はじめに
2025年の共通テストを徹底研究、今回は旧課程者用の世界史Bです。出題内容は旧課程用といいながら世界史探究のテイストに近く(それはいいのか?)、新課程の過去問研究に使っていただければ幸いです。
使用している写真はすべてパブリックドメインのものです。
問題はこちらから 産経新聞 消えたら大学入試センターのページへ行きましょう。
目次
1 大問構成
1世界史上の文化と文物
Aアケメネス朝とギリシア B中国の文字文化 Cベニン王国の工芸品
2世界史上の支配と従属の関係
A中世のイギリスとフランス B19世紀イギリスの労働者
3帝国の制度や政策
A後漢までの諸王朝が滅亡した要因 Bイギリス経済の歴史
C15~20世紀にかけてのロシア・ソ連の領土と人口の変遷
4世界史上の植民地と宗主国との関係
Aフランスの植民政策 Bインドの独立運動
5近現代におけるアメリカ合衆国の影響力
2 凡例
① タイプ
一問一答:歴史的用語や内容を選ぶ
年号:年号の知識が必要 時代整序もこの分類
内容理解:教科書の記述内容(背景・経過・影響)を問う
資料:地図、写真、グラフを使った問題で一問一答的な内容
読解:資料問題のうち内容の読み取りを必要とするもの
*「組み合わせ問題」(例:一問一答と資料の読解)は正解を導くためにより必要な力の方に分類した
② 時代
前近代:アジアは18世紀まで、ヨーロッパは中世まで
近代:ヨーロッパの16世紀~18世紀
19世紀:19世紀
20世紀:第二次世界大戦まで
戦後:第二次世界大戦後
またぎ:時代をまたぐもの
③ 難易度
◎:「あれといえばこれ」の単純知識問題。正解マスト
○:教科書の記述内容が理解できていれば解答可能。
△:高校生には手が回りにくい範囲、細かい知識、抽象的な思考が必要
▲:高校生には難しい、かなり細かい知識や高度な抽象化が要求される
④ 傾向
セ:センター的
新:共通テストの新傾向
私立:私立個別の短答問題で既出
国立:国公立二次試験で既出
*地域の凡例は省略(「またぎ」は地域またぎ)
⑤ 概念
学会で話題になっているテーマ
3 全33問の出題内容ダイジェスト
タイプ | 話題 | 時代 | 地域 | 出題内容 | 難 | 傾向 | 概念 | |
1 | 一問一答 | 政治 | 前近代 | 西アジア | アケメネス朝の王とそのしたこと | ◎ | 新 | |
2 | 資料 | 政治 | 前近代 | 西アジア | アケメネス朝の範囲に含まれる場所 | ▲ | 私立 | |
3 | 読解 | 政治 | 前近代 | ギリシアローマ | アテネに関するメモの正誤 | ○ | 新 | |
4 | 読解 | 文化 | 前近代 | 東アジア | 草書が生まれた背景 | ○ | 新 | |
5 | 読解 | 文化 | 前近代 | 東アジア | 中国の書跡が日本に与えた影響 | ○ | 新 | |
6 | 一問一答 | 政治 | 前近代 | アフリカ | 16世紀以前のアフリカの出来事 | ◎ | セ | |
7 | 読解 | 政治 | 19世紀 | ヨーロッパ | 工芸品からみられるアフリカとイギリスの意識 | ◎ | 新 | 植民地支配 |
8 | 一問一答 | 政治 | 前近代 | ヨーロッパ | 1066年以前のイングランドの出来事 | ◎ | 新 | |
9 | 一問一答 | 政治 | 前近代 | ヨーロッパ | プランタジネット朝の出来事 | ◎ | セ | |
10 | 年号 | 政治 | 前近代 | ヨーロッパ | 中世イギリス社会について | ◎ | セ | |
11 | 年号 | 政治 | 19世紀 | ヨーロッパ | 女性の権利に関する整序 | ◎ | セ | ジェンダー |
12 | 一問一答 | 政治 | 19世紀 | ヨーロッパ | 世界史上における労働者の動き | ◎ | セ | |
13 | 読解 | 政治 | 19世紀 | ヨーロッパ | 工場法に関する解説の読み取り | ○ | 新 | ジェンダー |
14 | 内容理解 | 政治 | 前近代 | 東アジア | 外戚と王莽のしたこと | ◎ | 新 | |
15 | 一問一答 | 政治 | 前近代 | 東アジア | 中央集権的な政策 | ◎ | セ | |
16 | 内容理解 | 政治 | 前近代 | 東アジア | 清と明の中央集権のあり方 | ○ | 新 | |
17 | 内容理解 | 経済 | 19世紀 | ヨーロッパ | 自由貿易政策 | ○ | 新 | |
18 | 一問一答 | 経済 | 19世紀 | ヨーロッパ | イギリスの自由貿易政策 | ◎ | セ | |
19 | 読解 | 経済 | 19世紀 | ヨーロッパ | イギリスの自由貿易政策についての考察 | ◎ | 新 | |
