ぶんぶんの進路歳時記

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今更聞けない大学入試の基礎知識(3 国公立大学と私立大学の推薦入試)

大学入試の基礎知識その3です。

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今更他人に聞けない大学入試の基礎知識(その1 国公立大学と私立大学) - ぶんぶんの進路歳時記

今更他人に聞けない大学入試の基礎知識(その2 国公立大学と私立大学の良さ) - ぶんぶんの進路歳時記

 

Q7 担任や塾のチューターから「国立大学は受験できる回数が少ないからチャンスは全部使った方がいい、推薦入試を考えないか」と言われたのですが、国立大学にも推薦入試があるのですか?

A7 あります。チャンスは1回、合格したら必ず入学することが条件です。

 

 

1 原則

 

 文部科学省は生徒の力を多面的に評価するため、国公立大学にも推薦入試やAO入試を奨励しています。2016年度入試から東京大学が推薦入試を、京都大学が「特色入試」を始めたのは記憶に新しいところです。出願条件が「かぐや姫」並みに厳しすぎましたが(笑)。

 

平成29年度大学入試選抜実施要項 1頁(鑑は除く)の4段落目

http://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/detail/__icsFiles/afieldfile/2016/06/14/1282953_02.pdf

 

 ただ推薦入試でもっとも評価されるのは、出願要件=「何をやったか」ではなく、「当該大学でしかできない研究をしたい」という明確な志望理由=「何を学びたいか」と、将来の展望=「何をしたいか」です。

 そのため国公立大学の公募制推薦試験は専願(合格したら必ず入学する)で、ひとつの大学・学部しか受験できません。つまり当該学部学科のリーダーになりうる人材を求めて実施されているのです。

 

*発展 例えばA大学の11月のセンターなし推薦に落ちたので次はB大学の1月のセンターあり推薦を出す、というのはダメです。ただし三重県立看護大学のように同一学部・学科で11月と1月に推薦入試がある場合は両方とも出願できます。

 

*発展 推薦で落ちた場合は一般試験で再度同じ大学に出願しても、別の大学に出願してもいいです。面接で「前期はどこを受験しますか?」と聞かれることがありますが、別の大学を受けるなら「ちょっと浪人できないもので」など正直な胸の内を話しましょう(笑)。

 

 ですから国公立大学の推薦入試は「早く合格を決めたい」、「センター試験を受けなくていいから楽」、「勉強してないから部活をアピールして合格したい」といった、学習意欲に欠ける生徒を救済する制度ではないことを生徒も教職員も自覚し、覚悟して準備するべきです。

 

*発展 先生の中には推薦入試を生徒に勧めておいて、生徒の志望理由書の添削は国語の先生に丸投げする人がたまにいます。逆に「かまいすぎ」(自己推薦書の一言一句まで先生のプラン)の先生もいます。

 また明らかに「向いてない」生徒に推薦入試を勧める先生もいます。国立を勧める時に「科目を絞るな」「後期まであきらめるな」と生徒に「しんどい道を選べ」と言っておきながら、生徒を「うまいこと」合格させる目的で推薦入試を使うなら言行不一致です。

 

 なお国立大学の医学部と公立大学には県民向けの推薦があったり(医学部の地域推薦では一定期間県内の医療機関で働く必要あり)、工学部では工業高校など専門高校限定の推薦入試もあるので、条件に適合するか確認しましょう。

 

 

2 推薦入試の流れ

 

A:各大学から推薦入試の要項が発表されます。条件に適合しているかを確認して担任に申し出ます。

B:校内で出願を許可するか会議にかけます。生徒は勝手に出願してはいけません。国公立大学の公募制推薦の多くは「高校から○名」という出願数制限があり、応募者多数の場合は校内で出願者を絞ります。

C:出願します。自己推薦書や校長や担任の推薦書など必要な書類をそろえます。

D:受験します。

E:結果が判明します。

 

追記 10月29日

指定校推薦と国立の応募数制限のある公募制推薦は、学校で全員分の志願票をまとめて大学に発送します。それ以外は原則自分で発送します。

 

