ぶんぶんの進路歳時記

学習方法、進路選択、世界史の話題について綴ります

興福寺国宝特別公開2017 阿修羅 天平乾漆群像展

 ゴールデンウィークを利用して、奈良市にある興福寺に行きました。

 

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 今回の展示は、国宝館が耐震補強工事のために1年間休館するので、西金堂(江戸時代の火災の後再建されていない)に安置されていた仏像を仮講堂に群像のように配置する、というコンセプトです。

 

興福寺のサイト

www.kohfukuji.com

 

*今回の記事は当日興福寺で頂いたパンフを参考にしています。

 

 興福寺近鉄奈良駅のすぐ東にあり、南都六宗のひとつである法相宗大本山です。藤原鎌足不比等ゆかりの寺院で、平城遷都の時に現在の場所に移転したそうです。

 西金堂は天平6年(734年)、光明皇后が母・橘三千代の一周忌供養のために建立しました。釈迦如来、両脇侍、梵天帝釈天十大弟子八部衆金剛力士像、四天王、華原磐(金鼓、儀式用の楽器)などが安置されていましたが、何度か火災に遭い(最も有名なのが治承4年(1180年)、治承・寿永の乱の時に行われた平重衡の南都焼討)、八部衆8体と十大弟子の6体と華原磐が当時のまま今日に伝えられています。

 

 9時開場の20分前に着きましたが、すでにチケットを求める人で長蛇の列でした。その後は特に混雑はなく仮講堂に入ることができました。

 

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 仮講堂にはこんな感じで仏像が整列していました。

 

広目天 金剛力士(吽) 帝釈天   阿弥陀如来  梵天  金剛力士(阿)  多聞天
                 竜灯鬼 天灯鬼
 迦旃延 須菩提 目犍連                 舎利弗 富楼那 羅睺羅
            迦楼羅 緊那羅     鳩槃荼 乾闥婆
            五部浄 阿修羅     沙羯羅 畢婆迦羅
増長天                華原磐                持国天

 

 

 阿弥陀如来がセンターで、四隅を四天王が守っています。

 阿弥陀如来の前にいるのが八部衆です(赤文字)。インド神話に登場する神々で、仏教に帰依してその守護神となります。経典では「天、龍、夜叉、乾闥婆、阿修羅、迦楼羅緊那羅、摩睺羅伽」を指します。

 

 展示の目玉である阿修羅はインド神話に登場する戦闘の神で、一般的には激しい怒り顔で三つの顔と六本の腕を持つ姿で表されますが、興福寺のそれは繊細な表情で、腕と体は細く少年のようです。八部衆のうち阿修羅を含めた4体は少年像です。光明皇后の希望でこういう表現になったと推察されています。

 

撮影不可なので、海洋堂ミュージアムの公式レプリカ(撮影OK)でご勘弁を。

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 迦楼羅(かるら)は空想上の鳥でいわゆる「ガルーダ」、インドネシア航空の名称にもなっています。インドネシアムスリムが多いですが『ラーマーヤナ』が好んで上演されるなど様々な信仰が土着のそれと結びついて共存しています。

 

 同じく海洋堂ミュージアムより

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www.ryuyukan.net

 

 八部衆像は「乾漆像」です。粘土で塑像を作り、その上から漆に浸した麻布を数回塗り固めて造形します。乾燥後に像を割り、中の土を取り除いて新たに木芯を入れてふさぎます。

 漆の接着・乾燥を繰り返すというお金も時間もかかる技法ですが、繊細な表現が可能です。興福寺八部衆は優しい姿でガードマンっぽくないです(笑)が、軽量小型のおかげで何度か火災に見舞われたときに持ち出すことができ、8世紀の姿を今に伝えています。

 

こちらのサイトを参考にしました

 

奈良の名刹寺院の紹介・仏教文化財の解説など

 

 

 八部衆の横にいるのが十大弟子(青文字)で、釈尊(釈迦)の弟子達の中で主要な10人のことです。6体が現存しています。ただし作られた時の「どれが誰」が伝わっていないので、仏教説話の年齢や性格と像の表情や衣文線の表現から名前を「比定」しています。

 舎利弗(しゃりほつ)は「智慧第一」と称され釈尊が特に信頼をよせていたといわれます。 「般若心経」の中には釈尊の説法の相手となり「舎利子」として登場します。

 目犍連(もくけんれん)は舎利弗の友人で一緒に釈迦に弟子入りします。神通力で餓鬼道の母を救出したことが今日の「お盆」(盂蘭盆会)の起源とする説があります。

 羅睺羅(らごら)は釈迦の実子で弟子のひとりですが、この像は目を閉じているので、盲目の僧阿那律(あなりつ)の像として作られたのではないかという説もあります。

 

 天平の繊細美を堪能できます。前期の展示は6月18日までです。奈良国立博物館では快慶展が実施中、9月には東京国立博物館で運慶展があります。こちらも是非どうぞ。

www.narahaku.go.jp

 

 

 

 境内の鹿が「メ~」って鳴いていました。

 

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