ぶんぶんの進路歳時記

学習方法、進路選択、世界史の話題について綴ります

2020年度からの大学入学共通テストについて(2019年3月 英語検定の出願要件と加点)

 2020年からの大学入学共通テスト、国立大学が国語の記述式と英語の外部検定をどう扱う予定か、2019年4月現在で判明している78大学について、河合塾調べ(営業さんには一言入れました)とその元ネタである大学のHPを参考に解説します。

*現在は81大学すべてが活用法を予告しています。

 第2回は地方国立大学の活用方針についてです。受験生と保護者は表だけでなくリンク先で詳細を確認してください。

 

前回

bunbunshinrosaijki.hatenablog.com

 

河合塾の各大学の予告リンク集

www.keinet.ne.jp

 

大学 共通テストの利用について
国語記述式 英語認定試験
利用 活用の具体 利用 出願
資格
CEFR 加点 換算 活用の具体
旭川医科          
小樽商科            
帯広畜産 点数化して加点加点の最高点は国語としての満点の2割 A1      
北見工業            
北海道 点数化して加点 ×          
北海道教 点数化して加点       加点の最高点は共通テスト英語の配点の2割程度、満点を上限とする
室蘭工業         共通テスト英語に加点
弘前 段階別成績表示に基づき5段階(最大40点)に点数化して加点       共通テスト英語に加点
C2:40点
C1:35点
B2:30点
B1:25点
A2:20点
A1:10点
岩手 点数化して加点       共通テスト英語に加点
東北 点数化して合否判定に用いることはせず、合否ラインに同点に並んだ場合、記述式問題の成績評価が高い者を優先的に合格とする ×         CEFRのA2レベル以上の能力を備えていることが望ましいが、認定試験の受検・結果提出は求めない
宮城教育 点数化して加点 A1      
秋田 点数化して加点       共通テスト英語に加点
山形 点数化して加点          
福島 点数化して加点       共通テスト英語に加点(配点は、共通テスト英語160点、英語認定試験40点の計200点満点を各学類の配点に圧縮)
C1以上:40点
B2:35点
B1:30点
A2:25点
A1:10点
茨城 点数化して加点       点数化して加点
(共通テスト英語250点、英語認定試験50点。※配点が異なる場合も加点割合は共通テスト英語に対して2割)
C2:50点
C1:50点
B2:50点
B1:40点
A2:25点
A1:10点
筑波 総合評価を点数化して加点(マークシート式200点、記述式40点の合計240点を200点に圧縮)
A:40点
B:30点
C:20点
D:10点
E:0点
      共通テスト英語に加点(配点は、共通テスト英語200点、英語認定試験20点。加点後の得点は200点を上限とする)
C2:20点
C1:10点
B2:5点
B1以下:加点なし
宇都宮            
群馬 点数化して加点(マークシート式200点に対し、記述式を最大40点加点し、200点に換算する)       共通テスト英語に加点(共通テスト英語200点に対し、英語認定試験20点を加点。加点した合計点の上限は200点)
C1以上:20点
B2:16点
B1:12点
A2:8点
A1:4点
スコアなし:0点
埼玉 点数化して加点 A2     高等学校等からの「英語力確認書」、または英語力に関する自己診断を記した「理由書」で代替可
千葉 点数化して加点(配点はマークシート式80%記述式20%)
A:20%
B:15%
C:10%
D:5%
E:0%
A2      
お茶の水女子 点数化して加点 A2      
電気通信   A2      
東京     A2     高等学校等による英語力についての証明書や、認定試験成績・証明書を提出できない理由書での代替可
東京医科歯科 2段階選抜を実施しない専攻は、点数化して加点
2段階選抜を実施する学科は、第1段階選抜にはマークシート式問題の得点のみ活用し、2段階選抜では記述式問題を点数化して加点
A2     高等学校長による証明書で代替可
東京外国語     A2      
東京学芸            
東京芸術
(音楽)
点数化して加点       条件を満たした場合、共通テスト英語の得点を満点とみなす
東京工業 点数化して加点 A2   出願資格及び前期個別試験英語の結果に活用(配点150点中30点)
東京海洋 点数化して加点        
東京農工 点数化して加点 A2     スコアを提出できない理由書の提出で代替可
一橋 点数化して加点(配点はマーク式200点、記述式50点の計250点を200点換算する) A2     高等学校等による証明書、スコアを提出できない理由書の提出で代替可
※ただし既卒生は高校学校等による証明書は適用されない
横浜国立 点数化して加点 A1
※1

