ぶんぶんの進路歳時記

学習方法、進路選択、世界史の話題について綴ります

国立・私立大学世界史直前チェック(移民の歴史③アメリカ合衆国と黒人)

 入試直前チェック、移民の歴史の第3回はアメリカ合衆国の黒人(アフリカ系住民)についてです。

 2021年度入試ではBLM運動の高揚からこのトピックが出題されると踏んで1月末に補習を行い、その教材をブログ用に整えて2月にアップするつもりが、知らないうちに5月になっていました。(´・ω・`)

 今ちょうど授業でやっているので、遅まきながらあげておきます。

 画像はすべてウィキメディアコモンズパブリックドメインからの借用です。参考文献は①と②にあります。

*呼称は便宜上「黒人」で統一します。

過去回 

bunbunshinrosaijki.hatenablog.com

bunbunshinrosaijki.hatenablog.com


目次

 

 1 アメリカ合衆国と黒人奴隷

①  建国とプランテーション開発

17世紀:(1      )植民地で黒人奴隷を導入

    タバコプランテーションの労働

18世紀後半:独立後、北部では順次奴隷制が廃止

18世紀末:[2     ]が綿繰り機を発明

    南部で(3   )プランテーションが拡大 奴隷の需要が急増

1807年 奴隷貿易の禁止→奴隷の子孫を奴隷として売買

補足

 ヴァージニアというとたばこで、銘柄にもそれらしい名前がありますし、ポカホンタスの話にも出てきます(某社のアニメはほぼファンタジー)。

kotobank.jp

 入植初期は白人年季奉公人が利用されていましたが、より安定的に労働者を供給するために17世紀末から黒人奴隷の使用が拡大します。

 独立戦争の立役者であるワシントンジェファソンの実家は黒人奴隷を有するヴァージニアのプランテーションでした。ジェファソンは1807年に奴隷貿易禁止を実現しますが、自身は黒人奴隷の女性を愛人にしていたそうです。 

綿花プランテーションの様子

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 綿繰り機は綿繊維を種子から速く簡単に分離する機械で、生綿の生産を飛躍的に向上させました。南部は産業革命が進行するイギリスに綿花を輸出し、奴隷貿易禁止後もその子孫を使用してプランテーションを拡充します。

 イギリスとの経済的結びつきを強める南部に対して、米英戦争後にイギリスからの自立を強める北部は保護関税政策を求め、南部と対立します。

コネチカット州ハムデンのイーライ・ホイットニーミュージアムで展示されている19世紀の綿繰り機モデル。トム・マーフィー7世撮影。

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② 北部と南部の対立

北部 商工業 連邦制と(4    )政策を主張 奴隷制反対

南部 綿花プランテーション 州権制と(5    )主張 奴隷制存続

1820年(6    )協定 北緯36度30分以北に奴隷州は作らない

1847年(7    )共和国の独立

    アメリカ植民協会が西アフリカに解放奴隷を入植

1850年 カリフォルニア州は自由州に 逃亡奴隷の扱い厳格化(1850年の妥協)

1852年[8    ]の『アンクル・トムの小屋

1854年(9         )法

    新州における奴隷制の可否は住民が決定

    →(10     )党の結成

1857年 ドレッド=スコット判決

1859年 ジョン=ブラウンの反乱 白人の奴隷制反対蜂起

1860年 共和党の[11      ]が大統領に当選

1861年 南部諸州が(12      )を結成 内戦開始(南北戦争

1863年 (13     )宣言 反乱地域の奴隷を解放すると宣言

1865年 内戦終了 憲法修正第13条奴隷制の廃止

    68年に市民権、70年に選挙権が憲法の修正で承認される

補足

 オハイオ州で教師をしていたストウは悲惨な奴隷の生活を見聞していました。『アンクル・トムの小屋』は1851年に反奴隷制度運動の機関誌に連載された後、1852年に単行本として刊行され、1年間で30万部売れたとされています。

