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ぶんぶんの進路歳時記

学習方法、進路選択、世界史の話題について綴ります

「忍者」と「忍び」について考える

フィールドワーク

 私の生活エリアは「忍者の里」として有名で、行政も忍者を「町おこし」の中心に据えています。

    観光客への忍者衣装の貸し出し、忍者のラッピング電車、忍者アクション部隊や忍者のゆるキャラもいます。2月22日に「忍者市宣言」をしていました(にんにんにん?)。四月は週末に各種催しものが行われます(宣伝)。

 

こんな感じ(著者撮影) この車両はすでに廃車になりました。

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 しかし忍者がマンガのヒーローや観光資源になると、歴史上の忍者と乖離してしまい、イメージの忍者の方が本物のように思えてしまいます。

 

*補足:忍者といえば黒装束ですが、真っ昼間にその格好でうろうろしていたら目立ってしょうがないですし、貸し出し衣装にはピンクもあるし犬用もあります!

 

 先日三重大学人文学部山田雄司先生の「忍者の世界」という講演に参加しました。「ブログにあげてもいいですか」と伺ったところ快諾をいただきましたので、その様子を記します。

 

 

講演の内容

 

 忍者に関する本はたくさんありますが、根拠がないものが多いです。大学の研究は原典を示す必要があります。私は古文書を元に忍者の実像を調査しています。

 

 「忍者もの」と呼ばれるジャンルは江戸時代からあります。戦後だと司馬遼太郎の『梟の城』(1958年)、最近では『NARUTO』(1999年)が有名です。

 「忍者もの」はその時代を反映しています。『梟の城』では忍者は社会から阻害されている人として描かれます。

    アメリカで忍者=ninjaが広まったきっかけは『燃えよNINJA』 (“ Enter the Ninja” 1981年 主演はケイン・コスギの父ショー・コスギ)のヒットですが、元ネタはブルース・リーの『燃えよドラゴン』(“Enter the Dragon” 1973年)で、忍者はアクションヒーローとして描かれます。

 

 しかし古文書を調べていくと、忍術は現在の格闘的なイメージとは違って「生きるための術」だということがわかります。

 

 「忍者(にんじゃ)」という語が定着するのは昭和30年代頃で、江戸時代では「忍者(しのびのもの)」と呼ばれていました。それ以前は「忍び」「乱波(らっぱ)」「透波(すっぱ)」「草」「かまり」などと呼ばれていました。

 忍者の主な活動は時代によって職務は異なりますが、戦闘ではなく情報収集が中心で、「職業」として認知されていました。

 17世紀初頭に刊行された『日葡辞書』(宣教師用に日本語をポルトガル語で解説)では、“Xinobi”.(シノビ)は「戦争の際に人目を忍んで敵陣に潜入する間諜」と説明されています。

 14世紀の『太平記』には(巻第二十「八幡宮炎上の事」)「逸物の忍び」が石清水八幡宮に火をかけたと記録されています。

 

 「忍び」を職業とする人は伊賀から甲賀一帯に多く住んでいました。映画では対立しているように描かれる両者ですが、実際には通婚の形跡もあります。

 この地域が選ばれた理由は、京都から適度に離れていて周囲を山に囲まれているので秘密が守りやすい、領主の力が弱く、国人・土豪の力が強い、が考えられます。

 現在でもこの地域には多くの砦や石垣や壕を持つ館の跡が残っています。「伊賀惣国一揆」「甲賀郡中惣」といった自治組織を形成し、掟をつくって連帯していました。

 

 15世紀には第9代将軍足利義尚が近江六角高頼を責めた際、甲賀衆はゲリラ戦で抵抗し、16世紀後半の天正伊賀の乱では織田軍を悩ませました。また本能寺の変後に堺から地元に戻る徳川家康を伊賀者・甲賀者が護衛したことは有名です。

 これがきっかけで伊賀者(衆)・甲賀者(衆)が知られるようになり、江戸城の警備も担いました。半蔵門服部半蔵(正成)に由来します。また諸大名も伊賀者や甲賀者を忍びとして重用したので両地域は「忍び」の供給地となりました。

 

 忍びに必要な資質が『軍法侍用集』(1618年)に記録されています。それによると、「第一、智ある人。第二、覚のよき人、第三、口のよき人」とあります。つまり城内に潜入してその様子を暗記したり、旅人や僧侶に変装して町の人々から情報を聞き出すなど、今風に言うと記憶力やコミュニケーション能力が必要とされました。

 『万川集海』(1676年)には、「忍び」は「音モナク嗅モナク智名モナク勇名モナシ、其功天地造化ノ如シ」と、名前も残さず大きなことをする人と書かれています。

 また「正心」といって、主君のために忠節を尽くし、自分の利益のために術を使ってはいけない、というのが、忍者の心得です。「忍」という字は「刃」の下に「心」を置きますが、どのような状況でも堪え忍ぶ心持ちが重要ということです。

 

 忍者の道具も敵の城に潜入するためのものが大半です。有名な「水蜘蛛」も足に付けたのではなく、浮き輪のようにして使ったと考えられます。

 「忍び」の術も同様で、記録によると手足の関節を自由自在に外して狭いところを楽々通過する術があったそうです。

 幕末には「忍び」が現在の津市へ赴き「観海流」という古泳法を習ったという記録があります。「黒船」に潜入するための訓練だったと思われます。

 

 職業である「忍び」はこうして様々な忍術を身につけて「忍び」と認められました。「忍び」の免許状や主君に使える際の「誓約書」が現存しています。

 

 忍術は知識の集合体で、宗教・兵法・心理学・生物学・医学・薬学・武術など「総合アート」です。また忍者は日本人のあり方をよくあらわす存在でもあります。堪え忍ぶことや、無名の技術者が作る高い技術のねじなどは、まさに「音モナク嗅モナク智名モナク勇名モナシ、其功天地造化ノ如シ」です。

 


感想

 

 私の身体の大半は漫画とアニメと特撮もので構成されているので(関節を外す術は『レインボーマン』の「蛇変化の術」!)、過去の作品を振り返ると、私たちは時代の矛盾や「こうありたい」というイメージを忍者に投影してきたといえます。

 

 少年漫画の「忍者もの」の草分けは、貸本漫画の白土三平忍者武芸帳』(1959年)、少年サンデーの横山光輝伊賀の影丸』(1961年)です。

 

 前者は司馬遼太郎と同じくアウトローの世界を描きます。主人公はいわれのない差別を受け社会から追われます。さらに『カムイ伝』(1964年)は江戸時代を舞台に社会の矛盾や差別を正面から描き、反戦運動学生運動を背景に大きな支持を得ました。

 一方後者は「チャンバラもの」や「戦記物」(特にゼロ戦もの)と同じく(忍者の子孫がゼロ戦を操るという漫画もあります!)必殺技を繰り出して敵と戦いを繰り広げます。

 