 国公立の推薦入試には次の3タイプがあります。

 

1:センター試験を課さない

2:センター試験を課し試験前に出願

3:センター試験を課し試験後に出願

 

*なお大学は前期試験の10日前には推薦の結果を示す必要があります。

 

 1~3とA~Eを表にまとめると目安はこうです。

*注意:必ず募集要項で確認してください!三重大学のようにセンターなしとセンターが混在している大学では11月にまとめて面接試験を実施する場合が多いです。

 

 

~9月

10月

11月

12月

1月

2月

センター試験を課さない

A

B

C D

E

 

 

センター試験を課し試験前に出願

A

 

B

C D~

 

E

センター試験を課し試験後に出願

A

 

 

 

BC

DE

 ※センター試験は1月13日以降の土日に実施されます。

 

 1はセンター試験の勉強が不要なので「お得感」が漂いますが、例えば名古屋大学文学部の基礎学力試験は、京都大学レベルの英文を読解し、文学部的視点から意見を書くことが求められます。大学の窓口で現物を閲覧しましたが激ムズです。

 倍率が低い大学も探せばありますが(どこかは秘密)、まず入れそうな大学を探して、その後志望動機を考えるのは本末転倒です。

 

 2は先に面接や志望理由書の審査を行って、センターの点数で合否が決まる(大阪教育大学神戸大学経済学部)場合と、センター試験で一次選抜された生徒が面接に進む(三重大学医学部、教育学部)場合があります。

 

 3はセンター試験自己採点の週の木曜日か金曜日(業者の自己採点リサーチが帰ってくる日)が出願締め切りです。自己採点が高かったor低かったで「今日から第一志望」という出願を減らすためだと思われます。

 そういう人のために大急ぎで志望理由書や推薦書を段取りする担任の努力は涙ぐましいです。

 

 なお推薦入試の小論文や口頭試問では高度な知識や理解を求められます。

 1と2ならセンター試験、3なら二次試験と同時平行で準備をする必要があります。受験生にとってかなりの負担です。

 国公立の推薦入試は人前で話すのが得意で学力も高い、余裕のある人向きです。

 

 

3 出願に必要な書類

 

① 推薦書

 志望動機、人物評価を記載します。学校長名で発行します。

 

② 調査書

 高校3年間の成績、特別活動の記録を提出します。5段階の「評定」を合計して科目数で割った数値を「評定平均値」といい、出願の条件や合否判定材料として使用します(前掲、13~14頁参照)。

 国公立大学の推薦では、評定平均が低いところではB段階(3.5)以上、旧帝・医学部ではA段階(4.3以上)を出願の条件とするところが多いです。

 

③ 志望理由書

 志願者自身が書きます。これを元に面接で質問されます。

 

④ 証明書

 部活動の表彰実績、生徒会活動などを証明するもの、資格や検定の証明書の写しの提出が求められることがあります。

 「英検準一級以上」など検定のスコアを出願の条件にする大学も増えています。

 

 

4 当日の試験

 

⑤ 面接

 面接官の質問と生徒の応答を通じて生徒の志望動機や適性を判断します。この評価が合否に直結します。

 

⑥ 基礎学力試験 口頭試問

 小論文や教科の学力試験が課されます。口頭試問は、課題についてホワイトボードを使って説明します。

 

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面接についてはこちら 

 

bunbunshinrosaijki.hatenablog.com

 

昨年度の倍率はこちら。入れるところ探しをしてはいけませんよ!

www.keinet.ne.jp

 

ナレッジステーション 2018年度 国公立大学推薦・AO入試

各大学の2018年度の募集要項にリンクします。

日本の大学│ナレッジステーション

 

ドリコムアイも便利ですがリンクに許可がいるので紹介だけ。

 

*発展:過去のデータを見ると推薦でほぼ全入の学科は一部存在します。しかし志願者の成績があんまりな場合は、推薦を定員割れにして他の日程に定員を回すことも可能です。

 

 

Q8 「○○大学からの指定校が来ている」とみんなが噂していますが、指定校推薦って何ですか? 国公立にもありますか?

