大学入試の基礎知識その4です。
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今更他人に聞けない大学入試の基礎知識(その1 国公立大学と私立大学) - ぶんぶんの進路歳時記
今更他人に聞けない大学入試の基礎知識(その2 国公立大学と私立大学の良さ) - ぶんぶんの進路歳時記
今更他人に聞けない大学入試の基礎知識(その3 国公立大学と私立大学の推薦入試) - ぶんぶんの進路歳時記
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Q9 友だちがAO入試を受けるそうですが、エントリーとかスクーリングとか訳わかりません。推薦入試とどう違うのですか?
A9 AO入試は面接や書類などを元に、受験生の能力や適性を時間をかけて総合的に評価する入試です。
1 AO入試って?
AOとは「アドミッションオフィス」を略したもので、元来はアメリカの大学における学生獲得のための部署を意味します。
文部科学省の文書では、AO入試は「詳細な書類審査と時間をかけた丁寧な面接等を組み合わせることによって、入学志願者の能力・適性や学習に対する意欲、目的意識等を総合的に判定する入試方法」となっています。
平成29年度大学入試選抜実施要項 2頁第3 2の(1)
推薦入試との違いは、学校長の推薦書が不要な点、試験日が1日ではなく。長期間にわたって生徒が大学の掲げる「アドミッションポリシー」(求める学生像)に適合するかを判断し選考する点です。また原則専願です。
国立大学のAO入試は学校長の推薦書は不要ですが、その生徒に関わる教員(だいたい担任)がその学習の様子を報告する必要があります。必ず書類の中身を確認して担任と相談してください。
また「国公立のAOと推薦、両方とも出願できる?」という質問もありますが、
1 国公立、私立にかかわらず専願を同時に2つ出願するのは禁止されている(両方通ったら大変!)
2 国公立の推薦は専願でひとつの大学・学部しか出願できない
というルールなので、日程が重ならない(合否がわかってから次を出願)なら理論的には可能でしょう。
高校によって考え方がありますから、学校のルールに従ってください。
個人的には「そんなにセンター試験や二次を受けたくないの?」と思いますが。
2 どんな方法で選抜するの?
国公立大や難関私大では小論文、レポート、志望理由書等を書かせて、その内容をもとに面接や口頭試問を行います。
多くの私立大学では一次申し込み(エントリー)があり、出願の許可が下りると正式出願をします。この間複数回の面接が行われます。
AO入試プログラムの中には「スクーリング」と呼ばれる模擬授業などが含まれ、参加が出願の条件となります。授業に関するレポート提出が求められ、大学は生徒の適性を評価します。
時間をかけて生徒の志望と大学のポリシーをマッチングさせるという趣旨はよいのですが、当然入試が早まります。
AO入試が始まった2000年頃は、担任が知らないうちに生徒が内定をもらったり、一学期が終わってすぐに生徒が調査書を欲しいと言ってきたりと、現場が混乱しました。
それで文部科学省は「アドミッション・オフィス入試については、入学願書受付を平成28年8月1日以降とする」と高校現場に負担がかからないよう求めています(とはいえ調査書を8月1日に間に合わせるのは難しい)。
また面接以外に学力検査、センター試験の点数、資格を出願要件や合否判定に使ってよいとしています(前掲 2頁第3 2の(1)の③)。
合格が内定した後、センター試験の得点が基準を超えれば合格決定という国立大学もあります(合格取り消しになった事例を知っています)。合格後に入学前プログラムを課す大学もあります。
3 どういう人向き?
このようにAO入試は受験者本人が作成する資料が多く、何度も大学に出向く必要があり、学力も求められるのでお手軽な入試ではありません。
某難関私立の場合、2000字の志望理由書で一次審査、二次試験は800字の小論文と志望理由書にもとづく面接です。生徒はいっぱい質問されて半泣きで帰ってきました(合格しましたが)。
自分に向いている大学・学部であり、かつ好奇心旺盛で書く話すが達者な人でないと耐えられません。よく考えて出願しましょう。
立命館大学は入試情報サイトでAO入試の課題や「こういう生徒を評価します」という講評を載せています。
Q10 私立大学を一般入試で受験しようと考えていますが、いっぱい入試があって訳分かりません。いったいどれを何回受けたらいいのですか?