 夏目房之介さんが『マンガと戦争』(1997年)ですでに指摘していますが、戦後まだアメリカの物量の前に敗北した経験が生々しい中、不利な状況下で少年主人公が必殺技で敵を倒すモチーフが少年漫画雑誌で繰り返し描かれます。

 「戦記物」はどうしても日本の敗北で終わりますが、「忍者もの」は歴史上の人物を借りて多少リアリティーを確保しながら無限に話を作ることができます。忍者ものは後の少年漫画雑誌のメインコンテンツとなるスポーツもの、SFアクションヒーローものの原点といえます。

 

 小熊英二さんは『民主と愛国』(2002年)で戦後思想を「新しいナショナリズムの構築」という視点でとらえていますが、少年漫画に描かれる忍者も「権力からの自由」や「物量の不利を技術で補う」という戦後日本の新しいナショナリズムの「アイコン」かもしれません。

 山田先生が掘り起こした「忍び」の「音モナク嗅モナク智名モナク勇名モナシ、其功天地造化ノ如シ」も、NHKの『プロジェクトX』と同じく「技術立国」という戦後日本のアイデンティティに通じるものがあります。

 

*補足 おそらく『忍者ハットリくん』は核家族、『忍たま乱太郎』はコミュニティーとしての学校、『あずみ』は戦う女性の表象でしょう。忍者は常にその時代のあり方を示す「アイコン」として生き続けています。ちゃんと研究したら面白そうです。

 

*補足 話は忍者から外れますが、戦記物から派生した『サブマリン707』(1963年)や『宇宙戦艦ヤマト』(1974年)は「外から借りた技術をアレンジし、使いこなして国益ではなく人類の平和のために戦う」という出口を見つけました。

 また『沈黙の艦隊』(1988年)では米軍と共同開発した原子力潜水艦が独立国家「やまと」と名乗り、卓越した操艦で米軍を出し抜き、常設国連軍を提案します。まさに戦後ナショナリズムの総決算のような作品です。


 こうして「忍者」は「忍び」以上のポピュラーな存在になりました。

    そこでひとつ気になったことがあります。

 

 最近「町おこし」で萌えキャラを使用する自治体が増えましたが、私の生活圏のくノ一萌えキャラには何の異論もありませんでしたが(個人的には赤の忍者服はどうかと)、同じ人が監修した海女の萌えキャラには地元から反対が起こりました(画像は検索してください)。

 海女は現地の人にとってリアルな存在であり、萌えキャラが実態に即していないからです。一方私の町には本物の忍者はいないので、忍者は完全に表象と化しています。

 

*補足 ちなみに私は歴史に名を残す「忍び」の直系子孫を担任したことがあります。実家には江戸時代の武具などがありますが、もちろん職業は忍者ではありません(笑)。

 

 忍者の故郷に住む私たちは「表象としての忍者」を観光資源としています(現代文の評論風に言うと「消費」している)。古文書に基づく「忍び」の実像より、激しいアクションやカラフルな忍者コスチュームの方が好まれて当然と思います。

 私はそれに目くじらを立てる気は毛頭ありません。表象だからこそ忍者は時代を超えた「アイコン」たり得ますから、観光客の方には存分に忍者を楽しんでもらえればと思います(忍者電車もどんどん乗って欲しいです。赤字なので(泣))。

 

 ただ地元民は史実としての「忍び」と、「忍者が日本や世界の文化の中でどう語られてきたのか」をちゃんと分けて外部の人に説明できるようにはしたいです。

 

 そういう私も今回講演を聴いて初めて知ったことも多いので、三重大学でちゃんと勉強したいと思いました。

    山田先生、ありがとうございました。

 

高校二年生4月 やりたいことを見つけるには

進路指導 高校二年生

 新学期になりました。二年生は「中だるみ」ではなく、この1年間のうちに学習習慣、得意科目、進路先、何より「勉強していて楽しい」気持ちに目処をつけたいです。

 

過去ログ

bunbunshinrosaijki.hatenablog.com

 

 先日リクルートマーケティングパートナーズの佐野正明さんから「これからの進学(将来)に向かって」と題してお話をいただきました。

 私がこのブログで好き勝手言っている(笑)ことの上を行く内容でしたので、許可を頂いてその要旨を引用しつつ、新二年生の心構えについて考えます。

 

* ◎と下線は私が大事だと思った部分です。

 

 

内容

 

1 進路を決める際の基本的なスタンス

 

  •  ◎「やりたいこと」は自分の知っていることの中からしか見つからない。知っていることを増やせば「やりたいこと」に出会う確率が上がる。
  •  人間は「見たいと思ったことしか見ない」性質がある。だから何かあったときにちょっと立ち止まって考える習慣を持つ。
  •  ◎一見自分に関係なさそうなことでも、「もういいや」と思わずちょっとかじってみる
  •  たくさんのことを知っているよりもひとつのことを深く考えた方がいい。例えば「福祉の資格が欲しいが旅行業界にも興味がある」と悩んでいる人は、福祉学科に進んで高齢者が安全・快適にできる旅行を考えることもできる。

 

2 進路の絞り方

 

  •  まず「自分が何に興味があるか」考える。
  • 職業はおおむね「つくる」(製造)「あらわす」(表現)「おしえる」(教育)「つたえる」(伝達)「たくらむ」(企画)「うる」(販売)のどれか。
  •  二年生の時に「これが面白いな」というものに出会う。
  • 興味がわいたものを突き詰めていくとなりたい職業や学びたい学問に出会える。
  •  したいことが思い浮かばない場合は「得意なこと」「活かせること」から考える。英語が好きなら「文学」「語学」「背景にある文化」など、英語のどこに興味があるか深めていく。

 

3 大学の選び方

 

  •  「したいこと」が見えてきたら、それぞれの大学の特徴を調べてマッチングさせる。
  •  大学はイメージではなくデータで比較する。「グローバル○○学科」など似た名前の大学の場合「英語学習がメイン」と「社会の考察がメイン」など学習内容に違いがあり、取れる資格が異なることもある。
  •  大学の学問は常にアップデートしている。受験生は知っている情報だけで判断せず、常にアンテナを張って自分の情報もアップデートする。
  •  合格するのが難しい大学ほど設備、研究資金、人的資源が豊富。知らない世界に出会えて自分を鍛えられる。その結果希望する職種に就く可能性が高くなる。

 

4 普段からの心がけ

 

  •  「行きたい気持ち」と「行くための力」が揃って進路は拓ける。
  •  ◎社会人に必要な「コミュニケーション能力」とは「どうすれば相手に伝わるかを工夫する」スキルと、「伝えたいことをキャッチする」スキルのこと。
  •  ◎自分で自分の可能性に蓋をしない。「もう少し練習すれば」「ここを先生に聞いていれば」と、常にちょっと立ち止まってもう少し考える習慣をつける。
  •  目標が決まっている人は「山登り」学習。目標を決めて、そのためのスモールステップを作り、ひとつひとつこなしていく。
  •  ◎目標が決まっていない人は「筏下り」学習。とにかく目の前のことをクリアしていきながら自分ができることや興味のあることに気付く。

