ぶんぶんの進路歳時記

学習方法、進路選択、世界史の話題について綴ります

2020年度の大学入学共通テストについて考える(2018年度版4 英語の外部検定その後)

    2020年度からの「新テスト」、英語の外部検定に関して新しい動きがありました。

    前回

 

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1  文科省の反撃

 

 8月10日に文部科学省から「民間の英語4技能試験の結果の提供について」という発表がありました。

民間の英語4技能試験の結果の提供について(平成30年8月10日):文部科学省

    それによると、以下に該当するような人には高校2年の時の成績を活用できる例外が設けられるそうです。

 

  • 受検に極めて不便な地域にお住まいであるなど負担の軽減が必要な家庭の受験生で、高校2年の時点で十分な成績(すなわち、文部科学省が公表しているCEFR対照表のB2以上に該当する結果)を得た人
  • 病気で長期間入院しているなど受検の機会が得られない人

*CEFRのB2は実用英語技能検定(以下英検)だと準1級です。

*8月28日の発表では「高校2年時に一定の成績を収めた者であって経済的に困難な事情を有する者または離島・へき地に居住あるいは通学している者の負担軽減や、病気等のやむを得ない事情により受検できなかった者、障害のある受検者の扱い」とやや具体的になりました。

 この発表で文科省は、批判が噴出している「民間の外部4技能検定」について、生徒のことを考えた末のことなのだ、といつもとは違うトーンで制度の正当性を訴えています。

    三年生の2回に限っているのは、受験を早期化させないように(「学校生活に影響が出る例」として部活動と文化祭があがっている!)、経済力で不公平にならないように、との思いからだそうです。

 今回の例外措置も「条件に当てはまる限られた場合を想定しているものであり、大学入試のために英語4技能試験を受検することを高校2年の時点で促すものでは全くありません」としています。

「1・2年生の時に得た英語の資格・検定試験の成績を、これまで通りAO入試などの合格判定に使うこともできます」なので、それはそれ、共通テストには3年生で再び英語検定を受検してください、とのことです。

 

*「受検に極めて不便な地域にお住まいであるなど負担の軽減が必要な家庭」とは具体的にどの程度なのか、それを証明するためにどのような手続きが必要なのか(それがそもそも負担では?)は今後の検討課題だそうです。

 

  続いて8月28日には、文部科学省高等教育局大学振興課の名前で「大学入学共通テストの枠組みで実施する民間の英語資格・検定試験について」という文書が出されました。

大学入学共通テストの枠組みで実施する民間の英語資格・検定試験について(平成30年8月28日):文部科学省

 

 これは前回紹介した、6月の東京大学の質問に答える形になっています。

 東京大学の質問は次の4点です。

  • 高等学校学習指導要領との整合性
  • 個別の認定試験が示している点数とCEFR換表との対応の根拠
  • 採点体制の公平公正
  • 検定料、試験実施会場、障害等のある受検生への合理的配慮の具体的対策

 発表によると、学習指導要領との整合性については、どの検定も学習指導要領から逸脱する内容ではない、CEFR換算は各団体から提出された検証結果を文科省が調べてOK、実施と採点の公平性、検定料と合理的配慮はかねてからお願いしているとおり、とのことです。

上記リンクのスクリーンショット。資料6

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*検定団体の検定料減免に関する具体例がないので、「大学入試全体の受験料負担の軽減策」の資料が大量に添付されています。

 

 

東京大学の逆襲

 

 文科省は別に東京大学の質問に答えている訳ではないですが、検証の結果は想定通りで問題もなし、合理的配慮は文科省がすでに要望済みで具体例は検定団体が考えること(僻地と病弱者については配慮した)、という事実上の「ゼロ回答」です。

 文科省の取り組みはまったく正しい( ・`ω・´)キリッ、ということです。

 

 文科省が、東京大学がこの発表に満足して外部検定を利用する→他の国立大学も従う、と思ったかどうかは不明ですが、東京大学は論理のほころびを見逃しません。

 

 9月25日付けで新聞各紙は、「東京大学は25日に入試監理委員会を開き、大学入学共通テストで導入される英語の民間試験について、成績提出を必須としない基本方針を決めた」と報じました。

 記事の内容を総合すると、東京大学は受験生にCEFRのA2以上(英検だと準2級、高校1年生レベル)を受験生に求める、という基本方針を決定しました。

 A2以上は文科省が「高校生の半分以上」に期待する目標です(後述)。一見すると文科省の指示に従う姿勢です。

 問題は確認手段で、次のいずれかを提出とのことです。

  1. 民間試験でのA2以上の成績
  2. 高校が、A2以上の英語力があると認めた調査書など
  3. 障害や病気などによって受けられない理由を説明した文書

 2013年に閣議決定された「第2期教育振興基本計画」(2013~2017年度)では、高校卒業段階で英検準2級から2級程度以上の英語力を身につけた生徒の割合を「50%以上」にすることを目標に掲げていました。

 その最終年にあたる2017年度「英語教育実施状況調査」によると、2017年12月時点の調査結果では、英検準2級以上(高1レベル CEFRのA2)を取得している高校三年生の割合はわずか15%です!

    ただし検定未受験だが「同等の英語力を有していると思われる」生徒の割合24.3%を加えると39.3%となる、としています。

 目標は達成しつつある、文科省の取り組みは正しい( ・`ω・´)キリッ ということです。

 文科省自身が「検定未受験でもA2同等の人が多数存在する」と言っているのですから、その24.3%の人たち(検定取得者の1.6倍もいる!)は調査書にそう書いてあれば検定を必須化する必要はない、というのが東京大学の理屈でしょう。

    東京大学さんは意地悪です。

 

 

感想

 

 個人の感想ですが、文科省は「動き出したことを撤回するわけにはいかない」ので後付けに必死、大学入試センターは辻褄を合わせるために悪戦苦闘、東京大学は内情も知った上で揺さぶっているように見えます(穿った見方をするのは僕の悪い癖)。

*私なんかはまだおとなしい方で(笑)、ネットでは「利権がらみか?」「受験産業を儲けさせたい?」など厳しい声が上がっている模様です。

 

 私はこの新制度の前提である「グローバル化に乗り遅れてはいけない」→「そのためには英語4技能」→「共通テストに使えば生徒も高校も真剣に取り組むだろう」という発想が疑問です。

 私の意見は、現状のように共通テストは2技能、4技能を試したい大学は独自に行えばよい、全受験生に4技能をやらせたいなら大学入試センターがシステムを構築して共通テストで行う、です。

 また「グローバル化」に対応する社会人を育成したいなら、高校は基礎学力、大学は専門的な研究+実践力、企業が実社会直結の実践力と分担すべきです。

    高大接続はその隙間の「スムーズな橋渡し」であって、「自分のところで教育するのがコストがかかるから完成品が欲しい」ために利用するのは虫がよすぎます。

 

    当面は推移を見守りたいです。