ぶんぶんの進路歳時記

学習方法、進路選択、世界史の話題について綴ります

どうなる?2025年度入試での歴史総合の扱い

はじめに

 前回2025年度入試を概観しましたが、世界史でご飯を食べているぶんぶんとしては、新課程の目玉である「歴史総合」の扱いが気になります。

ぶんぶん撮影

 今回は国公立大学二次試験と、主要私立大学の一般試験の2025年度入試科目予告を、大学のHPと河合塾のサイトを参考にまとめました。

参考

www.keinet.ne.jp

前回

bunbunshinrosaijki.hatenablog.com

目次

 

1 国公立大学

「選」は教科をまたぐ選択(例:数学と地歴から1)

略称:

歴総:歴史総合 日探:日本史探究 世探:世界史探究

地総:地理総合 地探:地理探究

公共:公共   倫理:倫理    政経:政治・経済 

  大学 学部学科 地歴、公民の範囲 歴総
1 北海道 総合入試文系、文 「地総、地探」「歴総、日史探」「歴総、世探」
2 筑波 総合選抜文系、社会・国際、人間 「地探」「日探」「世探」「倫理」  
3 筑波 人文・文化 「地探」「日探」「世探」「倫理」    
4 高崎経済 経済中期 地域政策前期 「地総、地探」「歴総、日探」「歴総合、世探」「公共、政済」
5 千葉 文(歴史、日本・ユーラシア文化、国際言語文化) 「歴総、日究」「歴総、世探」  
6 千葉 国際教養 「歴総、日探」「歴総、世探」
7 東京 文系 「地探」「日探」「世探」    
8 東京外国語 「歴総、日探/世探」(歴史総合は日世共通問題)  
9 東京学芸 社会コース 「地総」「歴総、日探」「歴総、世界探」「公共」  
10 東京都立 人文、法、経済 「地総、地探」「歴総、日探」「歴総合、世探」  
11 一橋 ソーシャルデータ以外 「地総、地探」「歴総、日探」「歴総、世探」  
12 新潟 人文 「地総、地探」「歴総、日探」「歴総、世探」
13 愛知教育 義務ー社会 「地総、地探」「歴総、日探」「歴総合、世探」「公共、政済」「公共、倫理」  
14 名古屋 文・情報(文系) 「地総、地探」「歴総、日探」「歴総、世探」  
15 名古屋 情報(文系) 「地総、地探」「歴総、日探」「歴総合、世探」
16 京都 文系 「地探」「日探」「世探」    
17 京都府 「歴総、日探」「歴総、世探」  
18 大阪 「地総、地探」「歴総、日探」「歴総、世探」
19 大阪 外国語 「歴総、世探」
20 神戸市外国語 外国語 「世探」「政経  
21 九州 「地総、地探」「歴総、日探」「歴総、世探」  

コメント

 調査した17大学のうち探究のみは筑波、東京、京都、神戸市外国語です。

 二次試験の世界史は従来から論述中心で、近代化も大衆化もグローバル化ジェンダーも資料問題もさんざん出題されています。国公立大学は「歴史総合」の名称に関わらず出題ポリシーは変更なし、日世乗り入れ近現代史の出題は増加するでしょう。

 2024年からの変更点は、信州大学教育学部の社会科コースが地歴の試験、神戸市外国語大学が日本史を取りやめました。

 