※2
  ※1経済学部はA2
※2教育学部、都市科学-都市社会共生においては、さらに点数化して共通テスト英語に加点
英語の配点全体に対する加点比率
教育学部
A2以上:20%
A1:10%
都市社会共生学科
C2:20%
C1:16%
B2:12%
B1:8%
A2:4%
長岡技術科学         共通テスト英語に加点
新潟 点数化して加点(加点する最高点は満点の2割)       共通テスト英語に加点(共通テスト英語+英語認定試験を200点満点と換算した場合、英語認定試験の最高点を40点とする)
C1以上:40点
B2:35点
B1:30点
A2:25点
A1:10点
上越教育 総合評価を点数化して加点(加点する最高点は国語全体の満点の2割) A1      
富山 点数化して加点
※1
   
※1

※2
※1共通テスト英語に加点(人間発達科学、経済、医、薬、芸術文化、都市デザイン学部
※2共通テスト英語に換算し、高得点の方を採用する、受検は任意(人文、理、工学部)
福井 点数化して加点(加点後の点数を大学の配点に換算) A1  
※国際地域学部では、C1以上で共通テスト英語を満点に換算する
高校学校等の調査書とスコアを提出できない理由書で代替可
山梨 点数化してマークシート式得点とあわせて活用          
信州   A2   共通テスト英語の一部として活用
教育-英語教育コースは出願資格(A2以上)としても活用
静岡 点数化して加点       点数化して加点(英語総点250を想定した場合)
C2:50点
C1:40点
B2:32点
B1:24点
A2:16点
A1:8点
※総点250点の英語の得点に、各学部・学環が指定する比率を掛けたものを、合否判定用いる得点に算入する。また、状況に応じて救済措置を講じる可能性がある
浜松医科 点数化して加点        
愛知教育 点数化して加点       共通テスト英語に加点
豊橋技術科学         点数化して共通テスト英語に加点
名古屋 点数化して加算し、200点満点に換算 A2     高等学校による証明書、スコアを提出できない理由書で代替可
名古屋工業 点数化して加点       点数化して共通テスト英語に加点
岐阜 点数化して加点
※1
A2
※2
  ※1医-医のみ
※2医-医以外
共通テスト英語に加点
三重 点数化して加点       共通テスト英語に加点
滋賀 点数化して加点        
滋賀医科 点数化して加点        
京都 点数化して加点 A2     高等学校長による証明書等の書類で代替可
京都工芸繊維 点数化して合否判定に用いることはせず、共通テストと個別学力検査の合計点で同点となった場合に活用する ×          
大阪 点数化して加点 A2      
大阪教育            
神戸 点数化して加点 A2      
兵庫教育 点数化して加点       点数化して加点
C1以上:50点
B2:40点
B1:20点
A2以下:加点なし
奈良教育 点数化して加点          
奈良女子                
和歌山 点数化して加点          
鳥取 点数化して加点          
島根 点数化して加点
※1
A2
※2
  ※1医-医のみ
※2医学科以外は、CEFR対照表に基づき、共通テスト英語に加点
岡山 総合評価を点数化し加点(配点は、マーク式180点、記述式20点)
A:20点
B:15点
C:10点
D:5点
E:0点
      合否判定に利用しないが、A2レベル以上の英語能力を有していることが望ましい
広島 点数化して加点       条件を全て満たした場合、共通テスト英語の得点を満点とみなす
山口            
徳島 点数化して加点 A1
    ※医-医、歯-歯、薬はA2
鳴門教育 点数化して加点       共通テスト英語に加点
香川 段階別評価を利用 A1
    ※医-医はA2
愛媛 点数化して加点 A1
    ※医-医はA2
九州   A2     2021年度はスコアを提出できない理由書での代替可
九州工業 点数化して加点       換算表に基づき、英語の得点に加算する
福岡教育 総合評価を点数化して加点(配点はマーク式160点、記述式40点) A1      
佐賀         共通テスト英語に加点(CEFRの段階に対して係数を設定し、共通テストの英語得点に各係数を乗じたものを加算)
長崎   A2
  ※一部学部・学科はB1
共通テスト英語または個別試験の得点に加点
熊本   A1   学部により共通テスト英語の成績に加点
大分 点数化して加点
    ※医-医のみ
共通テスト英語に加点
宮崎 点数化して加点     出願資格として活用する方式、共通テスト英語に加点する方式、それらを組み合わせる方式のいずれか
鹿児島 点数化して加点     認定試験の一定スコア水準を満たした者で、かつ共通テスト英語受験者のうち筆記・リスニング各80%以上の得点を取った者は、それぞれの英語の得点を満点とみなす。80%未満の場合は、英語の得点の25%を加点する
鹿屋体育 点数化して加点(配点はマーク式160点、記述式40点)       共通テスト英語に加点(配点は共通テスト英語160点、英語認定試験40点)
琉球 総合評価を点数化して加点(配点は、国語全体の満点の2割程度。教育学部小学ー学校教育のみ5割程度)
※1
A2
※2
  ※1医-医のみ
※2医-医以外
共通テスト英語に加点(配点は英語全体の満点の1割程度。教育-小学ー学校教育のみ5割程度)

