現在各地で大学入試センター試験の説明協議会が開催されています。今年は2020年度実施(2021年度入学者選抜)大学入学共通テストについても説明があります。
とりわけ今年の11月には高校二年生の「英語成績提供システム」の申し込みが始まります。高校にとってはぶっつけの部分です。
英語民間検定そのものも既報の通り問題山積ですが、何も解決しないまま2021年1月は確実に近づいています。
本日はこのシステムについて発表資料をもとに解説します。担任は「進路が教えてくれない」とボヤく前に、高校二年生は「担任が何もわかっていない」と嘆く前に、このブログで主体的に学びましょう。
1 「大学入試英語成績提供システム」って?
大学入試センター(以下DNC)は、大学入試で英語4技能を必須化して高校生の英語力を向上させたいが、1(ア:自前でやりたくない イ:技術的に難しい ウ:そもそも民間検定ありき)という事情から、英語民間検定で代用します。
新テスト的マーク式問題:
1について、正しいと思われるものを①~⑧の中からひとつ選べ。
①アのみ正しい ②イのみ正しい ③ウのみ正しい ④アのみ誤り
⑤イのみ誤り ⑥ウのみ誤り ⑦すべて正しい ⑧すべて誤り
自前でやらない分、成績はDNCで一元的に管理して大学に提供します。受験生はいちいち検定団体に証書の発行を請求しなくていいし、大学はいちいち証明書を袋から出して確認しなくていいし、高校は誰がどの検定を受験したか一目でわかるし、メリットが多いとのことです。
*お言葉を返すようですが、証明書はコピー可の大学もあるし、大学は調査書も紙で請求するから封筒は開けるし、検定の結果は業者から学校に届きます。
2 どういう流れ?
①高等学校等の在学生の場合
- 高校二年生は11月に「共通ID」の発行を高校を通じて申し込む。申し込みは任意。(図の①。以下同じ)
- 校長が在学を一括証明し、DNCへ郵送する。
- 1月に「共通ID通知はがき」が学校に到着、10桁のIDが個人に発行される。②
- 登録内容に変更がある場合、高校の先生にアカウントが発行され、「英語受験状況確認システム」にアクセスして行う。
- 11月以後に発行を申し込む場合は、翌年の1月から9月まで「追加申し込み」する。申し込みは学校経由。「確認はがき」はおおむね30日後に自宅に届く。
- 申込期間は、集中発行申込期間が2019年11月1日~11月14日。追加発行申込期間が2020年1月27日~9月10日。
- 共通IDの有効期限は1浪の3月末まで。申し込みに料金は不要。
②初年度のみ、今年高校三年生の特例
- 学校判断で、個人で直接申し込むか学校経由で申し込む。任意。
- 個人で申し込む場合は、先述の「追加申し込み」と同じ日時から受付。住民票など本人確認の証明書が必要。
- 学校経由の場合は2019年12月2日~12月10日に申し込み。進路未決定かつ浪人視野の人向け。この時期なら住民票は不要。
ん~?
つまり、配布、必要事項記入、回収、チェック、校長決済、送付というセンター試験の段取りをもう一回やれと?しかも二年生で。
先生、仕事が増えましたよ!
また進路の先生は生徒の検定の受験状況(点数はわからない)を確認したり、訂正や変更、卒業したかどうかも入力する必要があります。めっちゃ個人情報です!
さらに「誰がどの検定を受験したか」把握するための担任用アカウントも作るらしいです。三年生で受験だから、途中で全員分の組席を更新する?(なおシステムにはクラスしか入らない)それも進路の仕事?
「働き方改革」じゃなかったっけ?
③受験
- 三年生の4月から12月までに最大2回、「共通IDを使っての英語民間検定の受験」ができる。③
- 検定を申し込むときに「共通ID」を登録する。たくさん受けて一番良い回を後から申告するのではない。
- 検定の結果は業者から個人に通知される。④
- 生徒が大学を受験すると⑤、大学はDNCにその成績を請求し⑥、DNCは大学へ成績を送付する。⑦
- DNCが大学に送るのは、総合CEFR段階的表示と総合スコア(一部検定については4技能別のCEFR・スコア・合否も)。
- 受験期間は4月から12月までの間をA、B、Cと区切り、各期間で大学への成績提供開始時期が異なる。
国公立大学志望者には二学期からは勉強一色なので10月以降は非現実、6月から9月までには決着させておきたいです。すると受験生が一定の時期に集中するので、検定団体は全員希望日に受験させられます?
