ぶんぶんの進路歳時記

学習方法、進路選択、世界史の話題について綴ります

三年生五月 模擬試験は受験するのではなくて活用する(その2)

   模擬試験の心構え、後半は事前準備と事後の復習についてです。 

 

 

2 事前準備

 

 模試の問題は「繰り返し出されること」と「未知の問題」の両方からできています。

 前者は、英語なら発音、アクセントなど「似ているけど違う」「和製英語と違う」など「紛らわしいことの判別」、イディオムや文法など「英語独特の言い回し」に当たります。過去問をやってみて、抜けていることがあれば学校のワークをおさらいします。単語帳もざっと復習して、紛らわしいものを中心に思い出します。

    現代文の漢字、古文漢文の語句、文法、語法も同様に「書けそうで書けないややこしい、紛らわしいもの」「現代の意味と違うもの」を重点的に復習します。

 

 後者は一見準備のしようがないように思われますが、「既知から未知を推理する」力の養成こそ模擬試験の本丸です。英語の長文読解は、下線部、段落、全体の意味が理解できるかが問われます。

    そのためには「主語と述語をとる」、つまり文法、定型文、語彙がぱっと思いつくかどうかです。過去問や学校の長文テキストをやって、あやふやな部分を発見したら単語集や文法書(ネクステとかビンテージとか)に戻って復習します。

 評論文は、過去問を使って文中の抽象と具体を判別して筆者の主張を抜き出す技術的なトレーニングをする一方、「評論でよく出る語彙集」を読んで、評論のキーワードになる語彙を復習しておくと、初見の文章でも内容を大まかにとりやすくなります。

 

    「難易度の高い問題」には、英単語や世界史の用語のように「そんなの知りません」というものと、複数単元で習ったものを組み合わせるものがあります。前者を事前に準備するのは無理ですが、後者は単元ごとの内容を復習することで多少は歯が立ちます。

 三年生になると学校の授業は一部を除いて一、二年生の復習です。学校で買った復習用テキストと過去問を往復しながら基本的な事項の見直しをしておきましょう。

 

 私は世界史の過去問を配布するときに、各問題に難易度(京都大学の入試問題の回を参照)、教科書の何頁の記述に該当するか、この問題を解くために必要な知識、などを余白に「落書き」しています。

    たとえば「正しいものを選べ」という問題の選択肢の横に書き込み欄を作ってどこが間違いかを記入したり、「陳勝呉広の乱」が始皇帝が死んだ後、前3世紀末の出来事であるという知識が必要な問題の横に、「中国の反乱」という虫食い表をつけて埋めたりできるようにしています。

 「答えが当たってラッキー」で終わらさず、根拠を持って答えたり、関連事項を洗い出したりして復習してもらっています。この「常にちょっと前に戻ったり、ちょっと先を見る」という「戻りと芋づる学習」は世界史の成績を上げる鍵になります。

 

 こんな感じです(著作権法の範囲内(本文が主、引用が従)で模試を引用します)。ノートを提供して頂いた卒業生さん、ありがとうございます。

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3 試験当日

 

 マーク模試は大学入試センター試験に準じた時間設定と問題構成です。時間をどのように使うかをシミュレーションします。数学はもっとも時間設定がタイトです。国語と英語は大問をどの順番に解くか、大問毎の時間配分など、見直しの時間を含めて制限時間をどう使うか心がけます。

 センター試験では試験後に公表される正解と配点を見て自己採点をする必要があります。国公立大はその自己採点を基に出願校を決定します。模試でも問題用紙に必ず自分の解答をメモしておき、正確な自己採点を行いましょう。

 

 記述模試では満点を取るのはほぼ無理です。問題の難易度を素早く判断して、できそうな問題から手を付けていきます。特に数学では大問のうち完答マスト、途中まで(枝問が3つあれば1と2まで)は解ける、無理(ドボン問題)を見極めて制限時間内に最大の得点を目指します。

 