20 | 年号 | 政治 | またぎ | ヨーロッパ | ロシアの領土拡大の表の読み取り | ○ | セ | 大陸国家 |
21 | 内容理解 | 政治 | またぎ | ヨーロッパ | 問20の背景 | ◎ | セ | |
22 | 一問一答 | 政治 | 近代 | ヨーロッパ | イヴァン4世とピョートル1世のしたこと | ◎ | 新 | |
23 | 資料 | 政治 | 19世紀 | ヨーロッパ | アルジェリア侵攻を開始した王とその場所 | ◎ | セ | |
24 | 一問一答 | 政治 | 19世紀 | ヨーロッパ | 第三共和政のベトナムに関する出来事 | ◎ | セ | |
25 | 内容理解 | 政治 | 19世紀 | ヨーロッパ | 第三共和政の対外進出についての考察 | ▲ | 私立 | BLM |
26 | 年号 | 政治 | 20世紀 | 南アジア | インドの民族運動整序 | ○ | セ | |
27 | 内容理解 | 政治 | 20世紀 | またぎ | 塩の行進の影響と類似する事例 | ○ | 新 | 大衆運動 |
28 | 内容理解 | 政治 | 19世紀 | アメリカ | 米英戦争の影響 | ◎ | 新 | |
29 | 内容理解 | 政治 | 戦後 | アメリカ | アメリカとイギリスが関わった事例 | △ | 私立 | |
30 | 内容理解 | 政治 | 20世紀 | アメリカ | アメリカ合衆国の保守化傾向 | ○ | 新 | BLM |
31 | 内容理解 | 政治 | 20世紀 | ヨーロッパ | ミュンヘン会談の内容 | ◎ | セ | |
32 | 年号 | 政治 | 戦後 | ヨーロッパ | キューバ危機から冷戦終結までに起きた出来事 | △ | 私立 | |
33 | 読解 | 政治 | 戦後 | アメリカ | キューバ危機の顛末 | ◎ | 新 |
4 正解と正誤判定ポイント解説
問題は各自でダウンロードし、解答して答えあわせしてください。リンクは「ズバリ的中!」ではなく、私立・国公立大学に向けて復習するためのもの。
1.即答で⑤(い-Y)
知識問題。ペルセポリスを建設したのは「い:ダレイオス1世」でその業績は「Y:王の道と呼ばれる幹線道路の整備」。「あ:キュロス2世」は建国者でメディア、新バビロニア(この時ヘブライ人をバビロン捕囚から解放)、リディアを征服した。
2.かなり難しい正解は④(aとbのみ含まれる)
a、b、cの地点がアケメネス朝の最大領域に含まれるかを問う。教科書には「エーゲ海北岸からインダス川に至る大帝国」とあり、b(エジプトのメンフィス付近)は○、c(ガンジス川、パータリプトラ付近)は×だが、a(ビザンティオン)を「含まれる」と言い切れるのは教科書の図版が目に焼き付いている人。
リンク先参照。Achaemenid Empire, Darius the Great period(BC500). Author Kaiser&Augstus&Imperator
3.正解は①(二人とも正しい)
読解問題。尾形さん○、教授の「ギリシア人がアケメネス朝の文化に強く惹かれ模倣していた」の言い換え。荒川さん○、「アテネ帝国」の詳しい説明。
4.正解は③(Ⅰ-う)
空欄[ ア ]は反射衛星砲問題。「李斯」→「秦」→「Ⅰ:半両銭」、もう一方は資料の「刑罰が複雑化して行政文書が増えたために早書きの草書体は生まれた」の言い換えである「う」が適する。
「篆書から隷書が、隷書から草書・行書が、最後に楷書が生まれた」というのは隣席の書道の先生に教えていただきました。
5.正解は①(メモ1のみ正しい)。
メモ1○。資料3の王羲之を「蘭亭序の作者」と言い換え、資料4の内容(10世紀半ばの小野道風が王羲之の再来と呼ばれている)を「国風文化に時代を通じて尊ばれ」言い換えている。メモ2×。「遣唐使の停止以後は中国の影響を受けない日本独自の文化」は資料4およびメモ1と矛盾する。日本史探究にも「国風文化は日本独自の文化ではない」という出題がある。
6.即答で(ソンガイ王国の時代にトンブクトゥがイスラームの学芸都市として栄えた)
一問一答マスト知識。①アクスム王国は大西洋ではなく紅海を経由する海上交易で栄えた。新課程の教科書に出てくる。③アドワの戦いは19世紀末で16世紀以前ではない。④マンサ=ムーサはガーナ王国ではなくマリ王国の王。
トンブクトゥのモスク。
7.即答で③(二人とも正しい)。
会話文の言い換え。武田さんのメモ「アフリカ縦断政策を採っていたイギリス」の部分は世界史の暗記知識必要。
8.即答で②(あ-Y)
資料『アイヴァンホー』を読まなくても解説の「アングル人や[ ア ]人が七王国を形成」から「あ:サクソン人」は即答。1066年(ノルマン=コンクェスト)よりも前のことは「Y:アルフレッド大王のデーン人撃退」。アングル人は2023年の共通テスト本試で出題。在庫一掃セール?