 

 

以下は私の感想です。

 

 

1 「行きたい気持ち」を起こさせる

 

 高校の先生は「まずなりたいことを決めて、必要な仕事を見つけて、必要な大学を見つけて、必要な勉強をしましょう」と言います。

 しかし多くの生徒は「したいことが見つからない、目標が立てられないから勉強する気が湧かない」と言います。逆に「私はペットが好きだから獣医(またはトリマー)」と成績に不釣り合いな志望をして担任を困らせることもあります。

 

 佐野さんがおっしゃるように、「自分が持っている情報は非常に狭い」ことを自覚することです。

 私の住む地方都市だと大卒で就く身近な職業は教育や医療など資格系、他には銀行員など出会える「社会人」の範囲が狭いです。また高校生は勉強、部活、塾、SNSで生活がパンパン、落ち着いて物事を考える余裕がありません。

 

 まずは大学の学問や職業に好奇心を抱くことです。そのための方法は二つです。

 

 ひとつは「現物を見る」です。

 学問については、模擬授業をしっかりやってくれる大学のオープンキャンパスに参加することです。

 学問は多様です。文学部は文学ばかりやっている訳でなく研究内容は多岐にわたります。また福祉と旅行の例のように、最近は境界線に新しい学問が生まれる傾向があります。

 オープンキャンパスに行くとそうした学問の奥深さや、それが社会の何とつながっているのかを知ることができます。

 さらに大学生の先輩の相談窓口があるので、大学や学生生活の裏話(笑)を聞き出すこともできます。

 

*発展 オープンキャンパスに行く前に予習しましょう。

 

お薦め(五十音順) 

スタディサプリ

shingakunet.com

 

夢ナビ

yumenavi.info

 


 職業については、プロフェッショナルの話を聞いたり、仕事の現場を見ることです。

 ライフネット生命出口治明さんの講演に参加しましたが、どういう動機で保険業をしているのか、学生時代に何をしなければいけないのかについて、数字・ファクト・ロジックを使って明快に話されていました。

 企業訪問のプログラムがある高校は、大学のどういう学問が現場とつながっているのか、仕事や学問がどのような形で社会に貢献しているのかを実感しましょう。

 

*発展    最近はコンピテンシー(主体性や協働性)を重視するキャリア教育(大学や商店街とコラボするとか)が盛んですが、目的をはっきりさせないと「行事のための行事」に陥り、生徒(教員)に負担感だけが残ってしまうこともあるので注意です。

 

 ただこうしたイベントは一過性のものになりがちです。

 私が重視するのは「高校の教員が自分の専門について熱く語る」です。

 高校生が学問に触れる一番身近な機会は教員です。授業の中で「歴史学はこんなことも研究対象なんだ」「世の中の色々なことは物理でできている」、もっとダイレクトに「○○大学出身の先生は言うことが違う」と生徒が思えば、「大学について掘り下げて調べよう」という気になります。

 いや、そういう気にさせなければいけません。

 

 そのタイミングで担任が「○○大学だとこんなことができる」と水を向けます。教員は自分の専門は当然として、大学の学問に興味を持って守備範囲を広げる必要があります。

 ただし教員も授業以外の業務が多くて生徒と同じく余裕がありません。授業は点数を取るためのドリル、進路指導は受験産業の偏差値(「○○大学は△△大学が無理な生徒が行くところ」と指導されても興味が湧きません。実話)や、「国立か私立か」という表面的な情報だけでは生徒の興味をひくのは難しいです。

 


2 勉強しながら行き先を見つけ、力をつける

 

 進学校に入学した以上は「上級学校への進学」がゴールです。「なりたいことが決まらないから勉強する気が湧かない」という前に勉強するべきです。佐野さんの「筏下り」の例えは秀逸です。川に入った以上は下るしかありません。

 「家業を継ぐために医学部」のように目標がはっきりしている人よりも、そうでない人の方が多数派です。「勉強する中でやりたいことを見つける」方が現実的です。

 

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 そう考えると高校のプログラムは重要です。なぜなら「できること」が増えた方が興味を持つ学問に出会いやすくなるからです。

 予習・授業・復習のサイクル、小テストや定期考査での確認、実力テストで未知の問題に対応する力をつける、一年生で国数英にめどをつけ、二年生で理科や社会で得意かつ将来につながる科目を見つける、というように短期・長期のスパンで生徒を鍛える戦略が必要です。

 

 「自分の教科や部活動だけ強ければいい、よそもビシバシやればいいではないか」という考えでは生徒が消耗するだけです。宿題の量を他教科と調整したり、部活動の休養日を設定したりと、「組織全体で生徒を無理なく鍛える」ことを考えなければいけません。

 

*発展 元プロ野球監督の野村克也さんはことあるごとに「野球人である前に社会人であれ」、つまり野球は勝つことが目標であり、そのためには自分が組織の中でどの役割を担えばいいか考えよ、と言っています。「弱いチームの選手は勝利よりも個人成績ばかり考える」は耳の痛い話です。

 

 三年生になると受験が本格化します。生徒も教員も大学そのものと、入試問題の両方に興味を持って取り組まないと1年間持ちません。行きたくもない大学に合格するために嫌々勉強している生徒に教員が「最後まであきらめるな」と言っても逆効果です。

 二年生が終わるまでに勉強の中で新たな発見をしたいです。

 

 教員も同じです。私が今何とか(笑)進学校でやれているのは、毎年大学の入試問題を解き、生徒とバトルした結果、ものの見方や考え方が更新されてきたからだと思っています。

 

 

まとめ

 

 生徒に余裕がないと目の前のことを疎かにし、その結果進路が見えてきません。だから将来がイメージしやすい資格系に走りがちです。

    また教員も余裕がないと小手先ごとに走ってしまいます。

 将来を考えるにはまず興味を持つ、そして掘り下げることです。それができる環境を整備することが教員の課題です。

 月並みですが、まずは授業を大事にすることにつきると改めて思いました。

 管理職さんには教員数の増加を切にお願いします(笑)。

 

 ご協力いただいたリクルートマーケティングパートナーズ様、ありがとうございました。

 

エイプリルフール ポワソン・ダブリル

フィールドワーク

 朝から娘がキッチンで魚の形のパイを焼いていました。

 

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*フランスなので有名な絵本のあの方風ぬいぐるみを添えました。顔出しNG。 

 

 フランスではエイプリルフールを Poisson d’avril(4月の魚)といいます。魚の形をしたお菓子を食べたり、子どもたちが紙に書いた魚の絵を人の背中にこっそり張り付けるいたずらをしたりします。

