私立大学の複雑な一般入試の集中解説。後編です。
日付は2018年度です。
前編
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4 検定料
③ 併願パターンと料金
私立専願の生徒が本命と併願を組み合わせる場合、
①合格は難しいが行きたい学校(チャレンジ校)
②順調にいけば合格可能な学校(実力相応校)
③確実に合格できる学校(安全校)
の3つを考えます。
①はなるべく多くの受験機会を使います。
②は一般で1校×2回か2校×1回でセンター利用も使う、③は1校×1回(センター利用だけでも可)受験すれば、自分の実力を見誤ってない限りどこか確保できます。
試算してみます。大学名は伏せます。
Bがチャレンジ、Cが実力相応、Dがワンチャン、Aが安全校です。
大学 | 受験日 | 方式 | 型 | 検定料 |
A大学 | 1月22日 | 前期A | 3教科型 | 30,000 |
A大学 | センター | 5,000 | ||
B大学 | 1月25日 | 前期A | スタンダード | 32,000 |
1月25日 | 前期A | 高得点科目 | 7,000 | |
1月26日 | 前期A | スタンダード | 32,000 | |
1月26日 | 前期A | 高得点科目 | 7,000 | |
C方式 | 20,000 | |||
C大学 | 2月1日 | 前期 | 3教科型 | 35,000 |
2月1日 | 前期 | 2教科判定方式 | 5,000 | |
D大学 | 2月5日 | 学部個別 | 理科選択方式 | 35,000 |
2月5日 | 学部個別 | 理工系学部併願 | 15,000 | |
B大学 | 2月11日 | 前期B | スタンダード | 32,000 |
2月11日 | 前期B | 高得点科目 | 7,000 | |
2月12日 | 前期B | スタンダード | 32,000 | |
2月12日 | 前期B | 高得点科目 | 7,000 | |
合計 | 301,000 |
工工エエェェ(´Д`)ェェエエ工工 こんなにかかるの!
さらにセンタープラス方式、他学部併願に高得点科目もつけると、検定料は雪だるま式に増えます。
ネット出願はポチッと申し込めてしまうからこそ、保護者同席の上でよく考えて出願してください。
*発展:近畿大学や武庫川女子大学では、前期Aで合格すれば前期Bの検定料が戻ってきます(同じ学部学科に出願していて前期Bを欠席した場合)。安く済ませるには学力です。
5 入学手続き
① 一次手続きと二次手続き
併願校の私立大学に合格した場合は、一次手続き(入学金の支払い)をすれば入学の権利を確保することができ、第一志望の合否によって二次手続き(残りの授業料や諸経費の支払い)を決めることが可能です。
なお入学を辞退しても入学金は返還されません。
例(2019年の日程)
凡例 矢印:出願期間 〇:入試日 ☆:発表日
一:一次手続き締切 二:二次手続き締切
註:センター試験は1月19、20日。国公立大学前期試験は2月25日から。
近畿大学の一次手続きが2月18日、関西大学と立命館大学の発表が2月15日、16日、18日です。
後者に合格したらそちらに一次手続き、不合格なら合格済みの近畿大学に一次手続き、または各大学の後期に出願できるようになっています。
このように併願関係の強い私立大学は、不要な入学金を払わなくて済むようになっています。
一方、これら大学の前期試験の一次手続きは国公立大学の前期試験の発表(3月上旬)よりも前です。ほとんどの私立大学がこのシステムです。
浪人を避けたければ入学金を払って入学の権利を確保し、国公立大学の結果を待つことになります。
入学金は200,000円〜300,000円が相場です。
なお関西大学、立命館大学では国公立大学後期の発表(最終が3月20日前後)後に二次手続きの締切が設定されています。
福岡大学の前期日程は一次手続きが3月1日、二次手続きの締切が3月8日ですが、他大学等を併願している人に限り、3月22日まで学費等納入金の振込(入学手続書類の提出含む)を延期することができます(要申請)。
このように一次手続きをすれば二次手続きは国公立の発表まで待ってもらえる場合があるので、あきらめずに前期も後期も中期も受験しましょう、と国立至上(以下略))の先生が言うはずです。
*発展:私立のセンター利用方式(前期)はセンター試験前に出願締切が設定されている大学が多いです。受験生心理を突いています。
*追記2/17
奈良学園大学は一般試験、センター利用前期の合格者が入学金を支払った後に他大学に合格して入学辞退する場合に、なんと入学金も返還してもらえます!(申し出期日あり)詳しくはリンク先参照。
② 入学金の振替 納入金の返還
入学金の振替は、公募制推薦で合格し、二次手続きをした後で一般試験で違う学部を受験し、合格した場合は既に支払ったお金をスライドさせることです。