『アイヴァンホー』はウォルター・スコットが1820年に発表した長編小説。架空の主人公を歴史的な出来事の中に入れる手法の元祖ともいわれています。リチャード1世(第3回十字軍に出征)が統治する12世紀末のイングランドが舞台です。
9.即答で①(シモン=ド=モンフォールの反乱)
反射衛星砲問題。空欄[ イ ]は「アンジュー伯がイギリス王に即位」からプランタジネット朝で、その出来事はこれ。①審査法=スチュアート朝、③星室庁裁判所=テューダー朝、④英仏協商=ハノーヴァー朝。
10.正解は①(う-正 え-正)
う〇。考察の「フランス貴族が英語を母語とするようになるのは14世紀」から「百年戦争が始まったときに…」は正しい。マスト年号問題(百年戦争1339年~1453年)。え〇。考察の言い換え。
11.即答で②
整序問題。あ:ナポレオン法典=1804年→下線部b:内山さんの発言に1844年とある→い:ムスタファ・ケマルによる女性参政権導入=1934年だが正確に知らなくてもWW1後だとわかる。
12.即答で①(第二共和政のフランスで労働者の六月蜂起が発生)
労働運動に関する知識問題。①が正解なら他の選択肢は見なくていいが、念のため②ブルシェンシャフト運動は学生組合。③参政権獲得運動はラダイト運動(機械打ちこわし)ではなくチャーチスト運動。④アメリカ労働総同盟は冷戦下ではなく19世紀末に発足。中国人排斥法やフロンティアの消滅と一緒に習う。
13.正解は④(ウ-児童や年少者の労働時間を制限 エ-成人女性の自立を認めない)
ウは工場法の内容、エは資料に「女性が長時間働くと男性労働者が工場から追い出され、女性の家庭における義務が果たされない」とあるので「成人女性の自立を認めない」が適当。議員が女性の労働に反対する根拠に「自然の秩序」や「神の摂理」を持ち出すのは日本の選択的夫婦別姓反対論者もびっくり。(*_*)
14.即答で⑥(い―Z)
[ ア ]と宦官から空欄は外戚、前漢の滅亡に関わった外戚=王莽なので「Z:周代を理想とする急激な改革を行い政治の混乱を引き起こした」一択。
山川出版社の『詳説世界史探究』は王莽は儒学の官学化を進めた人物として、一昔前のように否定的には書いていない。ただ王莽は周礼を重視しすぎで遊牧民に高圧的な態度をとったため、匈奴とオアシス都市の離反を招いた。
15.即答で④(北宋では文治主義がとられ殿試が創始された)
具体と抽象の出し入れ問題。下線部「皇帝への権力集中・強化」に適するのは④しかない。②魏晋南北朝の九品中正は門閥貴族の台頭を招いた。③殿試は隋ではない。
16.即答で②(イ-藩鎮勢力に対抗 ウ-中書省を廃止し六部を皇帝に直属させた)
否定的にとらえられることが多い宦官は皇帝への権力集中に一役買ったという考察。文中に「安史の乱」があるので、唐代に近衛軍(宦官が実権)を拡充した理由は「藩鎮勢力に対抗」が適当。また明代の宦官の専横は皇帝に権力が集中したからで、その理由は「中書省の廃止と六部の皇帝直属」が適当。
17.正解は④(エ-安価な工業製品を大量に輸出する オ-輸出額よりも輸入額が多い)
19世紀のイギリスの貿易収支と貿易外収支のグラフで、「世界の工場」と呼ばれる割に前者は常に赤字でそれを後者が補填していることが読み取れる。したがってイギリスは世界の工場と呼ばれる割に「輸出額よりも輸入額が多い」が適する。
イギリスはスターリングブロックで連邦の商品を積極的に輸入している。「大国が単独行動主義を取るのは世界経済にマイナス」という今の状況を予言した問題?
