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ぶんぶんの進路歳時記

学習方法、進路選択、世界史の話題について綴ります

世界史の入試問題で試されることを考える(京都大学の出題・傾向・対策前編)

世界史

 前回は東京大学一橋大学の過去の出題をまとめましたが、今回は京都大学の論述問題について、典型的な問題を解説しながら、京大の世界史ではどのような力が必要か、それをどう養成するかについて考えます。

 

1 過去の出題(設問Ⅰ 設問Ⅲ)

駿台難関大学研究会の資料を参考にしています。

年度

課題

地域

時代

タイプ

1995

 

明朝がモンゴルに対して行った軍事行動・防衛政策、時代の変遷に即して

中国

前近代

変遷

1996

 

6~9世紀の東西交流(個人・民族、文物、宗教 具体的な事例をあげて)

中国

前近代

変遷

1997

 

五・四運動期に起こった文化運動 (清代に流行した学術と1989年の天安門事件とを視野におさめて)

中国

20世紀

説明

1998

 

紀元前後から20世紀初めまでの官吏登用制度の変遷について

中国

ぶち抜き

変遷

1999

 

19世紀半ばから第一次世界大戦後のトルコの近代化 政体の変化を中心に

西アジア

20世紀

変遷

2000

 

2世紀末以降100年、群雄割拠から統一の歴史(政治・社会・文化について)

中国

前近代

変遷

2001

 

9世紀以降のイスラーム文化の発展の過程、内容と特徴、担い手、伝播・影響

西アジア

前近代

説明

2002

 

唐と関わりをもった7~9世紀のモンゴル高原チベット雲南地方の政権の興亡

中国

前近代

比較

2003

 

宋・明・清の皇帝独裁制強化と政治制度の改変について

中国

前近代

変遷

2004

 

非アラブ軍事国家であるセルジューク朝モンゴル帝国オスマン朝イスラームに対する姿勢や対応のあり方

西アジア

前近代

比較

2005

 

辛亥革命から日中戦争までの日本と中国の関係

中国

20世紀

変遷

2006

 

1910~50年代、旧オスマン領中東地域の英仏による植民地化と諸国独立・勢力離脱の経緯

西アジア

20世紀

変遷

2007

 

前2~16世紀の中国王朝がとった対北方民族の懐柔策・外交政策

中国

前近代

変遷

2008

 

宋以降の士大夫層の新しさを前代指導層と比較、土地制・学術にも言及して

中国

前近代

比較

2009

 

インドの民族運動でのヒンドゥーイスラム教徒の関係・立場と英の政策

南アジア

20世紀

変遷

2010

 

結成から中華人民共和国成立までの中国共産党について 国民党との関係を含めて

中国

20世紀

変遷

2011

 

4~12世紀にかけての江南開発の過程

中国

前近代

変遷

2012

 

魏晋南北朝時代仏教道教の発展と政治、経済、社会への影響 .

中国

前近代

説明

2013

 

ウンマの形成と正統カリフ時代ウンマの重大な変化

西アジア

前近代

変遷

2014

 

科挙制度の変遷 政治、社会、文化的側面から

中国

ぶち抜き

変遷

2015

 

19~20世紀初頭までの中国と列強の4度の戦争と利権の承認

中国

近代

変遷

2016

 

8~12世紀のトルコ人の活動と各地への影響

中央・西アジア 

前近代

変遷

1995

a

11~14世紀のヨーロッパの遠隔地商業 商業圏 都市 商品

ヨーロッパ

中世

比較

1995

b

イギリス連邦の両大戦間の時期における成立経過と経済的機能 第二次大戦後の連邦の構成に生じた変化

ヨーロッパ

20世紀

変遷

1996

a

1世紀後半~4世紀末ローマ帝国におけるキリスト教の発展

ギリシア・ローマ

古代

変遷

1996

b

16~18世紀イギリスとフランスにおける重商主義政策

ヨーロッパ

近代

比較

1997

a

シュメール都市、ギリシアのポリス、中世都市の特色

ぶち抜き

古代・中世

比較

1997

b

フランス第四共和政第五共和政の政治形態や植民地政策の相違点

ヨーロッパ

戦後

比較

1998

 

イタリアとドイツでファシズムが成立した理由 19世紀後半の国家統一以来の歴史を視野に入れて

ヨーロッパ

20世紀

比較

1999

 

