ぶんぶんの進路歳時記

学習方法、進路選択、世界史の話題について綴ります

三年生12月 推薦入試から気持ちを切り替える

 高校は冬休みといっても補習、三連休も年末も部活(内田良先生が怒るのも無理ない)です。私は今日からオフです。

*いらすとやさん、「ブラック部活」というイラストもお願いします。

 

 12月に私立大学の推薦入試の結果が判明しました。進学先が決まった人、推薦はスキップした人、結果が出ず次の機会に備える人、様々です。

 最近元気な近畿大学公募推薦入試の結果を見ると、東大阪にある学部は軒並み高倍率、法学部は倍率約9倍でした!合格する人がいればその何倍か落ちる人がいる、それが大学受験です。落ち込んでばかりいられません。

 

kindai.jp

 今日は今年最後の更新、推薦入試後の心構えについて考えます。

 

 

1 推薦試験で不合格

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a:推薦で私立大学や専門学校に進学する割合が多い高校

 

 周りが早々に進学先を決め、「私だけが3学期も受験しなければならない」状態は精神的にきついです。発想を変えて「私だけが3学期も受験できる」と考えましょう。

 

 私が昔勤務していた高校は、職員室前の廊下にホワイトボードと机があって、生徒がいつでもそこで先生に教えてもらえるようになっています。

 多くの生徒の進路が決まれば、あなたが先生を「独占」できます。急速に実力が付く一番の勉強方法は「先生との対話」です。

 私は生徒と模試や過去問の見直しをして、誤答に至った「つまずきポイント」を洗い出したり、「ついでにここも覚えよう」と指示したりします。

    また歴史の背景や論理などは講義や自習では理解しづらい部分もありますが、マンツーマンだと心に落ちます。

 

 「一般試験だと3教科もある!」とビビッてしまう人もいますが、私立は一般入試の方が定員も多く、推薦入試と違って「歩留まり」(定員以上の合格者)を出すので合格のチャンスは増えます。それに3教科の方が合格最低点は低いです。

 また得意教科を2倍したりセンター試験と併用する入試方式もあります。第一志望の生徒の割合が比較的高い日程もあります(関西の中堅私大だと「前期B」)。「安全校」選びも含めて担任と戦略を練りましょう。

 

 先生はあなたのような生徒を必ず応援してくれます。私も教えたくてうずうずします(笑)。だからあなたも「受験は嫌だ、早く終わらせたい」という発想から抜け出し、先生に食いつき、最後まで受験にこだわりましょう。

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b:「国立至上主義」高校

 

 その大学が第一志望だった生徒は、aと同じで一般で合格しましょう。

 

 問題は「滑り止め」の中堅私大に落ちた人です。推薦で併願校を確保して難関私立や中堅国公立大学に合格する青写真だったと思いますが、現時点では同じことを考えるライバルに水をあけられているということです。

 

発展:「国立至上主義」高校には「私立の推薦は受けさせない」という先生がいて、理由は「勉強を始めたばかりだから」「不合格だと自信を失う」「合格すると地方国公立大学を受けない」だそうです。そんなこと言ってるぐらいなら早くから勉強をさせて、併願の合否にかかわらず第一志望に対して気持ちを切らさない生徒を育てて欲しいです。

 

 もし「夏休みから勉強を始めても入試科目の少ない推薦なら軽く合格できる」という考えだったのなら悔い改めて勉強に取り組みましょう。分相応な「安全校」にも出願した方がいいです。

 自分の現状を分析し、自分に向き合いましょう。有名進学校に通っていようが、大手予備校に在籍していようが、受験するのはあなたです。

 2016年度入試では中堅私立に不合格で大都市圏以外の国公立に合格した生徒が私の学校にかなりいました(中堅私立より入りやすい国公立??)。努力しなければ合格はありません。不合格を自分の糧にしてください。

 

 

2 推薦試験で併願校に合格

 

 おめでとうございます。まずは戦略通りです。

 私が昔担任したクラスの生徒の多くはその後私立の「上位校」に合格しました。

 秘訣は「大学愛」と「ローラー作戦」です。第一志望の大学の過去問と類題をひたすら反復練習し、可能な入試日程をすべて受験しました。

 大学が過去問を公開しているのは「うちの大学に合格したい生徒」「そのために準備ができる生徒」が欲しいからです。難関になればなるほど過去問からの「かぶせ問題」が出題されます。