18.即答で①(穀物法が廃止された)
19世紀の自由貿易の例に適するのは①しかない。穀物法は日本史探究側の歴史総合で出題されて物議を醸している。②航海法が制定されたではなく廃止された。③印紙法は18世紀、④EFTAは20世紀。
19.即答で③(二人とも正しい)
両方とも資料の言い換え。「正誤問題を無理やり会話文にするから誤文が不自然になりがち」というネットの批判が聞こえた??
様。
20.正解は③または④
グラフの読み取りという名の年号問題。①×。ミハイル=ロマノフが即位した後の100年間=17世紀はまだロシアのヨーロッパ内の領土は500万㎢に達していない。②×。ピョートル1世の在位期間からエカチェリーナ2世の在位期間=17世紀末~18世紀末はヨーロッパの領土も増えている(ポーランド分割)。③○。農奴解放から三月革命(1861~1917)の時期にアジア部の人口は3倍以上増加。④○。十一月革命後~独ソ戦(1917~1941)は一時ヨーロッパの領土が減少(ブレスト=リトフスク条約やソヴィエト=ポーランド戦争)するが革命前に戻る(ポーランド東半占領、バルト三国併合など)。⑤×。第二次世界大戦後(1945)アジア部の人口は増えている(樺太の返還)。⑥×。ソ連期(1922~1991)は一貫してヨーロッパ部の方が人口が多い。
21.即答で③は⑥、④は②
③は⑥(シベリア鉄道建設による入植)、④は②(バルト三国併合)が適する。知識問題。
22.即答で②(あ-Y)
空欄[ カ ]は16世紀シベリア開発からイヴァン4世、空欄[ キ ]はネルチンスク条約からピョートル1世なので、「あ:正式にツァーリの称号を使う」と「Y:ペテルブルクを建設」が適する。世界史探究にもロシアの問題あるので同じ人の出題?
23.即答で⑤(い-b)
知識問題。「フランス、1830年、アフリカ侵攻開始」から「い:シャルル10世」とアルジェリアの場所のbが適する。
24.即答で③(フランス領インドシナ連邦が成立した)
第二帝政でインドシナ侵略(サイゴン条約、カンボジア保護国化)→第三共和政でベトナム保護国化→清仏戦争→仏領インドシナ連邦、は私大マスト知識。①フランス東インド会社の本格的な活動はコルベールの重商主義=ルイ14世の親政開始(1661年 マスト年号)以後なので17世紀後半。②ドンズー運動はゴー=ディン=ジエムではなくファン=ボイ=チャウ。私立だとファン=チュー=チンをダミー選択肢に使う。④「広州湾を租借」は第三共和政だが清朝の領域。
25.ちょっと考えるが正解は②(大山さん正しい)。
渡瀬さん「第三共和政で奴隷制度を用いた」が×。フランスの奴隷制廃止はイギリスよりも遅く1848年の第二共和政の時。細かい知識だが、最後まで奴隷制が残存していたブラジルで19世紀末に奴隷制が廃止されたことを知っていれば誤りと判断できる。なおフランスは女性参政権も遅かった(1944年)。
26.正解は④
旧版『映像の世紀』からの出題。「い:ベンガル分割令(1905年)」→塩の行進(1930年代初頭)→「あ:新インド統治法(1935年)」。塩の行進などの民族運動の結果として新インド統治法で州自治が認められた。インド統治法と新インド統治法の違いを曖昧にしていると引っかかる。
塩と泥の塊を拾うガンディー。
27.即答で①(う-X)。
世界史探究試作問題の「抽象化して次の探究課題を探す」問題。ビデオを観ていれば塩の行進が広範な大衆運動と理解できているので、「う:幅広い社会層が抵抗運動に加わった」と「X:五・四運動」の組み合わせが適する。
28.即答で③(い-X)
空欄[ ア ]はフランスの国歌で「い:ラ=マルセイエーズ」、空欄[ イ ]は「ナポレオン戦争に付随して勃発した」から米英戦争で、その言い換えは「イギリスからの輸入が途絶えた結果、工業化(機械化)が進んだ」が適する。
29.難しいが正解は④(アメリカ合衆国はイギリスとともにイラク戦争を開始)
私立的な21世紀問題。出題者も難しいと思ったのか、ダミー選択肢を①フロリダ買収(×スペイン)、②アロー号事件で共同出兵(×英仏)、③戦略兵器削減交渉(×ソ連)と大外しにして消去法で選べるようにしてある。湾岸戦争は国連安保理の決議を受けて多国籍軍が出動、イラク戦争は安保理の決議なしに米英を中心に出兵。
