ぶんぶんの進路歳時記

学習方法、進路選択、世界史の話題について綴ります

今更聞けない大学入試の基礎知識(私大入試2 一般入試の方式・日程・検定料)

 1月初旬から私立大学の一般入試の出願が始まります。

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 私立大学は入試が複雑で、どれを受ければいいか困る受験生も多いと聞きます。

 大学入試の基礎知識新版、第2回は私立大学の一般入試について集中解説します。

 *内容は2018年なので、最新情報は各大学の募集要項で確認してください。

前回

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1 方式 

 

①    一般入試

    大学が作った入試問題で受験します。

 文系は国語と英語が必須で、地歴・公民・数学ⅠAから1の3教科型が多数派です。

 理系は数学(ⅢまたはⅡBまで)と英語が必須で、理科(基礎と発展の両方の内容を含む)から1~2が多数派です。

*発展:選択科目の地歴の中に「地理」がない大学が時々あります(関西だと同志社大学龍谷大学)。地理選択者は注意してください。

 また選択科目はワンセットの冊子になっていて当日選択し、解答開始から30分後に不要な解答用紙を回収する大学もあれば、出願時に選択科目を申告する(当日は変更できない)大学もあります。

 この辺は各大学の募集要項で必ず確認してください。

 

②    センター利用入試

    センター試験の受験票についている「成績請求票」を大学に提出し、大学は大学入試センターに点数を問い合わせ、その点数で合否を決定します。大学で試験を受ける必要がありません。

 受験科目数は、私立3教科型から国公立併願者向け5教科7科目型まで各種あります。科目数が多いほど合格に必要な得点率は下がる傾向にあります。

*発展:科目数が少ないと理系の学部に文系生徒が出願できてしまうので、立命館大学の理系学部のセンター利用には「高等学校で数学Ⅲを履修していること」という条件がついています。

 また科目が多い型で合格すると「センター試験でマークミスしたかも?」の不安解消になります。

 

③    センター併用入試

    一般入試にセンター試験の点数を足して合否を決定します。

 近畿大学の「前期PC方式」は前期B日程のオプションで、一般入試の高得点科目とセンターの高得点科目の合計で合否判定をします。

    中京大学の「得意科目重視型センタープラス方式」も同様にA日程のオプションですが、  自動的に高得点が採用されるのではなく、受験生が重視する教科(国語、数学、英語)を出願時に申告する必要があります。

    立命館大学の「センター併用方式」は専用の試験日に行われ、文系の場合は英語、国語の個別試験にセンター試験の地歴・公民・数学の高得点1科目を、理工学部は英語、数学にセンターの理科1科目と数学1科目の点数を足します。

  

④    英語外部検定利用方式

 通常は次の4つのどれか、または組み合わせです。

  1. 英語の外部検定のスコアを出願条件にする
  2. スコアを得点換算して、個別試験に加点する(加点方式
  3. スコアを得点換算して、個別試験と比べて高得点の方を採用する(みなし得点
  4. 英語の個別試験の代わりに利用する(代替

    立命館大学国際関係学部の「IR方式」は1と2の複合で、実用英語技能検定(以下英検)2級以上が出願条件です。

    合否判定は、個別試験が200点(英語100点、英文読解100点)、外部資格試験の得点換算100点の計300点満点で行われ、後者は英検2級またはIELTS4.5で80点、IELTS5.0で90点、準1級で100点が点数になります。

 3は近畿大学の公募制推薦入試で2018年11月の入試から導入され、基礎学力テストの英語を受験した上で、英検のスコアと比べて高い方を採用します。換算は英検2級(70点)、英検2級上位スコア(85点)、英検準1級(100点)です。

*データを更新しました。2019年度入試で英検2級80点は甘過ぎで合格最低点が高騰したのでちょっと下がりました。

 

    4は上智大学のTEAP利用型が有名で、個別試験では英語を実施しません。

    「TEAP」は上智大学と英検が共同開発したアカデミックスキルを問う英語検定で、学部ごとに出願条件のスコアが設定されています。個別試験は国語、地歴などで論理性を問います。

*発展:世界史は論述式で、一般試験の難問奇問オンパレード(笑)とは180度違います。

 

 早稲田大学国際教養学部は、学部独自に実施していた「英語リスニング試験」(100点中15点分)を実用英語技能検定TOEFL®iBTのスコア換算(最高15点)に代替します。スコア未提出による出願も可能です。

 

2 入試日程

 

① 前期と後期

 エリアの上位校は「一般試験は一回勝負」というところが多いですが、そこと併願関係の強い大学は募集人数を分割して何度か入試を行います。

 関西の「産近甲龍」の場合、「関関同立」の入試の前に前期A、その入試直後に前期B、三月に後期があります。

 前期Aは「上位校第一志望者の滑り止め」、前期Bは「当該校第一志望者の保険」、後期は上位校残念組も含めた「ラストチャンス」という意味合いです。

 後期入試は定員調整の意味もあり、定員は少ないです。関西だと同志社大学は一部の学部だけ、関西学院大学は後期はセンターのみです。

 したがって立命館、関大、産近甲龍の後期は、募集定員が少ない上に上位校残念組も来るので激戦になります

 センター利用入試も、前期(センター前出願)、中期(センター後出願)、後期(三月)の3パターンがあります。

 