 「4月の魚」とはサバのことを指すと言われ、ちょうどこの頃にサバが簡単に釣れるためこう呼ばれるという説があります。

 

 エイプリルフールの起源には諸説ありますが、そのひとつが1564年にフランス王シャルル9世が1月1日を新年にしたことに反発した人々が、4月1日を「嘘の新年」とし、馬鹿騒ぎをはじめた、というものです。

 シャルル9世といえば王母がカトリーヌ・ド・メディシスユグノー戦争(1562年)の人です。

 ちなみにシャルル7世は15世紀、百年戦争中に即位しその後王権を強化した人、シャルル8世は15世紀末、イタリア戦争を開始した人、シャルル10世アルジェリア出兵と七月革命の人です。紛らわしいものは芋づるで復習しましょう。

 

大学進学にかかるお金について考える(受験料、手続き、新生活)

進路指導 高校三年生

 私の子どもは今年めでたく通学可能かつ自分が勉強したいことができる国公立大学に合格しました。

 

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*いらすとやさん、いつも助かります。


 景気が回復傾向と言われ、関東私大および文系の人気も回復傾向ですが、私の県全体は歳入減と歳出増(あのイベントが原因?)のようで、その恩恵に預かるのはまだ先、したがって我が家の財布はピンチです(笑)。

 私の高校でも三者面談で「通える国立じゃないと無理」と訴える保護者は相変わらず多いです。学費をなるべく安く抑えたいのは当然です。

 ところが通える国公立大学に合格しても、実はかなりの出費です。

 本日は大学受験と合格後にどれだけお金がかかるかについて、我が家の「通える国公立大学現役合格大作戦」(笑)を実例に考えます。

 

*「大学合格まで」だと高校の費用(授業料は国庫からの助成があるのでそれ以外のPTA会費や模試代金など)や塾などの費用もありますが、今回は省きます。

 

 

1 受験にかかる費用

 

受験料 入学金 追記4/6 郵送代も入れました

 

項目

料金

個数

合計

1

センター試験

 18,000

1

 18,000

2

私立一般

 35,000

2

 70,000

3

私立センター出願

 15,000

1

 15,000

4

国公立個別試験

  30,000

2

 60,000

5

願書郵送(簡易書留速達)

      710

4

   2,840

6

私立一次手続き

200,000

1

200,000

7

国公立入学金

380,000

1

380,000

 

小計

 

 

745,840

 

 私立は腕試しを兼ねて、家から最も近い関西私学四強のひとつの全学と個別を日帰りで受験し、センター出願はマークミスチェックに科目数の多い方式で出願しました。

 国公立大学の前期はガチガチのA判定でしたが、何か起こるかわからないので私立に一次手続きのお金を入れました。保険20万円は大きいです(泣)。浪人可能なら(大学一年分の資金は覚悟)払わなくてもいいです。

 

*発展 国公立大学の入学金は、公立大学だとその住民は安くなります。税金が大学に投入されているから当然です。逆に県外の生徒は割高になる傾向があります。

 

 

宿泊・交通費(交通費の料金は往復の概算) 

 

項目

料金

個数

合計

1

センター試験

  2,000

2

  4,000

2

私立一般

  2,000

2

  4,000

3

国公立一般

  3,000

2

  6,000

4

国公立宿泊

16,400

1

16,400

 

小計

 

 

30,400

 

 私立はすべて日帰りでしたが、国公立大学はいくら通学可能圏内でもさすがに前泊です。付き添いましたので交通費は倍、宿はツインの料金です。

 受験する可能性のある大学の所在地の宿を何軒か半年前に予約しましたが、それでもめぼしいところはすでに満室でした。出願した後に不要な宿をキャンセルし、前期合格の後に後期の宿もキャンセルしました。

 我が家は通学可能圏内の大学ばかり受験したので電車代も安くて済みましたが、併願校も前泊が必要なエリアの家庭なら、宿泊も連泊、交通費も新幹線や飛行機が加わると目眩を催すような出費になります。

 

*発展 国立至上主義高校の先生は大都市圏以外の国公立大学が大好きで熱心に勧めてくれますし、さらに「大阪や名古屋で受験できる」と親切に教えてくれますが、それでも宿泊費や交通費は相当額かかります。

 

 

2 入学式までにかかる費用

 

 

項目

料金

個数

合計

1

生協加入費

  30,000

1

  30,000

2

学部の校友会(4年間)

  20,000

1

  20,000

3

学部の新歓合宿

    9,000

1

    9,000

4

教科書代

  30,000

1

  30,000

4

スーツ等新入生グッズ

100,000

1

100,000

6

定期代(まず1ヶ月)

  16,000

1

  16,000

 

小計

 

 

205,000

 

 合格者説明会に行くと、大学、学部、生協その他から怒濤の勧誘の嵐です!

 

 まず生協ですが、大学生協本体には加入した方がいいです。学食および購買での割引が受けられます。また加入費は「出資金」なので卒業時に返してもらえます。

 生協で勧められるのが学生の総合共済です。病気やけがの保障、他人にけがを負わせた場合(通学中に自転車で衝突するとか)の賠償などがついてきます。

 次はパソコン、電子辞書、プリンターなど新入生グッズを「大学生向け」「生協価格ならお得」と勧められます。さらにパソコン講座や英語の資格試験対策講座、入学と卒業のアルバムなどもガンガン営業されます。

 新たに購入が必要な場合もありますが、今入っている保険や持っている情報家電で事足りることもあります。例えば高校生向けの電子辞書でも追加のカードで第二外国語に対応する機種もあります。

 また指定の語学の授業以外に会話力アップを目的とする授業もあります(卒業単位にはならない場合有り)。まずは授業を取って、それで物足りない人は「ダブルスクール」を考えればいいと思います。

 

 「ミールカード」も勧められました。これは「生協食堂年間利用定期券」です。前払い方式で1年間、1日の利用上限額まで生協食堂を自由に利用できます。手持ちのお金を気にせず、また自分が何を食べたかも記録される(保護者も見ることができる)のでバランス良く食べることができます。

 ただし約10万円しますし、1日の利用上限額は次の日に繰り越すことができないので、大学近くで下宿し、毎日のように学食を利用する学生にはいい話といえます。


 次に大学からは「同窓会費」と「教育後援会費」の案内がありました。前者は4年間で30,000円、後者は半期8,000円×2×4年で64,000円でした。

 教育後援会費は体育会やサークル活動への助成、資格取得、就活、留学への補助などに使われるそうです。高校のPTA会費と同じ目的です。

 またこれに加入すると「学研災」といって実験やフィールドワークの際の事故に対する補償もつきます(高校にも似た保険あり)。「理系学部や文学部は是非加入を」と言われました(すでに同様の保険に入っていれば良いそうです)。

