ぶんぶんの進路歳時記

学習方法、進路選択、世界史の話題について綴ります

受験シーズン到来 高校三年生が受験生になる、について考える(その1)

 新学期が始まりました。進路主任をしていた時はこの時期に各学年から呼ばれて新しい学年での心がけを話しました。

 私が三年生の担任をしていた時、進路主任が前年度の国公立大学合格者(進学者ではありません)の数字をあげて、一生懸命「最後まであきらめるな」と言っていましたが、生徒はポカンとしているし、私は「この惑星の住人は四月から何かをあきらめるようだ」と思いました(笑)。

 

 出口治明さん(ライフネット生命会長)に講演に来ていただいた時に「数字、ファクト、ロジックで考える」ことを力説されていました。

 

 昨年と今年の生徒は別人格です。「昨年○○人通った」ではなく「その人たちがどうしたらこうなった」が重要だと思います(「昨年○○人合格したから今年はそれにプラス10人が目標だ」と話した校長先生もかつていました)。

 

 それで私が進路主任をした時は、論理的でない数字と精神論は極力避けて、受験に向かう心の持ち方と手順について、卒業生の取材をもとに「数字、ファクト、ロジック」を意識して話すよう心がけました。

 

こちら 

 

 以下は三年生の集会と三年生向けの進路通信の内容を加筆、修正したものです。集会の話は「鈴木一朗」さんの話が中心です。

 

 

1 三年生は受験生ではない

 

 三年生の皆さん、新しいHRには慣れましたか? 3月1日には全員が笑顔で高校を巣立つことができるように、目標に向けて頑張りましょう。

 

 しかし、ちょっと待ってください。皆さんは確かに三年生ですが、受験生ですか?

 三年生は「最終学年」や「最高学年」とも言われますが、それは校内でもっとも経験豊かで、他の学年の見本となるような生活態度やものの考え方が伴っているという意味です。

 「受験生」も同様です。自らの進路を実現するために必要な学力は、受験生にふさわしい心構えや生活習慣が整っていてはじめて養われます。

 

 毎年第一志望に合格した先輩に合格体験記を書いてもらっていますが、成功した先輩には共通点があります。

 まず心構えです。ある卒業生が「受験のことを意識したら受験生」と表現していました。

 受験勉強を開始したり志望校の情報を集めたりするのは当然ですが、授業中の先生の話を聞いて「これは入試に必要な知識だ」とメモしたり、友だちとのおしゃべりや何気ない出来事も「これって受験に活用できる」と考えたりしましょう。

    日常生活のあらゆることを受験のために活用できる姿勢」、つまり「受験に対する主体性」が受験生の心構えの第一歩です。

 

 またもう少し部活を続ける三年生もいると思いますが、やると決めたらやりきりましょう。「部活の間は勉強が気になり、勉強の間は部活が気になる」は逆効果です。

 試合中は部活のことに集中しますが、反省の時に「部活と受験の双方に通じること」に気がつきたいものです。

 

 生活習慣ですが、これは「当たり前のことが当たり前にできているか」です。

 

 『偏差値60以上のできる子の勉強習慣』(斉藤淳一 中経出版)によると、志望校に合格できる生徒の学習習慣はこのような感じだそうです。

 

□    授業はきちんと受ける。ノートを取るだけでなく活用している。

□    疑問に思ったら質問事項を整理する。必要なことをメモする。

□    勉強は理解することだと心得ていて、納得するまで考える。

□    一日のスケジュールが管理できていて、行動がルーティン化している。

□    部活動にも勉強にも一生懸命打ち込む。

□    志望学部の入試や入学後の自分がイメージできている。

 

 志望校になかなか合格できない生徒の学習習慣は、その逆と言えます。

 

□    授業は話を聞かず板書を写すだけ。予習や復習をしない。

□    わからない問題があってもそのままにしておく。

□    勉強は暗記。解答例を写せば頭に入ると思っている。

□    一日の行動の順番や中身はその日次第。

□    勉強できないのを部活のせいにする。

□    志望学部が決められない。楽な入試方法や出題形式から志望を決める。

 

 難しい大学に入るために難しい問題集を買い込んだり、難解な単語をたくさん覚えたりするのは、多くの生徒がする間違いです。

    基本的な文法・語法、語彙、公式活用は予習、授業、復習というサイクルを、理解するまで地味に繰り返すことで身につきます。平素の丁寧な学習の延長線上に受験勉強があると心得ましょう。

 このリストで思い当たる点がないか、考えてください。

 

偏差値60以上のできる子の習慣、50以下のできない子の習慣

偏差値60以上のできる子の習慣、50以下のできない子の習慣

 

 

 

2 受験生に必要なのは計画性

 

 最近はどこの高校でも一年生の時から手帳を使って学習の記録を残したり、学習の計画を立てたりしています。

     特に受験生で国公立大学を目指す人は5教科7科目という膨大な準備をする必要があります。来年の1月、2月から逆算して、何をいつ取り組むかを計画して勉強しないと必要な準備が間に合いません。

 計画には短期、中期、長期の目標が必要です。この話をするときにアビリティ・トレーナーの木下晴弘さんをはじめ、企業研修などでよく引用されるのが小学六年生「鈴木一朗」さんの卒業文集です。

 

(注:本論が主で引用が従の場合、著作権法上著者に断りを入れなくても引用が許される。文中の下線①~⑥は引用者が付した)

 

こちら

 

私が一番受けたいココロの授業―人生が変わる奇跡の60分

私が一番受けたいココロの授業―人生が変わる奇跡の60分

 

 

 

 

鈴木一朗さんの卒業文集の全文はこちらを参照しました。

http://www.ccore.co.jp/plus/self_management/

 

「夢」

ぼくのゆめは、①一流のプロ野球選手になることです。そのためには、②中学、高校で全国大会へ出て、活躍しなければなりません。活躍できるようになるには、③練習が必要です。ぼくは、その練習にはじしんがあります。ぼくは、3才~7才までは、半年位やっていましたが、3年生の時から今までは、④365日中、360日は、はげしい練習をやっています。(中略)⑤そんなに、練習をやっているんだから、必ずプロ野球の選手になれると思います。そして、中学、高校で活躍して高校を卒業してからプロに入団するつもりです。そしてその球団は中日ドラゴンズ西武ライオンズが夢です。ドラフト入団でけいやく金は、一億円以上が目標です。ぼくがじしんのあるのは、投手と打げきです。(中略)そして、ぼくが一流の選手になって試合にでれるようになったら、⑥お世話になった人に、招待券をくばって、おうえんしてもらうのも夢の1つです。とにかく一番大きな夢はプロ野球選手になることです。

 

 まず①「プロ野球選手になる」という大きな目標があり、それを実現するために②「全国大会で活躍する」という中目標が、それを実現するために③「毎日の練習」と④「具体的な練習メニュー」という日々の目標があります。

 

 ⑤と⑥は計画を実行するときに欠かせない「謙虚・誠実・感謝」の気持ちです。

  「鈴木さん」は自分の今の地位は練習の賜物と理解していて、「やればできる」などとは言いません。

    また自分が練習できるのは周りの応援のおかげと知っています(後述するバッティングセンターでは毎月5万円の費用を父親が小遣いから払っていました)。

 

 勉強に置き換えれば、①は志望大学、②は何度かある模擬試験やオープン模試で合格に足りる成績をとること、③勉強の計画、④一日のメニューとなります。

 (続く)