最近入試の話ばかりで殺伐としていますが、隙を見て大阪市立美術館の「フェルメール展」に行ってきました。
東京では混雑緩和のため入場日指定がありました(大阪ではありません)ので、平日の午後におそるおそる出かけましたが、この日は時間待ちもなく入場でき、まあまあ混雑していましたが落ち着いて鑑賞できました。
公式サイト
大阪市立美術館のサイト
https://www.osaka-art-museum.jp/sp_evt/vermeer#cnt-2
入り口
1 フェルメールって?
ヨハネス・フェルメール(1632~1675)は、ネーデルラント連邦共和国(オランダ)の画家で、バロック期を代表する画家の1人です。写実的で明暗を巧みに使って空間を構成し、人物の質感を表現する作品が印象的です。
フェルメールの作品は30数点しか現存せず、現存作品はすべて油彩画です。
17世紀前半にオランダが世界商業の覇権を握ります、フェルメールが活躍する17世紀半ばは繁栄に陰りが見え始める頃でが、フェルメールとその時代の絵画には絶対王政の英仏とは違う市民の生活が生き生きと描かれています。
*発展:世界史のブログなのでオランダの話(忙しい人は2へ進む)
フェルメールが活躍する1650~70年代には、三度のイギリス=オランダ戦争が勃発し、オランダは徐々にイギリスに海上の覇権を奪われます。17世紀末に独占していた香辛料価格が暴落したこともオランダ経済に打撃を与えました。
同じ頃ルイ14世はスペイン王フェリペ4世の死去に乗じてフランドルに出兵する南ネーデルラント継承戦争(1667~68)を起こし、敵に回ったオランダに報復するためオランダ侵略戦争(1672~78)を起こします。
この後名誉革命(1688)でイギリスとオランダは同君連合となり、ファルツ継承戦争でフランスと争います。この時の北米での争いがウィリアム王戦争で、2019年一橋大学の出題「第二次英仏百年戦争」の最初になります。
こうしてオランダの商業は徐々に衰退に向かい、ウィリアム3世の死後にイギリスとの同君連合は解消されますが、アムステルダムの資金がイギリスの国債に投資され、イギリスは軍資金を得て第二次英仏百年戦争でフランスを圧倒します。
2 展覧会の内容
展覧会は6つのブロックから構成されています。最後の第6ブロックがフェルメールの6点の絵が展示されていて、その前の5ブロックはフェルメールの絵画の背景になる当時のオランダ絵画が展示されています。
1) 肖像画
肖像画は元々は王侯貴族の文化ですが、17世紀オランダでは市民たちも肖像画を残しています。夫婦で一対の肖像画、レンブラントの『夜警』のような群像肖像画も展示されていました。
2) 神話・宗教画
エル=グレコ、ルーベンスらバロック絵画に好まれて書かれたモチーフです。
オランダの宗教画は威圧的ではなく、市民生活タッチで描かれています。徴税吏のマタイが改心する「マタイの召命」は商人世界のオランダで好んで描かれたモチーフだそうです。
また「東方三博士」のイエスは本物の赤ちゃんのように描かれ、「ヨハネの斬首」は生々しくgoogleのポリシー違反っぽいです。(`・ω・´)
3) 風景画 4) 静物画
現在の絵画の重要ジャンルですが、登場するのはこの時期です。
重要商品のニシン漁も描かれていましたが、画家は外でスケッチして絵はアトリエで構成したそうです。
静物画ではロブスター・ヒラメ・エイなどが描かれていました。そういえば静物画に何を描くか各国比較みたいな問題がセンター試験の英語にありましたね。
5) 風俗画
初期は酒を飲んだりするシーンなど、キリスト教的にけしからんシーンを諫めるための絵(とかいってブリューゲルと同じく本当は楽しんでいる?)ですが、後半になると後のフェルメールにもある音楽を奏でる、手紙を書くなど洗練したシーンが好んで描かれます。
6) フェルメールの絵
6点の絵は 1宗教画、2初期の風俗画 3が音楽、456が手紙を書く絵です。中でも「手紙を書く女」はおなじみの絵で、ポスターにもなっていました。
撮影ポイントに6枚の絵と記念撮影ができるパネルがありました。
上段左『マルタとマリアの家のキリスト』 右『手紙を書く婦人と召使い』
中段左『恋文』 右『手紙を書く女』
『取り持ち女』では、おばさまが若い女の子をおじさんに紹介していますが、おじさんは金を払う前から女の子の胸をお触りしています。
( ゚∀゚)o彡゚ ( ゚∀゚)o彡゚ ( ゚∀゚)o彡゚ ( ゚∀゚)o彡゚
関テレでフェルメール展の特集をしていましたが、最初の構図はもっとおじさんの顔が前に出ていてエロ親父感マックスでした→(;´Д`) が、完成版ではおじさんは奥に引っ込み、女の子に光を当てて明暗を強調しています。
3 まとめ
下のパネルのように、市民生活の様子、人物の表情、建物や家具を巧みに使って演出される空間、窓からの光や輝く真珠などの明暗、背景の宗教画やグッズが持つ寓意など、一瞬を切り取りながらも様々な要素を凝縮して再構成する、フェルメールの絵画は市民の世界であるオランダ・バロックの集大成ともいえます。
芋の子を洗うような状態よりは、ゆっくり鑑賞し「ん?」と思ったら前のブロックに戻ってフェルメールの絵と比較できるような状態での鑑賞をお勧めします。
会期は5月12日(日)まで。お仕事の合間にご鑑賞ください。音声ガイドは石原さとみです(600円) コラ!(メ ̄  ̄)ノ☆(*_ _)o彡゚お……