ぶんぶんの進路歳時記

学習方法、進路選択、世界史の話題について綴ります

三年生五月 模擬試験は受験するのではなくて活用する(その1)

 三年生は早速四月末から五月初旬にかけて第1回全統マーク模試、記述模試があります。今回は模擬試験を受験する心構えや活用法について考えます。

 

 受験のスパンの中で模擬試験は到達度を測る「中期の目標」です。

    ところが生徒を見ていると、一学期はまだ部活があるため準備をしないまま受験し、二学期になると毎週のように模試があるので復習まで手が回らない、ただ判定を見て一喜一憂するだけの生徒が多いです。

    これでは模試が目標として機能しません。

 

 高校側も、模擬試験の前になると過去問プリントを配布して生徒に準備をさせますが、たいていの場合は答えも一緒に配ります。

    マーク模試だと5教科7科目と膨大、模擬試験を受験する意味を十分理解していない生徒は、分からないので答えを写して終わりです。

 そんな「作業」で実力がつくはずがありません。模擬試験は一回約3400円(学年会計天引きだと有り難みが薄いです)、お金は無駄にしたくありません。

 

 最近は、一、二年生ではベネッセが作っている「実力テスト準備ドリル」(別料金)を宿題にしたり、模試の対策講座や事後指導講座をする学校が増えています。

    過去問の配りっぱなしよりはその方がいいのですが、三年生は模試の回数が多いのでそのような時間を取る余裕がありません。

 「対策講座」もやり方次第です。単に先生が(解答例を見ながら)過去問を解いて「解説」しているだけでは生徒が「へーっ」と感じて終わりです。

 また「出そうなところ」を教えて、そこがたまたま出て生徒が高得点を取ることがありますが、やりすぎると生徒が主体的に勉強せず、与えられるのを待つだけになる(私は「ドーピング」(笑)と呼んでいます)危険性もあります。

 

 私の学校でも多くの生徒が「模試は直前に過去問をすればよい」だから「入試も直前に過去問をやればよい」と思っています。過去問を早めにやると「答えを記憶」してしまうからだそうです。

    私が進路主任しているとき、ある生徒が国公立の前期試験の10日前に「過去問を10年分解いたからもうすることがない」と言っていました。

 また大学別のオープン模試の前に「オープン模試の過去問ください」と言ってくる生徒がいて閉口しました。

    「オープン模試は実際の入試に沿った形式だから、まず過去問を研究しなさい」と指導しても意味がわかってもらえません。結局こういう人たちの多くは第一志望に合格できませんでした。

 

 愚痴が長くなりましたが、模擬試験のメリット、具体的な活用方法に分けて考えます。文系中心なのはご容赦ください。

 

以下は河合塾のサイトを参考にしています。

www.keinet.ne.jp

 

 

1 模試のメリット

 

1)普段の学習で気づかない「抜け・漏れ」を発見する

 

 全国模試では、受験した教科の「偏差値」、「全国順位」、「ランク」が分かります。また志望校判定では、同じ志望校を考えている受験生がどの程度いて、その中で今の時点で自分がどの位置にいるのかを確認できます。

 

 しかし最も見るべきは教科・科目の大問別の出来です

    国語の場合、「小説が比較的得意」という人は要注意です。古文・漢文は勉強が進めばできるようになりますし、評論も効果的な勉強方法があります。「小説がまし」は勉強していない証拠とも言えます。

    英語も発音、アクセント、イディオムで間違っているようではまだまだです。数学、理科、地歴・公民はどの範囲ができていないかチェックします。

 模試は後半になると融合問題が増えます。どの単元が苦手なのかを一学期の模試で見極め、ケアしておきましょう。

 

 また「見たことあるのに解けない」つまり「分かっていたと思っていたのに抜けていること」を洗い出すのは模擬試験最大のメリットです。

 

    世界史の定期考査は時系列ですが入試はテーマ史です。「10世紀の出来事はどれ」というように違う聞き方をされて答えられないのは理解できていない証拠です。

 英語の場合、文法や語法は一通りやったつもりでも取りこぼしていたことが出てきます。単語はまだまだ未知なものがあります。こうした漏れている部分を発見して知識を増やします。

    特に長文の題材や会話文の内容を特定する語彙は知っているか知らないかで差が出ます。これらに気づくことで、その後の具体的な学習指針が見えてきます。

 

 このように模試を通じてこれまでの勉強の「抜け漏れ」を見つけ、復習して自分の弱点を補強していきましょう。

 

 

2)入試本番に近い雰囲気で問題を解く

 

 入試は「制限時間内にどれだけ解答できるか」を競います。定期考査とは時間も問題(もちろん初見)も緊張感も違います。自分の実力が思うように出せなかったり、時間配分を間違うことも往々にしてあります。

 私は進路主任の時にOBを取材して進路通信を作っていましたが、浪人した生徒が「予備校の授業や課題はいつもクラスで最上位なのに、模試になると強いストレスを感じて、ひとつ問題が分からないと次に引きずってしまって点数が伸びない時期があった」と悩んだそうです。

   場数を踏むしかありません。

 ほとんどの高校は模試を自校で受験していると思いますが、それでも常に本番を意識して適度に緊張し、時間配分を考えたり解ける問題と解けない問題を見極めるなど「本番で実力が出せる」練習をします。

 

 おまけですが、センター試験のリスニングはICプレーヤーを使用しますから、1回ぐらいは模試で体験しておいた方が安心です。

 

 

3)受験者の中での自分の位置が掴める

 

 一学期の模試の志望校判定を見て一喜一憂しても意味がありません。

    気にするなら「ランク」でしょう。ベネッセはS1~D3、河合塾はS~Fで表示されます。ベネッセだと東大京大がS1、神戸でS3、大阪市立でA1ぐらいが合格に必要なランクです。

 判定は過去数年「この時期このぐらいの成績を出していた人はここに何%ぐらい通っている」という、先輩の成績および合否追跡調査から割り出しています。

    したがって過去不人気だった、あるいは今年の志望者に不人気な(四月に本州から遙か彼方の国公立大学を第一志望に書く生徒は少ないです)大学・学部を書けばよい判定が出ることもあります。

    しかし本番の入試でそのまま不人気かどうかは未知数です。

 

 判定が重きをなすのは受験生の志望が固まる10月の模試です。

    また難関大学のオープン模試は、第一志望者はほぼ受験しますし、出題も本番に準じた形式や難易度です。その判定(合格にはA判定)、順位(定員内にいるか)、素点(昨年の合格最低点をどの程度上回っているか)はきわめて重要です。

 

  とはいえ「最初のマークと記述模試は部活をしているから判定が悪くて当然、夏から勉強すれば大丈夫」と安易に考えてはいけません。

    判定や偏差値は相対的なものです。特に偏差値は平均点に対する分布です。他の生徒だって夏以降に伸びますから、そう易々と偏差値が上がる訳ではありません。

 

 校外模試のメリットは、模試を目標にして学習を計画し、受けた後にその成果を確認(復習と弱点強化)することです。次回はこの点について事前準備、本番、事後復習に分けて考えます。