*発展 奈良県立医科大学では「トリアージ入試」といって、制限時間内に英語・数学・理科を、どの問題が解けてどの問題が「ドボン」か判断して解答します。まさに「トリアージ」です。

 

 

4 試験後

 

  • 模試の直後

 まず時間切れで解答できなかったものについて答えを見ないで解答します。必ず試験当日に行いましょう。

 その後解答を見て自己採点をします。このとき答えが合っていた、間違っていただけのチェックではだめです。

    例えば国語の問題で、記号なら①か③で迷って最後は①にしたけど正解は③だった場合、記述であれば自分が抜き出した箇所と違うところを抜き出すのが正解だった場合、「惜しかった」で済まさず、なぜそちらが正解なのか、自分の答えの足らなかったところ、本文と解説を読んで間違いの根拠を考えます。

 迷って勘で選んだものがたまたま正解だった場合も、もう一度根拠を考え、次に同じ問題が出たら自信を持って答えられるようにします。また解説を読んだだけで満足せず、教科書や参考書の該当部分に戻って復習しましょう。

 

 数学の場合はどのレベルで間違ったのかを考えます。全くわからなかった、解答の方針が違った、論理を進め方が途中でおかしくなった、計算ミス、などです。手持ちの参考書や問題集で類題をやって理解を深めます。

 英語の場合、例えば環境の評論の中で知らなかった単語があったら、その単語を間違いノートにつけるのは当然、同じ題材で他にもよく使われる単語を洗い出してまとめて覚えます。

 

 私は世界史の生徒に「間違いノート」を作らせています。ノートを見開きで使い、間違ったところをコピーして左側に貼り、右側に「関連事項の洗い出し」を書きます。これをテストの前に見直せば、同じ問題だけでなく類題にも対応できます。

 模試の解説には関連する地図や問題で問われた「オスマン帝国のスルタンと業績」などの表がついているので、切り貼りするのも効果的です。私が取材したOBの「数学間違いノート」は、問題の下に解答のプロセスや注意すべきポイントが書かれていて、立派な問題集のようでした。

 

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 こうやって「未知なこと」「見たことあるけどわからなかったこと」を模試で見つけて「間違いノート」に記録し、模試の前に見直すようにすると、あやふやな知識が「見たことあるから解ける」知識に変わっていきます。これらは試験当日か遅くとも受験後数日のうちに取り組みたいものです。

 家で落ち着いてやればできたのに模試本番でできなかった人は、より速く正確に問題を解く練習をしたり、時間配分を考え直しましょう。

 

  • 答案が返ってきたとき

 記述模試については、自分は完答したつもりでも減点されていることがあります。間違えた、減点された箇所について解答例を見ながら原因を分析します。英作文の場合、単純なスペルミスもあれば、三人称の「s」付け忘れのような一見「ケアレス」に見えて実は「この主語は単数か複数かがあやふやだった」もあります。

 間違いの原因を「ケアレス」「あやふや」「未知」に分けて、教科書や参考書に立ち返ってまずは「あやふや」を知識として定着させましょう。

 

 

5 まとめ

 Eテレの『テストの花道』で「テストはお宝」と言っていました(この文章の多くもその番組を参考にしています)。模擬試験は、「自分のあやふやと未知を見つける」宝箱です。

 また河合塾全統模試は最近の入試問題をよく研究していて、「あ、これは○○大学のあの問題だ」というものをよく見かけます。解説も他社を圧倒するボリュームです(講師から聞いたのですが、河合塾は模試の作問と解説にかなりのエネルギーを使っていて、それにはちゃんとした理由があるそうです)。

 

NHK テストの花道 - 過去の放送 -「テストはお宝だ! 解き直しの極意」

 

 したがって模擬試験にはミスや弱点分野を自覚し、再び繰り返さないようにするという復習の要素と、新しい知識を得たり、知識をつなげて初見の問題を解いたりするという入試の予行の要素があります。「やらされてる感」で受験したらもったいないです。ぜひ受験するではなく活用するという心構えで臨んでください。