2016年にLGBTの方の講演会を紹介しましたが、このところLGBTがメディア等でよくとりあげられるようになりました。
過去ログ
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私は『3年B組金八先生』の第6シリーズ(2001年)で上戸彩さん演じる性同一性障害の生徒が強く印象に残っていますが、最近映画やドラマでLGBTを正面から扱うものが増えました。
映画では『彼らが本気で編むときは、』(2017年2月公開。荻上直子監督、生田斗真主演)が記憶に新しいです。私の町が同性パートナーシップを認めている関係から試写会が行われました。
最近大当たり?したテレビ朝日の『おっさんずラブ』はコメディですが、「結婚式はふたりともタキシードで」などLGBTに対する配慮がされていました。
この間講演会に参加したので、その様子を紹介します。
講師は峰山和真(みねやまかずま)さんです。前回紹介した山口颯一さんが主催するELLYのメンバーです。
公式サイトはこちら
講演の内容
1 峰山さんの生い立ち
峰山さんは女性として生まれましたが、いつの頃からか性別に違和感を抱くようになりました。
小6になって女性的な身体の変化が起こるとますます「自分のありたい姿」とのギャップを感じるようになります。しかし周囲に相談できる人はいないし、むしろ変な目で見られました。
中学生になると(中学でズボンが選べたのが唯一の救い)心ない発言が増え、峰山さんは「自分がいらんことを考えるから悪いのだ」と自己嫌悪に陥ります。
ついに峰山さんは卒業式の日にマンションから飛び降りようと決意します。
しかし直前に「自分がここにいることは変わらない」「自分は悪くない」ということに気づきます。
峰山さんはマイナス思考をやめ、自分の立場をカミングアウトすることにします。現在は性別を変更し、名前も変えています。
2 今なぜLGBT?
現在行政を中心に日本でLGBTの認知をすすめる取り組みが急速に進んでいます。LGBTについて理解を表明するステッカーを使っている企業も増えています。
背景のひとつは2020年の東京オリンピックです。
オリンピック憲章の中に「性的指向による差別の禁止」という項目があり、差別のある国では開催できないことになっているからです。
しかし世界を見渡すと、同性愛者が逮捕される国も存在します。
*発展:2017年現在、日本の高校の教科書には保健、家庭、公民を中心にLGBTについて31点の記述があるそうです。またアメリカのグーグルやファイスブックのアカウントでは性別欄に配慮があるそうです。
3 LGBTについて知っておきたいこと
私たちは相手が男性か女性かを判断するとき、主に「見た目」(見てわかる情報)で判断しますが、性的マイノリティは見た目では判断できません(注:『おっさんずラブ』はまさにそこを突いています)。
だから相談を受ける側が「私はLGBTについて知っています」と発信することで相談しやすい環境を作る必要があります。
相談されやすい環境作りは次の5点です
- 話を親身に聞く体制
- LGBTを笑いだけの対象にしない。言葉を意識する(例:オネエ、ニューハーフ)
- 「男女や異性愛だけではない、性の多様性」という考え方
- 「LGBTを知っている」を伝えてくれる
- 差別的発言(例:レズ、ホモ)に対して正しい言葉を教えてあげる、伝える
カミングアウトを受けたり相談された時に気をつけるのは次の6点です。
- 相手の話に耳を傾ける
- 決めつけることなく、否定しない
- 「話してくれてありがとう」と伝える
- 「どうして伝えてくれたの?」「何か困っていることある?」(本人の現状把握)
- 「他の誰かに話してる?」念のために聞いておく(本人の現状把握)
- LGBTの情報やLGBT団体の存在を伝えておく
講演を聴いて
「性の多様性」は「生物学的性」「性自認」「性的指向」「性表現」の各項目が男性寄りか女性寄りか、という組み合わせで成り立っています。
生物学的には女性で、自分は男と思っていて、女性が恋愛対象で服は男性という方もいれば、性的感情を抱かない方もいますし、着る服も様々です。
また各項目がはっきり男/女というわけではなありません。
このように「性の多様性」はグラデーションであることから「6色の虹」が「LGBTの理解の証」によく使用されます。
こんな感じ。許可を得て撮影。
LGBTの方はトイレで困る(前回のブログ参照)ので、多目的トイレに「誰でもご利用いただけます」的な表示が増えています。
このように「私たちは考えています」を表明することが、異性愛が多数派の社会の中で性的マイノリティの方が孤立しない、相談しやすい環境を作ります。これを「アライ」(ally、同盟する)と言います。
峰山さんはバイト先の人に自身のことを相談したら「相談してくれてありがとう。気がつかなくてごめんなさい。これからは男として接します。なんて呼んだらいい?」と言われて嬉しかったそうです。
その一方でLGBTに関するアンケートで「LGBTに対する差別的発言はありますか?」という問いに対しては当事者は70%、非当事者は56%と、ギャップは存在します。
また峰山さんは、私がこの(進路指導中心の)ブログでLGBTを取り上げる動機となった、某国立大学法科大学院の「アウティング」(その人の秘密を他人に公言する)についても語っていました。
周囲の無理解が当事者の自尊感情を傷つけます。さらに情報が一人歩きするのは当事者として耐え難いことです。
どのような差別も当事者と非当事者の間にギャップがあるのは現実、それを自覚しつつ埋める努力をできるかだと思います。
そのためにはまず正しく知ること、そしてできることから行動することです。
峰山さんは最後に「ウェルカミングアウト」と言われていました。悩みを共有しやすい環境を作る、誰もが「差別をなくす当事者」なのです。
*追記:冒頭の『金八先生』、直(上戸彩さん)のためには周囲の理解が不可欠、ただしそのためには直本人のカミングアウトは避けて通れない、でもそれは直にとって辛くかつ好奇の目に晒される危険性もある、金八と直と周囲は葛藤します。
本放送から17年、再放送を観て「あなたの立ち位置は?」と突きつけられる思いです。
峰山さん、どうもありがとうございました。