はじめに
国立大学協会(以下国大協)が文科省の発表を受けて、国立大学に7月31日までに募集要項を発表するように要請しました.。.
今回は、前半では調査書の扱い(特に点数化する大学)についての追加情報を、後半では出題範囲の配慮について、各大学のHPで裏どりしつつまとめます。
*最新情報は各大学のHPで確認してください!
過去回 参考にした河合塾のリンクはこちらから
bunbunshinrosaijki.hatenablog.com
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1 国公立大学で調査書を点数化する大学(第2報)
前回から特に「点数化する」と公表していた大学の変更や確定分を足しました。
大学名 | 学部名 | 学科名 | 日程 | 以前の発表 | 変更点その他 |
帯広畜産 | 畜産 | 全課程 | 前 | 調査書を点数化して最終選考で利用 | 本年度は点数化しない。同点で並んだときは総合判定 |
小樽商科 | 商(昼間) | 後 | 調査書と志望理由書利用 | ||
北見工業 | 工 | 全学科 | 前・後 | 調査書を点数化して最終選考で利用。志望理由書も参考にする | 一部の志願者が不利益を被ることのないように取り扱う |
青森公立 | 経営経済 | 全学科 | 前・後 | 合否ライン上で同点となった志願者がいた場合、調査書を利用 | |
弘前 | 全学部(教育・医を除く) | 全課程・学科 | 前・後 | 調査書と志望理由書を点数化 | 評価対象から調査書を除く。配点合計変更 |
東北 | 全学部 | 全学科 | 前・後 | 合否ライン上で同点となった志願者がいた場合、調査書を利用 | |
秋田県立 | 全学部 | 全学科 | 前・後 | 調査書を点数化 | 共通テストと個別学力検査の配点合計の0.5%を上限として各受験者の合計得点に加点 |
秋田公立美術 | 美術 | 美術 | 前・中 | 調査書を点数化 | |
福島 | 全学群 | 全学類 | 前・後 | 調査書を点数化して最終選考で利用 | 調査書を用いた主体性等評価は見送り。合否判定は調査書の配点を除いた総点で行う |
茨城 | 人文社会科学、理、工(昼間)、農、工(フレックス) | 全学科 | 前・後 | 調査書等を点数化 | 総合選抜で調査書利用(基礎学力を判断) |
筑波 | 人文・文化 | 人文、比較文化 | 前 | 調査書を点数化 | 調査書の配点を除いた総点で選抜 |
筑波 | 社会・国際 | 全学類 | 前 | 調査書を点数化 | 同上 |
筑波 | 理工 | 全学類 | 前 | 調査書を点数化 | 同上 |
筑波 | 生命環境 | 全学類 | 前 | 調査書を点数化 | 同上 |
筑波 | 医 | 看護 | 前 | 調査書を点数化 | 同上 |
筑波 | 体育 | 前 | 調査書を点数化 | 同上 | |
筑波 | 情報 | 情報科学、情報メディア創成 | 前 | 調査書を点数化 | 同上 |
群馬県立女子 | 全学部 | 全学科 | 前・後 | 調査書を点数化 | 共通テスト500点二次200(学科によっては100)点、調査書20点 |
埼玉 | 全学部 | 前・後 | 合否ライン上で同点となった志願者がいた場合、調査書を利用 | ||
東京都立 | 全学部 | 全学科 | 前・後 | 調査書を点数化 | 調査書等については、採点の対象にはせず全ての受験者を一律満点として扱う |
一橋 | 全学部 | 全学科 | 前・後 | 点数化し、合否ライン上で同点となった志願者がいた場合、調査書を利用 | |
長岡造形 | 造形 | 全学科 | 前 | 調査書等を点数化(自己プレゼンテーション用紙も) | 調査書10点、自己プレゼンテーション用紙10点 |
長岡造形 | 造形 | 全学科(選択B) | 前 | 同上 | 同上 |
新潟県立 | 国際地域、国際経済 | 全学科 | ABC日程 | 調査書を点数化 | |
新潟県立 | 人間生活 | 全学科 | ABC日程 | 調査書と面接と組み合わせて総合的に評価 | |
富山 | 医 | 医 | 前 | 調査書を面接の一部として点数化 | 調査書の内容と 大学入学共通テストの成績により第1段階選抜 |
