ぶんぶんの進路歳時記

学習方法、進路選択、世界史の話題について綴ります

地域医療の現場を(ほんの少し)見学する@南伊勢町

 先日、県教委主催の高校生向け地域医療について考えるセミナーが南伊勢町であったので、一緒について行きました。

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こちらをお借りしました。

www.sozai-library.com

 

www.minami-ise.jp

 

 南伊勢町は2005年10月1日に南勢町・南島町が合併して発足しました。

 漁業が主要産業で、遠洋漁業以外にも五ヶ所湾内で養殖が盛んに行われています。

 山間部ではみかんの栽培も行われており、「セミノール」の栽培が国内ではじめて開始されたことで有名です。

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南伊勢病院屋上からの五ヶ所湾の様子。今の建物だと東日本大震災規模の大津波に耐えられないので、高台に新病院を建築する計画です。

 

 人口は12,928人(2018年7月)、東西約50kmの間に漁村が点在します。

 高齢化率(65歳以上が人口に占める割合)は2015年のデータでは49.10%(全国平均26.60%)と高齢化が深刻です。

 

 津市から自動車で約2時間、南島メディカルセンターと町立南伊勢病院を見学しました。

 

www.miekosei.or.jp

 

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駐車場がヘリポートになっています。ドクターヘリなら伊勢赤十字病院まで約10分、三重大学付属病院にも20分以内で到着します。

せっかくなので昔撮影したドクターヘリの写真

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 1968年開院の南島病院が、2012年3月に南伊勢町との公設民営、指定管理者制度(JA三重厚生連病院)のもとで「南島メディカルセンター」に生まれ変わりました。

 内部は地元の木材がふんだんに使われていて暖かい雰囲気です。入り口近くに診察室、検査室(CTも完備)、薬局が集約されています。

    リハビリルームが充実していて(センター長が整形外科がご専門)、高齢者の方が訓練をされていました。

    訪問看護ステーションもありました。南伊勢町は集落が点在していて、診療所に通いづらい方、自宅療養を望む方もみえます。

 奥に行くと、入院病棟(12床)と介護老人保健施設(水脈(みお)の里 29床)がナースステーションを挟んでつながっています。

 一般病棟は基本「急性期」と「回復期」用で、病気が治れば退院する仕組みです。

 しかし高齢者は完全に回復することは難しく、家に帰って家族が介護するか、介護認定を受けて老健に入所するか(といっても空いているとは限らない)、そうこうするうちにまた体調を崩して入院、ということが続きます。私の父がそうでした。

    この施設だと切れ目なく同じ医師や看護師が関わることができます。

 

*発展:「療養病床」は慢性期の患者(医療療養病床)、要介護認定を受けた高齢者(介護療養病床)ですが、後者は2017年度末で廃止され(移行期間あり)、「介護老人保健施設」等への移行が進んでいます。背景には医療措置が少なくなっても高齢者の入院が続くこと、それによる医療費や社会保障費の圧迫があげられます。詳しくはこちらを参照。

www.irs.jp

 

    センター長の式田先生から高校生に向けて「医療業界はますます制限が多くなってきている。でも医者のいいところは『今自分ができることは自分しかできない』という使命感にある。どこにいても患者は目の前にいる、社会貢献をしている達成感がある」というメッセージをいただきました。

 

感想

 NHK『プロフェッショナル仕事の流儀』にも取り上げられた自治医科大学出身の中村伸一さんは、福井県の名田庄診療所で行政を巻き込み、介護スタッフ、保健師と緊密に連携し、患者さんと家族を支えるシステムを作り上げます。

 「病ではなく人を診る」と中村さんは述べていましたが、この南島メディカルセンターからは「地域が一体になって高齢者を支えるシステムを作る」という思いが感じられました。

 しかし常勤の医師は2名、夜間の救急はできないなど難しい面もあります。

 事務部長さんは「地域医療は継続することに意味がある」と言われていました。

 

*発展:南島メディカルセンターはベッド数が20床未満なので「診療所」に該当します。次に訪問した南伊勢病院は「病院」なので当直も必要、常勤医師5名に大学病院からの応援を得て何とか当直を回しているそうです。

 

 私が住んでいる地域も高齢化率が高く、医師不足が深刻な場所です。明日は我が身、地域をあげて考えなければいけない課題だと思いました。

 参加していた高校生のみなさん、医師になったら是非私の地域にも来てください(笑顔)!

 

*発展:こんな記事も見つけました。ツイッターボタンがあるからリンク大丈夫ですよね?

www.nhk.or.jp

yomidr.yomiuri.co.jp

 参加した医学部(地域推薦を考えているそうです)志望の高校生には、今回の経験を出発点に、地域医療の課題についてさらに考えて欲しいと願います。

 

おわりに 

 南伊勢病院および南島メディカルセンターのみなさん、そして何より大勢で押しかけた集団を暖かく?見守っていただいた院内のみなさん、ありがとうございました。

  南伊勢町役場で「たいみー」グッズをいただきました。

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