先日三重県の知人から「ぶんぶんさんは野鳥好きと伺いましたので」と招待券をいただいたので、三重県立博物館で開催中の特別展「鳥のひみつ調べ隊」に行ってきました。今回はその様子を宣伝を兼ねてレポートし、鳥の秘密に迫りたいと思います。
展示品は撮影OKだったので、ぶんぶんが津市などで撮った写真を主として展示物も引用させていただきます。
公式
目次
1 場所
open street map
近畿日本鉄道またはJR(一両編成の気動車が県庁所在地に颯爽と入線)津駅から徒歩25分(上り坂)です。1994年の国民文化祭に合わせて音楽・演劇用ホールや県立図書館を有する総合文化センターが開館し、2014年に駅前にあった博物館が同じ敷地に引っ越してきました。周囲の調整池にはカモ類が飛来します。
エントランスの看板。三重県の鳥であるシロチドリが案内役です。
博物館から車で20分ほどの海岸にいたシロチドリ
2 展示のみどころ
(1) 鳥って何?
第一展示は鳥の定義です。鳥は脊椎動物の仲間です。鳥はくちばしがあって歯がなく、前足が羽になっています。羽毛に覆われていて体温を一定に保つことはできますが、哺乳類ではなく恐竜の獣脚類類から進化した生物です。たしかに鳥の卵は爬虫類よりも恐竜のそれに近いです。
始祖鳥の化石のレプリカ。始祖鳥は歯と長い尾があります。恐竜から鳥が分かれるのはまだ先です。
(2) なんで鳥は飛べるの?
第二展示は鳥は空を飛ぶためのメカニズムについてです。
鳥の骨は軽くかつ強度の高い構造をしています。外部の緻密な部分が薄く、中が空洞になっていて、強度を上げるため支柱が備わっています。重量と強度がギリギリのバランスで保たれています。
ハイタカの骨構造。
空を飛ぶための主な筋肉は、上腕骨から竜頭突起のある胸骨についている大胸筋とその内側についている烏口上筋で、翼を振り下ろす時は大胸筋が収縮して烏口上筋が緩み、翼を振り上げる時は逆に大胸筋が緩んで烏口上筋が収縮します。
翼は前方が膨らんだ非対称な流線型をしていて、空気の流れが上面は速く、下面は遅くなることで浮力を生み出します。
アオサギ先輩の骨格と翼。前方が膨らんでいることがわかります。
さらに鳥は哺乳類と同じ肺呼吸をしますが、肺の周りに気嚢を持っていて、効率的に酸素を取り込むことができ、長時間の飛行に耐えられるようになっています。
まさに鳥は飛ぶことに特化した精密機械です。
キジの全羽毛。羽はそれぞれ役割が違います。(*_*)
(3) 様々な鳥
自然界で生き抜くのは過酷です。第三展示では、鳥たちが住む環境や餌にするものに合わせてくちばし、羽、足の形がそれぞれ違い、それが鳥の多様性を生んでいることが解説されています。
鳥の翼の形は様々で、早く飛ぶ、低速でも安定して飛べる、ホバリング可能など飛び方にあった形状になっています。
鳥の翼は水をはじくように油分を含みますが、カワウのように潜水する鳥の翼は油分が少ないため、餌を採るための潜水を終えると翼を広げて乾かすしぐさをします。津市で撮影。
くちばしの形は何を採餌するかで違い、それぞれの餌に適した形になっていて、足の形や足の位置も生活の場所に最適な形状になっています。
ハシビロガモは平たいくちばしでプランクトンをすくい取って食べ、水草や魚を餌とする他の水鳥と共存しています。水上池で撮影。
海や川へダイブして魚をとらえるミサゴの足は、ぬるぬるした魚をつかんでも滑らないように突起がついています。拡大図。
魚を取ってご機嫌なミサゴ。翼の先が割れていて(裂翼)、スピードを落として安定飛行ができます。上空から魚を探すのに適しています。津市で撮影。
カイツブリは泳ぎに特化していて足が胴体の後ろに生えています。歩くの無理そう。
鳥の魅力はその色鮮やかさです。色は生存のために重要で、周囲に溶け込むことで外敵から身を守ります。
同じ種でもオスとメスでは色が違うことがあります。鳥はオスの方が派手な色をしていることが多いですが、これは生殖決定権がメスにあり、オスはメスにアピールする必要があるからです。しかし年中目立つ格好をしていると外敵に狙われるので、普段はメスと同じ地味な羽をしていて、繁殖期だけ派手になるオスもいます。
オシドリ。水上池で撮影。
(4) 文化の中の鳥
ニワトリは家畜化され、品種改良されてきました。またモチーフとして家具や美術品に描かれ、研究のために記録されてきました。第四展示では人間の文化の中に溶け込んだ鳥について解説されていました。三重県の名物鳥料理も紹介されていました。
ニワトリ。おなかが減ってきた。昼食は鳥料理だ?!
おわりに
ぶんぶんは野鳥観察ビギナーで、川の干潟やため池が観察場所です。カモやシギ・チドリはくちばしの形がそれぞれ違い、採餌で競合しないようになっています、
最近の進化に関する研究では、分子レベルでの遺伝子の変化は大部分が自然淘汰に対して有利でも不利でもなく遺伝的な浮動の結果で、運良く子孫の個体に残った中立的な突然変異が集団のなかに広がって定着していくと考えます(中立説)。
つまり野鳥たちがそれぞれ特徴的な形状をしているのは、多くの種が淘汰される中でたまたま変異した種がたまたま自然に適応し、たまたま他の種と競合せずに生をつないできたからです。その結果だけを見て私たちが「生き残るために自らを変化させたものが生き残った」と勘違いしているだけです。「強いから残った」ではなく、「残ったものが強い」ということでしょうか。
鳥たちは恐竜から分化しはじめた約1億5000万年前から無数の種が淘汰されて今ここにいる、その結果が鳥の精緻なメカニズムということです。
ぶんぶんは初日に会場を訪れましたが、鳥の展覧会だけあって閑古鳥が鳴いていました。ご自身のペースで心置きなく鳥の神秘に浸ってください。
会期は12月10日までです。