石川県立 | 生物資源環境 | 全学科 | 前・後 | 最終選考で利用 | |
金沢 | 全学域 | 全学類 | 前 | 調査書を点数化して最終選考で利用 | |
公立小松 | 全学部 | 全学科 | 前・中 | 合否ライン上で同点となった志願者がいた場合、調査書を判断材料に | |
信州 | 全学部 | 全学科 | 前・後 | 調査書を点数化 |
理学部は使わない。教育学部 図画工作・美術教育コースは調査書に記載されている学習履歴・状況と志願者作成の提出書類の記載内容等を得点化。他は調査書の「学習成績概評」を得点化。 |
長野 | 全学部 | 全学科 | 中 | 調査書を点数化 | 共通テスト200点、二次200点、に調査書の点数(10点満点)410点満点で判定 |
愛知教育 | 教育 | 全課程 | 前 | 調査書を点数化 | 調査書の特記事項は点数化せず,合否ラインにで同点者がいる場合にのみ選抜の参考とする |
名古屋市立 | 人文社会、経済、芸術工 | 全学科 | 前・後 | 調査書等が評価対象になる | |
名古屋市立 | 薬 | 全学科 | 中 | 調査書等が評価対象になる | |
名古屋市立 | 看護 | 看護 | 前 | 調査書等が評価対象になる | |
三重 | 工 | 全コース(建築学を除く) | 後 | 合否ライン上で同点となった志願者がいた場合、調査書を判断材料に | |
京都工芸繊維 | 工芸科学 | 全課程 | 前・後 | 合否ライン上で同点となった志願者がいた場合、調査書を判断材料に | |
京都府立 | 全学部 | 全学科 | 前・後 | 調査書を点数化 | 学科によって違うが共通テストと二次試験の合計の5%程度 |
福知山公立 | 全学部 | 全学科 | 前・後 | 合否ライン上で同点となった志願者がいた場合、調査書を判断材料に | |
公立鳥取環境 | 全学部 | 全学科 | 前・後 | 調査書等が評価対象になる | |
尾道市立 | 全学部 | 全学科 | 前・後 | 調査書を点数化 | |
県立広島 | 全学部 | 全学科 | 前・後 | 調査書等を点数化 | 総合型選抜,学校推薦型選抜及び社会人特別選抜で,調査書等を得点化 |
福山市立 | 全学部 | 全学科 | 前・後 | 調査書を点数化 | |
徳島 | 理工(昼間)、総合科学、理工(夜間主) | 全学科 | 前 | 調査書を点数化して最終選考で利用 | |
徳島 | 医 | 医科栄養、保健-検査技術科学 | 前 | 調査書を点数化して最終選考で利用 | |
香川県立保健医療 | 保健医療 | 看護 | 前・後 | 小論文・活動報告書増、調査書を点数化 | |
香川県立保健医療 | 保健医療 | 臨床検査 | 前 | 小論文・活動報告書増、調査書を点数化 | |
愛媛 | 法文(昼間主)、法文(夜間主) | 人文社会 | 前・後 | 調査書を点数化 | 共通テストと二次試験の合計の5%程度 |
愛媛 | 社会共創 | 産業マネジメント | 前 | 調査書を点数化 | 同上 |
愛媛 | 工 | 全コース | 前・後 | 調査書を点数化 | 同上 |
愛媛 | 農 | 全学科 | 前 | 調査書を点数化 | 同上 |
高知 | 農林海洋科学 | 海洋-海底資源環境学 | 前 | 調査書を点数化 | 共通テスト、二次1400点調査書20点 |
高知 | 農林海洋科学 | 海洋-海洋生命科学 | 前 | 調査書を点数化 | 共通テスト、二次1300点調査書20点 |
福岡教育 | 教育 | 初等教育教員養成(幼児教育を除く) | 前 | 調査書を点数化 | 合計1100点に評定平均値が4.5以上だと10点加点 |
福岡県立 | 全学部 | 全学科 | 前・後 | 調査書・自己推薦書を利用 | |
福岡女子 | 国際文理 | 全学科 | 前・後 | 調査書を点数化 | |
佐賀 | 経済、教育、理工、農、芸術地域デザイン | 全学科(芸術-芸術表現を除く) | 前・後 | 書類審査を点数化 | 芸術地域デザイン学部(地域デザインコース),経済学部,理工学部で「特色加点」(提出任意) |
