はじめに
2021年度入試に志願した受験生は、ポンコツ入試改革とコロナ禍のダブルパンチで(両方とも人災?)本当に気の毒でした。
今回は河合塾、駿台、代ゼミの2021年度入試の分析を参考に、2021年度入試についてふり返ります。
第2回は私立大学編で、首都圏と関西圏の大学が中心です。
今回最も参考にしているもの
代ゼミは首都圏の私立大学の情報に強いです。
過去回
どうなった?コロナ禍の2021年度入試(1 国公立大学編) - ぶんぶんの進路歳時記
どうなる?コロナ禍の2021年度入試(② 首都圏私立大学) - ぶんぶんの進路歳時記
どうなる?2021年度入試とコロナ禍対策(③ 関西私立大学と公募制推薦) - ぶんぶんの進路歳時記
目次
0 2021年度入試「改革」のおさらい
- センター試験→共通テストに
- 英語成績提供システム→2019年11月にストップ
- 国語と数学に記述式→2019年12月にストップ
- 主体性評価→Japan e-ポートフォリオが2020年4月に運用停止
- 共通テスト→「思考・判断力をより試す」という触れ込みの割には、数学は読解量が増えた一方問題は簡単に、国語は出題者の利益相反疑惑からほぼセンター試験に戻り、英語は声高に叫んだ四技能とは程遠く、リーディングは中身に乏しくリスニングは短期記憶勝負に
- 入試改革→理念(そもそも「入試で教育を変える」という前提がおかしい)を制度に落とし込むことができず、不備を指摘する意見を無視して強行しようとするが土壇場で次々挫折、ドアが外れた自動車のように「ポンコツ」化した
- 首都圏の難関私立大学のいくつかは文科省の理念に共鳴して大胆な入試改革を行ったが、関西の難関私立大学では大きな変更はなし。
2 私立大学編
① 一般方式 志願者は減少
2020年度入試の私立大学志願者数は文部科学省の集計によると約377.6万人、2021年度については、駿台は最終的に326.3万人、2017年度の数字に戻ると予想しています(268大学ののべ志願者数から計算 上記リンクより)。
( ゚д゚)ハッ! 1割以上も減ってる!
少子化が進む中でも私立大学は試験日自由選択制度、併願制度、センター利用などあの手この手で受験機会を増やした結果、受験者数は年々増加し、2019年度にはのべ志願者数は約389万人を数えました。
ところが2020年度(センター試験ラストイヤー)、受験生がポンコツ入試改革に巻き込まれるのを嫌った結果、2021年度の浪人生が減少しました。
またコロナ禍による経済的不安から受験校を絞る、地方在住者が感染拡大地域への進学を見送る、という受験生の志向も模試の段階から顕著でした。
さらに関西圏ではプレ一般入試っぽい総合型選抜や学校推薦選抜でかなり合格者を増やしました。コロナ不安で一般入試も実施が危ぶまれる中、受験を終了するものが増えたのか共通テストの欠席者も過去最高でした(前回参照)。
最後に、私立大学はもともと文系の定員が大きく、コロナ禍の不安から留学を必須としている外国語・国際系で大きく志願者を減らしました。
こうした要因が重なって一般試験の出願者が減ったと考えられます。
自粛と補償はセットですよ!
② 系統別志願状況
どの系統もほぼ壊滅状態ですが、特に落ち込みが激しいのが先述の外国語・国際関係学部、生活科学部、歯学部、農学部、スポーツ健康学部系統です。生活科学部は女子大不人気の影響、歯学部は「医者が無理なら歯医者」という流れが一部にあるそうで、医学部からの流入者が減ったからと考えられます。
③ 地域別志願状況
どの地区も軒並み志願者を減らしていますが、東北、中国地方以外が大きく志願者を減らしています。
ここ数年続いた定員厳格化で大都市部の大規模大学が敬遠され、大都市圏の中堅大学や、大都市圏以外の大学で志願者が増えました。
2021年度は、まず大都市圏の大学はコロナ禍で地方からの受験が減り「ローカル化」がさらに進みました。一方地方は景気悪化が大都市圏以上に深刻、受験数の絞り込みが起きると「のべ受験者数」は減少します。
ただし大都市圏の私立大学は合格者を増やしているので、頑張った生徒には福があったといえます。
④ 志願者が増えた大学 減った大学トピック
1)増えた大学
約4,100人と増加数は2番目に多くなりました(一番多かったのは共通テスト利用方式を無料にした千葉工業大学の約5,400人)。
立教大学は2021年度から学部ごとの試験をやめて(一部例外あり)、関西ではおなじみの「全学入試」(どの学部を志願するか申告する)を複数日導入、このため一つの学部を複数回受験できるようになりました。
したがって「のべ志願者」が増えるのは当然です。共通テスト利用方式は微減です。