2 主要私立大学

首都圏・関西圏の大規模大学と、それ以外の地域の拠点大学

歴総の欄の記号

無印:歴史総合なし ○:歴史総合あり △:探究に関係する範囲のみ

学部・日程欄が空欄の大学は全学部で共通

  大学 学部・日程 地歴・公民の選択科目 歴総
1 青山学院 個別学部日程(文-史) 「日探」「世探」  
2 青山学院 個別学部日程(文-史を除く) 「日探」「世探」「政済」  
3 青山学院 全学部日程 「日探」「世探」「政済」  
4 学習院 コア試験(国際社会科学) 「歴総、日探」「歴総、世探」「公共、政済」
5 学習院 コア試験(国際社会科学を除く) 「地総、地探」「歴総、日探」「歴総、世探」「公共、政済」
6 学習院 プラス試験 「歴総、日探」「歴総、世探」「公共、政済」
7 慶應 文、法 「歴総、日探」「歴総、世探」
8 慶應 経済 「歴総、日探」「歴総、世探」 ※日・世ともに1500年以降を中心に出題
9 慶應 「地探」「日探」「世探」  
10 駒澤   「地総、地探」「歴総、日探」「歴総、世探」「公共、政経」*日本史、世界史は現行過程と新課程の双方に対応した範囲から出題 ○ 
11 上智 TEAPスコア利用方式 「歴総合、日探」「歴合、世探」
12 専修 全学部 「地総、地探」「歴総、日探」「歴総、世探」「公共、政経 ○ 
13 中央 文(学部別選抜) 「歴総(日本史)、日探」「歴総(世界史)、世探」
14 中央 法(学部別選抜 「日探」「世探」「政済」  
15 中央 文(学部別選抜)、法(学部別選抜)を除く 「歴総(日本史)、日探」「歴総(世界史)、世探」「公共、政経
16 東洋   「地総、地探」「歴総、日探」「歴総、世探」「政経 ○ 
17 日本 法、法二部、国際関係(A方式) 「歴総、日探」「歴総、世探」「公共、政経 ○ 
18 日本 法、法二部、国際関係(A方式)以外 「地総、地探」「歴総、日探」「歴総、世探」「公共、政経 ○ 
19 法政   「地総、地探」「歴総(主に日本史から出題)、日本史探究」「歴総(主に世界史から出題)、世探」「公共(主に政経分野から出題)、政経
20 明治 学部別(文) 「地総、地探」「歴総(日本史)、日探」「歴総(世界史)、世探」
21 明治 学部別(法、経営、情報コミュニケーション) 「歴総、日探」「歴総、世探」「公共、政経
22 明治 学部別(政治経済、商、農)、全学部統一 「地総、地探」「歴総、日探」「歴総、世探」「公共、政経
23 立教 文(一般入試) 「地総、地探」「歴総、日探」「歴総、世探」
24 立教 文(文学部日程) 「「歴総、日探」「歴総、世探」
25 立教 現代心理、異文化コミュニケーション、社会、観光、コミュニティ福祉、スポーツウエルネス 「地総、地探」「歴総、日探」「歴総、世探」「公共、政経
26 立教 法、経済、経営 「歴総、日探」「歴総、世探」「公共、政経
27 早稲田 文、文化構想 「日探」「世探」  
28 早稲田 教育 「地総、地探」「日探」「世探」  
29 早稲田 法、商 「日探」「世探」「政済」  
30 京都産業   「日探」「世探」「政済」  
31 同志社   「日探」「世探」「政済」  
32 立命館   「地総、地探」「日探」「世探」「公共、政経」*2024年1月の発表で変更  
33 龍谷   「日探」「世探」「政経  
34 関西   「地総、地探」「歴総(主に日本史分野)、日探」「歴総(主に世界史分野)、世探」「政済」
35 近畿   「地探」「日探」「世探」「政経  
36 関西学院   「地総、地探」「日探」「世探」*2024年2月の発表で変更  
37 北海学園   「地総、地探」「歴総(日本史関連部分)、日探」「歴総(世界史関連部分)、世探」「政経
38 南山   「歴総、日探」「歴総、世探」
39 広島修道   「地総、地探」「歴総(主に日本史分野)、日探」「歴総(主に世界史分野)、世探」「政経
40 西南学院   「地総、地探」「日探」「世探」「政経  

コメント

 調査した大学・学部(同パターンはまとめた)のうち、歴史総合を出題範囲とするのが17、日本史(世界史)探究と重なる部分のみが8、歴史総合なしが15です。

*2024年1月29日:立命館大学の変更で訂正しました。

*2024年3月3日:関西学院大学の変更で訂正しました。また駒澤大学の表記をHPに準じ「重なる部分のみ」に分類しました。

 首都圏では青山学院と早稲田が探究のみの出題です。首都圏難関大学は学部ごとに入試問題を作るところ多く、学部によって対応が分かれる大学もあります。

 慶應経済は3年前から第1問が日・世共通リード文で、準備万端です。東京大学併願組狙いなので論述問題が中心、日世相互乗り入れ問題もよく出題されます。

 関西圏では難関、中堅が軒並み探究のみです。首都圏の中堅私大が歴史総合を含むのとは対称的です。

*3月3日、関西学院大学の変更により文章を変えました。

 法政や関西は「歴史総合は選択した日本史/世界史分野に限る」としています。これに対して高大連携歴史教育研究会は「日・世を分離しては歴史総合の意味がない」「世界史A未履修問題と同じく歴史総合未履修問題が発生する」と懸念を表明しています。

