ぶんぶんの進路歳時記

学習方法、進路選択、世界史の話題について綴ります

私大の世界史「差がつく」部分で得点する(3の2 記述式)

    世界史の記述式の「差がつくところ」について、京都女子大学の問題を解答しながら考えます。「センター時差ボケ」解消も目的です。

 

前回 

bunbunshinrosaijki.hatenablog.com

 

 

③ややこしい

 記述式の最大「ふるい落とし」ポイントです。

 

→対策1 カタカナは濁点、小文字に気をつける!

 

 1日目Ⅰの2f「マルクス=アウレリウス=アントニヌス」の「ウかヌか」などは、小テストや定期試験など普段からの心がけです。

 3日目Ⅱの1③「トマス=アクィナス」は、「アルクイン」をはじめややこしい人名が続出する範囲です。「アヴィニョン」「シュレジエン」など地名も困りものです。

 小文字や濁点のややこしいものは択一式に慣れ過ぎると、試験場で「えっ?」と固まります。

 大学は「受験生が丁寧な学習をしているか」を見ています。ややこしいカタカナものの書き取りをしましょう。

 

*発展 京女で「ガウタマ=シッダールタ」(京都大学でも出題)、同志社大学で「ガルガンチュアとパンタグリュエルの物語」を書かせる問題がありました。

 *発展 「オクタウィアヌス」の「ウかヴか」は、古代ローマラテン語はUがなくてVを使っていたので最近の教科書は「ウ」と表記。「アウクスブルク」か「アウグスブルク」かは、ドイツ語の発音的には濁音にならないので前者。最後の「ブルク」もドイツ語では濁音にならないが英語では「ゲティスバーグ」。

*普遍論争についてはこちら ウンベルト・エーコ原作 

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→対策2 漢字は書き取り!

 

 「書けそうで書けない」中国史の漢字をピックアップしました。練習しましょう。

年度

大問

 

解答 ( )は文中のヒント

2017

1

1

 

四六(駢儷体) 

×

2017

1

1

 

蘇軾 

2017

1

2

a

 

孟子 

 

2017

1

2

b

 

孔穎達 

2017

1

2

c

 

寇謙之 

2017

1

2

e

 

靖康の変 

2017

1

2

i

 

曹操

 

2017

2

1

 

冒頓単于 

2017

2

1

 

鮮卑 

 

2017

2

1

 

柔然 

2017

2

1

 

契丹 

 

2017

2

1

 

(燕雲)十六州 

 

2017

2

1

 

澶淵の盟 

2017

2

1

 

朱元璋

 

2017

2

2

b

 

敦煌

2017

2

2

d

 

靖難の役 

 

2017

2

1

 

宋学

2017

2

2

e

 

坤輿万国全図 

2017

3

1

 

胡適 

2017

3

2

a

1

膠州湾

2017

3

2

a

2

戊戌の変法

2017

3

2

b

 

袁世凱 

2017

3

2

c

 

李大釗 

2016

1

1

 

董仲舒 

2016

1

1

 

洛陽

 

2016

1

2

 

魯 

2016

1

2

 

商鞅

 

2016

1

2

 

焚書坑儒

 

2016

1

2

 

張騫

 

2016

1

1

B

 

北伐

 

2016

1

3

 

張作霖 

2016

2

1

 

市舶司

 

2016

2

2

 

北魏 

 

2016

3

1

 

淮河 

2016

3

1

 

楚 

2016

3

1

 

建康 

2016

3

2

 

司馬睿

2015

1

1

 

吐蕃

2015

1

1

 

白蓮教徒

2015

1

1

 

六諭 

2015

1

1

 

倭寇

 

2015

1

1

 

一条鞭法

 

2015

1

2

 

交鈔   

 

2015

1

2

 

楊炎

2015

2

1

 

五銖銭

2015

2

2

 

覇者     

2015

2

2

 

康有為or梁啓超

 

2015

2

1

 

阮      

2015

3

1

B

 

契丹 

 

2015

3

2

 

渤海  

2015

3

2

 

猛安・謀克

2015

3

3

 

澶淵の盟 

2015

3

3

 

完顔阿骨打

2015

3

1

 

辛亥革命  

 

2015

3

1

 

溥儀  

2015

3

1

 

徽宗  

2015

3

1

 

王羲之

2015

3

2

 

靖難の役 

 

2015

3

2

 

蔣介石

2015

3

2

 

盧溝橋事件  

2015

3

2

 

重慶   

2015

3

2

 