② 試験日自由選択制

 600も私立大学があれば必ずどこかで入試日程がかぶります。そこで複数の試験日が設定されていて、都合のよい日を試験日に設定することができます。

 A大学とB大学のどちらも受験したい場合はA大学を土曜日、B大学を日曜日と指定します。A大学を両日とも受験することもできます。

 試験日が違えば受験生の数も違うし、問題が違えば当然平均点も変わります。

 不公平が生じないように、それぞれの試験日の受験生の数、平均点などを見て、試験日毎に合格最低点を切り、合格者数を配分します。

 

③ 学部個別入試 全学入試

 「学部個別入試」は各学部ごとに行われる入試です。

 数年前までの難関私立の一般入試はこれが基本で、入試は実質一発勝負でした。受験生は「初日経済学部、2日目経営学部」のように類似学部を併願していました。

 「全学入試」は学部すべてが同日に同じ問題(文系・理系は違います)を使用して入試を行い、受験生は出願時にどの学部を志望するかを申告します。

 これならひとつの学部について複数の受験機会が生まれます。

*発展:併願関係の強い大学では入試が「入れ子」になっていて、志望する学部を最大限受験できるようになっています。立命館大学は2月1日から4日までが全学で、7日から9日までが学部個別、一方関西大学は2月1日から6日までが学部個別、7日8日が全学です。

 

④ 併願

 試験日が異なれば「今日は本命の法学部、明日は押さえに政策学部」というように学部、学科を自由に選択できます。

 センター利用方式も複数学部に出願することが可能です。

 同一試験日で他学部を併願できるかどうかは、大学によって異なります。

    同志社大学は1日1学部の出願で、学部個別入試では同一問題で別学部の試験も行われていますが併願できません。全学入試も1学部(学科)の受験です。

    近畿大学は、1日の試験で同じ学部の他学科を併願(学部内併願)できたり、同じ入試科目で受験可能な他学部の併願も可能です。

    ただしすべての学部や入試日程で併願が可能なわけではありません。募集要項をよく確認してください。

    なお併願には通常受験料が発生しますが「学部内で第二志望まで学科の希望を書けます」とあれば受験料が発生しない場合もあります。

 

3    合否判定の方法

 

①均等配点と得意科目型

 一般入試の判定方法は、各教科の合計点数で合否を判定するのが標準で、「スタンダード型」と呼ばれています。

 またスタンダード型で受験し、オプション料金を払うと高得点科目を2倍にして合否を判定する「得意科目重視型」は、中堅私大を中心に広く実施されています。

 合格のチャンスが広がるように思えますが、全滅することもあります。

 

②得点の補正

 理科や地歴・公民・数学の選択科目は平均点にバラツキがでます。そこでよく用いられるのが「中央値補正法」です。

 これは各科目の真ん中の順位の人の点数を50点に置き換え、他の方の点数を調整する方法です。1001人受験した場合は、真ん中の501番目の人の点数が50点に置き換えられます(満点と0点はそのまま)。

 

*発展:中央値補正法の計算式(近畿大学のHPを参考)

① 素点 < 中央値の時

満点の半分の点数/中央値 × 素点

② 素点 ≧ 中央値の時

満点の半分の点数/(満点-中央値) ×(素点-中央値)+(満点の半分の点数)    

 昔関西大学に不合格だった生徒が結果(得点開示)を持ってきて、「世界史はもっとできていたはず」と嘆いていましたが、多分それは補正後の成績で、平均点が高い科目ほど点数が圧縮されてしまいます(特に世界史は勉強している生徒にはけっこう簡単)。

 点数の圧縮を勘案して合格ラインからプラス1割は取っておきたいです関西大学の冊子にも似たようなことが書いてあります)。

 

4 検定料

 

① 通常料金

  一般入試は1出願(1試験日)につき30,000円〜35,000円、センター利用は10,000~15,000円が相場です(近畿大学は20,000円で2出願まで可能)。

 また1出願(スタンダード型)に加えて高得点重視型での判定を希望したり、他学科や他学部の併願を希望する場合、センター併用に出願する場合はプラスアルファの検定料を払います。10,000円が相場です(近畿大学は7,000円)。

 

② 割引

 複数方式に出願すると割引が適用される大学もあります。

 畿央大学の前期日程は、1方式につき35,000円ですが、複数の方式(得意科目、2教科型など5方式)に同時に出願する場合は2方式目以降1方式に付きプラス10,000円で出願でき、5方式受験する場合は4方式(65,000円)と同額になります。

 さらに2日間同時に出願する場合は1日目の入学検定料と2日目の入学検定料の合計から10,000円が値引き、3日間同時に出願する場合は25,000円が値引きされます。

 また一般試験とセンター試験利用入試を同時に出願する場合は、後者の3方式分が無料になります(4方式目以降は1方式につき15,000円。単独で出願する場合は1方式15.000円で2方式目から10,000円)。

 大同大学は一般入試を受験すればセンター併用方式は無料になります。

   受験料のモデルケースを次回の冒頭に計算してみます。以下次号。

 

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