ぶんぶんの進路歳時記

学習方法、進路選択、世界史の話題について綴ります

三年生11月 併願校を決める

 11月になり、公募制推薦入試がはじまるなど受験本番です。

 受験生はこの時期に第一志望と併願校を決定します。とはいえ「下手な鉄砲も…」のような出願をすると、お金と体力を消費してしまいます。

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 また「国立至上主義」の学校だと「私立に合格するとモチベーションが下がるから出願するな」という先生もいたりしますが、最初の試験が第一志望の一発勝負というのはきついです。

 今回はお金や体力を無駄にせず、第一志望を気持ちよく目指すための併願校の決定方法について考えます。

 

*関西の話が中心です。自分のエリアに置き換えてください。

*5月5日    少し推敲しました。

 

河合塾のサイトを参考にしています。

www.keinet.ne.jp

 

 

1 チャレンジ校・実力相応校・安全校を選ぶ

 

 受験する大学は、受験生の学力から、次の3つに分類できます。

チャレンジ校(合格の可能性は低いが行きたい)以下「チ」

実力相応校(合格可能)以下「実」

安全校(確実に合格できる)以下「安」

*どう考えても合格が無理な第一志望は、ただの「願望」です。

 

  

(1) 私立大学

 

 まず模擬試験の判定を見ます。私立大学は手続きする人と辞退する人(歩留まり率)を見越して定員よりも多く合格者を出します(水増し)。A判定の生徒は他大学に進学するので、チ=D、実=C、安=B判定が目安です。

 

 次に大学間の「併願関係」を考えます。

 関西では「関関同立」と「産近甲龍」というグルーピングをします。長いので前者を「関関」、後者を「産近」、入試難易度が高い順に1,2とすると、

 

ア:関関に合格したら幸せ…チ=関関2、実=産近1、安=産近2

イ:できれば関関1…チ=関関1、実=関関2or中堅国立、安=産近1

ウ:私立は滑り止め…チ=難関国立 実=関関1 安=関関2

 

という関係になります。

 この「関西主要8大学」は入試日程も1月下旬に産近甲龍、2月上旬に関関同立、2月中旬に産近甲龍の別日程、と「棲み分け」されていますし、関関同立の間で同じ学部の入試が極力かぶらないようになっています。受験教科数もほぼ同じです。

*発展 入試問題にも「併願関係」が見られます。同志社女子大学の世界史は、センター試験産近甲龍の問題(ヨコの併願)が「点取り問題」、系列の同志社大学の問題(タテの併願)、過去問からの「同女スペシャル」が「差をつける問題」になっています。

*発展    「産近甲龍」第一志望者の併願先グループ(「摂神追桃」など)は一般試験の教科数が2教科など少なめになる傾向があります。

  

 したがって併願校を考えるときには、一定のエリアで併願関係の強い大学を選んだ方が負担が少ないといえます。

 *発展 「偏差値」や「ランク」は入りにくさを基準とした「受験上の序列」であって「大学の序列」ではありません。ランキング表に詳しくなっただけで大学がわかったような気になってはいけません。「○○大学は△△大学が落ちた生徒が行くところ」と平気で言う人がいますが失礼な話です。

 

  

(2)国公立大学

 

 国公立大学は受験機会が限られます。通常は第一志望を定員の多い前期で出願します。

 国公立の前期は、大学にもよりますが「水増し」をあまり取りません。チ=C、実=B、安=Aと考えましょう。

 ただしこれは前期限定です。後期は定員が少ないため見かけ上の倍率はすごいことになり、前期で受験すればA判定の大学も後期で受験するとE判定ということは普通です。そこで後期は「難易度」を下げて出願します。

 しかし後期は前期落ち組の「敗者復活戦」、実質倍率は前期の合格状況で劇的に変化します。欠席者続出で全入になるか、実力者が残るのか、出願時点では何とも言えません。「ジョーカー」と考えましょう。

 国公立前期でチャレンジするか、実力相応校にするか、センター試験後に選択を迫られます。浪人不可なら私立で実力相応校を押さえた方が安心です。

 「関関同立」は国公立大学と強い併願関係があり、入試日程だけでなく出題も難関国立の「腕試し」的な難易度に設定されています。

 

 国公立の前期後期にも併願関係が強い大学があります。

 東海圏では前期は名古屋大学工学部、後期は名古屋工業大学が「スジ」で不安なら三重か岐阜、というのが受験生が好む併願です。

 前期で京都か大阪に出願した生徒は、後期では神戸・大阪市立・京都工芸繊維、中期は大阪府立(理系のみ)の出願が好まれます。特に神戸は前期から実力派が集まりますが、後期の入試はさらにとんでもないことになります。

 このように大学によって「ライバルはどこから来るか」を見極めて出願します。

  受験産業は先生向けに受験生が模試で書いた志望校を元に入試動向説明会を開催しています。担任に聞きましょう。

 ただし国立大学はそれぞれ誇りを持っています。私は「受験の序列」の存在は仕方ないと思いますが、大学はそういうのは嫌いです。そのためか名古屋工業大学大阪市立大学は入試問題が難しめです。

 

 

2 併願校の入試教科・科目、配点をチェックする


 第一志望校と併願校の入試科目が違ったり、併願校の方が入試科目が多いと受験生の負担が増えます。国立、私立とも「上位校」の方が科目は多くなる傾向ですが、逆転がおきることもあります。

