ぶんぶんの進路歳時記

学習方法、進路選択、世界史の話題について綴ります

国立大学の英語検定活用変更(2019年11月29日)2西日本

 2019年11月1日、文科省の「英語成績提供システム」の実施延期を受けて、11月29日時点で判明した国立大学の英語検定の扱い、後半は西日本編です。

*これは2019年11月現在の記事です。最新版は各大学のHPを見てください。

前回

bunbunshinrosaijki.hatenablog.com

 国大協のリンク集

www.janu.jp

*表の凡例:

11月以前

 ●:必須

 ▲:出願資格…理由書など代替可 点数化…提出があれば加点

 ×:提出…提出しない 空欄は提出原則必要(裏技あり)

11月29日時点

 ×:利用しない

 △:一部学部で任意提出、加点や見なし得点として利用

 ◇:全学部で任意提出、加点やみなし得点として利用

 〇:必須

 ☆:総合選抜や学校選抜の一部で利用(空欄は利用しない)

*11月以前の発表では学部ごとに出願要件や加点の扱いがちがう大学もありますが、過去の話題なので一緒にしました。

*留学生や帰国子女入試は除きました。

 

    11月以前 11月29日時点
  大学名 提出 成績提供システム 出願資格   点数化 一般試験 特別選抜 備考
39 富山       ×    
40 金沢   A2     一部学部は共通テストと比較して高得点を採用
41 福井   A1 国際地域学部、TOEFLiBT
42 岐阜       ×    
43 静岡       × 教育学部英語専修 英検、TOEFLTOEIC
44 浜松医科   A2   ×    
45 愛知教育       ×    
46 豊橋技術科学       ×    
47 名古屋   A2   ×    
48 名古屋工業       × 創造工学課程の推薦 出願要件
49 三重       × 人文の推薦 英検準2級が出願要件
50 滋賀   A2   ×    
51 滋賀医科   A1   ×    
52 京都   A2   × 医学科TOEFLiBT
53 京都教育   A1 ×    
54 京都工芸繊維 ×         ×    
55 大阪   A2   × 歯学部
56 大阪教育         英語コース、英語コミュニケーションコース 加点
57 神戸   A2   × 志入試
58 兵庫教育       ×    
59 奈良教育   A1   ×    
60 奈良女子   A2   ×    
61 和歌山       × 観光学部
62 鳥取   A2 ×  
63 島根   A2   × へるん入試のグローバル型
64 岡山   -   × 総合のディスカバリープログラム
65 広島       みなし満点
66 山口         国際総合科学部 加点 GTEC3技能可
67 徳島   A2   ×    
68 鳴門教育       ×    
69 香川   A1   ×    
70 愛媛   A2   ×    
71 高知   A1   ×    
72 九州   A2     共創学部 共通テスト英語と比較し高得点
73 九州工業       提出任意で加点
74 福岡教育   A1   ×    
75 佐賀         共通テスト英語と比較し高得点を採用
76 長崎   B1   多文化共生学部 一般は任意で加点、総合は出願要件
77 熊本   A1   ×    
78 大分     ×    
79 宮崎   A1     工学部 みなし満点
80 鹿児島         みなし満点GTECはCBT
81 鹿屋体育       ×    
82 琉球   A2   × 教育中学英語専修で出願要件。英検、TOEFLiBT、TOEIC

 

注意を要する大学


金沢大学

令和3(2021)年度入学者選抜の変更に関する予告[5回目]について | 金沢大学

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 高等学校でメジャーな英検とGTEC学校検定版を外すという荒業です。

 英検のHPによると、11月24日実施のS-CBTで機器のトラブルにより805人中30人の答案が正確に記録されなかった(PBTだと答案を紛失またはシュレッダーにかけた)そうで、12月から3月にかけての分は中止です。予知していた?

 

福井大学

https://www.u-fukui.ac.jp/admission/admission_sect/remark/pdf/R111_2021-H33yokoku_2_minaoshi.pdf

 国際地域学部では,大学入学共通テストを課す入学者選抜(学校推薦型選抜Ⅱ,一般選抜(前期日程・後期日程))において,外国語検定試験TOEFL iBTの成績を活用し,TOEFL iBT が100 点以上の者は,「大学入学共通テスト」の外国語の得点を満点とします(成績は平成 31(2019)年4月以降のもの。必須ではない)。

 その学部のポリシーにフィットする検定一択というのは公平です。ただ高校生にTOEFL…。

 

山口大学

http://nyushi.arc.yamaguchi-u.ac.jp/nyushi_henkou/dat/ap/eigo_koushin.pdf

 打って変わって、国際総合科学部はGTEC3技能も可と大変フレンドリーです。えーっと、文科省は4技能って言ってなかったっけ?