 ぶんぶんは、2025年度については旧課程の生徒も受験するのでこれでいいと考えます。また「歴史総合」は世界史振りなので、日本史探究選択者は「歴史総合」全範囲からの出題となると負担増は避けられません。

 大学入試センターの試作問題も2問ある歴史総合の問題のうち、より日本史っぽい問題を日本史探究の方にくっつけています。

kodairekikyo.org

 

3 共通テストでの歴史総合の扱い(10月3日追加)

 国公立大学は一次試験で共通テストの「歴史総合・日本史探究」「歴史総合・世界史探究」「地理総合・地理探究」「公共・政治経済」「公共・倫理」「歴史総合・地理総合・公共」から1または2科目(課さないもあり)を課します。

 8月31日現在の各大学の受験科目を見ると、地歴公民から一科目を課す理系大学で「歴史総合・地理総合・公共」の選択が不可なのは(ぶんぶん調べ)

旧帝大の理系すべて

医学部や医科大学の医学科の大多数

お茶の水大学生活科学(食物)・共創工

東京工業大学

横浜国立大学の理系

大阪公立大学医学部リハビリ理学療法・同作業療法

奈良女子大学生活科学食物

広島大学の理系

九州歯科大学

福岡女子大学国際文理(食・健康)

熊本大学の理系

鹿児島大学共同獣医

琉球大学理(数理科学、海洋自然科学生物受験)

 国公立大学受験者の共通テストの科目は必ず「上位互換」(点数がとれた時に出願できる大学の科目に合わせる)で選択します。国公立大学の合格者数が関心事の進学校は当然のごとく旧帝大が第一目標で、従来から科目負担が相対的に少ないとされる地理での受験を推奨しています。

 したがってこうした高校の理系生徒は「地理総合・地理探究」のみに注力すればよく(おそらく新課程のカリキュラムがもうそうなっていると思われる)、「歴史総合」は「捨て科目」になる(特に文理選択後に開講される場合)可能性があります。これでは「歴史総合」導入のきっかけになった世界史A未履修問題の二の舞です。

 まあ「歴史総合」を推す人たちには受験に関係がない方が自由がきいて好都合かもしれませんが。

 

4 歴史総合の入試問題はどうなる?

①「歴史総合」が目指すところ

高等学校学習指導要領 地理歴史編より

地理歴史科改訂の趣旨及び要点 歴史総合

・世界とその中における日本を広く相互的な視野から捉えて,近現代の歴史を理解する科目

・歴史の推移や変化を踏まえ,課題の解決を視野に入れて,現代的な諸課題の形成に関わる近現代の歴史を考察する科目

・歴史の大きな転換に着目し,単元の基軸となる問いを設け,資料を活用しながら,歴史の学び方(「類似・差異」,「因果関係」に着目する等)を習得する科目とすることが適当である。

歴史総合の目標

(1)近現代の歴史の変化に関わる諸事象について,世界とその中の日本を広く相互的な視野から捉え,現代的な諸課題の形成に関わる近現代の歴史を理解するとともに,諸資料から歴史に関する様々な情報を適切かつ効果的に調べまとめる技能を身に付けるようにする。 

(2)近現代の歴史の変化に関わる事象の意味や意義,特色などを,時期や年代,推移,比較,相互の関連や現在とのつながりなどに着目して,概念などを活用して多面的・多角的に考察したり,歴史に見られる課題を把握し解決を視野に入れて構想したりする力や,考察,構想したことを効果的に説明したり,それらを基に議論したりする力を養う。

(3)近現代の歴史の変化に関わる諸事象について,よりよい社会の実現を視野に課題を主体的に追究,解決しようとする態度を養うとともに,多面的・多角的な考察や深い理解を通して涵養される日本国民としての自覚,我が国の歴史に対する愛情,他国や他国の文化を尊重することの大切さについての自覚などを深める。

 長いのでまとめました。

  1. 時代と場所:近現代の世界と日本(相互的に)
  2. 考察対象:歴史の変化に関わる事象の意味や意義,特色
  3. 着眼点:時期や年代,推移,比較,相互の関連や現在とのつながり
  4. つけたい力:概念による考察や構想、諸資料の活用、説明、議論
  5. 最終目標:日本国民としての自覚と他文化尊重の態度

