2020年度実施(2021年度入学者選抜)大学入学共通テスト、前回は民間英語検定を必須としない国公立大学・学部(212件中67件)を紹介しましたので、今回は民間英語検定を必須とし、出願要件や加点に利用する大学(残り145から詳細未発表31を引いた114件)を、河合塾調べ(前回参照)を利用して紹介します。
前回
bunbunshinrosaijki.hatenablog.com
おさらい:国立は青字
2019年6月末現在、英語民間英語検定を必須としない国公立大学(北から)
① 利用しない 15件(赤字が追加)
公立はこだて未来 北海道 岩手県立 東北 筑波技術(保健科学)
都留文科(文-英文以外) 岐阜県立看護 愛知県立芸術(音楽)
京都工芸繊維 岡山県立 名桜
追記:北海道大学は2022年度入試から提出任意で提出があれば加点に変更(2019年10月)
② 学校長が発行する英語能力証明書や理由書、他の検定結果で代替可 27件
青森公立(前)(後) 国際教養 埼玉 お茶の水女子 東京 東京医科歯科
東京農工 一橋 浜松医科 名古屋 滋賀医科 京都 京都府立医科
尾道市立(経済情報)(芸術文化) 広島市立(国際)(情報科学) 九州 熊本
宮崎公立
③ 提出は任意で、提出されれば活用 25件
北見工業 釧路公立 北海道教育 秋田公立美術 筑波 筑波技術(産業技術)
群馬県立県民健康科学 群馬県立女子(文) 高崎経済(経済) 東京芸術(音楽)
長岡造形 富山(人文・理・工) 愛知教育 愛知県立 京都市立芸術
追記:愛知県立大学は2021年度入試では使用しないに変更(2019年10月)
1 出願要件とする大学
大学(学部等) | 日程 | 提出 | 出願要件 | CEFR | 得点換算 | 備考 |
旭川医科 | 前・後 | ● | ||||
小樽商科(昼-数学重視枠) | 前 | ● | CEFR段階別評価は問わない | |||
帯広畜産 | 前・後 | ● | A1 | |||
札幌市立 | 前 | ● | A2 | |||
宮城教育 | 前・後 | ● | A1 | |||
群馬県立女子(国際コミュ) | 前 | ● | A2 | ● | 共通テスト英語の配点の2割程度を上限として加点 | |
群馬県立女子(国際コミュ) | 後 | ● | A2 | |||
高崎経済(地域政策) | 前・後 | ● | ||||
千葉 | 前・後 | ● | A2 | |||
電気通信 | 前・後 | ● | A2 | |||
東京外国語 | 前・後 | ● | A2 | |||
東京海洋 | 前・後 | ● | ||||
東京工業 | 前 | ● | A2 | ● | 個別試験「英語」に30点を上限に加点 | |
横浜国立(経済) | 前・後 | ● | A2 | |||
横浜国立(経営、理工、都市科学(都市社会共生以外)) | 前・後 |
● | A1 | |||
横浜国立(教育) | 前 | ● | A1 | ● | 共通テスト英語の配点全体に対してCEFRレベルに応じた割合の分加点 | |
横浜国立(都市科学-都市社会共生) | 前・後 | ● | A1 | ● | 共通テスト英語の配点全体に対してCEFRレベルに応じた割合の分加点 | |
上越教育 | 前・後 | ● | A1 | |||
金沢 | 前 | ● | A1 | 一部の学類はA2以上を必要とする | ||
福井(国際地域) | 前・後 | ● | A1 | ● | ※C1以上で共通テスト英語の得点を満点とみなす | |
福井(国際地域以外) | 前・後 | ● | A1 | |||
山梨県立(国際政策、人間福祉-福祉コミュ) | 前・後 | ● | A2 | |||
山梨県立(人間福祉-人間形成、看護) | 前・後 | ● | A1 | |||
信州(教育-英語教育) | 前・後 | ● | A2 | ● | ||
岐阜(医-医) | 前・後 | ● | A2 | |||
静岡文化芸術(デザイン) | 前・後 | ● | A2 | |||
滋賀 | 前・後 | ● | A2 | |||
滋賀県立 | 前・後 | ● | A1 | |||
京都教育(教育-学校-英語) | 前・後 | ● | A1 | ● | ||