学部間で入試難易度に差がある大学だと、人気学部に落ちて第二志望に合格し、入学金を納入してさらに人気学部を受け続けることになります。
*発展:ただし振替が可能な入試方式は限定される場合があります。 関西外国語大学は一般入試前期S方式とA方式にのみ振替制度が適用されます。
また一旦二次手続きをして入学が確定しても、3月末まで入学を辞退することは可能です。その際に納入金について返還申請をすれば入学金以外は返還されます。
こうした情報は募集要項や合格者の書類の中にあるので、しっかり読んで期日内に手続きしてください。
③ 補欠合格 追加合格
大都市圏の大規模校では入学定員超過を1.10倍にする「定員厳格化」の結果、2018年度入試で私立大学が合格者を絞り込みました。
しかし受験生の中にはひとりでいくつもの合格を取っている人がいます。その結果、いくつかの大学で二次手続きをする人が予想を下回り、定員が充足しない事態が発生したために、追加合格を出しました。
発展:名前は伏せますが、中京圏の某大学が「歩留まり」を大幅に読み違え、3月下旬に大量の追加合格を出して、多くの生徒が当該大学を受験する高校は大混乱に陥ったそうです。保護者からすれば、他大学に多額の授業料を払ったのにまたぁ?(怒)です。そして2019年には近畿圏の有名大学が同じことをやらかして大顰蹙を買ったそうです。
関西大学は前期合格発表の際に「補欠候補者」を明示し、2月末の一次手続きの充足率を見て、後期入試の前に候補者の中から補欠合格者を発表しました。
出願時に追加合格や補欠合格のシステムを確認する、第一志望発表ギリギリまで二次手続きは待つなど対応が必要です。
6 給費生・奨学生・特待生入試
私立大学の大半は、入学試験の学業成績や経済的理由等により学費の免除や奨学金を給付する制度を持っています。
参考 Kei-Net 受験料・学費に関する情報
① 入学前予約採用型奨学金
事前に申請書類を提出します。家計支持者の収入が基準以下かつ高校の成績が基準以上で、当該大学への入学を志望し、受験する予定の人が対象です。採用人数には上限があります。
近畿大学の場合は9月上旬に申請書類を提出し、11月に選考結果が通知され、採用候補者が決まります。その後に受験し入学したところで採用手続きを行います。
採用候補者になったからといって、他大学の受験や他大学への進学(近畿大学への入学辞退)は制限はされません。
② 奨学生
「奨学生入試」を受験することで授業料の減免を受ける権利を得ます。
金沢工業大学の特別奨学生制度(スカラーシップフェロー)は、 一般とセンター利用の両方に合格し、スカラーシップメンバーに選抜され、入学手続きをした人のうち希望者に対して面接を実施して選抜します(AO、推薦にも同様の制度あり)。
他には、奨学生入試を受験して不合格でも成績上位であれば一般入試の合格者になるタイプ、一般入試を受ける際に「奨学生入試」を申告するタイプがあります。
またAOや推薦で合格し手続きを完了した受験生が、さらに特別奨学生試験(一般入試の受験で代替する場合もあり)を受けるタイプもあります。受験料は別途必要な場合と不要な場合とがあります。
どの入試で合格したかで扱いが異なりますので、必ず各大学の募集要項で確認してください。
③ 特待生
入学時の成績によって一定年数の授業料が減免(全額~半額)になります。上位合格者かつ入試の得点率が基準を上回るものが対象になります。
対象の入試は一般、センター利用の前期日程が多く、近畿大学は一般75%以上、センター80%以上の得点率かつ上位合格者を対象にする学部が多いです。他大学では得点率8割以上、上位1割未満というところが多いです。
これは中堅私立大学によく見られる制度で「上位校にギリギリ合格して高い授業料払うより、うちでトップ層にいる方が得ですよ」というお誘いです。
なおこれら奨学金を継続して受けるためには、入学後の成績を一定以上に保つ必要があります。
おわりに
受験の世界では「MARCH」「産近甲龍」など偏差値帯でグループを分ける傾向がありますが、受験生が定員厳格化の影響で偏差値帯を広げて受験するため、中堅大学グループは軒並み高倍率になっています。
その「玉突き」でこれまで定員割れに苦しんでいた大学(主に大都市圏の中堅よりも入りやすいグループ)も競争が発生しています。
少子化が進んでいるのに私立大学の定員は増加しています。より多くの受験生から検定料や入学金を得るために、大学は様々な入試方式や割引を用意して受験生の「囲い込み」に躍起です。
そういう状況なので、担任とよく話し合い、必要なところに必要なお金を使うという戦略的な出願をしてください。
そうは言っても合格する人は合格する、一番大事なのは学力です。
*これは2019年度入試の情報です。必ず最新の募集要項で詳細を確認してください。