 

追記 4/7

大学祭実行委員会から、新入生歓迎の学祭をするからと協賛金5000円をお願いされたそうです。別に新入生が頼んでしてもらっている訳ではないとも思いますが…。


 結局我が家は生協と学部の校友会(職場見学などの費用になる)に加入して、保険や情報家電はすでに加入しているものや家にあるものを流用することにしました。

 

 それでも費用がかさむのは衣装代です。高校のように毎日学生服(これも結構高額)とはいきません。

 特にスーツです。「格安スーツ」もありますが、入学式から就活その他多用途で長く使えるスーツ類は一式揃えました(時々私も借りることに(笑)。バーターで礼服はお下がり)。他にも通学用の服、鞄、靴など、それぞれは高額ではないにしろトータルでは結構な出費になります。

 

 

 このように「ケチケチ大作戦」を遂行した我が家でも、すでに約100万円使ってしまいました!(頑張ればもう少し節約できたかも)。さらに授業料(半期25万円)を払わなければなりません。

 担任に勧められるまま遠方の大学に合格していたらさらに下宿代、生活グッズ、仕送りと今頃どうなっていたことやら。

 さらに下の子もいるので奨学金、教育ローンも視野に入れないと。先行き不安です(トホホ)。

 

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まとめ

 

  • 大学進学は高価な「未来への投資」という「買い物」です。
  • しっかり勉強して希望の大学に行くのが最も費用対効果が高いです。
  • 大学受験の際に費用がかなりかかるので覚悟しましょう。
  • 合格が決まった後にもかなり出費がありますが、よく判断した上で必要なものは揃えましょう。
  • ご家庭の居住地域、収入に応じて学資保険、貯金、奨学金、教育ローンなど、早めから対策をしましょう。

 

外国籍生徒の交流会に参加する

フィールドワーク

 私の生活している地域は住民に対する外国籍の人の割合が県内1位、学校にもたくさん外国籍の児童・生徒が通っています。

 先日、外国籍の生徒たちの交流会があったので参加しました。

 

ペルー紹介の様子

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 この会は12年前に外国籍の高校生から「違う学校に行って会う機会が減った仲間と交流したい」という声が上がり、人権担当の先生の支援を得て立ち上がりました。

 外国籍の生徒が中心になって実行委員会を組織し、会を運営します。交流会には日本籍や外国籍の高校生・中学生が参加し、母国の紹介やゲームで楽しんだ後、分散会で日頃の悩みについて話し合います。

 2年前から先輩の講演が始まりました。この日は初期の参加者である柿内ディアナさんに来ていただきました。非常に考えさせられる話でしたので、本人の了解の上紹介します。

 

 

講演の内容

 

 ディアナさんは16年前、小学校6年生の時に来日しました。来日当時は全く日本語がわからない上に学校でスペイン語がわかるのは小2にひとりだけという状態でした。

 

 ディアナさんは日本とペルーの文化の違いに戸惑います。給食の和食が食べられない、お箸が使えない、ペルーでは小6の卒業時にパーティーや旅行があるのに日本にはないのでがっかりし、逆に卒業文集の意味がわからず適当なことを書いてしまいます。

 中学校で弁当にペルー料理を入れてもらったとき、その独特の臭いでからかわれます。話を聞いた保護者が中学校を訪れますが、それがきっかけで外国の料理をみんなで体験しようイベントが生まれ、現在でも続いているそうです。

 

 ディアナさんは勉強して日本語も上手になります。高校受験に挑みますが、テストとなると日本語のニュアンスや漢字が難しく、最終的には定時制に進学することになります。


 2年生の時に市役所の通訳の職を得ます。自分と同じように困っている人(特に日本語が分からないと年金、保険、税金が理解できず、日常生活に支障が出る)と関わる中で、もっとみんなの力になりたいと思うようになります。

 そこでディアナさんは大学進学を目指すのですが、彼女の置かれている状況ではかなりのハードルです。当時同じクラスで外国人はディアナさんひとり。分からないことはとにかく同級生や先生に聞きまくります。

 

 努力の甲斐あってディアナさんは合格し、大学で英語とスペイン語を学びます。卒業後は企業の通訳としてメキシコで働いた経験もあるそうです。現在は日本で仕事をしていますが、4月からはまた海外で働くそうです。

 

 

 この後会場との質問応答がありました。

 

 「日本語の勉強はどうしたのですか」という質問がありましたが、中学校の宿題が少ないので先生に「もっとください!」と直談判したそうです。家では他の人よりプラス2時間勉強し、母親からは「毎日漢字を5個覚える」というノルマがあったそうです。「間違ってもいいから使う」「本を読む」を心がけたそうです。

 

 ディアナさんは高校入試で第一志望は残念ながら不合格だったのですが、最初から「無理」とあきらめずにチャレンジしました。ディアナさんは「今を頑張れば後で楽になる」ということをこの時に学んだそうです。

  NPOで通訳のボランティアをしていたとき、救命救急講習の通訳を頼まれ、ディアナさんも一緒に講習を受けました。その後家族が急に倒れたとき、救急車がくるまで覚えたての心臓マッサージを続けて、家族は一命を取り留めたそうです。

  今、色々なことにチャレンジすることで可能性が広がる。マイナスの状態から始まってもいつかはプラスになります。「『できない』と他人から言われたことが『できた』に変わるとどれだけ快感か」とディアナさんは会場の笑いを誘っていました。

 

 

感想とまとめ

 

 入管法が改正されて日系人が労働者として来日するようになってすでに20年が経過しました。ディアナさんの頃とは違い、実行委員の高校生は日本生まれで日本語は堪能です。

 実行委員のひとりは祖父が中国人で「広島生まれのペルー人」と自己紹介していました。彼のように三つのアイデンティティをしっかり持っている人もいれば、この日参加した中学生の中には来日して日が浅く、日本語がほぼ分からない生徒もいました。保護者の日本語力を含め、ひとりひとり事情が違います。

 

 ディアナさんが前向きに生きてきたのは性格も多分にありますが(小学校の頃蹴ってきた男の子を蹴り返したそうです。後で話し合うと、男の子は「友だちになりたいのに言葉が通じないからとりあえず蹴ってみた」そうです)、彼女がしっかりヘルプを出し、周りがそれに答えたからでもあります。

 いくらチャレンジしたくても、言葉が通じない、周りが冷たいと問題を自分ひとりで抱え込んでしまいます。その結果コミュニティーの中で孤立し、育児支援生活保護など必要な保護が受けられない、それがまた「あそこの外国人さんは…」と新たな偏見の種になる可能性があります。

 

 外国籍の方に限らず、色々としんどいことを抱えている人すべてが「ヘルプ」を出しやすい環境(行政のシステムと住民の意識)を作ることは、私たちが「それは自分にも起こりうること」と思って行動できるかに懸かっています。

