2018年6月18日に独立行政法人大学入試センターから「『大学入学共通テスト』における問題作成の方向性等と同年11月に実施する試行調査(プレテスト)の趣旨について」が発表されて、2020年度実施(2018年度高校1年生が受験)の「大学入学共通テスト」(以下「共通テスト」)について少し見えてきました。
今回は7月に参加したセンター試験説明会や学習会の内容をもとに、ここまでわかってきたことをまとめます。
高大接続や「深い学び」など理想については紹介済みなので省略します。
資料1 6月18日の発表
http://www.dnc.ac.jp/news/20180618-01.html
資料2 リンク集 英語関係はその2
bunbunshinrosaijki.hatenablog.com
*内容は2018年8月現在です。
Q1 2020年度から実施の「共通テスト」の実施教科・科目は?
A1 学習指導要領は変わらないので現行のセンター試験と同じ科目が実施されます。英語および別言語もそのままです。資料1、別添1。
Q2 今の2年生が浪人したら救済措置はあるの?
A2 同じく学習指導要領は変わらないので「過年度卒業者用の別の問題は作成しない方向で検討しています」とのことです。
なお調査書の様式も変わりますが、作り替えることは事実上不可能なので、生徒の不利にならないよう配慮するそうです(説明会より)。
Q3 外部資格・検定試験の活用って具体的にどうするの?
A3 大学入試センターは、外国語科の科目のうち「英語」については、2020年度から2023年度まで、各大学はセンターが問題を作成し共通テストとして実施する試験と、民間の試験実施主体が実施する資格・検定試験とのいずれか又は双方を利用できることとしています。
センターは各大学による資格・検定試験の活用を支援するため「大学入試英語成績提供システム」を設け、本システムに参加する資格・検定試験(2018年3月に公表)について、受検生から申出のあった回の成績を一元的に集約する予定です。
流れはこうです。
- まず高校2年生の時に学校を通じて大学入試センターに「共通ID」の発行を申し込みます。
- 大学に提供される資格・検定試験のスコアは、高校3年生の4月から12月までの間に受検した2回までが利用できます。
- 受験生は資格・検定試験の受検申し込みの際に、センターからあらかじめ個人ごとに発行されたID を記載して「今回のスコアを大学受験に使います!」と意思表示します。
- 検定団体からセンターに受検生の成績が自動的に送付されます。
- センターが要請のあった大学等に対し受験生の成績を提供します。
- 提供される成績は、各試験のスコア、ヨーロッパ言語共通参照枠(CEFR)の段階別表示および合否がある場合はその合否、が基本となります。
資料1、別添3のスクリーンショット。
ん? ちょっと待って!
1:受検に関して
- 共通IDの発行は学校を通じて行います(現役生の場合)。学校長が検定を入試に必要とする生徒の在学を一括証明して、書類を学校単位でセンターに提出します。今のセンター試験の出願と同じ段取りです。
校長先生、仕事が増えますよ!
- 各種検定を大量に受けて最も点数が高いスコアをセンターに申告するのではありません。「今回の検定を入試で使うと決めてIDを登録し受験する」が2回まで可能ということです。
- 生徒ほぼ全員が大学進学を目指す「進学校」はおそらく2回分全員受験の機会を設けると思いますが、他の検定を使用する生徒もいるでしょう。
- 地方都市や僻地だと、学校が会場になる実用英語技能検定(以下「英検」)やGTECが候補になると思われますが、関東ではTEAPを活用している私立大学が増えています(検定については資料2の2を参照)。
- 「共通テスト」を利用しない総合型選抜(現AO入試)、学校推薦型選抜(現推薦入試)にも成績提供が可能なので、これらを受験したい人は早めにスコアが欲しいし、逆に一般試験オンリーの人はギリギリまで勉強したいです。
つまり「これ受験に使います」の申告する際に、検定の種類および受験時期が生徒によってバラバラになる可能性があります。
また英語の授業で検定対策をするといった本末転倒な指導が行われる可能性も否定できません。
英語の先生、仕事が増えますよ!