京都教育(教育-学校-英語以外) | 前・後 | ● | A1 | |||
大阪 | 前 | ● | A2 | |||
神戸 | 前・後 | ● | A2 | |||
神戸市看護 | 前・後 | ● | A2 | ● | ※CI以上で共通テスト英語を満点とみなす | |
和歌山県立医科 | 前・後 | ● | A2 | |||
鳥取(農-共同獣医) | 前 | ● | A2 | |||
鳥取(医-医) | 前 | ● | A2 | ● | 共通テスト英語の得点に満点の2割度を上限として加点 | |
島根(医-医) | 前 | ● | A2 | |||
山陽小野田市立山口東京理科(工) | 前・中 | ● | A1 | |||
山陽小野田市立山口東京理科(薬) | 中 | ● | A1 | ● | ||
徳島(医-医、歯-歯、薬) | 前・後 | ● | A2 | |||
徳島(医-医、歯-歯、薬以外) | 前・後 | ● | A1 | |||
香川(医-医) | 前 | ● | A2 | |||
香川(医-医以外) | 前・後 | ● | A1 | |||
香川県立保健医療(保健医療-看護) | 前・後 | ● | ||||
愛媛(医-医) | 前 | ● | A2 | |||
愛媛(医-医以外) | 前・後 | ● | A1 | |||
愛媛県立医療技術 | 前・後 | ● | A1 | |||
高知 | 前・後 | ● | A1 | |||
福岡教育 | 前・後 | ● | A1 | |||
長崎(多文化社会) | 前・後 | ● | B1 | |||
長崎(多文化社会以外) | 前・後 | ● | A2 | |||
大分(医-医) | 前 | ● | ● | |||
宮崎県立看護 | 前・後 | ● | ||||
沖縄県立看護 | 前・後 | ● | A2 | |||
琉球(医-医) | 前・後 | ● | A2 |
55大学・学部(約26%)が出願要件、うち11大学(約5%)は加点も行います。
要求は、1件がCEFR不問、21件がA1(英検3級=中学卒業)、26件がA2(英検準2級=高校1年修了)、1件がB1(英検2級=高校卒業)です。
「A1以上」の大学は、「国大協のガイドラインは遵守」+「A2では受験生が来ないかも?」=受験さえしてれば可、という判断と拝察します。
A2以上は難関、医学部、準難関、英語系学部です。この辺を受験する生徒はおそらく高校1~2年には従来型英検2級(B1)を取得します。「高三でもう一度業者にお金を払いなさい」と拝察します。
唯一B1以上はグローバル人材育成を目指す長崎大学多文化社会学部で、「受験者は減ってもいいから英語に堪能な学生がほしい」という覚悟の表れでしょう。
2 CEFRの段階に応じて加点をする大学(必須としない大学は除く)
未達:対照表の帯表を下回ってCEFRなし ×:出願要件未満
大学(学部等) | 日程 | 満点 | C2 | CI | B2 | BI | A2 | AI | 未達 | 備考 |
小樽商科(昼-数学重視枠以外) | 前・後 | |||||||||
公立千歳科学技術 | 前・中 | |||||||||
室蘭工業 | 前・後 | |||||||||
青森県立保健 | 前・後 | |||||||||
弘前 | 前・後 | 40 | 40 | 35 | 30 | 25 | 20 | 10 | ||
岩手 | 前・後 | |||||||||
宮城 | 前・後 | 加点は試験区分ごとに共通テスト英語の満点の2割とする | ||||||||
秋田 | 前・後 | 加点の満点は英語科目の満点の2割以内とする | ||||||||
秋田県立 | 前・後 | |||||||||
山形県立米沢栄養 | 前・後 | |||||||||
福島 | 前・後 | 40 | 40 | 40 | 35 | 30 | 25 | 10 | 0 | |
福島県立医科 | 前・後 | |||||||||
茨城 | 前・後 | 50 | 50 | 50 | 50 | 40 | 25 | 10 | 不明 | |
茨城県立医療 | 前・後 | ※ | ※ | ※ | 20 | 10 | 0 | 不明 | ※B2以上で共通テスト英語を満点とみなす | |