    分散会では日本語がわからない中学生に対し、実行委員は英語を使うなど彼がコミュニケーションしやすい方法を試行錯誤していました。ディアナさんも中学生の保護者の悩み相談に即席で応じていました。誰もがこうした配慮をできるようになれば、「チャレンジ精神」をみんなが発揮できる世の中になります。

 

    ですから私もまず職場で話しやすい雰囲気を作ります(笑)。

 

 会を運営した実行委員と人権サークルの皆さん、協力していただいたNPO法人伊賀の伝丸さん、どうもありがとうございました。

世界史の入試問題について考える(4 大阪大学2017)

世界史

 2017年の国立大学の世界史論述問題を解きながら、何に注意して授業に臨むか、どのような準備をするかについて考えます。

 

 最終回は大阪大学です。

 

*発展 3月末の駿台予備校大阪校の入試研究会で東京、京都、一橋、大阪の問題が取り上げられるので事前に解答例を作っています。予備校の解説を聞いて「今年は簡単だ」と評論家気分では受験生と相対する時に指導できません。

 関西の難関・中堅私立大学については解答例だけでなく「東南アジアの抵抗」なら「○○大学の△△年の大問□」と大問ごとに取り出せるようにしてあります。

 

追記 3/19

    駿台の研究会に行ったら参考になったので少し直しました。本番では推敲できないですね。すみません。

 

 

大阪大学 2017年

 


問1

課題 資料文が編纂された(1330年頃)当時のイタリアの政治状況について、地域差や様々な政治・宗教勢力に注意しながら 150字程度

 

メモ

北イタリア海岸 ヴェネツィアジェノヴァなど都市共和国、東方貿易で繁栄。

北イタリア内陸 フィレンツェは毛織物工業と金融業で海港都市を支える。メディチ家教皇を輩出。ミラノロンバルディア同盟の盟主として神聖ローマ皇帝と争う。

中部 教皇

南部 ナポリ王国アンジュー家シチリア王国アラゴン家が支配。カトリックビザンツイスラームの三勢力が混在する。

全般 神聖ローマ皇帝のイタリア政策に対して、教皇派、皇帝派に分かれて争う。

 

解答例 3/19  ちょっと直しました。

北部の海岸部ではヴェネツィアジェノヴァ、内陸部ではフィレンツェなどが都市共和国を形成し、特にミラノ神聖ローマ帝国から自立していた。中部には教皇領があり、南部ではアンジュー家ナポリ王国アラゴン家のシチリア王国があった。これらは神聖ローマ皇帝のイタリア政策に対して教皇派、皇帝派に分かれて争った。151字

 

ポイント

 名古屋大学に中世後期のドイツとイタリアを比較する類題あり。

 高校生だと「アンジュー家」「アラゴン家」は出てこない(関東難関私大レベル)が、それ以外は書ける問題。

 

 

問2

課題 引用史料で述べられているシステム(元の通貨システム)が当時の中国経済に与えた影響について、前後の時代やユーラシア西方地域との相違点にも注意して 250字程度

 

ヒントから芋づる 

史料の内容:商人の銀を取り上げて引き替えに紙幣を渡す。中国内でどこでも使える。
システム:銀と紙幣(交鈔)

前後の時代:銅銭。宋代の交子・会子。手形から発達した紙幣。

ユーラシア西方地域:現物経済が中心。十字軍以降貨幣経済が進展。金貨と銀貨

中国経済に与えた影響:

ユーラシア循環交易圏で銀が基本通貨に。

使わなくなった銅銭は日本などに輸出。

紙幣を乱発しすぎて物価が高騰し、元が滅亡する一因になる。

明は貿易を縮小する。銀の使用を一時禁止。

 

解答例  3/19  少し直しました。

ヨーロッパでは金銀が通貨として用いられていたが、中国では宋代より銅銭に加えて交子・会子など紙幣が使われ、元代には紙幣の交鈔と銀が主に使われた。モンゴルのユーラシア支配の時代には草原の道と海の道の循環ルートが形成され、銀を通貨とする東西貿易が繁栄した。余った銅銭は日本など海外に輸出されて貨幣経済の発達を促した。しかし元が交鈔を濫発したことで物価が騰貴するなど経済が混乱し、元の滅亡の一因となった。明は当初紙幣を発行し銀の使用を禁止するなど商業を抑制したが16世紀には銀が流入して決済の中心となった。251字

 

ポイント

 大阪大学の「グローバルヒストリー」研究とも関係が深い杉山正明先生が専門のモンゴルからの出題(2016年に新しい本が上程されている。出版記念?)。

 

*発展:『世界史の窓』は、交鈔は小額紙幣(銅銭の絵が描いてある)、高額紙幣の役目を果たしたのは「塩引」という塩(国家の専売)の引換券、と杉山先生の本を引用している(いつもお世話になります)。

 

 紙幣はすでに宋代で使われていたこと、当時のヨーロッパに紙幣がない(紙幣は巨大権力が存在する証)、金と銀の二本立てだったことが比較ポイント。

 「影響」=間接的変化は、東西交易の活発化と交鈔の乱発による経済の混乱を書きたい。

 明の紙幣「宝鈔」は『世界史用語集』では頻度1。明は宝鈔と銅銭(洪武通宝や永楽通宝)を発行し、金銀の使用を禁止していた(宝鈔も銀との交換禁止)が、民間では銀が流通して宝鈔の価値は下落した(『詳説世界史研究』参照)。

 高校生には「ドボン」だが、明が海禁と農村への統制を強めたことは有名なので、「元の重商主義の行き過ぎを反省?」と推理して言葉をひねり出したい。

    高校生は文章的に収まりが悪いが「16世紀に銀が流入した」と飛んだ方がいいかも。

 

bunbunshinrosaijki.hatenablog.com

 

 

 

 

課題 ロシア革命(十一月革命)とその結果成立したソ連によって、何が達成され、何が課題として残されたのか。300字程度

ヒント 生産手段を公有化した最初の社会主義革命

語句 民族自決 五カ年計画 冷戦 人工衛星

 

マトリックス

 

政治

経済

外交

十一月革命

ボリシェヴィキメンシェヴィキや社会革命党を打倒

土地に関する布告 農民に土地を分配

平和に関する布告 即時停戦 民族自決

ソ連成立

ボリシェヴィキ一党独裁

戦時共産主義→新経済政策

周辺地域の独立運動は失敗

1920年

スターリンの一国社会主義

第一次五カ年計画 重工業 農業の集団化

コミンテルン

世界恐慌

スターリンの個人崇拝 粛正

第二次五カ年計画 工業化すすむ

 

