ぶんぶんの進路歳時記

学習方法、進路選択、世界史の話題について綴ります

2020年度の大学入学共通テストについて(2018年度版2 大学の外部検定活用)

    2018年6月18日の大学入試センターの発表をもとに、2018年度高校一年生が受験する「大学入試共通テスト」(以下「共通テスト」)について整理します。

 

前回

bunbunshinrosaijki.hatenablog.com

 

資料1  大学入試センターの発表 

http://www.dnc.ac.jp/news/20180618-01.html

 

資料2  過去ログ

bunbunshinrosaijki.hatenablog.com

 

*記事は2018年8月現在です。

 

Q5 大学は共通テストの英語と外部資格・検定試験の活用をどう考えていますか?

A5 今一番大学側で議論している(もめている?)部分です。

 国立大学協会(以下国大協)のガイドライン(2018年3月30日)は、「センターが認定した民間の資格・検定試験と、センターの新テストにおいて実施される英語試験を一般選抜の全受験生に課し、それらの結果を入学者選抜に活用する」としています。

 認定試験結果の活用方法については、各大学・学部等の方針に基づき、次の「いずれかまたは双方を組み合わせて活用することを基本とする」となっています。

① 一定水準以上の認定試験の結果を出願資格とする。

② CEFR による対照表に基づき、新テストの英語試験の得点に加点する。

 

 さらに6月12日には「各大学・学部等が主体的に定める」としながらも、次のような具体例を挙げています。

①出願資格

・CEFR 対照表に基づき、その一定水準(例えばA2)以上を受験資格とすることが考えられる。

②加点方式

・英語認定試験の結果に基づく加点の点数をCEFR 対照表に基づく水準ごとに定め、その最高点が共通テストの英語の成績と合わせた英語全体の満点に占める割合を適切な比重(例えば2割以上)となるようにすることが考えられる。

・従来から民間検定試験を活用しており、素点による水準の対照についての実績と知見がある場合などには、各英語認定試験の素点に応じて、CEFR 対照表に基づく水準を細分化した段階を設けて、段階ごとの加点の点数を定めることも考えられる。

 

3月

一般社団法人 国立大学協会 <新着情報>提言等「大学入学共通テストの枠組みにおける英語認定試験及び記述式問題の活用に関するガイドライン」の公表について

6月

www.janu.jp

 

 前回CEFRのA2以上の検定合格者が約15%という話でしたが、乱暴な計算をすると、2018年度の18才人口が約118万人、15%は17万7000人です。

    センター試験受験者が約55万人で国立大学の定員は約9万6000人なので、「国立大学に進学したければA2以上」は法外な要求とまでは言えないです。

 「満点の2割」は「インセンティブ」(真面目に取り組む目安)だそうです。ちなみにセンター試験の英語の筆記:リスニングは200:50で、200点満点換算でリスニングは20%を占めます。

 「CEFRの段階にもとづく加点」は、私個人の思いつきですが、100点満点換算でC2(母国語)で25点、B2、B1、A2、A1が15、10、5、0点のような感じでしょうか。

 

  これに対して東京大学は2018年7月19日の記者会見で、ワーキンググループ(以下「WG」)の検討内容を「内部文書」と断りつつHPに公開し、「あり得る選択肢」として次の3つ(番号は優先順位)を提案した、としています。

① 成績提出を求めない

② 諸課題について文部科学省他関係機関から説明を受け、納得のいく回答が得られたら活用を検討する

③ 国際指標CEFRのA2以上を出願資格とするが例外も認める

 

平成32年度(平成33年度入学者選抜)以降における入学者選抜方法の検討について | 東京大学

 

 ここまでの東京大学の動きは次の通りです。

  • 3月10日「民間試験の受験は求めるが合否判定には使わない」
  • 4月27日「学内にWGを設置して具体的な活用方策について検討していく」
  • 7月19日「WGの議論では『使わない』が第一順位」←イマココ

 

 注目したいのは②の「諸課題」です。

  文書では東京大学のアドミッションポリシーと外部資格検定による選抜との整合性について真摯な(長い)議論が続きます。外部検定で門前払いをするのは「あらゆる人材に機会を与える」という東大の理念に反するので①という結論です。

 

