新学期が始まりました。進路主任をしていた時はこの時期に各学年から呼ばれて新しい学年での心がけを集会で話しました。
一年生と三年生では話す内容には困りませんが、二年生にしっかり顔を上げて聞いてもらうのは結構難しいです。
今日は二年生がこの一年間をどう過ごすかについて考えます。
目次
1 「二年生は中だるみする」というのは本当?
一年生は高校生活の何もかもが初めての体験、手探りの緊張感が続きます。三年生は受験が目前、進路希望調査や面談などで常に受験を意識します。
一方で二年生は学校のサイクルがわかり、受験もまだ先です。「慣れ」が「だらけ」につながってしまう、これが世間一般で言う「中だるみ」です。
「慣れ」は「これぐらいでいいか」と思うことです。
宿題が大量に課されてこなせず、解答を写したり友だちのものを見せてもらったりして提出して、何のコメントもなく検印だけ押されて返ってくれば、「宿題は答えを写せばよいのだ」と思ってしまいがちです。
またクラスの中で歴然と他人との実力差が見えてくれば、しゃかりきに上位を目指すよりは「赤点を回避すれば御の字」と思うようになります。
このように勉強を「嫌な作業」と思ってやれば、最低のノルマを守るだけで品質は考慮外です。冷戦下の社会主義国家のようです(笑)。
もうひとつ「中だるみ」の原因と考えられるのが「到達ギャップ」です。
一年間部活動を続けると競技力が目に見えて向上します。一方勉強は教科書が進むと難しいことも増え、成果が目に見えて現れません。
だから好きでやっていてかつ結果が見える部活の方にのめり込み、嫌いな勉強がおろそかになる生徒も少なくありません。
しかし私の経験では、最難関大学に現役で通った人は必ず二年生の時から「アウトスタンディング」でした。三年生で急激に成長して現役で最難関大学というのは見たことありません。
共通テストの結果で「出せるところが第一志望」でいいなら別ですが、二年生の過ごし方は、特に競争の激しい大学に現役で合格したいなら重要になります。
2 「学習する習慣」がついていない人は「中」だるみではない
最近は「初期指導」といって、高校一年生の間に「学習する習慣を身につける」ことが進路指導で叫ばれます。
「学習習慣」は、まずは授業を中心にした予習→授業→復習という一日のサイクルです。次に定期テストを見据えた、週末課題や小テストの準備→復習→定期考査準備→復習という中期のサイクルです。
私は、一年生の時は「将来のことが考えられない」とかごちゃごちゃ言う前に、国語・数学・英語で学習の習慣を確立するべきだと思います。
私は勉強をする上で「モチベーション」が最も大事だと考えていますが、何もしないで「面白い」という気持ちは湧きません。最初は「やらされている」感でもいいからやって、「やれば結果がついてくる」ことを実感すべきです。
昔は英語や数学には「鬼の○○」という教員がいて、予習ができていないと「隣の小学校からやり直せ!」と罵倒されたり、一時間立たされるなどの「恐怖政治」(笑)で学習を定着させましたが、さすがに時代遅れです。
その代わりに教員同士が話し合って宿題の量を調整する、生徒がちゃんと考えて宿題をしているかをチェックする、サボっている生徒は指導する、ちゃんとやった生徒が得をするような定期考査の出し方をする、などの丁寧な指導が必要です。
「中だるみ」は「言われたこと」はできるようになったけど「言われたからやっている」だけで中身が形骸化し、惰性で勉強しているために次の段階に進めない状態です。
学習習慣がついてない生徒は「中」だるみではなく、最初から「ゆるい」だけです。
「中だるみ」は次のステップの入り口です。三年生になっても「指示待ち」生活では受験は乗り切れません。二年生のうちに「言われたからやっている」から脱却できるかが「受験生になる」ための大事な一歩です。
3 「プラスアルファ」で「中だるみ」撲滅
国数英で学習する習慣がついた人が「やらされている」感から脱出するために必要なことは「得意な科目を作る」です。
まずは国・数・英のうちのどれかひとつを重点的に取り組みます。そして文系なら地歴、理系なら理科の一科目を得意科目にします。
私が関わった生徒のうち、最難関の文学部に合格した生徒は二年生の段階で英語が、経済学部に合格した生徒は数学が抜群でした。
得意教科を作るためには「プラスアルファ」です。
A 検定を利用する
文学部に合格した生徒は二年生で学校の英語はもう物足りないものになっていましたから、私は英検準一級の受験を勧めました。
英検に向けて語彙やリスニングを猛烈に取り組んだ結果、英語は二年生でほぼ完成し、三年生でやや苦手な数学や国語にエネルギーを集中できました。
B 校外実力テスト、学校の小テストをスモールステップにする
私の県の進学校の集まりでよく話題になるのは、二年生11月の校外実力テストでどの学校も偏差値の平均が下がるという件です。
理由は簡単です。例えば数学の場合なら二年生の7月までは進度が調整されます。しかし11月からはⅠAとⅡBすべての範囲および単元複合の問題が出題されます。
また英語は文法は一年生で終わりますから、二年生からは語彙やイディオムが増え、単元複合問題が出ます。だから「自転車操業」の生徒の成績がこの時期に下がるのは当然です。
数学の場合は、校外実力テストでよく出題される単元の類題に取り組みます。例えば自分の志望校で二次関数が必ず出るなら、そこを集中して復習します。
英語なら学校で購入した単語やイディオムの小テストがあると思います。実力テストに向けて問題集を先取り学習し、学校の小テストは復習のつもりで受けます。
試験があるからといってあわてて当日の朝に詰め込んだものはその日のうちに忘れてしまうものです。
このような「復習と先取り」学習を教科の特徴に合わせて行います。
C 「飯の種」になる教科を作る
難関国公立だと共通テストで高得点が必要です。地歴公民と理科で合計300点は侮れません。
難関では二次試験で理科2科目や地歴が課されます。私が関わった生徒で東京大学に現役で合格した生徒は、オープン模試で国数英のどれかに多少手こずっても世界史と日本史できっちり得点できるので大崩れしませんでした。
また地歴・公民、理科で得意な科目があるかどうかは志望校決定に影響します。
一年生の文理選択はラフでも構わないですが、三年生では学部や学科を絞り込んで具体的な大学名を決める必要があります。国数英はあらゆる「基礎」ですが、大学の学問に直接関わるのは地歴・公民や理科です。得意な科目から進みたい学科、具体的な大学名が見えてきます。そうすると「この大学に入って勉強したい」というモチベーションが生まれてきます。
4 「PDCA」サイクルよりも楽しむことが大事
企業で必須の「PDCAサイクル」は文科省の資料にも出ています。しかし計画ばかり考えて逆に勉強が嫌になってしまっては逆効果です。
成績がアップする生徒は違う意味の「PDCAサイクル」、すなわち「自分の勉強の型」を見つけています。
例えば英単語なら書く、声に出す、シャドウイングやチャンツをする、ぱっと言われてぱっと答えるなどの覚え方、接頭語や接尾語からイメージする、ボディランゲージ(例えば”exhaust”は「疲れたーっ」という感じで声に出して覚える)、ゴロといった記憶方法など、自分が楽しんで記憶できる方法を試行錯誤します。
色々試すことができるのも二年生のうちです。
使い古された言葉ですが「好きこそものの上手なれ」です。好きな科目を作り、自分であれこれ工夫してそれを得意科目にするのは、余裕のある二年生だからできることです。これを目標に設定して「中だるみ」を乗り越えてほしいです。