30.正解は①(畠山さんのみ正しい)
畠山さん○。1924年の移民法の説明。小西さん×。KKKはもともと黒人の排斥団体で(私立だと「南北戦争終了直後にテネシー州で退役軍人が結成」まで出る)、いったん弾圧されたが第一次世界大戦後に復活し、黒人以外も有色人種やユダヤ人を排斥対象にした。
31.正解は①(ズデーテン地方の割譲を要求するヒトラーに対して融和的な姿勢であった英仏の態度になぞらえる)
キューバ危機の時にフルシチョフの「トルコから核ミサイルを撤去する」という要求をアメリカの国連大使スティーブンソンがケネディ大統領に受け入れるよう進言したことを、新聞記者が「スティーブンソンがミュンヘンを望んだ」と批判したことの言い換え。ダミー選択肢は「ザール地方」「強硬な姿勢」の語句を入れ替えてある。ミュンヘン会談に関する教科書記述知識問題。
32.正解は③(フランスがNATOの軍事機構から脱退)
キューバ危機(1962年)から冷戦終結(1989年)までに起きた出来事を選ぶ。日本史探究側の歴史総合にキューバ危機とプラハの春(1968年)の整序問題があり日本史側から不満が出た。
ド=ゴールのしたこと(アルジェリア独立承認(エヴィアン協定)、核武装、中華人民共和国承認、NATO脱退、五月危機(1968年)を受けて退陣)はかつて私立大学で定番だった。①米中関係改善はジョンソンではなくニクソン、②東方外交はイギリスではなく西ドイツのブラント、④アジア=アフリカ会議は1955年。
33.正解は②(永野さんのみ正しい)
久保田さん×。会話中に「グラスノスチによってトルコの核ミサイル撤去の話が明らかになりスティーブンソンが危機を救ったという評価もある」とあるので「現在も否定的な評価」は不適。永野さん○。グラスノスチの言い換え。
5 過去回との比較
① タイプ
タイプ | 2023本 | 2023追 | 2024本 | 2024追 | 2025本 | 2025追 | 2025旧本 |
一問一答 | 19 | 15 | 17 | 14 | 16 | 8 | 9 |
年号 | 2 | 2 | 2 | 5 | 7 | 9 | 5 |
内容理解 | 4 | 11 | 5 | 5 | 4 | 6 | 10 |
資料 | 3 | 3 | 2 | 4 | 2 | 2 | 2 |
読解 | 6 | 2 | 7 | 5 | 3 | 7 | 7 |
小計 | 34 | 33 | 33 | 33 | 32 | 32 | 33 |
「歴史総合・世界史探究」本試験は読む量が多く凝った作りの割には一問一答的知識で解けるという見掛け倒しでしたが、世界史B本試験は一問一答の内容知識が問われています。また読解(言い換え)問題も多めです。こちらの方が世界史探究的です。
年号問題はぶんぶんのブログではすべてマスト年号で、そこから〇〇世紀と変換すれば(例えば百年戦争1339年=14世紀)解答できます。
② 傾向
傾向 | 2023本 | 2023追 | 2024本 | 2024追 | 2025本 | 2025追 | 2025旧本 |
セ | 11 | 18 | 15 | 16 | 14 | 14 | 13 |
新 | 14 | 9 | 14 | 13 | 15 | 14 | 16 |
国立 | 1 | 0 | 0 | 0 | 1 | 0 | 0 |
私立 | 8 | 6 | 4 | 4 | 2 | 4 | 4 |
小計 | 34 | 33 | 33 | 33 | 32 | 32 | 33 |
共通テストからの新傾向問題(知識問題と読解問題の組み合わせ、文章を読ませて情報を取り出したり言い換えたりする問題)に加えて、世界史探究の試作問題や本試験で見られた「ここまでの議論を抽象化して次に調べる課題を考える」が登場しました。
「私立」は「ビザンチオンはアケメネス朝の領域?」のような地図問題、「イラク戦争に米英が出兵」のような細かい問題につけました。
③ 話題
ジャンル | 2023本 | 2023追 | 2024本 | 2024追 | 2025本 | 2025追 | 2025旧本 |