WW2

独ソ不可侵条約独ソ戦

独ソ戦で餓死者続出

東欧の解放

冷戦

社会主義陣営

核開発 ミサイル技術 人工衛星

対立→雪解け→対立→デタントアフガニスタン侵攻

冷戦終わり

政治の停滞→ペレストロイカ→複数政党制 大統領制

経済の停滞

新思考外交→東欧革命

ソ連解体

クーデター失敗 共産党解散

市場経済の混乱

バルト三国独立

チェチェン紛争

 

解答例 3/19  民族自決のところのニュアンスを変えました。

ボリシェヴィキは十一月革命後に地主の土地の没収と農民への分配を約束し、民族自決を原則とする共和国からなるソヴィエト連邦を結成した。1920年代からは2度の五カ年計画によって国営企業化と重工業化を達成する一方、農業の集団化を実行した。戦後は社会主義陣営を形成し、核開発と人工衛星に代表されるミサイル技術でアメリカと対峙し、冷戦体制の一翼を担った。計画経済は資本主義の行き過ぎの是正、民族自決は抵抗運動のモデルなどソ連社会主義は各地で資本主義の代替案となったが、実際には市民的権利の抑圧や計画経済の非効率、領内の少数民族の抑圧など矛盾が多く、前者は社会主義諸国の課題、後者は旧ソ連地域の民族問題として今なお存在し、核軍縮も未解決である。309字

 

ポイント

 「ロシア革命100周年、ソ連社会主義の総括をしなさい」という問題。ソ連崩壊を目の当たりにしたアラフィフの私なら600字でもokだが(笑)、高校生には厳しい。

 センター試験の復習でロシア革命スターリン、冷戦、ペレストロイカチェチェン紛争の抜け漏れをつぶした人は、「なぜペレストロイカなのか」で習う「ソ連社会主義の問題点」を軸にパーツをつなぎ合わせれば文章になる。その年のセンター試験や私大入試の復習は大事!(手前味噌)

 

bunbunshinrosaijki.hatenablog.com

 

 解答例は先にソ連の歴史をおさらいし、評価できる部分、課題となる部分を書いた。この方が書きやすい。

 

*発展:昔ロシア近現代史の石井規衛先生が研究会で「ソ連は重工業時代のユートピア」と説明していた。計画経済は鉄鋼や石炭をがんがん作ってじゃんじゃん消費する(ソ連のロケットはアメリカと比べるとかなりでかい!)時代には「みんな平等」という思いを抱かせることが可能でも(しかし農村の収奪が背景にある!)、省資源情報化時代にはフィットしない、といえる。

 

*発展:ソ連社会主義はなぜ国家主義で人民の自由を制限するのかというと、ロシア革命第一次世界大戦=総力戦体制の「申し子」だから、と考えればつじつまが合う。ジャコバン独裁も革命戦争勝利が名目だった。民主主義を守るために人々の自由が抑圧されるという逆説。

 

*発展:マルクスの言葉に「宗教はアヘン」とあるが、ソ連ユーゴスラヴィアは領内の様々な文化集団に対して「宗教や民族にこだわるのは時代遅れ。社会主義のもとでユートピアを実現する」と問題に蓋をした。しかし社会主義政権が崩壊すると人々は再び拠り所を民族や宗教に求めだした、と捉える。

 

 

Ⅲ(外国語学部以外)


課題 ガンダーラ地域で制作されたと考えられる仏像に英雄ヘラクレスが描かれている。このような像が造られた歴史的背景 200字

条件 文化交流と仏教の発展という二つの側面に注目しながら

 

条件から芋づる

文化交流:アレクサンドロス大王の東方遠征に付いてきたギリシア人が各地に植民する。前3世紀にバクトリアが自立する。ヘレニズムの彫刻技法やギリシアの宗教が伝わる。

仏教アショーカ王の時代の仏教は個人が修行して解脱する仏教クシャーナ朝の時代に大衆の救済を目指す大乗仏教が成立、菩薩信仰が生まれ、その像を造る必要が出てきた。

 

解答例

アレクサンドロス大王の東方遠征によって中央アジアギリシア人が植民し、後にバクトリアが自立してヘレニズム文化を伝えた。一方インド発祥の仏教は最初個人が修行によって解脱することを目指したが、中央アジアから北インドを支配したクシャーナ朝の時代に大衆の救済を目指す大乗仏教がおこった。この仏教は大衆を導く菩薩に救いを求めたので、信仰の対象として仏像が必要となり、ヘレニズム文化と結びついてガンダーラ美術が生まれた。204字

 

ポイント

サービス問題。解答例は固有名詞を減らして地理的な広がりを意識した。

 

 

Ⅲ(外国語学部)

 

問1 イ.タスマン ウ.クック

 

問2 

課題 アメリカ合衆国が太平洋を囲む地域に対してどのような政治的な発言権を有するようになったか。1860年代~90年代、1940年代後半~80年代のそれぞれの過程について、その時期に起きた戦争と関連させながら それぞれ80字程度

 

条件から芋づる

1860~90 ナポレオン3世のメキシコ出兵モンロー主義を適用 アメリカ=スペイン戦争でグァム、フィリピンを獲得 門戸開放宣言

→自国の利益を自由主義自由貿易で正当化

 

1940後半~80 日本の占領政策 太平洋諸島の信託統治 朝鮮戦争 SEATOやANZUS ベトナム戦争 中国との

→世界の自由主義を守ることが自国の利益

 

解答例

ナポレオン3世のメキシコ出兵に抗議しヨーロッパとの相互不干渉を主張した。また米西戦争に勝利して太平洋に進出し、列強の中国分割に対して門戸開放や主権尊重を唱えた。82字

国連常任理事国として太平洋諸島を信託統治朝鮮戦争に出兵した。またベトナム戦争に介入するなど共産主義からの自由主義の防衛を唱えたが、戦後は中国との関係改善に努めた。85字

 

ポイント

 アメリカの覇権主義に関するタイムリーな話題。

 前半はモンロー主義とアメリカ流帝国主義(アメリカファースト)、後半は国連反共主義自由主義の守護者)と比較の視点で書く。

 韓国はAPEC加盟国。「日本の占領軍の中心として民主化を指導し」も「政治的発言」(自由主義を広める)に当たるので私的にはOK

 SEATOとAUZUSを入れたいが「80年代」まで書く必要があるので、米中国交回復が79年なので「関係改善」と「逃げた」(笑)。高校生はANZUSの方が書きやすい。


*発展 1848年のアメリカ=メキシコ戦争アメリカ合衆国の領土が太平洋岸に達するが、当時はパナマ運河がない。50年代のペリー艦隊の世界周航は「合衆国は太平洋国家」というデモンストレーションともとれる。

 

 

問3

課題 ヨーロッパ連合に見られる協力の特徴 50字

条件 アジア太平洋経済協力との違い

メモ

EUの特徴 市場統合(域内のヒト・モノの移動の自由)、通貨統合(ユーロ)、政治統合(欧州議会

APECの特徴 多角的自由貿易体制を推進・強化、貿易・投資の自由化・円滑化、経済・技術協力を推進

 