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 九州地区は任意とはいえ一般試験で英語検定を活用する大学が多いです。

 

九州工業大学

https://cache1.jimu.kyutech.ac.jp/archives/033/201911/20191128_2021yokoku_eigo.pdf

 使える検定はフルで、加点はまだ検討中ですがかなり刻んでいます。九州ではどの検定がメジャーですかね?

 英語選んでない人も加点対象というのは、ちょっとどうかと個人的には思います。

(1)一般選抜(前期日程・後期日程),学校推薦型選抜Ⅱ,総合型選抜Ⅱ

出願時に英語資格・検定試験のスコア提出があった場合,表1を用いた換算点を大学入学共通テスト「外国語」の素点に加点します。検定による加点分は最大で素点満点の20%程度とする予定です。但し,加点により200点を超える場合は,200点を上限として取り扱います。

「外国語」において英語以外の言語を選択した場合でも,外国語としての英語に関する能力の証明とみなし,英語を選択した場合と同様に素点に加点します。

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九州大学

http://admission.kyushu-u.ac.jp/ext/yokoku/2021_app_link/2021_app_system_up1.pdf

共創学部以外は取りやめ、共創学部は従来どおりで使える検定には要注意。

*発展:前回からベネッセのGTECに粘着していますが、GTECは今回の入試改革を機に違う検定がすべて「GTEC」という名称になりました。その違い(学校実施の3技能・4技能、公開会場のCBT)を見抜いている大学とわかっていない大学とで「どの検定が有効か」扱いが異なるので、受験生が間違って門前払いされないために情報提供しています。九大は前者。

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まとめ

  活用方法 校数
必須 1
全学部で任意 4
一部学部で任意 10
× 利用しない 66
不明 1
推薦、総合で利用 24

 一般試験受験者全員に英語検定を課すのは東京海洋大学1校、全学部任意のうち広島と鹿児島は英検準1級以上とハイレベル、そこで加点を狙うぐらいなら他の勉強をした方が合理的です。

 また「一部の学部で任意」なのは英語関連学部で、のこりの66校(80%)が「使わない」です。(そのうち4校が最初から使わない。62校が完全方針転換)。

 つまり英語関連学科を目指さないなら、国立大学志望者にとって英語民間検定はほぼ入試に不要、ということです。

キタ━ヽ(゚∀゚)ノ━( ゚∀)ノ━(  ゚)ノ━ヽ(  )ノ━ヽ(゚  )━ヽ(∀゚ )ノ━ヽ(゚∀゚)ノ━━!!

 

 しかし、世の中そうは甘くありません。すでに不穏な空気は渦巻いています。

 11月29日の下村元文部科学大臣は記者会見で「制度設計、民間任せのスキームに問題があった。試験会場も各都道府県の教育委員会公立学校を会場に提供し、先生も試験官をやってもらえば、やれたと思う」と、「学校会場で一斉に検定を行う民間業者(現状ではベネッセ1社、英検協会は予約金を握りしめて貸しビル探しに奔走中)の利益のために高校教員はタダ働きせよ」ともとれる発言をしています。

 これでは「英語四技能を少人数教育や授業改善で行う気はさらさらない」「民間検定受験ありき」「利権」という批判が出て当然でしょう。(´・ω・`) 

headlines.yahoo.co.jp

 また朝日新聞11月30日付で国大協座長の永田恭介筑波大学学長は、「成績を提出してもらっても本番までに対応が整わないので対応できない」と「成績提供システムが延期になったからやむを得ず活用をやめた」のようなことを言っています。

 こういうその場しのぎの言い訳をすると、文科省に「じゃあシステムが稼働したらできるよね?」と言われます(言ってほしいの?)。

 つまり、オセロのように白白白…と変わった大学は、確固たるポリシーがなければ、また文科省や政治の圧力に屈して(東京大学は圧力はなかったと言っています)、すぐに黒黒黒…と変わってしまいます

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 筑波大学のHPに「四技能は大学で育てます」と強い意志が書かれていました。繰り返しになりますが、入試では「大学でやっていけるか」に直結するリーディングを中心にし、スピーキングは自由英作文など代替問題で試しましょう。

 「どういう学生がほしいか」「そのために何を試すのか」誰から何を言われても首尾一貫した態度であってほしいです。

 

 また英語民間検定の中で入試で試しづらいのがスピーキングです。

 私はスピーキングは客観的に点数化するのが難しいので入試にフィットしないと考えますが、例えばスピーキングアプリに一次試験の受験番号と顔写真でアクセスし、いくつかの対話で大まかな判定がでる、みたいなシステムなら使えるかもしれません。

 大学や民間の知を結集してシステムを開発するという民間活用は歓迎です(保護者の懐を直撃しないならその程度の利権はOKしましょう)。

*発展:これがモデルですが、猛烈に難しいので簡単にしてくれませんかね。(´・ω・`)

www.versant.jp

 

 国立大学におかれましては、今回の決断について敬意を表する一方、これが「その場しのぎの日和見主義」ではなく「大学のポリシーを確固たるものにする端緒」となることを願います。