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ぶんぶんの進路歳時記

学習方法、進路選択、世界史の話題について綴ります

特別展 古代ギリシャ -時空を超えた旅-@神戸市博物館2016-17

    先日神戸市立博物館で開催されている「古代ギリシャ展」に行ってきました。世界史好きな人にオススメなので紹介します。

 

公式サイト

www.greece2016-17.jp

 

*チラシを見ると展示物に©マークがついているので、チラシのアップは遠慮します。実物はHP及び展覧会で見てください。

 

 

館内の写真撮影許可ポイント 雄牛のリュトンの看板あり

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神戸市立博物館 表玄関

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 最初のセクションはクレタ文明以前の新石器時代、初期青銅器時代の展示です。

 

 目を引くのはスペドス型女性像です(HPの作品紹介第1章)。よくある豊満体型ではなく八頭身です(○々緒さん系の土偶?)。顔は「のっぺらぼう」ですが、元々は目や口や髪の毛が描かれていました。この方が色々とイマジネーションを掻き立てられます。

 出土したキュクラデス諸島はアナトリア(現トルコ共和国)からギリシアにかけての飛び石のような島々です。古代は海の方が移動に適しているので、「文明の伝播は島づたい」というのはアジアやポリネシアと同じです。

 

 絵で描くとこんな感じ めっちゃ適当(笑)

 

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 次は世界史の教科書でおなじみクレタ(ミノス)とミケーネ文明の展示です(同第2、3章)。

 

 資料集に載っているタコが描かれた壺などが展示されましたが、牛頭形の「リュトン」(お酒を注ぐときに壺にかぶせるカバー)は入口のポスターにもなっていて(左側に映り込んでいる)、展覧会の目玉のようです。

 クレタ文明というとミノタウロスの伝説に見られるように牛が有名です。神への供物として牛を犠牲にすることがありますが、そう毎回牛を解体するわけにはいかないから、これを酒の容器にかぶせて代わりにしたのだと思われます。

 

*発展 ギリシアの考古学に詳しい教授がいる名古屋大学の2017年の論述は「地中海世界におけるキリスト教以前の宗教について」で、リード文が動物を犠牲にする儀式の話でした。しかし高校生だとせいぜいエジプトとギリシャ多神教しか書けないのでは…。


 ミケーネ文明になると金や装飾品、儀礼用の武器など権威を見せつけるグッズが増えます。また線文字Bの実物が展示されていました。宮殿で作業をした人に日当としてイチジクと小麦を配った記録や、生け贄にした雄牛のリストでした。教科書がいうオリエントの影響を受けた「貢納王政」の実例です。

 

 

 次はポリス成立期の展示でした(同第4章)。いわゆる「アルカイックスマイル」はこの時代の後期の彫刻です。最初は陶器の壺の絵柄に幾何学模様(線だったりピクトさんみたいな人)が描かれますが、後半になると神や人々の活動の様子が壺に描かれたり、大理石の彫刻として作られるようになります。

 

 少女が走っている像がありました。スパルタでは「リュクルゴスの制」の下、子どもは男女問わず小さいときに親元から離れて訓練を受けますが、「ヘライア競技会」は女子のスポーツ大会で、像はその様子を描いたものです。丈夫な子ども=次世代のスパルタ戦士を産むためには身体を鍛えろ、ということでしょう。

 またセイレーンの像が多くありました。ホメロスの詩にも出てくる、海の航路上の岩礁から美しい歌声で船人を惑わし、遭難させる怪物です(某外資系コーヒーチェーンのあの人)。ギリシャ人が地中海や黒海に進出し、交易をしたり植民市を建設した時期に重なります。

 展覧会のハイライトは大理石で作られた男性像です。入り口のポスターにもありました(右側に映り込んでいる)。2017年度センター試験、国語の小説に登場する男の子なら、指さしして「○×○×!」と言いそうです(下ネタごめんなさい)。

 

 

 次は民主政時代の展示でした(同第5、6章)ギリシャで人々が最も躍動していた時代です。陶器の壺に描かれる神々や人々がダイナミックな表現になります。

 

 教科書に載っている「テミストクレス」と書かれた陶片(オストラコン)がありました! 世界史教員としては結構感動です。また民衆裁判員を抽選する機械(クレロテリオン)の一部がありました。裁判の当日に石製の身分証(古代にIDカードですか!)を穴に差し込み、ガチャガチャやって裁判員を決めるそうです。

 

 

こんな感じ 「テミストクレス」と読めます

 

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 さらに亡骸を清める香油を入れる壺には戦士の絵が描かれるなど、市民皆兵のポリスが戦死者の追悼を重視していた様子も垣間見ることができます。

 

*発展 高橋哲哉さんの『靖国問題』(ちくま新書)は賛否両論ありますが、彼が整理した「犠牲のシステム」と「国家による戦死者の追悼」は世界史を語る上で避けられない論点です。


 他にも病気治癒を祈願して奉納された乳房(小説の男の子なら(以下略))や足など「患部のレリーフ」、オリンピックの競技者を描いた記念の壺、競技者が身体に塗った香油をはがすための垢擦り棒(スキー板の「リムーバー」!)など、当時の人々も私たちも生活の様子や考えは基本的に変わらないのだとしみじみしました。

 


 最後はヘレニズムとローマ時代の遺物で、マケドニア人やローマ人がギリシャ好きだったことがわかります(同第7、8章)。

 

 しかしキリスト教が広がり、392年にキリスト教以外の信仰が禁止されると(テストに出ます! みくにの信仰)、ギリシャの文化も「異教」扱いになり、古代オリンピアの祭典は禁止(これも名古屋大学の過去問にあり)、彫刻の額に十字が刻まれたり、使わなくなった彫刻は建材の一部などにされたそうです。

 

 世界史好きな人には教科書の「あれだ!」が満載の展覧会です。音声解説が市村正親というのもいいところついています(笑)。

 

 神戸での会期は4月2日(日)までです。まだの人はお早めに。