*「センターで門前払いしてるじゃないですか!」と思う方もいるでしょうが、センター試験は志願者全員が同じ試験を受けます。一方外部検定はバラバラなので一次選抜の利用にはそぐわないという主張です。

 

 ただし東京大学も英語の発信能力は重要視している、もっとも良いのはセンターが4技能試験を実施することだがおそらく無理(後述)、東大が個別試験で実施するのも不可能、それで外部検定という流れだろうが課題もあるとのことです。

 そこで東京大学文部科学省に対して、参加要件を満たすとされる認定試験のすべてについて、以下の4 項目について回答することを求めています。 

  • 語彙、文法等、あらゆる観点から見て、高等学校学習指導要領との整合性がどのように満たされているのか、検証結果の詳細を示していただきたい。
  • 個別の認定試験が示している点数とCEFR換算表との対応を横断的に比較・検証し、異なる認定試験の換算結果どうしを同一基準で比較し得るとする根拠を説明していただきたい。
  • スピーキングテストの実施体制や採点体制が、公平公正の観点から見て十分に信頼できるとする根拠を説明していただきたい。
  • 大学入試センターが各実施主体に対して「今後一層の取組を求めたい事項」として挙げている3 つの点(検定料、試験実施会場、障害等のある受検生への合理的配慮)について、それぞれ具体的にどのような対策が準備されているかを示していただきたい。

 

 以前このブログ(資料2の2)で指摘したことと重なります。

 参加予定の検定は高校生、留学、ビジネス向けと多岐にわたり、特にスピーキングテストはインタビューとスピーチ(英検)、ディスカッションも含む(IELTS)、様々な場面について答える(GTEC)とバラバラです。

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「大学入学者選抜改革について」35頁。資料2の2参照。

認定前のデータなので、ここから検定料のダウン、会場の拡大がされるはず。

 大学の入試選抜に外部検定を利用するなら、それらが学習指導要領を踏まえているか、CEFR換算に合理的な根拠があるのか、公平さが担保できるかについて、合理的な説明が欲しいのは東京大学だけではないです。

 検定料、実施会場、合理的配慮も、特に南北に長く過疎地域を多く抱える私の県では大問題です。

 公平性を確保するために高校関係者以外の監督を雇えば検定価格は上昇します。大会場を設定すれば今度は運賃が生徒負担になります。

 また検定試験を共通テストと同等と扱うなら、合理的配慮も同等であるべきです。

 文部科学省の真摯な回答をお待ちしています。

 

 

Q6 当面存続するセンター試験の英語はどうなるのですか?

A6 「コミュニケーション英語Ⅰ」「コミュニケーション英語Ⅱ」「英語表現Ⅰ」の科目の範囲からの出題となり、CEFR との対応ではA1~B1 相当となる予定です。

 資格・検定試験の中には高校教育の目的と合致しているとは言い難いものも含まれます(センターは「試験の目的に応じて幅広い英語力を把握することが可能です」と表現してます)。

    したがってそれら検定と平行して行われるセンターの英語は「高校教育を通じて大学教育の基礎として共通に求められる力を身に付けているかどうかを把握することが目的」で行うとしています。

 

*発展:だったら高校教育の成果を試す4技能検定をセンターが(以下略)と言いたくなりますが、かつて韓国で、今の日本と同じ理由から60 万人の大学受験生を対象にスピーキングとライティングの能力を測る国民英語能力試験が計画されました。5年の年月と100億円にも及ぶと言われる巨費が投じられたのですが、システムの不具合が解消できず、2014 年に計画は中止に追い込まれました。

 

 なお2018年度の試行調査では筆記(リーディング)の問題では「読む」力を把握することを目的とし、発音、アクセント、語句整序などの問題は(スピーキングとライティングの代替問題という位置付けだったので)出題しない予定です。

 リスニングについては、複数の情報を比較して判断する力や議論を聞いて要点を把
握する力等を問うことをねらいとし、アメリカ英語以外の読み上げ(イギリス英語や英語を母語としない話者による読み上げ)や「1回読み」と「2回読み」が混在する構成で実施する予定です。

 また今回の試行調査においては「筆記(リーディング)」「リスニング」の配点を均等として実施、平均点も50点と設定する予定です。

 

続き

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