靖康の変 

 

2015

3

2

 

河姆渡文化or良渚文化

2014

1

1

 

王羲之

2014

1

1

 

顔真卿 

2014

1

1

 

契丹 

 

2014

1

2

 

焚書坑儒

 

2014

1

2

 

蔡倫

2014

1

2

 

朱熹

2014

1

2

 

李元昊

2014

2

1

 

吏部  

2014

2

1

 

蔭位の制

2014

2

2

 

党錮の禁  

 

2014

2

2

 

諸葛亮  

 

2014

2

2

 

韓愈(唐代の唐宋八大家

2014

2

1

 

劉少奇

2014

3

2

 

市舶司

 

2014

3

3

 

北虜南倭  

 

2014

3

3

 

琉球

 

2014

3

3

 

望厦条約  

2013

1

1

 

殷(商)  

 

2013

1

1

 

王莽

2013

1

1

 

曹丕

 

2013

1

1

 

梁  

2013

1

1

 

楊堅

 

2013

1

1

 

李淵  

 

2013

1

2

 

班固   

 

2013

1

2

 

拓跋氏  

2013

2

2

 

冒頓単于

2013

2

2

 

交鈔   

 

2013

2

1

 

光緒帝

 

2013

2

1

 

鄧小平

 

2013

2

2

 

租界

2013

2

2

 

戊戌の政変

2013

3

1

 

雲崗  

2013

3

2

 

鳩摩羅什

2013

3

1

 

北虜南倭  

 

2013

3

1

 

順治帝

 

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*発展:雲崗(大同/平城)の大仏。太武帝の廃仏のあと文成帝が建設を命じました。後世に廃仏が起きても壊されないように皇帝の似姿にしたそうです。どれも威圧的で、仏教の呪術性を政権の正当化に使う「鎮護国家」思想を感じます。京都女子大学の学生さんから頂いた写真。

 

 

④理解、推理もの

 

→対策1 因果関係を理解する

 

 3日目Ⅲ3d、ムハンマド=アリーはギリシア独立戦争オスマン帝国を援助した見返りにシリアの支配を要求してエジプト=トルコ戦争を起こします。

 ところがちょっと調子に乗りすぎた?ために列強の干渉を受け、1840年のロンドン会議でエジプトとスーダン世襲を認められますが、シリアは放棄します。

 つまり、「ムハンマド=アリーはエジプト」だけ覚えても問題は解けません。


 3日目Ⅲの3hも同様で、ナセルがアスワン=ハイダムの建設資金を英仏にお願いしたら、社会主義的なナセルを気に入らない彼らが出資を渋ったため、スエズ運河国有化宣言に至ります。。

 まずは教科書の論理性をつかむことです。一問一答は復習です。

 

→対策2 一度見たことはまた来る!

 

 3日目Ⅳの2b「二十一か条要求の時の大総統は?」は別々の単元で習ったことを共通する人名で結びつけるのは私立大学の定番です。エカチェリーナ2世、ナポレオン3世、李鴻章もよく聞かれます。

 授業中から「あっ!」と思ったら教科書の前に戻って確認する癖をつけましょう。世界史の先生は「何違うところ開けてるんだ!」とは言わないです(笑)。

 

*発展 大黒屋光太夫とエカチェリーナ2世について 井上靖原作 

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→対策3 地図を頭に入れて情報を用語に還元する!

 

 3日目Ⅰの2b1、ゲルマン人王国の名前と位置を問う「地図レス地図問題」です。

 関西の私立大学では問題に地図が載せて場所を直接問うところは比較的少なく、文言で受験生の頭の中に地図情報が浮かぶかを問います。特に川はよく聞かれます(ライン川ドナウ川ニジェール川ザンベジ川)。

 3日目Ⅰの2f「シリアにある都市はダマスクス」も、たぶん「シリア総督のムアーウィヤが(   )を都にウマイヤ朝を建設」なら埋められても、こういう聞かれ方をされると「?」となります。

 

 授業中から資料集を開ける(開けない人いますよね(怒)!)、白地図プリントはちゃんとやる、など心がけましょう。受験生は資料集を休憩時間に眺めましょう

 私はマーク模試やセンター試験の過去問研究プリントを配布する際に、地図の問題に関連する都市を追加して復習するようにしています。

 

 

⑤前後もの

 

→対策:「二周目の知識」、有名事項のあと一歩も記憶!