② 教科書

 「歴史総合」の教科書は、ものによっては内容がてんこ盛りです(駿台の塚原先生(日本史)は「過積載」と表現)。

 教科書によっては近世から各地域について丁寧に書き起こしています。歴史学の立場からすれば、近代を知るためにはその前の時代を知るのが当然です。

 参考

 また(3)日本国民の自覚(アジアで例外的に近代化を達成した誇りある国)を(2)「近現代の比較」の観点で考察するなら、他地域の近代化にも紙面を割く必要が生じます。

 このように歴史学者の執筆者が学習指導要領を真面目に受け取れば「過積載」は避けられません。一方で標準単位数は2(週に50分2コマ)、各地で「教科書がすべて終わらない問題」が発生しています(後述のリンク参照)。

③ 授業

 「歴史総合」の目玉は「網羅化」から「焦点化」、すなわち近代化、大衆化、グローバル化のそれぞれから何かに焦点を当てて、歴史の基礎的な方法論を学び、その方法で他の事象も理解する、という進め方です。

 授業は講義よりは生徒が史料や資料を読んで意見を出し合ったり、それを他のグループとシェアしたり、学んだ内容を発表したりが中心になります。

 つまり教科書が「過積載」であっても全部やる必要はないということです。

 これは「「世界史Aの未履修問題や歴史嫌いの増加の原因は『歴史=暗記物』」という認識から、「歴史総合」からはコンテンツからコンピテンシー重視へ転換したということです。

 こちらの記事も「歴史総合では学び方を覚えればよい」という論調です。

www.koukouseishinbun.jp

④ 定期考査

 ぶんぶんが参加している「教材共有サイト2.0−高大連携歴史教育研究会」に何人かの先生が歴史総合の定期考査を投稿されています。いずれも力作です。

 客観式では共通テストや試作問題を参考に、事件・制度・概念に関する用語や内容を選ぶ、論理(物価が上がる下がる)、資料文の読み取りの正誤、次のことを調べたいならどの資料に当たるか、などです。

 記述式は国公立大学の問題を参考に、事件や制度について内容や背景を説明する、文字資料や絵画資料を見て意味を説明する、自分の推理や考えを述べる、などです。

 定期考査は授業の内容が生徒に定着しているか、すなわち知識が正確に運用できるか、技能で課題を解決できるかを評価するものです。先生方の定期考査は後者をより多く試すように工夫されています。

⑤ 入試問題

 入試問題の特徴

  1. 選抜のために実施
  2. 受験生が質・量とも十分に勉強しているかどうかで選抜
  3. 全範囲から出題
  4. 差をつけるために突っ込んだ内容や手が回らない範囲を出題
  5. 解答不能な問題もわざと出題

 入試問題「歴史総合」のの出題内容(予想。目標より作成)

  1. 日本の近現代史のうち日本が世界と直接・間接的に関わる範囲から出題
  2. その範囲の中で起きた事件の5W1Hが記憶されている、それらの時系列に整理できる、同時代に起きた他地域の出来事と比較や関連付けができるかを試す
  3. 知識問題、説明問題、資料問題、歴史的事実から仮説を立てる問題を出題
  4. 日本国民の自覚と他国の文化を尊重する姿勢を促す内容

 出題内容は、1、2はすでに入試問題で問われている内容、3の説明問題や資料問題も難関国公立・私立大学では実施済み、中堅私立大学も最近は説明文を選択したり、文章の語句ではなく内容を正誤判定する問題が増加中です。

 問題は「全範囲から出題」です。「歴史総合」は「焦点化」で得た技能で未知の課題を解決することが目標ですが、歴史科目では背景知識なしで未知を理解するのは無理筋です。共通テストや試作問題も網羅的知識を前提とした出題です。

共通テスト「歴史総合・世界史探究」試作問題

 ぶんぶんの勤務校は初年度は教科書を最初から丁寧にやったため教科書は半分も終わりませんでした。つまりこの問題の背景知識はゼロに等しいです。

 授業で冷戦と国際関係を焦点化したからといって、この設問が求める「オイルショック」「公害対策基本法」「開発独裁」「アラブの春」の正確な年代や内容は推理できません(「公害やオイルショックは日本人の常識」は昭和生まれの思い込み)。

 ぶんぶんは毎年予備校が調べた共通テストの設問別正解率と分析をチェックしていますが、正答率が低いのは読解ではなく知識問題です(知識・読解組み合わせ問題も知識で間違う)。メディアは共通テストを「思考力を試す」と思考停止した報道を垂れ流しますが、「読めても知らないと正解できない」が真相です。