 

最新版まとめ(文科省5月13日調べのスクリーンショット

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1 国語の記述式

 78大学中74大学が「利用する」としています。

 具体的な使い方は、15大学が詳細未発表、東北大学京都工芸繊維大学は点数化せずに同点生徒の判断材料にするとしています。

 のこり57大学は「点数化して加点する」で、具体的な数字を挙げている大学はマーク200点:記述50点(または40点)、国大協の「2割程度」を踏襲しています。

 千葉大学の方法が段階別評価の参考になります。200点換算ならA40点、B 30点、以下10点刻みでEは0点になります。

 なお国語の記述式は最も字数が大きい設問3が1.5倍の配点で、その段階別評価が総合評価に大きく関係します。 

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  最初の2問を完クリしても、問3が白紙だとC、逆に最初の2問がウダウダでも第3問ができればBで10点の差が出ます! これはシビアです。

 まあ最初の2問ができない人に120字の問題は難しいです。(´・ω・`)

 試行調査の結果報告によると、正答率は問1:75.7%、問2:48.5%、問3:15.1%でした。高校生のやる気の無さを差し引いても、第3問はかなりひどい出来です。

    なおセンターは「7割:5割:2割を想定していたので予想通り、総合評価の段階別も想定内の分布」と「すべて孔明想定内」とのことです。(`・ω・´)シャキーン

 すでに受験産業は学校に表現力教材の営業をかけていますし、模擬試験は記述の増加で一回100〜300円程度値上がりです(そのうち消費税分も上乗せ)。 これらはすべて保護者負担ですが、お子さまの将来のためお金を出し惜しみするわけにもいきません。

 他にも55万人規模の答案を正確かつ公平に採点できるのか、受験生は正確に自己採点できるのか(プレテストでは3割がずれた)、問題山積です。

 

2 英語の民間検定利用

 78大学中「利用する」としているのが74大学、北海道大学東北大学京都工芸繊維大学は「利用しない」としています。

 

ア)出願要件

 「出願要件とする」大学は(特定の学部だけも入れて)39大学です。CEFRのグレードで「A1」以上(英検3級、中学校卒業レベル)は帯広畜産から熊本まで10大学、「A2」以上(英検準2級)は20大学(医学部のみ3大学を含む)です。