宇都宮 | 前・後 | 50 | ||||||||
群馬 | 前・後 | 20 | 20 | 20 | 16 | 12 | 8 | 4 | 0 | |
群馬県立女子(国際コミュ) | 前 | 共通テスト英語の配点の2割程度を上限として加点 | ||||||||
埼玉県立 | 前・後 | |||||||||
千葉県立保健医療 | 前 | |||||||||
東京芸術(美術) | 前 | 40 | 40 | 40 | 40 | 30 | 20 | 10 | 0 | |
東京工業 | 前 | 個別試験「英語」に30点を上限に加点 | ||||||||
横浜国立(教育) | 前 | 20% | 20% | 20% | 20% | 20% | 20% | 10% | × | 共通テスト英語の配点全体に対してCEFRレベルに応じた割合の分加点 |
横浜国立(都市科学-都市社会共生) | 前・後 | 20% | 20% | 16% | 12% | 8% | 4% | 0% | × | 共通テスト英語の配点全体に対してCEFRレベルに応じた割合の分加点 |
長岡技術科学 | 前 | |||||||||
新潟 | 前・後 | 40 | 40 | 40 | 35 | 30 | 25 | 10 | ||
富山(人文、理、工以外) | 前・後 | |||||||||
石川県立 | 前・後 | |||||||||
金沢美術工芸 | 中 | |||||||||
公立小松(国際文化交 | 前・中 | |||||||||
福井(国際地域) | 前・後 | ※ | ※ | ※C1以上で共通テスト英語の得点を満点とみなす | ||||||
都留文科(文一英文) |
前・中 |
※ |
※ |
※ |
※B2以上またはそれに相当する英語の能力を有している場合、共通テスト英語の得点を満点とみなす | |||||
信州(教育-英語教育) | 前・後 | |||||||||
信州(教育-英語教育以外) | 前・後 | |||||||||
長野 | 前・中 | 40 | ||||||||
長野県立(グローバル) | 中 | B1以上を段階的に評価し、共通テスト英語の得点とは別に加点する | ||||||||
岐阜(医-医以外) | 前・後 | |||||||||
岐阜薬科 | 中 | |||||||||
静岡 | 前・後 | 50 | 50 | 40 | 32 | 24 | 16 | 8 | C2かつ大学が示す条件を満たした場合、本学個別学力検査の検定料を全額免除 | |
静岡県立 |
前・中・後 |
最高点は共通テスト英語の成績と合わせた英語全体の満点に占める割合を2割程度とする(看護は共通テスト総得点の2割程度) | ||||||||
静岡文化芸術(文化政策) | 前・後 | |||||||||
愛知県立芸術(美術) | 後 | |||||||||
豊橋技術科学 | 前 | |||||||||
名古屋工業 | 前・後 | 20 | 20 | 20 | 15 | 10 | 10 | 0 | ||
三重 | 前・後 | 10% | 10% | 10% | × | CEFRレベルに応じた加点の比率を設定し、共通テスト英語の成績に外付けで加点 | ||||
京都教育(教育-学校-英語) | 前・後 | |||||||||
京都府立 | 前・後 | |||||||||
大阪教育 | 前・後 | 英語全体の満点に占める割合を1割から2割程度を上限に加点 | ||||||||
神戸市看護 | 前・後 | ※ | ※ | × | × | ※CI以上で共通テスト英語を満点とみなす | ||||
兵庫教育 | 前・後 | 50 | 50 | 50 | 40 | 20 | 0 | 0 | ||
公立鳥取環境 | 前・後 | |||||||||
鳥取(地域) | 前・後 | 共通テスト英語の得点に満点の5%程度を上限として加点。(共通テスト英語の満点は超えないものとする) | ||||||||
鳥取(工、医-生命科学) | 前・後 | 共通テスト英語の得点に満点の2割程度を上限として加点 | ||||||||
鳥取(農-生命環境農、医-保健) | 前・後 |
