる問題が散見された。歴史総合という教科が教科設置時に掲げられた理念を維持するためには,こういった入試問題において,その理念を出題にまで浸透させることが不可欠であり…(後略)

 「『歴史総合』のみの履修で受験する生徒もいるのだから「探究」の学習を前提にした出題はよくない」はおっしゃる通りです。ぶんぶんは「三種盛り」の歴史総合と「歴史総合・日本史探究」「歴史総合・世界史探究」は別の問題にするべきと思いますが、プライドの高い役人には難しいでしょう。

 またぶんぶんは「知識と思考を分けるのはナンセンス」とする立場なので、思考力を試そうとしても、正解の「肝」が最終的に西暦や個別の知識に収斂することを完全に排除するのは無理と考えます。とはいえ2025年度の試験に関しては指摘の通り「単発の知識を知ってるか知らないか勝負」が目立ちます。

 いつもは「お手盛り」の外部団体がいい指摘をしているのですから、これらが来年度の出題に活かされることを期待します。