 高校三年生の人口は2019年で約117万人、受験人口約70万人、センター試験受験者約58万人、A2以上相当の高校生40%(うちを検定取得者15%)です(文科省調べ)。

 国公立大学の定員約9万5000人なので、全員が受験するテストと考えた場合、偏差値上位大学はA2以上で大丈夫でしょうが、A1=受験するだけでOK!です。

 なお埼玉、東京、東京医科歯科、東京農工、一橋、名古屋、京都、九州は学校長の証明書や検定を受けられない理由書の提出でOKです(前回参照)。

 英語検定を運営する受験産業嬉しくないので「極めて少数派」「共通テストの点数を見て志望変更もある」と力説しています。確かに「利用しない」も含めて78大学中11大学(公立大学では82大学中9大学)と現段階では1割程度です。

 なお岡山大学の最新の予告では、大学での学修にはA2以上が必要としつつ、外部検定の実施体制、高校の授業が検定対策になること、換算点を入試に使うことへの懸念、地域や経済格差への対応などから、検定を合否判定には使わないとしています。

 発表済みの大学も変更の可能性があるので、各大学の動向を注目したいです。

 

イ)加点

 「加点」と発表しているのが33大学(出願資格にする大学も含む)、半分以下です。

 国大協のいう2割(共通テスト160点 民間検定40点)を踏襲しているところで最もわかりやすい均等配点をしているのは弘前大学です。

C2:40点 C1:35点 B2:30点 B1:25点 A2:20点 A1:10点

 ただC1はほぼネイティブ、通常の高校生限界はB2(英検準1級)です。またB2とB1(英検2級)にも大きな溝があります。一方B1とA2(英検準2級)にはそこまで大きな溝はありません。現行のセンター試験もA2~B1の難易度設定です。

 筑波大学はB1(英検2級)以下は加点せず、B2以上について共通テスト英語200点に加点し(満点はC2で20点、B2は5点)、加点後の得点は200点を上限としています。

 つまり英検準1級以上を持っている高校生は評価されますが、5点上乗せするために英検準1級の勉強に時間を費やすのは割に合いません

 三重大学(リンク参照)はさらに割り切っていて、C1以上に10%の加点です。これは最も「公平」な方法で、文科省と面と向かって喧嘩できない地方の国立大学の苦肉の策でしょうか。

 つまり外部検定は課すものの得点化して選抜に大きく影響させる大学は、現段階では東工大や、個別試験の英語を廃止する首都大学東京など「ごく少数」です。

 以上から、加点を狙って民間検定の勉強に時間を費やし通常の学習が疎かになるのは本末転倒、通常の受験生は高校三年生でA2またはB1狙い、しくじってもA1は確保しておく、が正解でしょう。

 なお大阪大学のAO・推薦入試では、共通テスト参加検定とは別枠の検定スコアを提出する学部があるので、英語が得意な人は二年生から英検準1級、TEAP、IELTSなどをガンガン受験しましょう。

 

まとめ

 文科省が英語民間検定を高校三年生の2回に限定したのは「経済的格差に配慮したため」と言っていましたが、お子さまの将来を考えて高校1年生から検定を「練習」で(共通テストには使えないのに)複数回全員受験している高校もあると聞きます。

    もちろん全額保護者負担です

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 「文科省受験産業グローバル化やAIなどで不安をあおり、保護者に負担を強いているのでは」などといった(新学習指導要領がうたう)メタ認知を発動して思考するのは根拠のない勘繰りです。

    日本においては官僚のすることは常に正しいことになっているので(無謬説)、受験生はそれを信じて英語4技能と思考・判断力を磨けということです。(´・ω・`)

 なお国立大学は研究機関、上野千鶴子さんが言うように「弱者の味方」が金看板です。国からの締め付けが厳しい今日この頃ですが、その名に恥じないように不公平は最大限取り除いていただける(不公平な方法は使わない)と期待しています。

 

追記:6/9

国会へ請願する動きが起きています。署名送付先の京都工芸繊維大学さんは民間検定は使わない方針です。

nominkaninkyotsu.com

 次回は「主体性評価」について。