A10 私立大学の多くは同一の学部・学科で、複数の入試方式と日程を用意しています。
1 入試方式:一般入試、センター利用入試、センター併用入試に大別できます
一般入試は大学が作った入試問題をその大学や他会場で受験します。
センター利用入試は、受験生はセンター試験の受験票についているクーポン?を大学に提出し、大学は大学入試センターに点数を問い合わせて合否を決定します。大学で試験を受ける必要がありません。
センター併用入試は、一般入試にセンター試験の点数を足して合否を決定します。教科が指定されている場合(例えば英語は一般入試で国語と社会はセンターの点数)、センターの高得点科目が使える場合など様々です。
検定料は、一般入試やセンター併用などその大学で受験する場合は35,000円、センター利用は10,000~15,000円が相場です。複数方式に出願すると割引が適用される大学もあります。
*発展:一般入試の判定方法には各教科の合計点数で合否を判定する「スタンダード型」と、高得点教科を2倍にして合否を判定する「得意科目型」があります。出願時にどちらかを選ぶ、スタンダード型の受験料に追加料金を払うと得意科目型でも合否判定してもらえる、両方のパターンがあります。
2 入試日程:前期と後期に大別でき、前期には複数の日程があります
関西の中堅私大の場合、上位校の入試の前に前期A、上位校の入試直後(あるいは試験の終わり頃)に前期B、三月に後期があります。
前期Aは上位校第一志望者の併願、前期Bは当該校第一志望者の前期Aの「保険」、後期はラストチャンス、という意味合いです。
センター利用入試も、①センター前出願、②センター後出願、③二月末という3パターンがあります。
加えて「試験日自由選択制」という制度があります。600も私立大学があれば必ず入試日程がかぶります。
そこで複数の試験日が設定されていて、自分の都合のよい日を試験日に設定することができます。
A大学とB大学のどちらも受験したい場合はA大学を土曜日、B大学を日曜日と指定します。A大学を両日とも受験することもできます。
試験日が違えば問題が違うので当然受験生の出来も変わります。不公平が起こらないように得点調整や試験日毎の判定などの措置が取られます。
「全学入試」と「学部個別入試」というのもあります。
これまで難関私立の一般入試は学部ごとの入試で実質一発勝負でした(初日経済学部、2日目経営学部のような学部併願は可能)。
「全学入試」は文系(理系)学部すべてが同日に同問題で入試を行い、どの学部を志望するかを申告します。これならひとつの学部について「全学」と「学部個別」という複数の受験機会が生まれます。
3 地方入試
一般入試の「地方入試」は、大学の所在地以外の都市に試験会場を設けて行われます。受験に関する経済的、身体的な負担が軽減されます。入試問題その他条件はまったく同じです。
*発展:最近は地方都市の国立の多くが大都市で試験会場を設置しています。国立大学も競争の時代です。国立至上主義の先生が生徒に想定外の地方国公立を勧める時に必ずこれを言います。4年そこで生活する気なら現地で受験した方が愛着がわくと思うのですが。
4 どの方式が合格しやすいかはケースバイケース
日程と方式
大学側は辞退者を見込んで定員以上の合格者(歩留まり)を出します。
もし前期で合格した人が多数入学手続きをすれば、後期入試では募集要項通りの合格者しか出しません。逆の場合は後期入試で合格者を多めに出します。
センター利用入試は定員が少ないですが、国公立大学志望者が多数出願するので歩留まりを多く取ります。併願関係の強い国立大学に合格できそうな点数は必要です。
追記 私立大学の入学定員厳格化により後期入試の合格者が極端に減っているので、合格するならお早めに。
受験教科数
私立の入試は2ないし3教科。センター利用は2科目から最大7科目です。教科数が多いほど合格に必要な最低点は下がる傾向にあります。
5 何回受験したらいい?
私立専願の場合、①合格は難しいがどうしても行きたい学校(チャレンジ校)、②順調にいけば合格可能な学校(実力相応校)、③確実に合格できる学校(安全校)の3つを組み合わせます。
私立大学は歩留まりを多く取るので、模試の結果でC判定の大学はかなりの確率で合格できます。①D判定、②C判定、③B判定が基本ラインです。
①についてはすべての受験機会を使います。
②は一般で1校×2回か2校×1回でセンター利用も使う、③は1校×1回(センター利用だけでも可)受験すれば、自分の実力を見誤ってない限りどこか確保できます。
国公立第一志望で私立併願の人は、②を一般1回とセンター利用(マークミスしてないかのチェックを兼ねる)、浪人不可なら念のため③をセンター利用で1回出願します。
第一志望より難しい私立の上位校を受験する場合は科目や日程の負担がない程度にしましょう。
*発展 国立(以下略)の先生の中には「私立に合格すると気が緩むので出願させない」という人がいますが、私はそれで気が緩むような指導が問題だと思います。
生徒が「国立が第一志望」と言うなら私立は腕試しと割り切って合格すれば自信を持ち、不合格なら抜け漏れを洗い出して国立に備える生徒を私は育てたいです。
Q11 他にもいっぱいわからないことがあるんですけど!
A11 進路の相談は基本は担任としましょう。ネットの情報は参考です。