放送大学で教員免許更新、無事合格したので今後は放送大学さんに感謝し、宣伝も兼ねて?学習内容を復習しながら教育にまつわる課題について考えます。
*引用部分は私がビデオを視聴して要点をメモしたものの一部です。自説が主で引用が従という著作権法の範囲内で使用します。
第4章 子どもの心理的発達に関する課題
素朴理論
- 科学的理論と異なり,生活での体験から,それが適用できない現象にまで過剰に当てはめて成り立つ規則性。学校の教育はそれを科学的な理論に変換する試み。
- 素朴理論は既有知識の始まり。新たな情報を取り入れ,それを自分が持っている知識群と結びつけ,一つのまとまった知識ネットワークを形成することが学習。
- 授業における思考力の育成とは,知識のネットワークを作り出す方法を学び,それを常に行えるようにしていくこと。
子どもは学校で学ぶ前は「白紙状態」ではなく、生活の体験から自分なりの仮説(素朴理論)を持っている場合があります。
したがって学校の学習活動が担うべきは、新しい知識と子どもの知識と結びつかせたり(知のネットワーク化)、反復練習で知識や技能を定着させたり(学習の習慣化)、「自分は物事を記憶し理解できている」と自覚させること(メタ認知)といえます。
第5章 子どもの脳の発達科学
1 脳の基本的知識
- 脳を含めた中枢神経系は,神経細胞(ニューロン)とグリア細胞から構成されている。ニューロンは細胞体,樹状突起,軸索などの部分から成り,樹状突起は他のニューロンとシナプスと呼ばれる非常に狭い隙間を介して接合している。ニューロン間の情報は,電気信号と神経伝達物質でやりとりされている。
- 大脳皮質は大きく前頭葉,頭頂葉,側頭葉,後頭葉の4つの領域に分かれている。脳と認知機能には対応関係があり,後頭葉は視覚に関する情報処理を,側頭葉は聴覚情報や社会的情報の処理を,頭頂葉は体性感覚に関する情報処理を,前頭葉は運動の計画や実行などの情報処理を行っている。
2 脳の発達
- 一方灰白質の量については,まずは増加を続け,その後に減少に転じるという発達パターンを示すことが明らかになっている。
生物の教科書ではおなじみの話です。最低これだけは覚えておきましょう。
- 脳は,大脳,脳幹,小脳などの部位に分けることができる。
- 大脳皮質の各領域は認知機能と対応していて、生存に不可欠な機能が後ろ、社会生活に必要な機能が前で、後ろから前へと順番に発達のピークを迎える。
3 社会脳の発達
- 「社会脳」とは社会的行動や他者理解などに関わる脳内機能。
- 「心の理論」とは他者の行動からその心的状態を推測する能力。
- 「心の理論」が課題になっている時の脳活動を計測すると,内側前頭前野や側頭-頭頂接合部,上側頭溝などの複数の脳内部位が活動することが明らかになっている。
- 幼児期頃から心の理論に関わる脳内ネットワークが形成され始めるが,十分に機能するようになるのは児童期以降であることも示されている。
- 近年の研究では、乳児にも道徳性の萌芽ともいえる,善悪の判断をできる可能性が報告されている。
「誤信念課題」の実験「AとBが遊んでいて、Aが席を外しているうちにBがおもちゃを別の場所に移動した、Aは帰ってきたらどうするか」は有名です。
幼児は自分が見たことをAも知っている、つまり「Aはおもちゃがある正しいところへ行く」と考えます。年齢が上がると「Aはおもちゃが自分が置いた場所にないので困る」と考えます。
「他人の立場に立ってものを考えられる」は成長の証です。
ちなみにこれは推理ドラマで視聴者のミスリーディングを誘う手法としても用いられます。
また乳児に「通せんぼ」する赤い物体の絵を見せた後、再度赤い色を見せたら不快な反応を示した、という実験が紹介されていました。恐るべし。
「善悪の判断ができる」は成長の証。
4 前頭葉の初期発達
- 前頭前野は様々な認知活動に関わっている。
- 実行機能とは,目標到達のために行動を柔軟に制御する能力で、ある活動から別の活動にスムーズに切り替えたり,欲望を抑止したりする。
- 実行機能は,児童期の学力や社会的スキルに重要な影響を与えるため,幼児期から児童期にかけて実行機能に問題を抱える場合には支援が必要である。特に,国外の研究から,貧困層の子どもは実行機能の発達に問題を抱えることが示されている。
5 青年期の前頭葉の発達
- 自己制御に関わる前頭前野の発達よりも,報酬処理と関わる皮質下の領域の方が発達が早い。
- 児童期よりもブレーキの性能は向上しているのだが,アクセルがそれ以上に向上したため,ブレーキでうまく制御できなくなる。
4はカードを使った3歳から5歳の幼児の研究で、途中でルールが変わってついて行けるか、という実験です。課題を通過できた幼児は前頭前野の一部領域を活動させていました。「切り替えができること」は成長の証。
5、「我慢できること」は成長の証。
まとめるとこうです。
- 社会脳とは,社会的行動に関わる脳内機構のこと。
- 心の理論は,他者の心的状態を推測する能力のこと。
- 心の理論は社会脳の発達と密接に関係している。
- 心の理論は乳幼児期からすでにその萌芽が見られる。
脳科学的に考えると、客観的認知、モラル、切り替え、耐性など社会人にとって必要な資質は、乳幼児期の発達(およびその時の周囲の働きかけ)で基礎がほぼ出来あがってしまう、ということです。
そして、その時期に貧困など本人の責任以外の事情で適切な働きかけがなされないと「実行機能」に何らかの支障をきたし、それらが学力や生活習慣に影響する可能性がある、ということです。
それこそ現場の教師たちが毎日直面している課題です。
つまり、乳幼児期の教育は非常に重要であるだけでなく、教育は保護者や教師集団の頑張りだけで全て解決する問題ではない、行政の責任も大きいということです。
「学力テストの結果を公表して学校を競わせれば成績が上がる」と考える方がみえるようですが、成績を底上げしたいのなら教師の力量だけに頼るのではなく、結果の分析から就労や生活環境の改善など地域の課題に必要な施策を講じるべきです。
やっと5/40来ました…。次回はラスト?
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