 出版当時は大きな反響を呼び、奴隷解放への世論を喚起しましたが、公民権運動ではトムの従順な態度に否定的な評価もされました。もっともストウはトムをキリストの受難になぞらえていて(描作中の人物名がそれを暗示)、それが従順な態度に見えるのかもしれません。

『アンクルトムの小屋』初版本

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新装版 新訳 アンクル・トムの小屋

新装版 新訳 アンクル・トムの小屋

 

  ドレッド=スコットは黒人奴隷の名で、彼は所有者に連れられて自由州であるイリノイや、ミズーリ協定で奴隷制が禁止されたミネソタ准州に住んだことがあることから、自由の身となったとして裁判に訴えますが、1857年に最高裁で却下されました。

 最高裁の判決は「アメリカ合衆国憲法はもともと黒人を市民と認めていないから黒人には提訴権がないし、ミズーリ協定は奴隷所有者の財産権を侵害するもので憲法違反」つまり黒人は「財産」に過ぎないという考えです。(`・ω・´)

 ミズーリ協定のライン。黄色がミズーリ州(奴隷州)で、濃い緑色のところが奴隷州禁止。しかしミズーリ州の西隣のカンザスに大陸横断鉄道を通す話が持ち上がり、奴隷を認めて南部の支持を得ようとしたことが「カンザスネブラスカ法」の背景です。

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  リンカンは「黒人奴隷制度には反対だが、南部の奴隷制はやむなし」という立場(不拡大論)でしたが、カンザスネブラスカ法で奴隷制が固定化されそうになり、共和党に参加します。

 大統領就任時も彼は分裂を避けるために南部へは奴隷制廃止を求めませんでしたが、南部が合衆国から離脱しアメリカ連合国南部連合 ジェファソン=デヴィス大統領)を結成するとそれを認めず開戦します。

 西部は北部とも南部とも利害関係がありましたが、北部は1862年ホームステッド法で西部の支持を取り付けます。

 最終的に北部は南部を屈服させ、合衆国は北部主導の連邦国家となりますが、これは同時期のイタリアやドイツの統合戦争と同じく、19世紀後半の国民国家建設と国民統合の「産みの苦しみ」であったといえます。

 南北戦争の黒人部隊を描いた作品。黒人は認められるために命をかけて白人以上に「アメリカ人」であることを示さなければならない。他の差別にも通じます。 

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空欄

1ヴァージニア

2ホイットニー

3綿花

4保護関税

自由貿易

ミズーリ

リベリア

8ストウ(夫人)

カンザスネブラスカ

10共和

11リンカン

12アメリカ連合国

13奴隷解放

 

入試問題で演習

センター試験世界史B 2014年

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解答 ア:ストウ(夫人) イ:リンカン

*発展 下線部⑦、北部の奴隷解放運動は中産階級の白人女性の地位向上運動の一環として盛り上がり(背景にクェーカー教会。禁酒運動も似た感じ)、女性参政権運動につながります。

 脱走奴隷のハリエット・タブマンは奴隷を逃亡させる「地下鉄道」の運動に身を投じ、奴隷解放運動のフレデリック・ダグラスやジョン・ブラウンとも親交を持ちました。彼女は奴隷制の廃止だけでなく女性の地位向上も訴えました。

https://americancenterjapan.com/wp/wp-content/uploads/2015/11/wwwf-pub-women.pdf

 タブマンはアメリカ新20ドル紙幣の図案になりそうだったのですが、トランプ大統領に「ちゃぶ台返し」されたそうです。


映画『ハリエット』本編冒頭映像

 

大阪大学 2011年

アメリカ大陸の綿花生産の中心であった地域で起こった大規模な紛争の原因となった経済的な利害対立について 100字程度

指定用語 奴隷制 保護貿易 資本主義

解答例

南部は奴隷制による綿花プランテーションが発達し、イギリスとの経済的結びつきが強く自由貿易を求めていた。一方北部は工業化と資本主義化が進んで奴隷制には反対、イギリス商品の流入を防ぐため保護貿易を主張した。100字

 

 続く。