共通テスト英語の得点に満点の1割程度を上限として加点(農-生命環境豊は共通テスト英語の満点は超えないものとする) | ||||||||
鳥取(医-医) | 前 | 共通テスト英語の得点に満点の2割度を上限として加点 | ||||||||
島根(医-医以外) | 前・後 | |||||||||
広島 | 前・後 | 大学の定める条件をすべて満たした場合、共通テスト英語の得点を満点とみなす | ||||||||
山陽小野田市立山口東京理科(薬) | 中 | |||||||||
山口 | 前・後 | |||||||||
鳴門教育 | 前・後 | |||||||||
香川県立保健医療(保健医療-臨床検査) | 前 | |||||||||
高知県立 | 前・後 | 配点は共通テスト英語の配点の25% | ||||||||
北九州市立 | 前・後 | |||||||||
九州工業 | 前・後 | |||||||||
佐賀 | 前・後 | 共通テスト英語の得点にCEFRの段階に対して設定した係数を乗じたものを上限に加点 | ||||||||
大分(医-医) | 前 | |||||||||
大分(医-医以外) | 前・後 | |||||||||
大分県立看護科学 | 前・後 | 40 | 40 | 40 | 40 | 40 | 40 | |||
鹿屋体育 | 前 | 40 | ||||||||
沖縄県立芸術 | 前・後 | 配点は共通テストの外国語試験の配点の1割 | ||||||||
琉球(医-医以外) | 前・後 | 共通テスト英語と合わせた英語全体の満点の1割jを上限として加点 |
70大学・学部(約33%)が「得点換算する」ですが、詳細を発表しているのは6月末日の段階で17件です。
「段階別に加点」は13件で、満点が40~50点、5~10点刻みです。3大学はA2から、兵庫教育はB1から加点です。
三重大学はC1から加点ですが、7月に文科省が発表した新CEFR対照表によると、英検のS-CBTはB2まで、S-InterviewはC1までですが合理的配慮が必要な人限定です。またGTEC共通テスト版もB2までです(GTEC -CBTは県内実施なし)。
つまり県内で行われる英検とGTECは受けてもお金の無駄なので、三重大学しか考えていないなら、いくら学校の先生が「GTEC全員受験」と言っても無視してIELTSやTOEFLなど学習指導要領を超える難しい検定の準備をするべきです。
なお三重大学の入学者の4割は三重県民、残り4割が愛知県民で、C1の検定を近くで受験できます。三重大学はことあるごとに県内の生徒に来て欲しいと言ってる割にはこれでは愛知県民の方が有利です。
それとも三重大学は最初っからそんな英語力の高い生徒は来な(以下略)。
出典
見なし得点は4件で、そのうち福井と神戸市看護はC1以上で共通テストを満点と見なします。こちらも英検とGTECを受験してはいけません。
静岡大学は「C2で受験料免除」になっていますが、これは居住地域外でIELTSを受けた人に対する補償金という位置づけです。まあそんな人(以下略)。
まとめ
英語民間検定を必須と発表している国立大学は、決して文科省に不利な扱いを受けることを恐れて「忖度」しているのではないと信じています。
各大学の教育方針に照らし合わせて検定が必要と考え、また国大協のガイドラインに従うべきと判断したからだと拝察します。
*ガイドラインを決めた時の座長の大学はガイドラインを守っていません。この「わだかまり」が足並みが揃わない原因?
当然、各検定のCEFRの対照表や採点の疑義から選抜の公平性が損なわれる危険性、検定業者が高校で対策教材を販売するという利益相反行為、保護者負担の増加、地域間格差など国立大学であれば見逃せない事実を知った上での判断です。
学問の府も所詮は組織、中等教育が利権化して高校・受験生・保護者が不利益を被るより監督官庁との関係が大事でしょう。
ただ国立大学の良さを肌で知っている私には、権力におもねる国立大学は私が生徒に勧めたい国立大学ではない、それだけです。
態度を明らかにしていない大学の発表をお待ちしています。
最後に、教授世代にとって高校生の英語検定といえば「英検」でしたが、今回の「英語成績提供システム」に限って言えば、
英検、ちょっと詰んでいる?
という情報は共有しておいてください。