長崎 | 全学部 | 全学科 | 前・後 | 調査書を点数化 | 調査書記入担当者の主観で記入する箇所は配点の対象としない |
熊本県立 | 全学部 | 全学科 | 前・後 | 調査書を点数化 | |
熊本県立 | 全学部 | 全学科(英語英米文を除く) | 前・後 | 調査書を点数化 | |
宮崎公立 | 人文 | 国際文化 | 前・後 | 合否ライン上で同点となった志願者がいた場合、調査書を判断材料に | |
沖縄県立看護 | 看護 | 看護 | 前 | 調査書と実績報告書を点数化 | |
名桜 | 全学群・全学部 | 全学類・全学科 | 前・後 | 調査書など提出書類を点数化 | |
琉球 | 人文社会 | 国際法政 | 前・後 | 調査書を点数化 | 評定平均値だけでなく「総合的な学習の時間の内容・評価」「特別活動の記録」「指導上参考となる諸事項」等をアドミッション・ポリシーに照らして評価 |
琉球 | 人文社会 | 人間社会 | 前 | 調査書を点数化 | 同上 |
琉球 | 国際地域創造(昼間主)、国際地域創造(夜間主) | 前・後 | 調査書を点数化 | 同上 | |
琉球 | 理 | 全学科 | 前 | 調査書を点数化 | 同上 |
琉球 | 農 | 全学科 | 前 | 調査書を点数化 | 同上 |
詳細に調査書を点数化する予定であった弘前大学と福島大学が、その部分を除いた総点で合否判定することになりました。
弘前大学 なお志望理由書の点数化は従来通り
また長崎大学については「調査書記入担当者の主観で記入する箇所は配点の対象としない」とあります。
この言い方だと、評定平均値は見るとして、6観点の4番と5番(ただし個々の検定や表彰を公平に点数化できる?)しか見ないということです。各大学の求めに応じて記入する「備考」も不要ということになります。
6つの観点
- 学習における特徴等
- 行動特徴 特技等
- 部活動 ボランティア活動 留学・海外経験等
- 取得資格、検定等
- 表彰・顕彰等の記録
- その他
令和3年度大学入学者選抜実施要項のスクリーンショット
担任がいっぱい打ち込むのに! 工エエェェ(´д`)ェェエエ工
東京都立大学は、今年度は調査書等については採点の対象にはせず全ての受験者を一律満点として扱います。
しかし、数値化できるものしか合否判定に使用しない方が「学問の府」たる大学の姿勢として正しいと思います。
繰り返しになりますが、私は「主体性評価は主体性を歪める」と考えます。
そもそも「主体性」の定義が曖昧です。しかも頓挫した「JAPAN e-Portfolio」では「行動として表に出る」ものが大半です。
つまり「多面的」評価といいながら、システムの都合で生徒の「大人にとって望ましい」一面しか評価しない仕様になっています。
その結果生徒が大人が望む主体性を演じたり、高校が生徒に調査書に書けそうなことをさせるようになると、もうSFの世界です。
また主体性を点数化する場合、違う部活やイベントの成績の比較など、何が何点に値するのか、その根拠も含めて疑問です。
*炮筒子(パオトンズ)さんによる主体性評価とJePの問題点整理。よくできているので拡散します。
https://twitter.com/paotongzi
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私は総合型選抜や学校推薦選抜で、その大学の受け入れ方針に関わる活動を出願資格にすることは賛成です。その上で面接を実施すればよいと思います。
調査書の記載は「過去」、大学が評価すべき主体性とは受験生の「未来」であるべきです。だから志望理由書や推薦書が重要で、調査書は客観的事実で事足ります。
一般選抜は学力重視ですが、主体性を問いたいのなら志望理由書、面接、ペーパーインタヴューを段階別評価するのが妥当と考えます。医療系では面接Cで即不合格というのがありますが、受け入れ方針に沿ってのことなら問題ありません。
調査書については評定平均値など客観的部分の評価かつ最終選抜での利用でしょう。
各大学におかれましては、今回のJePの破綻を参考に、主体性評価については見直し、調査書は説明責任に耐えられる活用方法をご検討願います。
