ぶんぶんの進路歳時記

学習方法、進路選択、世界史の話題について綴ります

「現役生は冬から伸びる」について考えるその2

「現役生は冬から伸びる」後半です。

 

4 知識を活用する 

 成績の「踊り場」を克服するのが「知識を活用できる」です。そのためには模試や入試の過去問の中の複合知識が問われる「良問」に数多く当たるしかありません。

 このときに「間違いノート」が有効です。間違った問題を切り貼りして、あやふやなところ、間違いやすいポイントを書き出し、次に違う切り口で出題されても解けるようにします。いわば「自分だけの参考書」です。

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 教科書を勉強のベースにしている人は、教科書には書いてないが入試で聞かれることを書き込んで「マイ教科書」を作る方法もあります。私はどの方向から世界史の事項を聞かれても答えられる「テーマ別プリント」「シャッフルプリント」を作って入試前に復習させています。

 また私は難関国立向け論述講座を開講していますが、生徒たちは典型問題をノートに貼り、方針を立て、必要な事項を書き出し、取捨選択して文章を起こし、討論や解説をした後リライトします。半年やれば立派な「マイ問題集」ができあがります。

 この方法は「この問題にはこのアプローチ」という見極めが重要な数学でも有効です。私が取材した難関大学に合格した生徒の多くが数学でこうしたノートを作っていました。

 あやふやな部分をつぶし、いろいろな角度から問われても知識を再構成でき、複合問題も構造を見破って解答する。これができるようになれば、「これは前回間違ったあの問題のバリエーションだ」と迷わず正解にたどり着けます。

 「そんなの作ってない! もうセンター目前゚。。゚ヽ(゚`Д´゚)ノ゚。ウワァァァン!! 」という人も、演習で間違ったことをノートに書きだして、試験会場で見直しましょう。

 

5 既知から未知を推理する 

 最後のステップは難関大学を突破するための鍵です。

 大学の学問は「無から有を生み出す」というよりは、先行研究を踏まえて新しい知を創造するものです。

 したがって大学で必要とされる力は知識の量はもとより、共通点や相違点を見つける思考力、複雑なものや未知なものを既存の知識を使って新しい知に変える力です。入試でそうした能力が問われるのは当然です。

 同志社大学の入試ガイドにこのことが書かれていました。「英語では”authentic”、高校生用にリライトされたのではなく実際の英語の文章を出題する、当然わからない単語も出てくるが、前後の文脈から判断する力を見る」とありました。

 たとえば”unprecedented” という単語がわからない、でも接頭語や似た単語から「ない/前/行く」まで類推して、前後の文脈と合わせれば「前例がない」に行き着きます。

 世界史の話ばかりで恐縮ですが、東大や京大は複数単元の事項からテーマを設定し、方針(ヒントはありますが自分で考えます)に沿ってまとめさせます。

 京大の2011年の問題で「1920年代におけるアメリカ合衆国のアジアとヨーロッパでの外交」という出題がありました。

 京大は「知識を羅列しただけでは点数にならない」ことで有名です。「アメリカ合衆国国際連盟には参加しないのに自分の利害に関する場面では口を出す、現在の単独行動主義と似ている」なんて教科書には書いてありません。

 そう考えると、アジアでは大陸進出を邪魔する日本をけん制する、ヨーロッパでは英仏に貸した金を返してもらうためにドイツを経済援助する、という答案の方針が見えてきます。

 

 知識から未知を推理して成績をあげるには、「2周目の学習指導」が必要です。

 世界史の場合はやっと3年生の12月で教科書が一通り終わります。難関大学の論述問題は、まずは自分で問題に取り組み、その道に詳しい人に指導してもらって教科書の知識をよりマクロな視点(統治、外交、経済、宗教、グローバル化など)で再構成するトレーニングが必要です。

 他教科はもっと早くに教科書が終わるわけですから、「2周目の学習指導」でその教科が求めている「ものの見方・考え方」を磨いていけば、未知の問題でも「これはこういうことが問われているのか」と見抜けるようになります

 この最後のステップに到達できるのは現役生の場合、冬休みから一般入試までの間、特に二月です。この意味で「現役生は冬から伸びる」は正しいといえます。

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おわりに 

 前回「成長曲線」という話をしましたが、勉強の基本は「やったことはできる」です。だから私はこう考えます。

1 y=1/nx:覚えた尻から忘れる、知識が定着しない時期

2 y=x:覚えたことが確実にできる時期

3 y=nx:覚えたことを足しあわせて未知の問題に対応できる時期

 成長曲線の低迷期は1と2を繰り返す時期、急上昇期は3の境地に達した時期といえます。成績は綺麗なカーブを描いて上がるのではなく、伸びと「踊り場」を繰り返しながら上がるものだと思います。

 

 さて生徒の勉強への取り組みが遅く、たまたま第一のステップがセンター試験直前に来て、「現役生は冬から伸びる」とぬか喜びしていると、「踊り場」が入試本番に直撃する可能性があります。そういう生徒をもう見たくありません。

 「現役生は冬から伸びる」をただの励ましにしないためには、早くから勉強を始めさせ、何度か訪れる「踊り場」を生徒と一緒に克服して、彼らの勉強の質を高めていくしかありません。