アルザス・ロレーヌ地方の歴史19世紀半ばから今日までの独仏関係を中心に

ヨーロッパ

近代

説明

2000

 

ローマ元首政期を「地中海世界」とよぴうる理由 ローマ人のイタリア外での活動や市民団の変化を視野に

ギリシア・ローマ

古代

説明

2001

 

16~19世紀前半の近代奴隷制の特徴と展開過程 関わった国を明示

ヨーロッパ

近代

説明

2002

 

17世紀のオランダ、イギリスの両国の関係 対外発展を背景に

ヨーロッパ

近代

比較

2003

 

第一次大戦前後のインドとエジプトに対するイギリスの政策、第二次世界大戦後を踏まえて

ヨーロッパ

20世紀

変遷

2004

 

4世紀のローマ帝国がヨーロッパ中世世界形成に重要な意義を有した事象。特に政治と宗教

ギリシア・ローマ

古代

説明

2005

 

七年戦争からナポレオン帝国の崩壊にいたる時期のイギリスとフランスの関係の変化

ヨーロッパ

近代

変遷

2006

 

4~8世紀、地中海世界の統一・分裂を中心とした地中海域での政治的変化について

グローバル

中世

変遷

2007

 

1960年代に世界各地でおきた多極化の諸相

グローバル

戦後

比較

2008

 

前6世紀末から1世紀間におけるアテネ民主政の歴史的展開

ギリシア・ローマ

古代

変遷

2009

 

新大陸発見が引き起こした新・旧両大陸での直接的変化

グローバル

近代

説明

2010

 

古代ギリシア・ローマと中世の軍事制度の特徴と変化(政治・社会的背景・影響も)

ギリシア・ローマ

古代・中世

比較

2011

 

1920年代のアメリカが形成した政治的・経済的国際秩序について ヨーロッパと中国

グローバル

20世紀

変遷

2012

 

南北アメリカ独立運動と独立後の支配体制の特徴

アメリカ

近代

比較

2013

 

19世紀のロシアとフランスの関係

ヨーロッパ

近代

変遷

2014

 

戦後のドイツ史 冷戦の動きと絡めて

ヨーロッパ

戦後

変遷

2015

 

前3~前1世紀のローマ国家の軍制と政治体制の変化

ギリシア・ローマ

古代

変遷

2016

 

啓蒙主義思想がイギリスとプロイセンに与えた影響の比較

ヨーロッパ

近代

比較

 

地域

中国

15

ギリシア・ローマ

6

西アジア

5

ヨーロッパ

13

中央・西アジア 

1

アメリカ

1

南アジア

1

グローバル

4

 

小計

22

ぶち抜き

1

     

 

小計

25

 

時代

前近代

13

古代

5

近代

1

古代・中世

2

20世紀

6

中世

2

ぶち抜き

2

近代

9

 

小計

22

20世紀

4

     

戦後

3

     

 

小計

25

 

 タイプ

説明

2

説明

5

比較

4

比較

10

変遷

16

変遷

10

 

凡例 

*中国史は清の最盛期までを「前近代」、アヘン戦争からを「19世紀」、辛亥革命日中戦争を「20世紀」、中華人民共和国を「戦後」と分類

*ヨーロッパ史は「ギリシア・ローマ」、「中世」、大航海時代から国民国家形成までを「近代」、帝国主義から第二次世界大戦までを「20世紀」、それ以後を「戦後」と分類。

*説明…ある事象の特徴や事件の影響を説明するもの。

 比較…異なる王朝、国家の特徴や出来事を比較して説明するもの。

 変遷…ある王朝、国家の何らかの変化を時系列に説明するもの。

 

全体的な傾向

 京都大学は設問Ⅰ、Ⅱがアジア、ⅢとⅣがヨーロッパというくくりです。2016年の場合、Iでイスラーム前近代ならIIIは近代ヨーロッパでIIは中国、というように「バーター」になっていて、全問ですべての範囲、時代を網羅的に問う方針です。

 論述の出題傾向は中国史は前近代>近現代、ヨーロッパ史は古代中世<近現代(作問しやすいのは確か)ですが、何が来てもいいように準備しましょう。

 

追記 2/23

 他の対策サイトにも書かれていますが、京都大学の論述は全く同じ問題が2回出ることはありません(1998年と2014年のⅠ、2010年と2015年のⅢのように類題はある)。「京大受験生には一度見た拳は通用しない」からでしょう(笑)。