2 二次試験で出題に配慮を行う国公大学
1)何もしない
2)補足事項を記載する
「5.個別学力検査実施教科科目の出題方針」において、一部の科目に「教科書の発展的な内容を出題する」旨記載していますが、令和3年度入試については、原則、教科書に記載されている発展的な内容からは出題しません。ただし、設問中に補足事項等を記載した上で、発展的な内容を出題することがあります。
3)発展的内容は出題しない、または選択問題を設定
4)学力検査をやめる
横浜国立大学では、受験生の安全と安心を第一に考え、また、新型コロナウイルスの感染拡大防止の観点から、令和3年度一般選抜の個別学力検査を実施せず、すべての学部で自己推薦書の提出を求め、大学入学共通テストの得点を用い、一部の学部では出願時に課題の提出を求める等、入学者受け入れ方針を踏まえた選抜を行います。
コロナの拡大で個別試験や追試験も危うい、過去には経営学部が前期センター試験のみだったこともある、それらを踏まえての決定でしょう。中期後期がメインで前期は一次試験のみの大学もあります。
ただ今回は注意が必要です。それは配点です。理工学部はこうなっています。
二次試験をしない代わりに、共通テストの該当科目の配点を上乗せしています。共通テストでは国数英の問題が大きく変わり、「できる子はできて、できない子はできない」=選抜性の低い試験という批判がある中で、かなり危険な賭けです。
ぶんぶんは大学の「立ち位置」を重視する(第一志望者が多いか、一次の点数で出願者が動くか)ので、横国が第一志望が多い大学なら、受験生の勉強計画や併願プランの変更が発生したり、「共通テストは第二日程で受験した方が有利では?」とさえ考える人が出るのでは、と危惧します。
ご自分の志望大学がどうなっているのかについては、国立大学については国大協の次のページが各大学へのリンクになっているのでお調べください。
https://www.janu.jp/univ/exam/
3 特例追試を受験した人の出願時期や推薦入試の扱いは?
2月13・14日の特例追試を受験すると、共通テストあり推薦入試の合格発表は2月16日までなので間に合わないです。また一般試験の2段階選抜も3日前です。
1)東京大学
特例追試を受験した受験生については「出願期間等を別途定める予定です。詳細は,入学者募集要項(11月中旬発行予定)を参照してください」とのことです。
2)名古屋大学
大学入学共通テスト後に出願する学校推薦型選抜があり、東海地方の国立(以下略)高校がこぞって出願します。
第一日程、第二日程の受験生は2021年1月22日(金)締め切り、第一次選抜2月10日、面接2月15日、発表2月16日です。タイトです。
特例追試験受験者の選抜期日や合格発表日については「募集要項で公表します」とのことです。
3)三重大学
共通テスト前に出願し、その点数で第一次選考を行う医学部医学科の推薦は、第一次選考2月9日、面接等2月12日・13日です。特例追試験を受験した場合は[第 1 次選考が2 月 19 日,第 2 次選考が2 月21日と別日程で行われます。
4)東北大学
AO(総合型選抜)Ⅲ期 (一次試験後に出願)が有名です。 出願締め切りが1月27 日、第一次選考 2 月9 日、二次選考2 月13日です。
Ⅲ期を狙っているなら第一日程で受験した方がいいです。
おわりに
共通テストの第二日程を希望する生徒は約3万人、共通テスト受験者50万人と見積もれば約6%です。関西では第二日程は近畿大学や龍谷大学の入試日、翌日は関関立の入試がはじまるので、この結果は最初からある程度予想していました。
文科省と文部科学大臣は「同じ人が作っているから難易度は同じ」と言ってますが、テスト理論の南風原先生が言うように、同じ難易度のつもりで作っても難易度は変わります(大臣に直接意見したのですが無視されている模様)。
受験生には勉強に集中してほしいです。今の制度は「どっちを受けたら有利か」など受験の本筋と関係ないことで受験生に気をもませています。
とはいえ私は現場の人間ですから、共通テストの問題がへんてこりんだろうが、制度が危うかろうが、受験のための準備を進めなければなりません。
ほんと、毎日胃が痛いです。(´;ω;`)ウゥゥ