 

 1日目Ⅱの2f「後周」のように、陳、北周北斉(2度出題!)など「○○を滅ぼして建国(統一)」という「ひとつ手前のこと」を聞く問題も私立大学の定番です。単語だけ覚えず前後関係も含めて勉強したいです。

 また「武帝朝鮮半島衛氏朝鮮を滅ぼして楽浪郡など4郡を置いた」は有名ですが、じゃあオアシス地域や南方は?という出題もあります。

 ひとつ覚えたらその前後左右の似たようなものも覚える癖はつけておきたいです。


*発展:立命館大学だと「李鴻章」「康有為」ではなく、「左宗棠」(イリ事件)や「梁啓超」が聞かれたりします。

 

 

⑥由来もの

 

対策→授業中から「今とのつながり」を実感しましょう!

 

 「マジャール人」「キリル文字」「テヘラン」「会館」、他の年度の「ベルベル人」「スワヒリ語」「ニューヨーク」「トルキスタン」など、「現在につながるもの」はよく好まれるところです。難関大学になればなるほど出現頻度があがります。

 

 

⑦抵抗もの

 

対策→授業や演習の時に感情を込めて覚えよう!

 

 難関大学に合格するためには外せない知識です。

 「ローザ=ルクセンブルク」(女子大スペシャル?)と「ホネカー」はちょっときついですが「キール軍港」「アフガーニー」は必ず仕留めるべきです。

    「ワフド党」は難しいですが、戦間期西アジアではサウジアラビアの建国、パフレヴィー朝のレザー=ハーンとともに覚えたいです。

 世界史をただ暗記するのではなく、その時代の人々の声に耳を傾けながら勉強しているかが問われています。授業中から「それはひどい」「よく頑張った」などつっこみを入れながら学習してください。

 

*発展:「抵抗もの」のバリエーションで、融和をすすめた人(第5回十字軍のフリードリヒ2世、ガザン=ハン、アクバル、シュトレーゼマン、シューマン、ブラント、盧泰愚)、寝返った、抑圧した人(アウラングゼーブ、ティエール、エーベルト、ペタン、汪兆銘全斗煥)もよく問われます。

 同志社大学は東南アジア、インドの民族運動のいつ、どこ、誰、何の判別がマストです。

 

⑧クロスオーバーもの

 「四六駢儷体」や「唐宋八大家」は最近は古典で教わらないような気がしますが、京都の伝統である東洋学(文学・思想・歴史を一体としてとらえる)の影響でしょう。

*発展:ちなみに関関同立では思想史、科学史、美術史、音楽史がよく出題されます。

 

⑨グローバルもの

 「サーマーン朝」「トルキスタン」「マムルーク」「カラ=ハン朝」は「トルコ人の西進」の文脈で最近どこの私立大学でも出題されます。

*発展:近畿大学の回で触れましたが、大航海時代、大西洋の三角貿易帝国主義と移民は難関国立大学や私立大学ではマスト知識です。また10世紀のチョーラ朝北宋、13世紀モンゴルの世紀、14世紀以降のアジアの大交易時代も今後注意したいところです。またトレドとパレルモアラビア語ギリシア語文献をラテン語に翻訳するセンターであったことも問われます。

  

 

まとめ

 

 入試は受験生を「落とす」ために行われます。

 

 最初の「ゆさぶり」は「受験生が普段の授業を真面目に取り組んでいるか」、次に「受験勉強を丁寧にやっているか」です。

 つまり「ふるい落とす」ポイントは頭の良さではなく努力の量です。

 努力の量がてきめんに現れるのは客観式では「紛らわしいものの判別」、記述式では「ややこしい用語の正確な記述」です。

 

 範囲については定番の欧米史と東アジア史、次に他のアジア、アフリカ、ラテンアメリカ地域、最後は19世紀から20世紀とマラソンの駆け引きのようにギアが上がります。

 さらにテーマ史(地域史、制度史、経済史、文化史)で通史しかしていない生徒を揺さぶります。

 

 内容も、センターレベルからもう少し覚える努力をしているか、教科書の内容や別の部分や他教科の内容とつなげられるか、そして世界史を今の私たちのあり方とつないで考えているか、と要求レベルが徐々にあがります。

  これらができる人は世界史を単なる「合格のためのツール」ではなく、嫌?な受験勉強の中に「楽しみ」を見いだしている人であって、そういう興味や関心がある学生を大学は求めています。難関になればなるほどその傾向が強まります。

 

 受験勉強をしながら「世界史の楽しみ」に気づいて欲しいと願います。それが合格への最短距離でもあります。