④特別措置(経済配慮、離島・へき地、入院、海外在住)
- 共通IDが来てから例外措置申請書、対象となる検定の成績証明書(原本)をセットにして在校生は学校経由(卒業生は個人)で申請する。申請は高校三年生になってから(時期はリンク参照)。
- 例外措置区分によって条件、措置内容、申請期間が違う。
- 参加を取り下げたTOEICは二年生で受験したものは有効。
*経済的配慮と離島・へき地在住の人は、三年生で共通ID使って検定を受けると「お金も時間もあるじゃないか」とみなされて二年生の検定が使えません。
追記 9/1
入院による配慮と海外在住についてはCEFRの縛りはありません。
入院については、 受検年度の4月1日から 12 月1日までの期間中、病気やけがにより入院していた期間が通算90 日以上の人が対象です。重病です。(´・ω・`)
この場合「受検年度の前年度の参加試験の結果」が1回使えます。また高校三年生で病から復活して検定試験を受けたらそちらも有効です。
ただし前年度に受検した場合、有効な検定は参加試験と同種同名の試験で「大学入試英語成績提供システム参加要件」の要件を満たしているものに限定されます。
具体的には「英検(従来型)」「英検CBT(準1級)」「IELTS」(いろいろあるけど省略)は不可。「GTEC」も2019 年度は教員が監督するから不可です。
*しかし2019年8月に英検CBT準1級はこっそりと認められています。もう何でもありです。また離脱したTOEICも2年生での受験分は有効です。もう継ぎ接ぎだらけです。
⑤その他注意事項
- 英語民間検定の減免申請を希望する場合は申込書にチェックを入れる。ただし扱いは各団体による。
- いつまでにどの資格試験を受験する必要があるのか(ないのか)は大学によってバラバラ、どのように成績に扱う(扱わない)かもカオスなので、受験予定の大学の募集要項は必ず確認する。
- 共通IDは一人につきひとつ発行。有効期限内に複数のIDを発行すると不正行為で成績提供システムに登録された成績はすべて無効。
- 検定試験で不正行為をしたら同様に全登録成績が無効。
- 当日検定に欠席した(まったく受験しなかった場合。一部でも解答したらダメ)、自然災害などで検定試験自体が成立しなかった場合はノーカウント。
- うっかり3回以上共通IDを書いた場合は、最初の2回が有効。
検定も入試の一部ですから、入試同様に厳重な監督(各教室複数、廊下番、別室)が必要なのは言うまでもありません。検定ってそんなにガチガチでしたか?
3 本当にできるの?
資料ではDNCは「英語民間検定を共通テストの代わりに使うことの問題点」には触れずに、段取りの話に終始しています。
*DNCからすれば、「各検定のCEFRをどう活用するかは大学の判断」、民間検定のCEFRや採点体制も業者が「大丈夫」と言っているなら大丈夫、そこは「not my own business 」ということでしょうか。
このシステムは業者が採点(複数団体のグレードが異なる複数の試験)→DNCへ成績提供→大学へ提供、と反射衛星砲顔負けに移動するデータを「共通ID」一本で確実に「名寄せ」ができるのか、しかもぶっつけ本番です。
IDの書き間違い、紛失など、官僚には信じがたい事態も起こります(国語記述式で経験済み)。
文部科学大臣はツイッターで「やって反省」とつぶやいているとお聞きしましたので、現在の高校二年生約57万人が受験する一生に一度(かもしれない)の大学入試は「日本の教育改革の礎」になるとご理解ください。
おわりに
私は高校現場のものです。成り行きを見守りつつ、実施を前提に準備をします。
ただ「封筒ぐらいなんぼでも開けたるで従来型の検定でかまへん」「学校信じるよって校長さんの一筆でええわ」という生徒目線の大学が増えると、検定を受験しなかった生徒に「ほな検定いらんゆうてる大学を前期後期でいこか」と言えます。
*関西弁なのはインプリです。
あるいはTOEICに続いて「採算が合わない」とシステムから降りる検定団体(特にあの公益法人)が出ると、黄信号が灯るかもしれません。
民間にはコスト意識を(関連グッズで回収する利益相反行為はダメ)、大学にはプライドを持ってほしいものです。
最新版
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英語民間検定を共通テストに使う問題点。ツイッター情報。
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