新型コロナウィルス感染症、いまだ落ち着く気配がありません。「Go To」キャンペーンは絶賛実施中の一方、大学の授業は全面通常通りとはいかず、感染者が出れば新聞を賑わせます。
*高校は狭い教室に40人の日常に戻っています。「これを機に少人数教育」という声が上がっているのに財務省は「効果がない」とゼロ回答です。(#゚Д゚) プンスコ!
この間大学生にアンケートを取る機会がありましたので、大学の後期授業の様子を取材しました。
参考 各大学の新型コロナウイルス感染症対策のリンク 大学通信
1 三重大学
学生数:約7,000人
医学部医学科一年生の話によると、前期は共通教育も専門科目もすべてオンライン授業で、後期から専門教科で対面とオンラインを組み合わせた授業が始まりました。登校可能日が決められていて、計4回登校するそうです。
対面授業の参加期間とその2週間前からは部活やサークルに参加できないそうです。
教育学部一年生の話では、前期はすべて遠隔授業(Zoom、Meet、Teamsなどを使ったオンライン授業と一部動画配信授業)、後期も基本オンライン授業で、一方向的な講義もありますが大半は学生も発言を求められるそうです。
2 関西外国語大学
学生数 約12,000人(2キャンパス)
外国語学部の一年生の話では、必須の授業は主にzoomで、予習したところの追加説明、ネイティブの先生の授業はコミュニケーションが中心です。
「zoomでネイティブの先生の授業を受けていますが、対面よりも話せる回数が少ないため身についているか不安」とのことです。
秋学期の授業については、「オンライン授業を基本とし、感染防止対策を徹底しつつ、対面授業を一部並行して実施していく方針」とのことで、体調チェック。消毒、換気を徹底するそうです。
たしかに外国語大学ですから会話がないと成立しない、オンラインでも可能ですが物足らないです。
3 三重県立看護大学
学生数 約430人
実習を伴う学部ですので、前期からオンライン2:対面8の割合で、後期からはほぼ対面授業とのことです。
一年生の話では、一限目を開講せず登校時間をずらしたり、教室は窓を開ける、離れて座る、フェイスシールドやマスクの着用など感染症対策を入念にしているそうです。
看護学部では臨地実習が最重要ですが、期間を減らし(その間はアルバイト。サークル禁止)、代わりに学内実習を行っているそうです。「臨地に行って学ぶ機会が減っていること」が一番困ることだそうです。
4 畿央大学 学生数 約2,200人
前期はすべてオンラインでしたが、後期からはオンデマンドと対面の併用になります。看護学科は、実習は早い段階から対面で行われていて、後期からは人体構造などの重要な科目は対面が増えるとのことです。
感染予防のためにクラスで分けたり、毎日検温を報告し、手指消毒を行って授業に臨んでいるそうです。
5 その他
鈴鹿医療科学大学(2キャンパス学生数約2,800人)は前期から体育は対面で行っていましたが、実習を伴う授業が多い関係上後期はほぼ対面授業です。一方近畿大学(6キャンパス学生数約33,000人)の経済学部は後期もオンライン授業で講義は一方向、英語科目は双方向だそうです。
京都女子大学は、食物栄養学科では後期から対面が基本、一方現代社会学科は少人数のゼミは対面で、その他はオンラインです。
つまり対面かオンラインかどちらに比重を置くかは、学生数の多さ、学部の授業内容などで決まるということです。文科省が発表する単純集計では見えない部分があります。
6 学生の悩み
- 友達ができない
- サークルの紹介がなくなったのでどんなサークルがあるのかわからない
- 大学の友達に会えない
- オンラインだとコミュニケーションがとりづらい
- 勉強のモチベーションの維持が難しい
- 授業内容を教えあったり確認したりしづらい
- 課題が多い
- 数学専攻の生徒は一部課題をTeX(複雑な数式でもきれいに書ける文書形成システム)で提出しなきゃいけない(新入生にはきつい)
- 臨地実習の不足
- フェイスシールドがしんどい
- 食事の際の無言はしんどい
- オンラインになれたので大学に行くのがしんどい
- 特に困りごとはない
大学は「場」としての機能が重要です。研究・実習・ゼミは当然ですが、先生が一方的にしゃべって終わりという(ぶんぶんのような)授業も、課題について友達と議論する、図書館で調べ物をするなど「場としての大学」を前提にしています。
オンライン会議ツールも講義から少人数でのグループ討議まで対応はしていますが、リアルなコミュニケーションの完全な代替にはなりません。
特に医療系の臨地実習、最近だと教育系の現場観察など現場で得るものが多い系統では、行動が制限されるのは厳しいです。
また大学の学びを補完するのが、一緒にご飯に行ったり、サークル活動で他学部の生徒の友達を作ったりなどの「インフォーマルなコミュニケーション」です。そうした他人との関わりで得られる経験は、就職だけでなく大学での研究にも必要です。
最後に、オンラインの講義授業はどこも毎回レポートや小テストがあります。ある大学の広報さんによると「新型コロナウイルス感染症が急速に拡大して試験ができなくなったときに備えて」だそうです。
学生も大変ですが、オンラインの授業準備をする先生も大変、特に時間給の非常勤講師は機材なども自腹と聞きます。
7 おわりに
萩生田光一文部科学相は10月16日の記者会見で、後期の授業全体で対面を実施する頻度が3割以下と回答した国公私立大など376校を対象に、改めて対面と遠隔授業の比率などを再調査する方針を示しました。
(゚Д゚)ハァ?
大学は7月27日に文科省から出された通知に応じて、後期についてはここまで見たように可能な限りの対応をした上でスタートしています。
後期が始まってから「対面授業が少ない大学は公表する」は「後だしじゃんけん」かつ「脅し」です。政府および直接の監督官庁である文科省の仕事は感染拡大を防ぐために予算措置をして大学を支援することです。
私学助成金の前倒し交付はあくまで「前倒し」、感染症対策のために何らかの交付金は必要だと考えます。お金を出さず大学を悪者扱いにして学生や保護者の批判の矛先をそらそうとするのは違います。
手洗いうがいは「自助」ですが、国民から「預かった」(どこかの首相は「吸い上げた」と国会で言い間違えていましたが)税金は、政治家の利益ではなく「公助」のために使うのが当たり前です。
大学は国公立・私立を問わず将来を担う人材を育てる場です。受益者負担は当然ありますが、感染症という個人で何ともしがたい部分は国民の税金で支えなければなりません。文科省におかれましては職責を全うしていただきたいです。