 文系の場合は、国立二次が国・英、私立が国・社・英が多数派です。難関国立は二次に数学があります。

 この辺を狙う人は社会は得意なはず(笑)ですから、センターの貯金と休憩時間の「気分転換」で押し切りましょう。

 また私立の社会・数学の選択で数学を選んで国立二次試験の「練習」にするという戦略もあります。

 医療系や栄養系など文理乗り入れ学部の場合、理科基礎科目と専門理科の扱い、数学の出題範囲を確認しましょう。

 配点も大事です。併願校の方が教科・科目が少なくても苦手な科目の配点が高いなら考え物です。中堅私立は入試方式で「スタンダード型」「高得点型」があるので自分の現状に応じた型で出願しましょう。

 

 

3 無理のない受験スケジュールを組む

 

(1)受験回数

 

 1(1)の、ア、イ、ウ別に考えます

  • ア、 チについてはすべての受験機会を使う。実は一般で1校×2回か2校×1回、安は1校×1回(センター利用可)受験。
  • イ、 アと基本は同じで、実で国立と私立1。安はセンター利用を使う。
  • ウ、 チで国立の前期、実が私立1とセンター利用、安はセンター利用。国立後期は「ジョーカー」。

 安全校は最低限にして第一志望の合格にエネルギーを使うべきです。実力相応校も「ここ!」という大学に狙いを決めて一発で仕留めたいです。

 

 私立の場合はその気になればすべての入試機会を使えます。とはいえ限度はあります。

 「○○大学」にこだわるなら、「全学入試」で法学部、「学部個別入試」で法学部と政策学部を、学部にこだわるなら同グループの大学の同系統学部を受験します。どちらの場合も3~4回が受験機会の限界です。

  

(2)受験日と移動日

 

 難関私立は入試日が連続します。都会に住んでいる人は日帰り可能ですが、地方からの受験だと連泊になります。午前中からの試験だと前泊が必要です。こうなると体力、気力を消耗して肝心の試験に悪影響が出ます。

 どこか一日休養日を作って復習と頭のリセットにあてる、日帰りで行ける地方試験会場を使う、など無理のない受験スケジュールを考えましょう。

 大阪で試験が終わったその足で移動、翌日に東京で受験、と人気アイドル(笑)のようなことは避けましょう。

 最初の入試がチャレンジ校よりも、実力相応→チャレンジの順番で受験し、安全校はセンター出願で合格してしまう方が精神的・体力的に楽です。

  

 (3)手続き締切日

 

  大学に合格すると「一次手続き」と「二次手続き」があります。

 「一次手続き」は「入学金」を納入することで「入学の権利」を確保することです。本命の大学に合格すれば辞退、不合格なら二次手続き(それ以外の入学に必要な諸経費や授業料を支払う)をして入学確定、となります。

*発展 この件で何度か裁判があり、大学は権利確保のための「入学金」は返還しなくてもよい「授業料」などは返還すべき、という判断が出ています。

こちら 弁護士ドットコム

www.bengo4.com

 

 「一次手続き」をする大学は一校でよいので。色々合格した場合はどこにどのタイミングでお金を納めるか考えます。

追記 11/15 表を見やすくしました

 

     β大

     α大

日程

前A

前B

セ前

後期

セ後

前期

セ前

後期

セ期

1/13

 

 

出願

 

 

 

出願

 

 

1/19

出願

 

 

 

 

出願

 

 

 

1/28

試験

 

 

 

 

 

 

 

 

2/1

 

 

 

 

 

試験

 

 

 

2/2

 

出願

 

 

 

 

 

 

 

2/8

発表

 

 

 

 

 

 

 

 

2/10

 

 

発表

 

 

 

 

 

 

2/11

 

試験

 

 

 

 

 

 

 

2/15

 

 

 

 

 

発表

発表

 

 

2/17

一次

 

 

 

 

 

 

 

 

2/24

 

発表

 

出願

 

 

 

出願

出願

2/27

 

 

 

 

 

一次

一次

 

 

3/4

 

 

 

 

出願

 

 

 

 

3/6

 

一次

一次

 

 

 

 

 

 

3/7

 

 

 

 

 

 

 

試験

 

3/8

 

 

 

試験

 

 

 

 

 

3/13

 

 

 

 

 

 

 

 

 

3/16

 

 

 

 

 

 

 

発表

発表

3/18

 

 

 

発表

発表

 

 

 

 

3/24

           最終手続き

 


 *凡例 前:前期 後:後期 セ:センター利用 

 国公立前期試験は2月25日、発表3月上旬、後期試験3月12日、発表3月下旬

 

 先述の関関同立(A大学)と産近甲龍(B大学)から各1大学選んで、出願締め切り、試験、発表、一次手続き締め切りをまとめました(一部省略してあります)。

 この場合、A大学が本命の人が、B大学の前期に合格したら一次手続きを待ち、A大学に合格ならBの手続きをしないでAに手続き、不合格の場合はB大学の一次手続きをしてA大学の後期に出願します。

 国立大学が第一志望の人は、A大学に一次手続きをして、3月上旬の前期と3月下旬の後期の発表を見て、国立にするか(A大学に払った入学金は返ってこない)、A大学の二次手続きするかを選びます。

 

  ただ必ずしもうまくいくとは限りません。

 学校では必ず「受験スケジュール表」を配ります。無駄な出費をしないスケジュールを組みましょう。

 

まとめ

  1. 自分の実力を見極め、チャレンジ校、実力相応校、安全校を選びましょう。
  2. 「併願校のスジ」を見つけましょう。同じような科目や傾向、似たような日程や場所の併願校を選べば、負担を減らせます。
  3. 受験料や一次手続きのお金は安くありません。囲碁の妙手のように、最低限で最大の効果がある出願、手続きを心がけましょう。
  4. ネットの情報はあくまで参考です。担任の指導を聞きましょう。

 

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