私の住む地域には多くの外国籍の方が働いています。近所のスーパーでは仕事帰りの方と毎日出会いますし、小中高には彼らの子どもが通っています。出身も東アジア、東南アジア、南米と様々です。
先日、人権サークルの高校生向けに「外国人の暮らしを知ろう」という題で勉強会を行いました。
講師に「NPO法人伊賀の伝丸」の和田京子さんに来ていただきました。
「伊賀の伝丸」は1999年に「通訳や翻訳を通じて、言葉の壁を乗り越えてともに住み良いまちづくりを」と約20名の有志が集まって設立され、2005年に特定非営利活動法人の登記を行いました。
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和田さんが活動する伊賀市は人口9万人に対して「外国籍」の人が約4300人を数えます(統計には「日本籍で外国につながりのある」人は含まれないので実際はもっと多い)。全住民中の外国籍の人の比率は約5%では県内1位、三重県全体の値は2.25%で全国3位(1位東京都、2位愛知県)です。
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伊賀市について
人口数なら伊賀市を上回る市町は県内にありますが、人口比が多い伊賀市は「お隣さんは外国籍」が日常なので、「外国籍の人は一緒にコミュニティーを運営する仲間」と和田さんは言います。
この後啓発ビデオを視聴しました。バングラデシュ人の親子が主人公で、肌の色への偏見や、マイノリティーとしての「生きづらさ」が描かれていました。「夜中に大勢で騒ぐ」「ゴミの出し方が悪いからアパートは貸せない」などは、話し合う中で「親戚同士で助け合う」や「書類が難しすぎる」という理由があることがわかります。互いに理解を深め、同じ街の一員としてやっていきましょう、という内容でした。
三重県にいる在留資格を有する外国籍の方のうち、8割はビデオと同じく定住しています。そのうち最近よく見かけるのが日系人とその家族です。
日本は明治時代にブラジル、ペルーを中心に移民事業を行いました。移民の子どもが「日系2世」で、彼らが現地で結婚し、生まれたのが「日系3世」です。
1990年の「出入国管理及び難民認定法」の改定で、「定住者」の在留資格が創設され、日系2世、3世が就労可能になります。当時は「バブル景気」で経済界は外国人労働者の受け入れを望み、一方政府は移民受け入れに消極的、「日系人の就労」はいわば「折衷案」でした。これにより、主にブラジル、ペルーから(ブラジルが一番の移民先だったので数が多い)日系人およびその家族の入国が容易になり、来日数が増加しました。
元々は「出稼ぎ」志向で、単身で仕事に来た人も多かったのですが、次第に家族を呼び寄せる、日本で子どもが生まれるなどあって定住者が増加します。
異国で生活をする際に一番困るのは言葉の問題ですが、日本でよくあるのが「熟語がわからない」です。例えば「高台に逃げてください」と言われても「タカダイ」が何を指すのかがわかりません。和田さんの知り合いの方は震災の時に近所の人に声をかけてもらって難を逃れたそうですが、日常会話は大丈夫でも「漢語」は難しいそうです。
和田さんは「私たちのできることは、なるべく易しい日本語で話しかけることだ」と言います。「住所」は「○○が丘ですか?」といった具体名を挙げる、「給水所」は「水をもらえるところ」、「高台」は具体的なビルや場所に言い換えます。
もうひとつ重要なのがアイデンティティーの問題です。啓発ビデオも、バングラデシュ生まれの親と、日本にいる時間が長い子どもの間で「私のよりどころは何か」で悩む場面が描かれます。
私の勤務先にも日系3世の子ども(4世)がいます。かつては小さい時に来日したため言葉が通じなくて困ったというケースが多かったです。「勉強は得意だが高校入試問題の書いてあることがわからない」という生徒は現在もいます。
しかし法律改定からすでに20年以上が経ち、日本生まれで日本語を話す生徒が増えています。「父母の言葉がわからない」という生徒もいます。意識して両方の言語を学ばせている家庭もありますが、そうでない場合は保護者とコミュニケーションがうまく取れず、将来の夢を十分に伝えられない、といったことが起こります。
「伊賀の伝丸」は通訳や翻訳以外に生活相談など外国人向けのサービスだけでなく、世界の料理教室や外国語講座など、私たちが外国の文化について理解を深める取り組みもしているそうです。
学校関係だと、伊賀エリアの高校が一同に会する外国籍生徒向け進路相談会が開かれていて、それぞれの事情(家庭ごとに千差万別です)を聞いて、進学、就職も視野に入れながらアドバイスをしています。
私が関わった何人かの外国籍生徒も、それぞれ家庭で色々事情を抱えながら、一生懸命勉強し、自分の夢を実現しようと頑張っています。
伊賀市には約45カ国からの外国人、外国にルーツのある人が住んでいます(仕事、国際結婚でパートナーを連れてきた、という人もいます)。小中学校だと必ずクラスに何人か外国籍の児童・生徒がいるのが日常です。こういうボーダーレスな状況が進むと、旧来の偏見や差別意識にこだわっている場合ではなくなってきます。
伊賀市に在住して近隣の市町に働きに行く外国籍の方も多いそうです。コミュニティー、学校、職場、あらゆる場面で私たちは互いの文化や習慣の違いを尊重し、「共に運営する」という姿勢を持つことが、今後どの街でも必要になってきそうです。