ぶんぶんの進路歳時記

学習方法、進路選択、世界史の話題について綴ります

2020年度入試をおさらいして2021年度入試に備える

はじめに

 例年6月に予備校が主催する前年度入試の分析報告会があります。

 地方都市に在住するぶんぶんはこの時とばかり都会へ出かけて、帰りに美味しいものを食べるのが密かな楽しみだったのですが、今年はどの業者も中止、HPにアップされた動画と送付資料だけでした。(´・ω・`)ショボーン

 昨年度はセンター試験最終年、今年度は共通テスト初年度なので、昨年度の動向はあまり参考になりませんが、今回は昨年度の様子を大学入試センターHPと河合塾の資料をベースに(営業さんからは「河合塾調べ」と明記すれば引用OKですとありがたいお言葉)駿台、東進、代ゼミさんの資料も参考にまとめます。

 

ネットで閲覧可能なもの(五十音順)

河合塾 

https://www.keinet.ne.jp/exam/past/

駿台

https://www2.sundai.ac.jp/yobi/sv/news/index.html

 

1 センター試験国公立大学

① 受験者が減った

 現卒あわせた大学志願者数は、約654,000人(河合塾調べ)。センター試験の志願者数は557,699人で、いずれも約2万人減少しています。

 特に大都市部の「センター離れ」(国語・英語・地歴の受験者が減少=首都圏の私大専願組減少)が目立ちます。ポンコツ入試改革に嫌気がさして早々にAOや推薦で一抜けした人が多かったからと推察できます。

 国公立大学全体の志願者数は439,565人、前年度よりも約3万人(-6.4%)の減少です。

 地域別では北海道と四国を除いて軒並み5%以上減少しています。学部系統別では特に経済、教育、医療系、生活科学、農学が大きく減らしています。

 社会科学系は競争過熱が一段落、不況の時に「食いっぱぐれ」を気にして人気を集めた資格系も現実が見えてきた(合う合わない)のかもしれません。

 特に教員養成系の減少は定額働かせ放題教科指導以外の仕事の方が多い心身の危険が伴うことが広く認知されてきた成果でしょう。(`・ω・´)シャキーン

 

② 勝負しない人が増えた

 大学別では、「難関10大学」(旧帝大+東京工業・一橋・神戸)がすべて志願者減少、首都圏の国公立も大半が減少しています。

 理由のひとつはセンター試験の平均点低下と思われます。国語・数学・英語ですべて平均点が下がったため、河合塾駿台の自己採点サービスでは文系・理系ともに7科目型で約20点平均点がダウンしています。

 大学入学共通テストを意識した問題や新傾向(数学ⅠA)が出題され、センターの過去問パターン演習に特化していた受験生が足をすくわれた可能性があります。

 さらに浪人すればポンコツ入試改革に巻き込まれます。志望を下げて安全策を取る心理が働いて当然です。

 こういう中で非常に読みにくかったのが地方の国立大学です。

 河合塾のおひざ元の三重大学人文学部はセンター900点、二次600点、通常はセンター7割(630点)二次試験60%(360点)、1000点越えが合格の目安でした。

 河合塾はセンターの平均点低下でボーダーを69%(621点)に設定しましたが、名古屋市立大学や名古屋大学を狙っていてセンターでしくじった層が受験して二次ボーダー(個別試験で必要な学力)が上昇、通常なら合格する層が押し出されました。

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 逆に名古屋市立大学の人文社会学部は、名古屋大学からの志願変更が少なく、ライバルが三重大学愛知県立大学に流出したため易化し(河合塾調べ)、居残った人には有利な入試になりました。\(^o^)/

 ただしこういうのは「後知恵」で、リアルタイムでは正確に予想できません。

*発展:国立至上主義高校は予備校の自己採点データをもとに「進路検討会」を行い、受験生に持ち点で合格できそうな大学を見つけて薦めるいわゆる「出願指導」を行っています。ただし機械的に判定のいいところを薦めても合格するとは限りません(以下企業秘密)。

 