解答例

加盟国間の商品や労働力の自由移動や共通通貨を設定するなど経済的統合度が強く、欧州議会で政治統合も進めている。55字

 

ポイント

サービス問題。EUの特徴を書く。

 

 

まとめ

 

 難関大学の世界史の論述問題を指導するには、普段から大学の先生が高校の先生向けに書いた入門書を読んで、「新しい歴史のとらえ方」をアップデートしておく必要があります。

 そうした「アップデート」は必ず現在の課題とリンクしています。歴史学は決して「象牙の塔」ではなく、文部科学省の「競争的予算配分」にせき立てられなくても、「今起きている問題を歴史に問う」が研究の動機です。

 世界史選択生はそうした「知の最前線」にいます。ぜひ世界史を楽しんで欲しいと思います。だから抽象的な話をしても寝ないで聞いてください(本音)。

特別展 古代ギリシャ -時空を超えた旅-@神戸市博物館2016-17

フィールドワーク

    先日神戸市立博物館で開催されている「古代ギリシャ展」に行ってきました。世界史好きな人にオススメなので紹介します。

 

公式サイト

www.greece2016-17.jp

 

*チラシを見ると展示物に©マークがついているので、チラシのアップは遠慮します。実物はHP及び展覧会で見てください。

 

 

館内の写真撮影許可ポイント 雄牛のリュトンの看板あり

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神戸市立博物館 表玄関

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 最初のセクションはクレタ文明以前の新石器時代、初期青銅器時代の展示です。

 

 目を引くのはスペドス型女性像です(HPの作品紹介第1章)。よくある豊満体型ではなく八頭身です(○々緒さん系の土偶?)。顔は「のっぺらぼう」ですが、元々は目や口や髪の毛が描かれていました。この方が色々とイマジネーションを掻き立てられます。

 出土したキュクラデス諸島はアナトリア(現トルコ共和国)からギリシアにかけての飛び石のような島々です。古代は海の方が移動に適しているので、「文明の伝播は島づたい」というのはアジアやポリネシアと同じです。

 

 絵で描くとこんな感じ めっちゃ適当(笑)

 

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 次は世界史の教科書でおなじみクレタ(ミノス)とミケーネ文明の展示です(同第2、3章)。

 

 資料集に載っているタコが描かれた壺などが展示されましたが、牛頭形の「リュトン」(お酒を注ぐときに壺にかぶせるカバー)は入口のポスターにもなっていて(左側に映り込んでいる)、展覧会の目玉のようです。

 クレタ文明というとミノタウロスの伝説に見られるように牛が有名です。神への供物として牛を犠牲にすることがありますが、そう毎回牛を解体するわけにはいかないから、これを酒の容器にかぶせて代わりにしたのだと思われます。

 

*発展 ギリシアの考古学に詳しい教授がいる名古屋大学の2017年の論述は「地中海世界におけるキリスト教以前の宗教について」で、リード文が動物を犠牲にする儀式の話でした。しかし高校生だとせいぜいエジプトとギリシャ多神教しか書けないのでは…。


 ミケーネ文明になると金や装飾品、儀礼用の武器など権威を見せつけるグッズが増えます。また線文字Bの実物が展示されていました。宮殿で作業をした人に日当としてイチジクと小麦を配った記録や、生け贄にした雄牛のリストでした。教科書がいうオリエントの影響を受けた「貢納王政」の実例です。

 

 

 次はポリス成立期の展示でした(同第4章)。いわゆる「アルカイックスマイル」はこの時代の後期の彫刻です。最初は陶器の壺の絵柄に幾何学模様(線だったりピクトさんみたいな人)が描かれますが、後半になると神や人々の活動の様子が壺に描かれたり、大理石の彫刻として作られるようになります。

 

 少女が走っている像がありました。スパルタでは「リュクルゴスの制」の下、子どもは男女問わず小さいときに親元から離れて訓練を受けますが、「ヘライア競技会」は女子のスポーツ大会で、像はその様子を描いたものです。丈夫な子ども=次世代のスパルタ戦士を産むためには身体を鍛えろ、ということでしょう。

 またセイレーンの像が多くありました。ホメロスの詩にも出てくる、海の航路上の岩礁から美しい歌声で船人を惑わし、遭難させる怪物です(某外資系コーヒーチェーンのあの人)。ギリシャ人が地中海や黒海に進出し、交易をしたり植民市を建設した時期に重なります。

 展覧会のハイライトは大理石で作られた男性像です。入り口のポスターにもありました(右側に映り込んでいる)。2017年度センター試験、国語の小説に登場する男の子なら、指さしして「○×○×!」と言いそうです(下ネタごめんなさい)。

 

 

 次は民主政時代の展示でした(同第5、6章)ギリシャで人々が最も躍動していた時代です。陶器の壺に描かれる神々や人々がダイナミックな表現になります。

 

 教科書に載っている「テミストクレス」と書かれた陶片(オストラコン)がありました! 世界史教員としては結構感動です。また民衆裁判員を抽選する機械(クレロテリオン)の一部がありました。裁判の当日に石製の身分証(古代にIDカードですか!)を穴に差し込み、ガチャガチャやって裁判員を決めるそうです。

 

 

こんな感じ 「テミストクレス」と読めます

 

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 さらに亡骸を清める香油を入れる壺には戦士の絵が描かれるなど、市民皆兵のポリスが戦死者の追悼を重視していた様子も垣間見ることができます。

 

*発展 高橋哲哉さんの『靖国問題』(ちくま新書)は賛否両論ありますが、彼が整理した「犠牲のシステム」と「国家による戦死者の追悼」は世界史を語る上で避けられない論点です。


 他にも病気治癒を祈願して奉納された乳房(小説の男の子なら(以下略))や足など「患部のレリーフ」、オリンピックの競技者を描いた記念の壺、競技者が身体に塗った香油をはがすための垢擦り棒(スキー板の「リムーバー」!)など、当時の人々も私たちも生活の様子や考えは基本的に変わらないのだとしみじみしました。

 


 最後はヘレニズムとローマ時代の遺物で、マケドニア人やローマ人がギリシャ好きだったことがわかります(同第7、8章)。

 

 しかしキリスト教が広がり、392年にキリスト教以外の信仰が禁止されると(テストに出ます! みくにの信仰)、ギリシャの文化も「異教」扱いになり、古代オリンピアの祭典は禁止(これも名古屋大学の過去問にあり)、彫刻の額に十字が刻まれたり、使わなくなった彫刻は建材の一部などにされたそうです。

 

 世界史好きな人には教科書の「あれだ!」が満載の展覧会です。音声解説が市村正親というのもいいところついています(笑)。

 

 神戸での会期は4月2日(日)までです。まだの人はお早めに。