 ただ「こういう力を試したい」は共通しています。

 京都大学の世界史では単純に「○○について説明しなさい」という「知識をはき出す」問題はなく、必ず2点以上の比較やテーマに基づいた時系列の変化を説明するよう求められます。

 さらに「政治、文化、社会」といった複数の観点から比較することが求められます。

 ですから教員が生徒にすることは「出るところを予想すること」ではなく、京都大学が試したい力を養成して、未知の問題に対して既知の知識や理解を総動員して文章を紡ぐ力をつけることです。

   

 

詳しい出題のパターン

 京都大学の論述は、ただ過去問を解いて解答と睨めっこしても、本番で書けるようにはなりません。数学と同じで「解法の手順」を理解する必要があります。

    ここからは過去の論述問題から京都大学の世界史は生徒の何を試そうとしているのかについて考えます。典型的な問題を解いていきます。

 

1 比較をする

 

2010年のⅢ

課題 古代ギリシア・ローマと西洋中世の軍事制度の特徴と変化

条件 政治、社会的な背景や影響を含めて

メモ

古代ギリシア・ローマ        中世ヨーロッパ

特徴 社会:貴族→平民の重装歩兵  荘園 封建的主従関係

   政治:平民の政治参加     分権的な体制

変化 社会:平民の没落       貨幣経済 農民の地位向上

   政治:有力者の台頭      国王による集権化

 

解答例

古代ギリシア・ローマでは従来は貴族の騎兵が軍の中心であったが、自作農である平民が富裕化すると自ら武器を買い重装歩兵となって軍の主力となった。彼らは従軍の引き替えに政治参加を要求したので古代民主政が生まれた。しかし長年の従軍や貧富の差の拡大で平民が没落し、傭兵や有力者が平民を私兵化する制度に変化した。西欧中世では王権が弱体化し外民族が侵入すると、騎士が有力者から自らの荘園の保護を受ける代わりに軍役を負担する封建的主従関係が形成された。この結果荘園制が発達したが、貨幣経済が発展し農民の地位が向上すると荘園制は解体し、また火砲が実用化されると騎士は没落し、傭兵を主体とする国王の常備軍に変化した。(298字)

(下線部はたぶん加点ポイント)

 

ポイント

 例題は古代ギリシア・ローマとヨーロッパ中世の地域の比較(ヨコ比較)と、それぞれの重装歩兵→傭兵 騎士→国王の常備軍という時系列の比較(タテ比較)をすることが求められています。単純なAとBの比較ではない点が京大の特徴です。

 「政治、社会、文化」など、さらに複数の点から比較する典型が2014年のⅠの「科挙の変遷」です。科挙の内容だけでなく、科挙を通じてそれぞれの時代の政治や社会の有り様を比較させます。

 

対策

 授業中から「これとこれは似ているが違う」というように、共通点や相違点、関連性について意識します。気がついたら教科書やノートに違いを書き込みましょう。

 この自分なりに歴史を「似ている・違う」で解釈する力が京都大学の世界史を攻略するための重大な武器のひとつです。

 中国史については王朝間の制度や社会のあり方を比較しながら復習しましょう。2008年の問題は有名な「唐宋変化」で、唐=貴族社会→宋=地主の官僚化という比較を軸にそれぞれの社会のあり方を違いを理解します。

 ヨーロッパ史なら各国の封建制主権国家国民国家帝国主義のあり方を比較をしながら記憶します。

 西・南・東南アジア史は、イスラームやヨーロッパの進出に対する受容と抵抗の違いを王朝、地域ごとに比較します。

 

本番では

 京都大学の世界史は90分の中で一問一答60点、論述2題40点を解きます。論述1題にかけられる時間は15分~最大20分です。

 リード文の中に比較するべきポイントが示されています。例題なら「特徴」「変化」「政治」「社会」「背景」「影響」です。ヒントに沿ってざっとした縦横表に書き出してからまとめましょう。

    また、背景と影響と聞かれたら間接的な要因やその後の変化、契機と結果と聞かれたら直接の原因や結末を書きます。高校生がミスしやすい点です。

    文章にする時は、解答例のように地域ごとに背景、特徴、変化、影響の順で説明する方が書きやすいです。

 

 とはいえ事項を縦横表に書き出したとしても、何かの方針でつながないと文章になりません。そのためには抽象的な理念を理解しておく必要があります。後編でその点の攻略法について考えます(続く)。