 「併願校を決める」の回で「私立はE判定でも通る」と言ったのはこれです。

 関関同立の場合、阪大・神大の志願者は対策なしでもたぶん合格します。そうした生徒が模試の志望校欄に関関同立を書けば、第一志望の生徒はE判定になります。

 彼らの間に割って入るには、過去問と類題をやり込んで、大学の「これきっと準備してるよね?」という「愛情を試す問題」を仕留めることが不可欠です。

 

 ただ過去問に歯が立たず、本番の試験も思うような成果が出せないしんどい日々が続くこともあります。

 生徒のひとりが入試の合間に「先生、もう○○大学でいいかも…」と半泣きで来ました。空気が読めない(笑)私はきついことを言ってしまいました(普段は気の強い生徒だったのでつい)。

 でも彼女は私にそう言われることを承知だったようです。最終的に第一志望に合格し、大学でやりたい勉強をやって、希望どおり地銀で働いています。

 とにかく最後まで第一志望にこだわってください。

 

 

3 推薦試験で第一志望に合格

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 おめでとうございます。努力が報われたと思います。

 担任だけでなく面接練習や書類の準備をしていただいた先生に必ず合格の報告とお礼の挨拶をしましょう。

 

 この後の過ごし方が4月からの大学生活に大きな影響を及ぼします。

 「国立至上主義」の高校だと「合格してもセンター試験を受験するように」と指導される場合が多いです(学校によって異なります)。

 これは決して「嫌がらせ」とかではなく(笑)、4月からその大学で一般試験組、「上位校」不合格組と机を並べることになるからです。だからセンター試験程度の教養は必要ということです(たぶん)。

 気が抜けてノー勉受験では困ります。「高校の卒業テスト」と思って臨みましょう。

 

 私が推薦合格組に取り組んで欲しいのは「読書」と「英語」です。

 大学では「知識の暗記」よりは、議論しながら考えたり意見をまとめたりすることが中心になります。必要なのは「ものの考え方」です。その時力になるのは「古典」です。

 国語の文学史や世界史の文化史で作者と名前だけ覚えた本や、自分の進む学部・学科に関係する新書を手始めに読むことを勧めます。

 英語はたぶん入学早々にクラス分けテストがあります。下位クラスになると周りに流されてしまう可能性があります。英検などの資格取得を目標にして英語力をキープしましょう。

 理系の場合、推薦では理科を受験しないことが大半です。物理と化学が分からないと授業の初日からついていけなくなるので、今のうちに勉強しておきましょう。

    「大学はレジャーランド」は一昔前の話です。今はどの学校も出席や単位認定が厳しく、成績は数値化され専攻決め(進振り)、奨学金、留学の指標になります。心して4月を迎えましょう。

 

*発展:中堅私立の場合「理科は一般入試で1科目」が大半で、私立専願だと「物理がさっぱりわからない」まま大学に進学する生徒もいます(「物理を習っていない」という信じがたい生徒もかつていたそうです。新課程導入で今はいないはず。高校や予備校の先生が来て授業後に補習をする大学もあると聞きます。昔『クローズアップ現代』でやってました)。ん、国公立はさすがに大丈夫ですよねー。

 

 

おわりに

 

 指定校推薦合格者の集会で、私が担任した指定校で難関私立に進学した学生に講話をしてもらったことがあります。

 彼女は私立文系型の生徒で、センター試験の後(3教科で85%!)英検準1級に一発合格し(私が勧めました)、空いた時間に大学生の兄が持っていた宮台真司などを読んだりしたそうです。

 この12月からの4ヶ月間でやりたい勉強をした結果、大学に入って他の人よりも「ちょっと前に出ることができた」と実感できたそうです。

 留学経験があるか英検準1級を持っている学生限定の授業があって、それを取ったら周りは外国人と帰国子女ばかり。でも国立外国語学部レベルの授業が受けられ、すごい刺激になったそうです。

 それ以来「他人よりも一歩前を行く」を心がけ、1年間留学や海外のシンポジウムに参加し、在学中は外部の研究会やライターの仕事もして、今は大手企業で働いています。

 私は彼女を担任できたことを誇りに思い、「何で国立を目指させないんだ」という外野の声を完全無視(笑)してよかったと思っています。

 

 合格した人、三月の後期入試まで受け続ける人、それぞれ時間の使い方は違います。大学入試はゴールではなくスタートです。「4月に自分が納得できる進学先で十分な力をつけて新生活を始める」から逆算して、残りの時間を有効に使うことを願って止みません。