2:スコアとCEFRの判定の対照表について
センターの資料によくわからない帯表がついています(下図。資料1、別添5のスクリーンショット)。
ここで問題になるのはグレード別の検定です。
表の説明
- 「英検」は各級で試験が分かれていて、希望する級を受検します。成績は「英検CSE」というスコアと「級の合格・不合格」で示され、さらに「新英検」ではCEFRの判定も表示される予定です。
- 例えば英検2 級(高校卒業レベル)の試験を受けて、CSE が2000 だった場合、1980が合格ラインなので 2 級合格、CEFRはB1となります。
- CSEが1900点の場合、2級不合格ですが帯の中なのでCEFRのA2は判定されます。
- CSEが1700点だった場合、帯の下限1728点を下回る点数なのでCEFRが判定されません。つまりこの検定結果は入試に使えません!
- CSEが2400点とぶっちぎりの高得点をとっても(2級の満点は2600点)、帯は2299までしかないので、2級のCEFRの上限であるB1と判定されます。それぐらいの力があったら準1級合格でB2狙った方がいいです。
つまり英検を入試に利用する場合は、自分の実力にあった級を程々のスコアで合格する必要があります。
*参考:子どもが高校2年生の時に取った英検準1級のCSE。B2相当です。
高校1年生でイギリス語学研修に参加した時のクラス分け証明書です。CEFRのB2相当クラスでした。
その語学学校では日本の生徒はB2が限界、C1相当はヨーロッパ圏の生徒ばかりでした。子どもと同宿のフランス人はホストファミリーと環境問題についてガチで議論していたそうです。
*発展:2017年度「英語教育実施状況調査」によると、2017年12月時点の調査結果では、英検準2級以上(高1レベル CEFRのA2)を取得している高校三年生の割合は15%、検定未受験だが「同等の英語力を有していると思われる」生徒の割合24.3%を加えると、39.3%となります。
2013年に閣議決定された「第2期教育振興基本計画」(2013~2017年度)では、高校卒業段階で英検準2級から2級程度以上の英語力を身につけた生徒の割合を「50%以上」にすることを目標に掲げていました。
6割がA1(加えて24%は検定に興味なし?)の状態で、小数点を争う入試選抜に外部検定を利用するって意味(以下略)。
Q4 高校の先生的には「英検」と「GTEC」が2強ですか?
A4 実用英語技能検定の「従来型」は参加要件を満たしません。新たに参加要件を満たす「公開会場実施」(英検2020 2 days S-Interview) 「1日完結型」(英検2020 1 day S-CBT)が2019年度から実施になります。
日程や運営、会場数等の詳細は今後発表される予定です。ただ全員に4技能を課すので当然検定料は上がります。
また同一のテストを受験してスコアを出す仕組みではないため、上述のようなややこしいことが発生します。
そうすると4技能が半日で試せて、価格が比較的安く、学校で実施できて、同一のテストでCEFRがA1~B2まで判定できるGTECの「ひとり勝ち」のように思えます。
しかし「大学入学英語成績提供システムに関する基本資料」の「資格・検定試験実施主体に関する要件」に次の文言があります。
試験監督及び採点の公平性・公正性を確保するための方策を公表していること。
その際、次の(1)及び(2)の要件を満たしていること。
(1)会場ごとの実施責任者及び各室ごとの試験監督責任者が、受検生の所属高等学校等の教職員でないこと。それ以外の試験の実施に協力する者としては、同教職員の参画を認めるが、この場合には研修の受講や誓約書の提出を課すこと。
(2)受検生の所属高等学校等の教職員が採点に関わらないこと。
現行のGTECは バリバリ(1)に抵触します(ほぼ模擬試験です)。
実施者のベネッセコーポレーションの話では、次年度からは学校の施設は借りるものの監督その他はベネッセが手配するそうです。
当然検定料は上がります。また公平性を保つために、公式スコアの日に日本全国、僻地を含めたすべての会場で同時間帯に、専用アプリが入った大量のタブレットを一斉に起動させて検定ができるかどうか、疑問が残ります。
Q5 大学は共通テストの英語と外部資格・検定試験の活用はどう考えていますか?
A5 今一番大学側で議論している(もめている?)部分です。
続く。