国公立大学 2021年入試に向けて

  • 勉強の開始が遅れると学習が「パターン覚えゲー」中心になり、傾向が変わるとズッコケます。共通テストは過去問がありません。
  • 入試制度が不透明だと受験生の中に「早く入試を終わらせたい」という心理が芽生えます。私立大学に決める人が増えて国公立大学の志願者は減少する可能性があります。
  • 偏差値上位校は少数精鋭の争いです。
  • 共通テストの後で右往左往しないように、早期から計画的に勉強して第一志望に必要な学力をつけましょう。 

過去回

bunbunshinrosaijki.hatenablog.com

 

2 私立大学

① 定員管理は一段落

 トータルの志願者数は3,766,416人、昨年度より約10万人の減少です。その一方で合格者は991,624と昨年度より約7万人の増加です(河合塾調べ)。

 私立大学の多くが定員管理の段取りに慣れてきて、大規模大学は1.05倍ぐらいに収まるようになりました(しかし内実は困ったこと。後述)。

 地域別では「定員厳格化」の本丸である首都圏と近畿圏の志願者数がそれぞれ約4%減少する一方、合格者は増加しています。他地域は昨年並みです。

 方式ではセンター利用が約1割減少、先述の「センター離れ」「国公立離れ」の影響でしょう。

 系統別では文系の人気過熱が収まり、理系に受験生が戻ってきています。

 難易度別では、偏差値上位校(首都圏だと「早慶(上理)」「MARCH」近畿圏では「関関同立」)だけでなく、その併願先グループ(「日東駒専」や「産近甲龍」、さらにその併願グループ)も志願者が減少する一方、合格者は増加しています

 

② 入試の長期化とドミノ倒し

 近畿圏は国公立大学がセンター得点帯別に隙間なく階層化しています。私立大学は、私立大学間の併願関係だけでなく国公立大学とも併願関係を持っています。

 「関関同立」が最も国公立大学との併願関係が強く、最近は「産近甲龍」の近畿大学も国公立との併願関係が強まっています。

 国公立の結果で「関関同立」と「近」に欠員が生じて、追加合格を出すと併願グループの合格者が入学を辞退、そこが追加合格を出すとその併願グループ「摂神追桃」に辞退者が出て追加合格、という「辞退と追加合格の連鎖」が生じています。

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 この「辞退者ドミノ」で大学はお困りの模様です。ここ数年いくつかの大学が歩留まりを読み違えて大量の追加合格を出しています。

 しかし一番困るのは受験生と保護者です。

 複数回に分けて入試を行う私立大学は合格者を小出しにするために、受験生の中には何度受けても不合格、観念して併願の私立に入学金も授業料も入れて下宿も決めて…と思ったら〇〇大学から追加合格の知らせです。

 そこに入学金を入れたら、3月末に本命の△△大学から追加合格の知らせ…ということが発生しています。

 授業料は手続きをすれば返還されますが、入学金(相場で20万円)は戻りません。出費がかさむ上に下宿もいちから探し直しです。(# ゚Д゚)

私立大学 2021年度入試に向けて

  • 極端な定員絞り込みはひと段落しました。
  • 上位校の競争は緩和しています。
  • 大学は手続き数を見て各入試の合格者数を調整します。本命は何度不合格でも後期まで受験しましょう。追加合格もあるので入試の長期化を覚悟しましょう。
  • 学力をつけて一発で第一志望を仕留めるのがお財布に優しいです。

 

3 新型コロナウイルス感染症で2021年度入試はどうなる?

 「不公平な英語成績提供システム」「公正な採点が不可能な国語と数学の記述式」は反対運動の結果やっと昨年末に見送りになりました。もし強行されていれば今頃阿鼻叫喚です。

 さらに今年に入って突然の休校、共通テストの「配慮」も混乱を招くだけに思えます。本当に現三年生は大人の事情に振り回され続けています。ヽ(`Д´)ノ

bunbunshinrosaijki.hatenablog.com

 2020年7月現在東京を中心に感染者が増加傾向ですが、政府は自粛のお願いばかりです。先行き不安から、昨年度以上にAO(総合型)や推薦(特に指定校)に受験生が押し寄せる可能性はあります。

 受験生が今できることは「勉強」です。自分の行きたい大学を決めて、そのための準備をすることだけに集中してください。

 私立専願なら早めに担任と相談してください。国公立大学第一志望ならやれることをやって様子を見守りましょう。今はそれしか言えません。(。-人-。) ゴメンネ