もうすぐ新年度、今年は4月1日と4月8日がピッタリ月曜日、週初めから仕事がバッチリできちゃいます。┐(´~`)┌
仕事のすき間を縫って、名古屋市博物館の特別展「挑む浮世絵 国芳から芳年へ」に行ってきました。
今回は展示作品すべて撮影OK、ブログ掲載も個人の範囲なら可なので、お言葉に甘えて画像ありでレポートします。
はじめに 世界史のブログなので歴史の話
歌川国芳(うたがわくによし、1798(寛政9)~1861( 文久元))は、江戸時代末期を代表する浮世絵師の一人です。
国芳が活躍した19世紀半ば、国内では商品経済が拡大する一方、近海には外国船がたびたび出没します。1840年にはイギリスと清朝の間でアヘン戦争が発生、約10年後には黒船が来航して幕府は外圧に直面します。
文化面では出版活動が盛んになり、文芸、俳句、浮世絵など庶民文化が栄えますが、天保の改革では質素倹約が奨励され、風俗取り締まりで芝居小屋や出版物に規制がかけられます。
1 ヒーローもの
最初は歌川国芳の出世作である「武者絵」、歴史上や物語に登場するヒーローの勇ましい姿を描きます。
南総里見八犬伝の名シーン。三枚の版画をつないでスペクタクルな雰囲気です。それぞれの人物の動きがしっかり描き込まれていて臨場感にあふれています。
2 怪奇・猟奇もの
いつの時代も超事象現象や猟奇的事件は衆目の関心を引くものです。
フライヤーになっている「相馬の古内裏」(博物館蔵)。骸骨は『解体新書』を参考に描いたそうです。
弟子の落合芳幾と月岡芳年が手がけた「英名二十八衆句」が今回のハイライトです。
二十八の流血・殺人シーンが解説とともに描かれ、犯行を暗示する俳句が詠まれます。
この作品で「見立て殺人」をやられたら、金田一耕助は犯行が完成するまで「あなたが犯人ですね」と言わないので、大惨事になります。
HPには「体調を整えた上でご覧いただくことをおすすめします」、入り口には「グロ注意」の但し書き、とガンガン煽ってきます。
実物は会場でご鑑賞ください。
3 人物
「美人画」です。ポートレートではなく、何か動作をしていて、それで女性の気持ちを表現しています。国芳のものは健康的、弟子の芳年のものはちょっとエッチです。
「スマホをいじる美女」ではなくてなすびの皮をむいています。
船の中で手が汚れるようなことをしたんでしょうかね。♪…(*ノ∀ノ)
4 時事
戯画(滑稽な絵)は幕府批判を含むこともあります。幕府は「判じ物」(隠されたメッセージを探して楽しむ)を禁止しています。医者のトンデモ診療を描いたこの版画で、国芳は幕府から呼び出しを食らっています。
なおヒーロー画のところに忠臣蔵と川中島の戦いがありました。前者はもともと幕府批判を含んでいますし、後者は銃剣を持っている武者がいて、戦国をモチーフにして戊辰戦争を暗に批判しているとも取れます。
国芳が「一ツ家」伝説にゆかりのある浅草寺に奉納した絵馬です。いわゆる「やまんば」(真ん中のお姉さん)の話です。刃物が物騒です。
最後のブロックは、国芳の弟子たちの作品です。
国芳の浮世絵は明治初期の重要なメディアである「錦絵」につながります。血の手形は「英名二十八衆句」に見られる演出です。
まとめ
まず国芳の力量に感心します。
国芳の浮世絵は人物の造形や動きに対する高い観察力、正確なデッサン力、奇抜なアイデア、奇想天外なストーリー、パノラマ感あふれる斬新な構図、そして批判精神にあふれています。
またこうした出版文化を支えた庶民の識字率も見逃せません。ゴシップ、猟奇、エロ、政治批判は今も昔も大衆紙(現代はネット)の飯の種です。
江戸時代には日本国憲法は存在しませんので「表現の自由」は保障されていません。そういう中で「お上の目」を盗みながら、事件やエロを楽しみ、ちくりと幕府を批判する、そうした江戸末期の庶民のしたたかさを感じました。
現在、日本のサブカルチャーを政府は「日本の誇るべき文化」と宣伝に使う一方、ネットや出版は常に規制と隣り合わせです。
会期は4月7日までです。休日に行ったら結構混雑していました。お早めに。