文科省が「2020年度(2021年度入学者選抜)には『英語成績提供システム』を使わない」と発表したのにもかかわらず、国立大学協会が各国立大学に「『一般試験の受験者に英語検定を課す』というガイドラインは変更しない、個別試験で検定を使うかどうか、2019年11月29日までに公表するように」と求めました。
前回
http://bunbunshinrosaijki.hatenablog.com/entry/2019/11/26/180724
結論から言うと、地滑り的に「使わない」になりました。ほとんどの国立大学はここだけの話、嫌々だったんですかね?
国大協HPのリンク集から各大学の発表を見ることができます。
前編は東日本編です。
*表の凡例:
11月以前
●:必須
▲:出願資格…理由書など代替可 点数化…提出があれば加点
×:提出…提出しない 空欄は提出原則必要(裏技あり)
11月29日時点
×:利用しない
△:提出があれば加点や見なし得点として利用
〇:必須
☆:総合選抜や学校選抜の一部で利用
*学部ごとに出願要件、加点と扱いがちがう大学もありますが、一緒にしました。
11月以前 | 11月29日時点 | ||||||||
大学名 | 提出 | 成績提供システム | 出願資格 | 点数化 | 一般試験 | 特別選抜 | 備考 | ||
1 | 旭川医科 | ● | ● | A1A2 | × | ||||
2 | 小樽商科 | ● | ● | - | × | ||||
3 | 帯広畜産 | ● | ● | A1 | × | ☆ | |||
4 | 北見工業 | ● | ▲ | × | |||||
5 | 北海道 | × | × | × | |||||
6 | 北海道教育 | ● | ▲ | × | ☆ | ||||
7 | 室蘭工業 | ● | ● | × | |||||
8 | 弘前 | ● | ● | × | |||||
9 | 岩手 | ● | ● | × | |||||
10 | 東北 | × | × | ||||||
11 | 宮城教育 | ● | ● | A1 | × | ||||
12 | 秋田 | ● | ● | △ | 国際資源学部 | ||||
13 | 山形 | ● | ● | - | × | ||||
14 | 福島 | ● | ● | × | ☆ | ||||
15 | 茨城 | ● | ● | × | ☆ | ||||
16 | 筑波 | ● | ▲ | × | ☆ | ||||
17 | 筑波技術 | × | × | × | |||||
18 | 宇都宮 | ● | ● | × | |||||
19 | 群馬 | ● | ▲ | × | ☆ | ||||
20 | 埼玉 | ● | ▲ | A2 | × | ☆ | |||
21 | 千葉 | ● | ● | A2 | ▲ | △ | みなし満点 | ||
22 | お茶の水女子 | ● | ▲ | A2 | × | ☆ | |||
23 | 電気通信 | ● | ● | A2 | × | ||||
24 | 東京 | ● | ▲ | A2 | × | ||||
25 | 東京医科歯科 | ● | ● | A2 | × | ||||
26 | 東京外国語 | ● | ● | A2 | × | ☆ | |||
27 | 東京海洋 | ● | ● | A1A2 | 〇 | ||||
28 | 東京学芸 | ● | ▲ | × | |||||
29 | 東京芸術 | ● | ▲ | △ | 音楽学部みなし満点 | ||||
30 | 東京工業 | ● | ● | A2 | ● | × | |||
31 | 東京農工 | ● | ● | A2 | × | ||||
32 | 一橋 | ● | ▲ | A2 | × | ||||
33 | 横浜国立 | ● | ● | A1A2 | ● | × | ☆ | ||
34 | 長岡技術科学 | ● | ● | × | |||||
35 | 上越教育 | ● | ● | A1 | × | ||||
36 | 新潟 | ● | ● | × | |||||
37 | 山梨 | ● | ● | A1A2 | × | ||||