政治 | 21 | 32 | 25 | 30 | 22 | 28 | 28 |
経済 | 7 | 1 | 3 | 3 | 2 | 3 | 3 |
文化 | 6 | 0 | 5 | 0 | 8 | 1 | 2 |
小計 | 34 | 33 | 33 | 33 | 32 | 32 | 33 |
ほぼ政治史からの出題です。受験生が少ないロットは文化史が少ない傾向です。
④ 時代
時代 | 2023本 | 2023追 | 2024本 | 2024追 | 2025本 | 2025追 | 2025旧本 |
前近代 | 21 | 14 | 16 | 12 | 9 | 9 | 12 |
近代 | 6 | 4 | 2 | 2 | 3 | 5 | 1 |
19世紀 | 2 | 3 | 7 | 4 | 7 | 8 | 11 |
20世紀 | 4 | 6 | 2 | 5 | 7 | 3 | 4 |
戦後 | 0 | 0 | 3 | 4 | 3 | 5 | 3 |
またぎ | 1 | 6 | 3 | 6 | 3 | 2 | 2 |
小計 | 34 | 33 | 33 | 33 | 32 | 32 | 33 |
*またぎ問題の範囲は2問とも16世紀~20世紀
今回は産業革命や植民地支配の設問が多かったので19世紀がやや多めですが、各時代が網羅的に出題されています。
⑤ 地域
地域 | 2023本 | 2023追 | 2024本 | 2024追 | 2025本 | 2025追 | 2025旧本 |
東アジア | 9 | 5 | 7 | 13 | 7 | 8 | 5 |
東南アジア | 3 | 0 | 0 | 2 | 3 | 2 | 0 |
西アジア | 3 | 1 | 2 | 3 | 4 | 0 | 2 |
南アジア | 0 | 1 | 3 | 0 | 1 | 2 | 1 |
ギリシアローマ | 3 | 2 | 3 | 2 | 0 | 2 | 1 |
ヨーロッパ | 14 | 18 | 13 | 9 | 10 | 12 | 18 |
アメリカ | 0 | 2 | 5 | 2 | 3 | 2 | 4 |
アフリカ | 0 | 0 | 0 | 1 | 0 | 2 | 1 |
オセアニア | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
日本 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
またぎ | 2 | 4 | 0 | 1 | 4 | 2 | 1 |
小計 | 34 | 33 | 33 | 33 | 32 | 32 | 33 |
*「またぎ問題」1問はヨーロッパ・東アジア・南アジア 日本は東アジアに吸収
先述の理由からヨーロッパ史とアメリカ史が多くなっています。イスラームの話題はソンガイ王国ぐらい。
⑥ 難易度
難易度 | 2023本 | 2023追 | 2024本 | 2024追 | 2025本 | 2025追 | 2025旧本 |
◎ | 17 | 19 | 22 | 22 | 21 | 17 | 19 |
○ | 10 | 9 | 8 | 7 | 9 | 9 | 10 |
△ | 7 | 5 | 3 | 3 | 2 | 4 | 2 |
▲ | 0 | 0 | 0 | 1 | 0 | 2 | 2 |
小計 | 34 | 33 | 33 | 33 | 32 | 32 | 33 |
資料問題は言い換え問題が多数で。具体→抽象→具体の「出し入れ」が問われます。ただどれも資料や説明文を丁寧に読めば正解できます。難しいのは私立大学的な細かい知識を要求するものです。これまでの共通テスト世界史Bと同難易度と判断します。
なお平均点が68点と高いのは、課程の変わり目の浪人生は難しい大学を狙っている高得点者(特に東大志望者は世界史と後地歴どちらかという選択が多い)だからです。
まとめ
オーラスの世界史Bですが、リード文の話から具体的な事実を思い出し抽象に返す問題が多く、新課程と一緒に作った感じです。世界史探究の演習に使ってください。
しかし従来の知識に加えて探究から増えた新しい知識、そこへ抽象的な思考と次々とオンされて、受験生は大変だ。(´・ω・`)