さらに英語は一般試験では課されず(一部除く)、共通テストの成績と英語民間検定の点数のいい方を使うので、英語の勉強をしなくていいという「お手軽さ」が志願者数を押し上げたと考えられます。(`・ω・´)
ただし今年初めての共通テスト(しかも内容はスカ(以下略))とまるで用途の違う複数の英語民間検定をどのような科学的根拠で公平に点数化したのか、疑問が残ります。
本誌既報通り、共通テスト利用方式を拡充(二教科型も新規導入)した結果、志願者が増加しました。一般入試は微減です。
昨年度大幅減少の反動で一般方式、共通テスト利用方式とも増加してます。
2)減った大学
約2万人の減少と最も減少数が多くなりました。一般方式、共通テスト利用方式とも大幅減でした。
立命館大学は全学方式と共通テスト利用が基本で、従来はひとりで複数の日程とセンター利用を出願していましたが、ぶんぶんのところの受験生も「一般は立命館で共通テスト利用は近畿大学」みたいな安全策が目立ちました。
まあ合格する人は全勝、ダメな人は全敗は「あるある」です。関関同立ベタ打ちするよりは、安全校を混ぜる方がお財布にやさしいです。
あと立命館は東海地方からの受験生も多く、地方会場も設置していますが、内向きさでは引けを取らない当該地域の受験生が減った可能性もあります。
本誌既報通り志願者を減らしました(約17,700人減)。全学日程と入試変更をしなかった経済学部に人が集まり、共通テスト+学部・学科の適性試験を課した一般入試は前年度の約6割と大幅に減少しました。
ぶんぶんは関西圏の大学の進路指導でご飯を食べていますが、私立大学は国公立大学と強い併願関係を持ち、多少愛情を試す問題を混ぜてあるものの、国公立に合格できる学力があれば特別な対策をしなくても合格できる仕様です。
これなら受験生が国立と私立、私立と私立を併願しても、勉強の負担は2倍3倍にならないので助かります。
ぶんぶんは首都圏の世界史の問題も解いていますが、学部個別方式では大学ごと、学部ごとの色が強く出ているとはいえ、まあ何とかなる程度の違いです。しかし今回の青学や上智の学部学科個別適性試験(サンプル問題)はちょっと「一見さんお断り」が過ぎる印象で、受験生が敬遠したくなるのも無理はありません。
首都圏の難関私立が「受験生が本大学に合格したいなら他大学と併願せず、特別な準備をして臨むべき」と思っているなら、受験料収入が減ってもラブラブな学生が入学するのですから、ブレずにその方針を貫けばいいと思います。
約13,000人の減少で、本誌既報通り共通テスト必須となった政治経済・スポーツ・国際教養は大幅に志願者減、政治経済が選択科目から外れた社学、人間科学も志願者を減らしました。
一方で文化構想と文学部の英語4技能テスト利用型は増加、首都圏の私立高校が入試改革を見越して英語検定にお金をつぎ込んでいた様子が「英語成績提供システム」が問題になったときに報道されていました。
法学部は数学必須になった政治経済学部と共通テスト利用が廃止された商学部の受け皿になったようで、志願者が増加しました。
メディアは「早稲田大学の志願者が10万人を切った」と大騒ぎをしていますが、早稲田大学からすれば想定内です。
早稲田の入試改革で慶應義塾大学の経済学部、商学部の数学レス(B方式)に志願者が集まりましたが、一方で数学が必要なA方式は、地方の難関国公立志望者(二次試験で数学あり)が首都圏の私立を敬遠したことから減少しました。
その他
首都圏、関西圏の総合大学はどこも志願者を減らしています。
日本大学は例のタックル事件が影響して志願者が減った反動で2020年度に志願者を増やしましたが、その揺り戻しで首都圏では2番目の減少幅でした。定員厳格化の中で一人勝ちだった法政大学も減少しました。
京都産業大学は西日本では二番目に多い減少幅になりました。コロナ禍で色々あったから?
まとめ
- 大都市圏私大はコロナ禍の中で、移動不安による「ローカル化」、経済困難による「受験校の絞り込み」によって「のべ志願者数」が減少。
- 定員厳格化に慣れてきた大学が多めに合格者を出すようになり、競争は緩和。
- 文科省の意向に沿って大胆な入試改革をした大学は、負担増や他大学との併願がしづらくなったために受験生に敬遠された。
- 逆に従来型や「軽量入試」を行った大学、全学入試を導入した大学は志願者を集めた。
- 各大学はそれぞれのアドミッションポリシーやプライドを有していて当然だが、受験生は試験の形式で受験先を決める傾向がある。
- 隔年現象は難関私立との併願関係が強い中堅私立大学で発生しやすい。
- 先立つものは勉強。入試負担の軽さから大学を選ばない。
- 受験生はまず適切な第一志望を決める。そのための学習に集中できてかつ金銭的身体的な負担がかからないような、適切な併願大学と方式を選ぶ。