38 | 信州 | ● | ● | A2 | ● | × |
帯広畜産大
帰国生,社会人,私費外国人特別選抜では利用です。確かにリカレント入試で学力を担保するには検定も必要かと。
北海道教育大
重要なお知らせ【令和3年度(令和2年度実施)入学者選抜に関する公表事項の変更について】 | |国立大学法人 北海道教育大学
以下の特別選抜のみ利用します
函館校の学校推薦型選抜(一般),岩見沢校の芸術・スポーツビジネス専攻の総合型選抜(自己推薦入試)及び特別選抜(社会人入試,私費外国人入試)における英語認定試験を含む外国語資格保持者のスコア等の活用は従来通り。
本学が指定する外国語資格・検定試験において,一定以上のスコア又は等級(大学入試センターが認定した資格・検定試験はCEFR B1 以上)を所持し,当該スコア又は等級を証明する書類(実用英語技能検定及び国連英検を除き,出願時点から2 年以内のもの)を出願書類として提出した者については,学校推薦型選抜(一般)の得点に加点をして判定を行います。
【対象となる資格・検定試験及びスコア・等級】
函館校の学校推薦型選抜(一般)
実用英語技能検定 1950点以上
GTEC 960点以上
IELTS 4.0以上
TEAP 225点以上
TEAP CBT 420点以上 TOEFL iBT 42点以上
ベネッセコーポレーションが実施するGTECについては、どれが使えるのか記載がありません。
2年前OKなので「GTEC検定版(学校実施)」もOKなのでしょうが、「大学入試センターが認定した資格・検定試験」と書いてあるので、厳密に言うと「共通テスト版」(来年度実施なし)と「CBT版」がOKで、学校行う検定版は不可です。
北海道教育大学さん的には「従来通り」だから区別しないのでしょうが、広島大学のようにはっきりした方が受験生のためです。
また段階の切り方も独自ではなく検定業者5人とお友達学者3人で相談してきめたと批判のある「CEFR対照表」(TOEICが入ってる版)を参考にしています。
私は、一般入試では必須はやめるべきですが、検定の取得がアドミッションポリシーと一致する学科が、学生の追跡データを元に独自の客観的な基準で検定のスコアを出願資格にするのは問題ないと考えます。
http://www.chiba-u.ac.jp/exam/R3gaikokugo_kentei.pdf
全員留学必須、授業料値上げと鼻息の荒い千葉大学さん、出願の要件(A2以上)はやめましたが、スコアによる加点は続けます。
参考 2020年度入試
ウ 外国語検定試験成績の利用
下記の学部・学科等では本学が指定する外国語検定試験のスコアを取得していれば,個別学力検査の「外国語」の得点を満点に換算※,又は「外国語」の得点に所定の点数を加点することができます。(満点を上限とします。)
※個別学力検査の「外国語」の得点を満点に換算できるのは国際教養学部及び教育学部のみとなります。なお,満点として換算することが認められた場合,個別学力検査の「外国語」の受験を免除します。
国際教養学部,教育学部(学校教員養成課程英語教育コース) は英検2級以上から加点で英検1級で個別試験が満点扱い、それ以外は英検準1級以上(一部学部は英検2級以上)に段階的に加点です。
GTEC学校検定版(こちらは「四技能でオフィシャルスコアがでるもの」と但し書きあり)と従来型英検にTOEIC4技能版を加えた「英語成績提供システム」の表に載っている検定が利用できます。
最初の発表どおりです。内容がすごいです。(+_+)
出願資格として、次に掲げるいずれかの英語資格・検定試験の成績を保持していること
① TOEIC L&R(TOEIC-IP を含む)400 点以上
② TOEFL(iBT)40 点以上,または TOEFL(PBT)( TOEFL-ITP を含む)435 点以上
③ IELTS バンド 3.5 以上
④ GTEC(4 技能)840 点以上(※オフィシャルスコアに限る)
⑤ GTEC(3 技能),または GTEC for STUDENTS 500 点以上(※オフィシャルスコア 以外も可。 ただし,2019 年 3 月 31 日までの受検に限る)