 そして何より入試は「選抜」、学習の量や質で受験生に差をつけるために「手が回りにくいところ」「深い内容」を出題します。実際試作問題もそうなっています。

 つまり学校の授業は焦点化であっても、入試で出題されるとなると網羅的な知識が必要になってくるというのが、「歴史総合を入試で使う」際の課題です。

⑥ 提案(世界史の観点から)

 ぶんぶんは歴史的な知識と思考を分けて考えるのはナンセンスという立場です。また「歴史は暗記物」は「素人考え」と考えます。

*素人が入試改革の会議に呼ばれ、自分の狭い経験で教育を破壊に導いている気がしてなりません。

 もちろん「歴史総合」が授業で「焦点化」や「コンピテンシー」を重視することは賛成です。「教材共有サイト2.0」の優れた授業実践も拝見しています。

 ただ話を入試に限定すると「入試はどこから出題されるかわからない以上、教科書を全部やっておく必要がでてくる」という課題は避けられません。

 第一案は、出題は世界史探究/日本史探究のみとし、設問の中で歴史総合で培ったコンピテンシーを試す方法です。

 第二案は、大問一題を「歴史総合」に固定し、「歴史総合」の最終目標である「日本国民の自覚を促す」範囲に限定して出題する方法です。日・世共通問題(東京外国語)か、それぞれに振った問題(法政や試作問題)かは問いません。

 これならば受験生は日本史/世界史探究を歴史総合で学んだ方法で学習し(探究も単位減の割に記述量が減ってないので教科書が終わらない)、歴史総合との重複部分については深めに学習すれば済みます。「歴史総合」は世界史に振っているので、日本史選択生はこの方が負担は減ります。

 大学側も直近の入試問題で対応を模索しています。

 名古屋大学の世界史は従来西洋史東洋史の枠組みからの出題でしたがが、2023年の第三問は日中国交回復と台北政府の国連追放の話題で、日本を含めた1970年代の東アジア情勢に関する三つの資料から読み取れることを論述させました。

 また少し前に資料からスキタイと匈奴の共通点を抽出したり、リード文の一部を虫食いして知識と読解から推理する問題など、新課程を見据えた出題をしています。

 一橋大学の世界史は毎年第Ⅲ問は東アジア近現代史固定です。資料を読んで考察する問題はここ数年増加傾向です。伝統の「教科書の通説を批判せよ」出題は「歴史総合」の二歩先を行く問題で、毎回受験生を混乱に陥れます。

 こうした動きから、従来からポリシーを持って出題している大学は「歴史総合」についてもポリシーはそのまま、範囲や形式をカスタマイズすると予想します。それは大学、受験生双方にとって最も負担の少ない方法といえます。

おわりに

 ぶんぶんは国公立大学、私立大学の世界史の入試問題を解きまくっていますが、ポリシーが明確な大学は「これ正解できるならちゃんと考えて学習している」という問題が「合否崖っぷち問題」になっています。それは歴史総合の目標とも重なります。

 ぶんぶんは共通テストへの英語民間試験活用の反対運動に参加しました。その時に学んだのですが、センター試験の英語はよくできていて、マス試験では評価が難しいライティングやスピーキング(東京都のESATJの杜撰さはむごすぎ)について、代替問題を使って評価していました。

 歴史総合についても「これ正解できるなら歴史の方法論が身についてますね」という問題であれば、形式にこだわる必要はないと考えます。

 逆に「授業で子どもの振りをした大人があり得ない会話をする出題」のような「形だけ真似してお茶を濁す」のはやめていただきたいです。

 センター試験が共通テストに代わった時、多くの大学はポリシーを変えずに入試問題をカスタマイズしているので、今回も上手に対応されると期待しています。 

 最後に『教養のグローバル・ヒストリー』を出されている北村厚さんのポストを紹介します。入試問題作成や採点にリソースを割けない一方、学生獲得のために複数回入試を実施しないと回らない、そのため知識問題に偏りがちな私立大学向けに、現在の入試問題を歴史総合にカスタマイズする方法について考察されています。

 ぶんぶんが入試問題を依頼されたら「21世紀の中国は世界の経済大国である。教科書は『19世紀日本の近代化は成功し、中国は失敗した』と教えるが、この約170年間で両者の経済的立場が逆転したのはなぜか」みたいな内容を出したいです。

 教室での高校生の会話にして、登場人物はあの人とかこの人とか…(以下自粛)