A8 指定校推薦は私立大学の制度です。

 

*発展:公立大学には「競争入試ではない指定校推薦」を実施する大学が存在します(高大連携が条件の場合あり)。国立で指定校推薦を実施する大学はありません。

 

 私立大学の推薦には公募制推薦、指定校推薦、自己推薦があります(内部推薦は省略)。

 

1 公募制推薦

 

 出身学校の学校長が発行する推薦書を必要とします。出願の条件(評定平均値、資格)を満たせば誰でも受験できます。

 私立大学の公募制推薦は合格しても辞退可能な併願が多いです(スポーツなど特技推薦は専願)。第二志望を推薦で合格し、一般入試でさらに上位校を目指す場合は、一次手続きをしておけば入学の権利を保持したまま他校を受験できます。

 試験は11月から行われます。小論文や面接を課す大学や、評定平均値と基礎学力試験の合計を重視する「プレ一般入試」のような大学もあります。

 

*発展1 推薦の要件には「成績、人物ともに優秀で学校長が責任を持って推薦できる人物」と書いてあります。「私は校長先生に推薦してもらえる人物か」自分の胸に手を当てて考えてから応募しましょう。

*発展2 推薦入試、後述のAO入試を出願する際は、自分が志願する方式が専願か併願可か必ず募集要項を確認してください。専願を2校出願して両方とも合格したら大騒動に発展します!

 

 文部科学省は推薦入試の合格者は「定員の5割を越えないように」各大学で設定するよう求めています(前掲、5頁第8の2)。公募制推薦で多くの生徒を取る大学、推薦は指定校と系列校のみ大学など、戦略によって募集人員が違います。

 基礎学力試験はせいぜい2教科なので「よしっ!」と思うかもしれませんが、11月で国数英がある程度完成している必要があります。「早く楽になりたい」から受験しても、競争の激しい大学では不合格になる確率が高いです

 

 

2 指定校推薦

 

 大学と高校の長年の信頼関係から「学校の代表としてふさわしい生徒」を高校から大学へ指定された人数を推薦する制度です。

 まず応募者の中から大学が求める要件(成績、人物像、欠席数、特別活動の実績)を満たす生徒を校内で選考し、そこで推薦された生徒が大学の選考を受けます。専願で、合格すれば辞退は許されません。

 「面接・書類・作文だけってラッキー!」と思うかもしれませんが、指定校推薦は学校の代表です。この方式で入学した人が大学での成績が悪いと次年度の指定校の枠に影響します。

 したがって心技体が揃った「学校の代表としてふさわしい人」が選ばれます。安易に考えてもらっては困ります。

 また高校によって推薦枠のある大学は違います。関東の最難関私大の指定校を持っている高校は一般で多数合格者を出している実力校です。

*発展:最近東海・近畿圏では「国公立大学至上主義」高校が増えて指定校推薦に消極的なため、関西の難関私立はどこも指定校推薦の総数を減らしています。

 

 

3 自己推薦

 

 学校長の推薦書を必要としません。自己推薦書や面接で自己をアピールします。

 

 

まとめ

 

 推薦入試は筆記試験だけでは判断が難しい資質を見極めるための制度であり、特に国公立大学ではその学部のリーダーとしてふさわしい志望動機と資質が問われます。

 私は毎年「第一志望」と称する人の志望理由書や面接を見ていますが、志望動機はあやふや、質問をすると固まり、部活の話だけは饒舌という生徒には閉口します。

 まあ「楽して合格したい」という発想から脱却できない生徒はほぼ不合格です。

 

 一方多少たどたどしくても志望動機がしっかりある生徒は「一緒に戦って合格を勝ち取ろう」という気にさせます。

 その大学が本当に自分の第一志望か、確かな志望動機と資質があるかを自問した上で「自分こそふさわしい」と思える人はチャレンジしてください。

 

 

Q9 友だちがAO入試を受けるらしいですが、エントリーとかスクーリングとか訳わかりません。推薦入試とどう違うのですか?

A9 また今度(続く)。