⑥ GTEC CBT 720 点以上(※2017 年 3 月 31 日までの受検に限る。2018 年 4 月 1 日以降 の GTEC(CBT タイプ)は,GTEC(4 技能)として扱う)
⑦ 実用英語技能検定(英検)<従来型・新方式[CBT,S-CBT,S-Interview]> 準 2 級以上
⑧ TEAP(4 技能)160 点以上
GTECは3技能どころかオフィシャルスコアでなくても可です! まあGTEC学校検定版が四技能に対応したのは2017年(つまりセンターが「英語民間検定を使う」と発表した年)からなので、浪人生への配慮と拝察します。( ´_ゝ`)フーン
なお海洋工学部は「出願資格として、次に掲げる英語資格・検定試験の成績を活用し、その基準を「CEFR A1 以上」とする」、つまり何か受けてあればOKです。
https://www.u-tokyo.ac.jp/content/400127808.pdf
「政治家と文科省の圧力で利用に方針転換した」と報道されましたが(東京大学は否定しています)、「利用しない」かつ裏技「学校長の証明書」もなしになりました。
国大協の座長で、他大学に「みんなで決めたことだから」と民間英語検定の必須を押しつける一方、自校は提出任意で「B2以上加点、C1以上共通テスト英語満点扱い」というダブルスタンダードを炸裂させていました。
11月8日も「ガイドラインを撤回しない」と言い張ったのに、案の定自校は「利用しない」になりました。
HPには「お気持ち」(言い訳)が表明されています。
本学では英語の4技能を評価するために、大学入学共通テストの結果と合わせ、大学入試センターから英語資格・検定試験の成績の提供を受けること(「大学入試英語成績提供システム」の利用)を前提に検討を重ね、大学入学共通テストを課す一般選抜等については、大学入学共通テストの英語の成績に、英語資格・検定試験結果を活用し加点する方式を決定していました。
しかし、英語資格・検定試験の受験機会の公平性が充分に担保されないという懸念が示され、同システム導入の見送りが決定したため、本学としては上記方法を用いて英語の4技能を評価することができなくなりました。
また、この点を踏まえると、広く、多くの高校生等が受験する一般選抜において、直ちに本学独自に同システムの活用に代替するような対応をとり英語資格・検定試験を活用することは、極めて困難であると判断しました。
「システムが見送られたからできない」、悪いのは文科省ということです。あれ?11月8日の総会で京都工芸繊維大学の学長が「前提が変わったからガイドラインも撤回すべき」っていったのを突っぱねませんでしたっけ?
高校生の皆さんへ(英語の学習について)
筑波大学は、自立して世界的に活躍できる人材を育成するため、本学の教育を受けるのに必要な基礎学力を有し、探究心旺盛で積極性・主体性に富む人材を受け入れることをアドミッション・ポリシーとしています。そのことからも、「読む」、「書く」、「聞く」、「話す」の4技能を身に付けることは大切なことと考えています。
筑波大学では、外国人教員による授業の充実や英語資格・検定試験の全学的な実施と受験促進等、高校までの学習を引きつぎ、英語力の総合的な向上を目指した様々な取り組みを行っており、高校までに身に付けた4技能をさらに伸ばす環境を用意しています。令和3年度一般選抜では「話す」力の評価は難しくなりましたが、入試で課されているかどうかにかかわらず、4技能をバランス良く学び、継続的な学習習慣を身につけておいてほしいと思います。
「筑波大学には4技能を伸ばす取り組みがある」(`・ω・´)キリッ と自負するなら、民間試験を入試で必須化すると、生徒も先生も検定の勉強ばかりするし、とくに対面式ではない、機械に向かって一方的に話す英語検定は逆効果、高校では授業を大切にすることが肝要と考えます。
筑波大学様におかれましては、文部科学省が懲りずに「4技能、民間検定…」と言ってきたら、この「お気持ち」どおり「間に合ってるよ!」(゚Д゚)ハァ? と突っぱねてくださいね!
あと、「施設の老朽化が進んでいる」とツイッターに投稿されていたので、危ないですからこの件とは別に予算をもらってくださいね!
以下次号