ぶんぶんの進路歳時記

学習方法、進路選択、世界史の話題について綴ります

2020年度からの大学入学共通テストについて(2019年7月 英語民間試験号外2)

 2020年度(2021年度入学者選抜)大学入学共通テストの英語民間検定、ここ数日めまぐるしい(お見苦しい?)動きがありました。

ウェブで公開されている内容に一部説明会に行った人から聞いたことを補足してまとめます。

 

1 ベネッセ 高校にGTECを受験する気があるかどうか聞く

 

 日本経済新聞 2019年5月16日

www.nikkei.com

 

 報道によると、GTECの大学入学共通テスト版は6月14日(日)、7月19日(日)、10月4日(日)11月1日(日)の4回実施です。

 受験回数は最大2回まで、会場は全国47都道府県の公開会場、料金は6,700円です(5,000円台って話から値上げ)。

 監督はベネッセがすべて手配するとのことです。ただし現時点で会場は未定です。「候補地」だけが示され、高校に「意向調査」を行っています。

 つまり「お宅の生徒はGTECを受検するだろうから、いつどこで何人ぐらい受検するか教えてくれたら、それに基づいて会場を決める」です。( ´_ゝ`)フーン

 ん? 検定って個人で申し込むものだけど、まさか学校が生徒に強(以下略)

 なお「意向調査」の結果によっては、集中を避けるためか6月と7月から1回、10月と11月から1回、という制限も考えているそうです。

 

 あと説明会に行った先生の話では、高等学校が実施会場に選ばれる可能性もあるそうです。これは公平性の観点から問題です。

 当然ベネッセの人が施設を借りる手続きをし、朝から校舎の開け閉め、掃除、机の入れ替え、教室内の張り紙撤去に落書き消しなどすべてやってくれると解釈します。

 高校の先生や生徒が会場設営を手伝ったら、湊かなえの『高校入試』みたいにトラップを仕掛ける人がいるかもしれません。 

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  また申し込みは年明けということですが未定です。前の検定の結果を見て再度受験できるのか、国公立大学の前期後期入試みたいに2回分一括申し込みでしょうか(2019年のGTECは1年分を一括で5月に申し込み)。

 

まとめ:

  • ベネッセの力を持ってすら、1年前に会場を押さえていないなど問題が山積
  • 新テスト版の運営は社員とバイトがぶっつけでやる
  • 高校を会場にする時は掃除用具入れもよく見ましょう

 

2 実用英語技能検定(以下「英検」) 白旗を上げる

 

  日本英語協会は2019年6月26日付けで「英検2020 2days S-Interview」(以下S-Interview)については、吃音など合理的配慮が必要な受験生を対象に実施し、それ以外の受験生については「英検CBT」または「英検2020 1day CBT」を受検をしてください、と発表しました。

 「5月下旬にこの決定をし、6月5日に大学入試センターにお伺いを立てたのに一向に正式な返事がないので公表した」と恨み節です。

大学入試センターは、7月2日に後述するTOEICの報告のついでにしらっと「英検の申し出を認めました」と書いてあります。官僚はとことんやら(以下略)。

 

 その後「できる限り公平で厳正なる試験を目指す」「高校に受験すべき試験のご選択を委ねるものではない」「受験意向の調査を事前にお願いすることはいたしません」と、事情通には笑いをこらえきれない内容が続きます。

 本題の「S-Interviewは白旗」は、「面接官が前任校で受験生の先生だったということもあり得、過去にさかのぼれば両者がどこかで面識がある可能性もあり」と、公平性の確保が難しいのが理由です

 ただし吃音の人にはCBTは難しいので特別措置でインタビュー形式を残すということです。ん、自己矛盾?

 もうちょっと読むと「採点の公平性を追求するため面接官以外に複数の採点作業を行う人件費等の費用が増大し」とあります。この辺が本音でしょう。

 従来型英検は3技能でふるい落とすから2次でインタビューが可能です。50万人規模で全員に4技能という制度設計が英検には無理難題です。

 しかし4技能を向上させる意図で行われる入試制度が「対話」を台無しにするとは矛盾の極みです。

   

まとめ:

  • 「S-Interview」は白旗。合理的配慮が必要な受験生に限定
  • 公平性を真面目に追求すればするほど損をする模様
  • 従来型英検は私立大学で活用できます

 

3 TOEIC 共通テストから撤退する

 

mainichi.jp

 

大学入試センターの発表

https://www.dnc.ac.jp/albums/abm.php?f=abm00036196.pdf&n=%E6%9C%AC%E4%BD%93%E8%B3%87%E6%96%99.pdf

 

 各メディアで大きく報道されました。

    実施団体であるIIBCは「受験申し込みから実施運営、結果提供までの処理が想定していたより複雑で、責任をもって対応を進めることが困難だと判断した」そうです。

 TOEICはリスニングとリーディングの「L&R」、スピーキングとライティングの「S&W」からなり、別々に実施する予定でしたが、共通テストに参加する英語民間検定は4技能一括が原則。価格、実施地域、内容(「L&R」多め)と最初から無理がありました。 ひょっとしてサクラ?

 なお毎日新聞はCEFRを「語学力の共通の物差しとされる」と説明、他にも検定の採点方法の詳細が非公開、現時点で試験会場や日程が決まっていない試験がある、受験生の地理的・経済的不平等から生ずる高校・受験生・保護者の不安、大学側も民間試験の活用には慎重な姿勢、に言及しています。(*・ω・)bグッジョブ!!  

 

まとめ:

  • TOEICは制度について行けないから撤退
  • 本年度の僻地、経済的事情等向けの特別措置は生きているが、そういう人が高額で受験地が少ないTOEIC受験してB2以上取るのは絵に描いた餅

 

4 「英検2020 1day CBT」は2019年9月から予約開始

 

 日本英語協会は2019年7月2日付けで「英検2020 1day CBT」の概要を発表しました。

3技能はPBT(今年の特別措置のみWはCBT)、スピーキングはCBT

高いセキュリティレベルを誇るテストセンターでの実施

テストセンターは全国186エリア、約260か所に配置予定

内容は従来型英検に限りなく近いので特別な準備は不要

料金は準2級6,900円、2級7,500円

スピーキングの新方式は英検のウェブサイトにトライアルを置く予定

  テストセンターで受験なので今までのような一斉受験ではなく、都合のいい日を予約して受験です。当然個人申し込みです。

 

 問題はその予約方法と受験日です。

 受験には「予約申し込み」と「本申し込み」の2ステップが必要

2020年4月~7月実施分は、2019年9月に予約、2020年2月に本申し込み

2020年8月~11月実施分は、2020年1月に予約、2020年6月に本申し込み

予約申し込みをすれば座席は必ず確保される

本申し込みの時に受験者が受験日時、受験会場を選択できる。先着順

予約金3,000円 返金不可(本申し込みで残りの代金を払う)

 ん~?

 2020年の6月7月に受けたかったら、この9月に予約? ここまで新テスト用英語検定の概要が不透明で、どの検定を受験するか生徒も先生も困惑しているところに、いきなり2か月後ですか! 

    また今の三年生が浪人した場合、予約なしで必ず受験できるのでしょうか?

 6月26日の「S-Interview白旗宣言」で、高校は「喧騒の中でタブレットに言葉をぶつける検定」に傾きつつあります。英検の発表は謎だらけです。

 

まとめ

  • 「英検2020 1day CBT」、3技能はPBT、スピーキングはCBT
  • テストセンターで受験。隣との仕切りがある分料金は高い
  • 9月から最初のグループが予約開始で予約金3,000円必要で帰ってこない
  • 現高校三年生は自分が浪人する姿を予知することも必要
  • 本申し込みで任意の日に受検可能。ただし先着順

 

追記:苦情殺到で高卒生向けに別の予約期間を設けるそうです。HP参照。

 

 おわりに

 2020年度に受験を迎える生徒と保護者にはまったく迷惑な状態になっていると言って過言ではないです。

    しかし学校現場にいれば、必須とする国立大学がある以上、生徒に何かを受験してもらうしかありません。

 国立大学には文科省に忖度しないで、混乱を避けるために生徒ファーストの決定をお願いしたいです。「使わない」は角が立つなら「校長の一筆で代替可能」「任意で共通テストより点数が高いと採用」「制度が整わない今年は見送り」などあります。

    本日は「推移を注視したい」で締めさせていただきます。